↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
20/33

第20話 見るも無惨な結果でござい


 半径十五メートルほどある円形の石畳の上で、鬼塚さんと向かい合う。

 なんで庭の一角にこんなのがあるんですかね……。


 ここに来てから、鬼塚さんの目が据わってんだよなぁ……。やだなぁ……。

 しかも何か人集まって来てないか?見世物じゃん。暇ならダンジョン行けよ。


「それではこれより、佐藤恭平と鬼塚健治による模擬戦を行う。立ち会いは私、月城ユキナが務める。二人とも、準備は?」


「出来てる。いつでもいいぞ」


「はい……大丈夫です……」


「この模擬戦以降、禍根は残さないように。勝敗はどちらかの戦闘不能、もしくは続行の意思の消失によって決まる。それでは模擬戦──始め!!」


 月城さんが一切の遠慮なく、テキパキと模擬戦を始める。心なしか口調すら変わってない?お前覚えてろよ。


 開始の合図があったにもかかわらず、動く気配のない鬼塚さんを見る。

 木刀を居合抜きするかのように構えながら、腰を沈めている。いわゆる後の先というやつだろうか。


 対する俺は両手に短めの木刀を二本。長くてもどうせ使いこなせないし、それなら普段慣れてる長さの方がいいだろう。


「ほれ、先手は譲ってやる。来いよ」


「……じゃあ、ありがたく。失礼しまっす!」


 油断せず、居合の構えのせいで前に出ている右腕を狙う。大怪我してはダメだろうと、緩めに振ったのがいけなかった──


「テメェ、ナメてんのかっ!!」


 危機感知が激しく反応する。


 俺の温い一撃を秒で弾き返して、そのままの勢いで俺のこめかみへと木刀が横薙ぎに振られる。


 ──や、べ


「ぬうううう!!」


 必死で頭を横に倒して、鬼塚さんの木刀を躱すが、僅かに側頭部を掠めていく。


「ぐっ、ラァ!」


 弾かれた手とは逆の左手で、これまた体重の乗っていない一撃を放つ。


「だ、か、ら、ナメてんじゃねぇ!」


 居合の動きから流れるように返す刀で弾かれてしまう。


 そのタイミングで、仕切り直すかのように月城さんが間に入ってくる。俺の方を見つめているが、心配している素振りはない。


「佐藤さん。まだやりますか?」


「やるに決まってるっ!つーか、まだ何もやってない!」


「かしこまりました。では──再開っ!」


 鬼塚さんを見ると、再び居合の構えに戻っていた。この野郎……。


「おう、死神だ剣神だに構われて、大っきくなった気がしたか?これがお前の現在地だ。お代はいらねぇから、覚えて帰れや」


 悔しいけど、こいつの言うとおりだ。俺はまだ、何者にもなっちゃいない。


「確かにそうだな。剣聖と剣術で勝負なんて、あんたを舐めてるわ。俺も本気でやる」


 俺の今持っているスキル。全部駆使してあんたに迫る。


 空間把握を、鬼塚さんにだけ集中する。あの人の呼吸、衣擦れ、筋肉の緊張状態、全部を、把握しろ。


 続いて魔力を足へと集め、疾走を意識する。


「これは……」


 月城さんが驚いたような顔でこちらを見ているが、相手をしている余裕はない。


「──行くぜ」


 疾走スキル全開で、鬼塚さんへと向かっていく。


 数メートルの距離が一瞬でゼロになり、俺に反応する鬼塚さん。


 止まる呼吸、右手に力──来るっ!


「っ!オラァ!」


 裂帛の気合と共に、木刀を振り抜く鬼塚さん。関節のきしむ音が、彼が本気で振っていることを俺に伝えてくれる。


 でも、そうくるってのは、こっちもわかってんだよ!!


 姿勢を低く、前に倒れるのを我慢しながら落としていく。このままじゃ鬼塚さんの居合は顔面直撃、当たれば一撃でお陀仏だろう。


「──っ」


 ピクリと月城さんが動くのを感じるが、ギリギリで思い留まったようだ。ありがたい。


「は、たまんねぇなぁ!」


 自身の頭へと左手をかざして、手首にはめたままのバングルへと魔力をつぎ込む。ボタンを押さずとも展開できる、魔力操作様様である。


「なにぃ!?」


 一瞬で展開された透明な壁に阻まれて、鬼塚さんの木刀がへし折れる。折れた木刀に注意が散った──今だ。


 気配遮断、跳躍!


 姿勢を低くした俺を見ていた鬼塚さんは、自身の足元を警戒しながら俺の姿を探している。


 回転する視界の中、月城さんが目を見開いてるのに気付く。


 ──どう?俺だって、意外とやるだろ?


「だりゃああああ!」


「ぐっうぅぅぅ!?」


 鬼塚さんの頭上から背面へと回り込みながら、木刀で彼の背中を叩く。


 不意打ち百パーセント!最高だぜっ!


 だがしかし、鬼塚さんを叩くことに集中していた俺は、着地のことなんて全然考えていなかったのである。


 その結果は見るも無惨。背中から地面にごっつんこなのだった。


「ぐべっ!」


 地面からの衝撃に押し出されるかのように、肺から空気が抜けていく。


「そこまで!……でよろしいですか、鬼塚さん」


「ああ?剣聖が剣折られて、まだやれってか?」


「そういうルールなので」


「やらねぇよ。俺の負けだ」


「では──鬼塚健治の降参により、佐藤恭平の勝ちっ!これにて模擬戦を終了するっ!」


 勝者は這いつくばってるけどなぁ!!


「佐藤さん、そろそろ訓練を……何を?」


「起こしてくれ……」


「はぁ……どうぞ」


 月城さんの手を掴んで起き上がったその時、大きな声が模擬戦場に響く。


「いやぁ!!素晴らしかったね!!佐藤恭平君、思った以上に楽しめたよっ!!」


 拍手をしながら近寄ってくる……白ラン着た……女?


「マスター、見ていたのですか」


「マスター!?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。