第11話 総合販売所、難解な購入、何階?
遅咲スキルがスキル大全に載っていなかった。つまり、まだこのスキルは見つかってないのか?
考えてもわからないけど、可能性は高そうだ。その場合、遅咲の効果は自分で確かめるしかないわけだが。
「はぁ、考えても仕方ないか。幸いにも今の時点で困ってるわけじゃないし、とりあえずは半年後の死神のことを考えよう」
四畳半の狭い部屋でたった一人、そう結論付ける。喫緊の課題、ってやつだな。
「でもって更にとりあえずは、月城さんとのトレーニングだ。明日も早いし、早く寝よっと」
考察なんか賢い奴に任せとけばいい。なんなら配信で聞いてもいいかもしれない。まぁ、早熟と遅咲、それと職業なしについては言わないでおこう。配信が盛況なのはありがたいけど、これ以上変な注目を浴びるのはゴメンだしな。
◇◇◇
「よーし、それじゃ行ってきまーす」
誰もいない部屋へと向かい出発の挨拶をしたあと、カギを掛けてからスマホで地図を開き、北千住への道を確認する。
「普通に走ったら一時間はかからんかな?どれくらいで着くか、試してやろ」
なんか昨日より体のキレが増してる気がするし、これも補正の効果かな?
「これなら意外と早く着くかもな。ま、損はないしやるだけやってやろう」
アパートを出て、歩道を行く人々を縫うようにしながら進む。前から来る人がたまに驚いてるのがちょっとだけ気持ちいい。スマホのランニングアプリによると、今は時速二十キロくらい。マラソンランナー並みだけど、特に息が乱れたりはしない。
スイスイと気分良く人の間を風のように通り抜けていく。
「これならもっと速く走っても──おおっ!?」
──と、飛び出しいいいっ!?
「止まって止まって!!」
慌てて急ブレーキ。目の前にいきなり現れたスーツ姿のおっさんにぶつかる寸前で停止する。
「君、冒険者?ダメだよ公道で能力使ったら」
「あ、いや、走ってただけなんですけど……」
「それでもダメだよ!もし子どもにぶつかったらどうするの!」
「あー、そう、ですね。ごめんなさい」
よく見ると周りの目も若干冷ややかだ。どうも世間は冒険者に、というか自分たちの近くの冒険者に厳しいらしい。
大人しく電車で行こう……。
◇◇◇
「次は〜、北千住、北千住〜、お降りの方は──」
気を取り直して北千住。
よく考えたらピザとか気にせずに食ってんだし、電車賃ケチる意味もないな!
「えーっと、販売所は……あっちか」
構内に設置されている案内を見上げながら、矢印にしたがって進んでいく。これから仕事や学校に向かう人の波の中で、販売所へ向かう人はほとんどいないみたいだ。
冒険者は人類のおよそ二割、しかも時間に縛られるような仕事じゃないし、朝イチで販売所行くやつなんか俺くらいか。
今までのコンビニサイズとは打って変わってデパートサイズになった販売所を前にして、ちょっとだけ自分を腐す俺だった。
「あ、ここはマイナンバーカードかざさないといけないのか。よっ」
ピッ
無機質な音が響き、目の前の自動ドアが開く。
「おお……お?」
二十畳くらいの広々とした部屋に、観葉植物やらソファとローテーブルやらが置かれてて、奥にあるカウンターにメガネの女性が座ってるのは、受付かな?イケてる会社って感じだな。
「どういったご用件でしょうか?」
「あ、すみません。初心者向けの武器を一通り見たいんですが、大丈夫ですか?」
俺の言葉を聞いた途端、受付の女性の目がこちらを蔑む色に変わる。
「初心者向け、一通りですか……申し訳ありませんが、お受けいたしかねます」
「はい?え?なんでですか?」
「ここは総合販売所です。初心者向けを一通りなんて、コレクター目的の方によくあるんです。そういった興味本位な購入は迷惑なので。全ての冒険者へと道具を滞りなく販売する邪魔をされては困ります」
おおう……。いや、確かに冷やかしか悪ふざけに見えるかもしれないけど。それでもこっちは真面目なんだよ。
「そこをなんとか、遊び目的じゃないんです」
「そもそも、すでに鉈とメイスをお持ちのようですが?」
リュックから飛び出た持ち手を見て、俺の武器を当てる受付さん。ぐ、痛いところを……。
「いや、他の武器も試してみたいんですよ。お金は払うので」
「それなら、ここで買わずにご自身のクランで他の方に借りればよろしいでしょう?ご用件は以上ですか?」
話は終わりとばかりに、こちらから視線を外して手元の機械を操作する女性。
まいった。勝手に入ったらもっと揉めそうだし、まさか入り口で門前払いかよ。
つーか、俺クランに入れなかったんだよ。そういう人もいるだろ?想像力働かせろよ。
「ぐぐ……ん?」
なんとかならないかと考えていると、上の階がにわかに騒がしくなる。……なんだ?なんか、嫌な予感が。
「これは、あの方が?」
受付の女性も騒ぎに気付いたのか、上の階を不安そうに見上げる。
なんかヤダ、やばい!嫌な気分!
脂汗がだんだん浮かんでくる理由を探していると、その原因がドアを破壊しながらやってきた。
「あー!やっぱ恭平じゃん!何してんだぁ?」
「こ、小紅アキラ……」
そう、死神小紅アキラである。
とりあえず上から連れてきたヘッドロックしてる店員さん解放してあげたら?泡吹いてるよ。




