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Lunatica  作者: 八十八田 共太朗
1E.曇のち快晴
48/52

1-15-6 記憶(6)

…………。


……あら、ここ……どこ…………?


……太陽?

……周囲の景色が急に浜辺になっちゃったんだけど……?


行こうとした裏山もまるごとなくなっちゃったし、まさか……あの謎のレーザー光線の所為で別の異世界に来ちゃったわけっ!?


…………透き通った青空、穏やかな潮風、穏やかな波の音、遠くでカモメが鳴き、砂浜では蟹が走り回り、ヒトデは沈黙し、ヤシの実は波に押され…………まるで楽園……異世界ではなく、あの世なのかしら?


「逃がさないぜ。って、あれ、ジーナって、そんなに綺麗な大人のお姉さんだっけ?」


……メーヴェちゃんの所為だったのね。

…………って、どうやってこんなところに引き込んだのかしら?


ん?

大人のお姉さんって?


自分の手を見る。あの野暮ったくて鉄臭い機械の手じゃない。懐かしい、色白の手。髪は……白っぽい金色のサラサラヘアー……服は……何でディアマンドの民族衣装なの?


…………。


――――――ッ!!


「ちょ待って、あたい、全盛期に戻ってるぅーっ!!!?」



ん………………?

あれ……青空と白い雲……何の木だこれ?

ってか、地面が左右にフラフラ揺れる…………何でハンモックの上で寝てるんだ?


「ルピナスちゃん、おはよう。」


……どこからかプラムの声がする。いつもの脳内で響く方向性のない念話じゃなくて実際に口で喋ってるような声。

声のする方向を見ると、ノアがいつもと違う目つきでこっちを見ている。


「……ノア、どうしたんだ?」

「あたしノアちゃんじゃないよ。プラム。」


前傾姿勢で両手を頭にやり、蝶のようにパタつかせる。


…………?

えっ、何だ…………?


「お前……プラムなのか?」

「うん。言ってなかったけど、あたし、ノアちゃんによく似てるんだ。」


似てるどころか……透き通ったエメラルドグリーンの瞳から、小麦色の肌から、特徴的な薄緑色の髪から、何もかもが似ている。ただ、服装が踊り子の着るような服だけど少々豪華で、見た目はノアよりもやや大人というところか。


「んん? どこ凝視してるのかな?」


……胸は…………成長してもそこまでか。まぁ、別に…………。


「ねぇ、どこを――――」

「本当にプラムなんだよな?」

「本当だってっ!」

「…………そうか。なら、ここは何処なんだ?」

「……うーん……分からない。」


空を眺める。良い景色だな。ずっとここに居てもいいぐらい。

…………いいや、駄目だ。


「うわっ、どっ、どうしたのっ!?」


上半身を起こして自らの頬を両手で叩く。

ここが何処だろうと絶対に帰るんだ。アンたちみんなが待っている。

だが、帰る方法を見つけなければならないのに、それを阻止するように次から次へと何かが起こる。探すどころか、まともに寝れもしない。


…………それに、ノア何か特に、成り行きとはいえ、地下深くのあれにも頼まれてるし、何より一人にはしておけない。もし方法を見つけたとして、わたしはともかく、わたし以外の誰かを連れて戻ることは出来るのか?

………………それよりも、ノアはどこ行った?


「…………おい、ノアはどこなんだ?」

「……気付いた頃にはここで、見当たらなかったわ。」


そもそもここに来る前はどうしてたんだ……?


「こらーっ!! 解る虫まてーっ!!!!」


聞き覚えのある声が耳に突き立つ。


「解る虫ぃぃぃーッ!!!!」


甲高い大声のする方をよく見ると、赤っぽい金色の長い髪を携えた……何故か白黒のメイド服を来た女性が浜辺を走る小さな何かを追いかけまわしている。あの服の意匠にしても、あのシルエットにしても見覚えしかないんだが。


「全知全能の虫ぃぃぃーっ!! コハルさまの今晩のお食事っ!!!!」


それと声を合わせると、間違いなくテルミナだな。

何がどうなってこうなったのか知らないが、あいつも元の姿に戻ってるのか?


「行ってみる?」

「……行ってみるか。」


◇◇◇◇


「ねぇ、メーヴェちゃん、もういい?」

「なぁなぁ、もっと話そうぜ。ジーナの話、もっと聞かせてよ。」


困った。ここが何処のかも分からず、こういう場合はあんまり下手に動き回らない方がいいんだけど、見た感じとても平和な南国の世界だし、初期位置さえ覚えていれば軽く遭難してもなんとかなるわよね。なんとかなるのかしら?


「さてと。」

「何処行くんだ?」

「歩きながら話しましょ。」

「あぁ、いいぜ。」



「おい、何してんだ?」

「よっしゃっ!! とったどーっ!!!!」


緑色の小さなカニを捕まえて誇らしげな顔をしている。足元には他に赤いカニや黄色いカニがちょろちょろと走っているが、どれもトゥリシア近辺では見たことのない種類。毒とかないんだろうな?


「あっ、ルピナスじゃん。この解る虫はあげないよ。」

「いや、要らねぇけど……お前、テルミナなんだよな?」

「そうだよ。変なの。痛たたた……噛みつくなっ!! こいつっ!!」


テルミナの肌の色は石膏人形のような異様な白さはなく、顔のパーツも全て揃っている。口調の通り、元気でとても活発そうな表情をしている。なにより、カニの爪に頬を挟まれている。あの石膏人形なら恐らく……一応、体を動かすにあたっての支障は無い程度の柔軟性はあるにせよ、硬くて抓るなんてできなかった。


「カニ、海に投げ捨てちゃったね。」

「あんな危険生物、コハルさまには食べさせられないっ!!」


……放っといて先行こうか。


◇◇◇◇


広大な砂浜と清々しい青い海とジャングルぐらいで何も無いわね。強いて言えば、妙にやつれた人々がハンモックやデッキチェア、サマーベッドに寝っ転がり、ぼーっと空を見つめている。何なのここ?


「……ねぇ、ここって、あなたの仕業?」

「うん。そうだよ。」


さらっと言うわね。


「あたいの歌、聴いた人は眠っちゃうんだ。それで、あたいの世界に入るんだ。」

「…………どうやって出るんだ?」

「教えないぜ。」


……まるで夢魔の所業ね。それか古の魔物、セイレーンか。あたいは急いでたから早く出たいけど、そうでなかった場合はとても良い夢かもね。

夢魔は……いい夢を見させる魔族だから、この能力は……。


「あっちに誰か居るみたいだな。」


人ならあちらこちらに居るけど……あの人たちはその辺のやつれてしまった人ではないわね。

…………あれは……?



プラムはノアがするように、わたしにべったり引っ付き、テルミナは大きなヤシの実を二つ抱え、満足そうな顔で鼻歌を歌いながら砂浜を征く。

…………鬱陶しいな。


「ルピナスちゃん、そんな顔しないの。」


大きくなった分、余計に鬱陶しい。ノアの真似すんじゃねぇよ。


「それにしても、ユーリアちゃんも居ないのね。」


そういえば……本当だな。まぁ、別に居なくてもいいけど。

……あれ、コハルさんも居るな。何してんだろ。


「あれ、コハルさまじゃないですかっ!? コハルさま―っ!!!!」


テルミナはヤシの実を投げ捨てて駆け出す。コハルさんは膝に両手を付け、小さな誰かと話をしているようだった。

その小さな誰かは明らかに宙に浮いている。一体誰なんだ?


「イルミーネスさまっ!! あたくしです、アモールですっ!!」

「あの、わたくしはイルミーネスさまではありませんよ。ウフフッ、コハルと申します。」

「違いますっ!! 絶対にイルミーネスさまですっ!!」

「コハルさま、どうされたんですか?」

「あら……?」


コハルさんの前に見覚えのないピンク髪の短めツインテールで黒基調の服を着た白い肌のとても小さな女の子が一人。だが、背中には小さなコウモリのような羽がある。それに先がスペードのマークのような尻尾も生えている。この感じは小悪魔族だろうか。個体としてもかなり珍しいが、煌々と輝く太陽の下に居るのも珍しい。


「えーっと……?」

「わたくし、テルミナですっ!! お忘れですかっ!?」

「あたくし、アモールですっ!!」


コハルさんが混乱している。テルミナぐらいはシルエットで分かるかと思うが、案外分からないのだろうな。


「あっ、はいはい。テルミナさまですか?」

「よかったーっ!! 思いだしてくれた―っ!!!!」

「あぁーっ!! 魔族の女王たるイルミーネスさまに抱き着くなんて不敬の極みですっ!! あたくしも混ぜて下さいましっ!!」


二人揃ってやや困惑気味のコハルさんに抱き着く。なんの絵面だよこれ。


「……何だか凄い人と勘違いしてるわね。」

「魔族の女王……魔王イルミーネス……どこかで聞いたような記憶があるが……。」


昨今の案件の連続の所為で頭の中がパンパンで思い出せん……。

……アモールと名乗る、その小悪魔の見た目でふと思いだしたが、そういえば、アステラも居ねぇな。


「どうしてわたくしが、このようなバカンスの夢を見させられているのでしょうかね?」


…………こいつ誰だ?


「あなたは誰?」

「……目の前のルピナスさまなら分かります。ですが、あなたこそ誰でしょうか?」


口調からしてあの棒……いや、どっちかといえばあの角砂糖……グラモか。

あの燃える航空機の前でアステラを抱えていた、あの目隠しの女性から目隠しを取れば……似てるかもしれない。身長はアレよりもかなり低いし、髪型も左右に髪を丸めた団子があるし、服装も全く異なるが……。


「お前はグラモか?」

「はい、そうですよ。」

「お前、自分自身が人間になってることに気付いているか?」

「…………はぁ……そんなわけ……。」


グラモは自分の手を見る。服を見る。震える両手を目の前に掲げ、焦点が揃ってない手を見つめている。

あの体とその体で全く異なる気がするんだが……しかもあれみたいに浮いているわけでではなく、しっかりと地に足が着いているし、普通真っ先に気付くはずだが。


「こここここここここ……これはどういう事で……?」

「あたしも同じだよ。本当の事言ったらまたピギャーッてなるから言わないけどね。」


プラムはずいっと前に寄って両手を自らの頭の上に置き、蝶みたいにパタパタと動かす。

邪魔くさいから退かそうとしたとき、首元に小さく文字が書かれている事に気付く。小麦色の肌に黒い字だから近づかないと見えなかった。


EVA-    ?


……エヴァ? イヴ? ……末尾のマイナスはハイフンだろうか。そこから先は何も書かれていなかった。


「はぁ……何の真似ですか? 鳥ですか?」

「んー…………あっ、カブトムシ。」

「えっ…………む……し?」


グラモは人の姿となってなお、半濁点付きの平仮名片仮名ローマ字キリル文字デーヴァナーガリー文字ルーン文字古代ルナティカ文字などをギュッと圧縮し余計な成分を絞り出したような音波を、自身が出せうる最大の声量で増幅し、口からぶっ放してそのまま後頭部から倒れ、動かなくなってしまった。


全員が様々な表情でグラモの方を向く。


「イルミーネスさま、鼓膜の方は大丈夫でしょうか?」

「角砂糖が叫んだ時の声がしたんだけど?」


……まさか夢の中でこいつの声を聞くとは思わなかったよ。何てクソみたいな夢なんだよ。


「おい、プラム。」

「えへへ……ごめんちゃーい。」


……こいつ、何だかうっすらとあいつに似てる気がする。頼むから余計な事しないでくれ。

…………はぁ、アンデッド事件も終わった後だからいいけど……ゆっくり休みたいな。悪い夢じゃないから、一旦眠らせて貰ってもいいか?


◇◇◇◇


顔にかからなかったからいいが、背中は堆肥塗れになってしまった。クソムシは糞じゃないとは言ってるから、まぁ……いいんだが、このままだと背中の傷から中に入っちまう。


「ふむふむ…………解りました。いえ、解りません。この堆肥、この土壌の環境……コハルさまにお伺いしましょう。」


“あらあら、ユーリアちゃん、堆肥の塊に埋もれてるわねぇ。どちらでもいいからら拾ってあげなさい。ね?”


何でアタシが拾わなければならないんだ。


「あっ、わたくしがやります。ルーナディアさま、洗浄を行いますのでしばしのお待ちを。」


……クソムシはユーリアって言ってるのに、こいつはルーナディアって呼ぶんだ?


“器の名と魂の名があって、世間一般的に呼ばれている名、あなたのパロマって名は器の名前。大体の人は器の名前と魂の名前は一致しているんだけど、この子とルピナスちゃんは一致していない。器はともかく、魂についてはあんまり知らないから分からないけど、出生の時に何かあったのかもしれないわね。”


……興味ねぇな。違っていた所で害があるわけでもないんだろうし。


“害もあるにはあるけど、得点の方が大きいわね。出生時に精霊の祝福を受ける時に二重に受けることになるから、出生時に火属性しかなくても、もう一度の祝福の時に風属性と土属性を得るかもしれないから得なのよ。”


どこで得た知識だよ。とんだチートだな。まぁ、興味ねぇけど。

………………意図的に器と魂を分離させて態と二重に祝福を受けるように仕向けることって出来るのか?


“過去にはそういう研究があったわよ。でも、一度死ななければならないからね。精霊に祝福された岩屋や洞窟が世界各地に発見されてからそれも無くなったわ。”


岩屋……貴族どもが独占してる精霊の別荘か何かの洞窟か。何の修行か分からんが、あの中に籠って修行をすれば祝福を得られると聞いたが、その程度で得られたら、何も持ってないあいつ等のような苦労も無いんだがな。


“……貴族の独占か。どこの権力者も、考えることは同じなのね。”


「あの、どうされたのでしょうか?」

「堆肥は取り除きましたが、酷く変色していますね……。」


“真っ黄色になってるわ……。濃い肥料ねぇ。どこか水が出る所は無いのかしら?”


「井戸は埋まってしまいましたので……。」

「水でしたら、大気中の酸素と水素を1対2の割合で錬金すれば可能です。」


……言ってることが無茶苦茶過ぎないか?


“流石は一流の錬金術師ね。”


そういえば、こいつ独り言で何か言ってたな。


「ですが、これには大量の酸素と水素が必要になります。わたくしは風属性が使えませんので、水滴程度しか作れないでしょうし、完全にとなれば追加で火属性が必要になります。」


“雷属性で代用出来るでしょ?”


こいつから雷で代用するという言葉が出ないという事は、単純に危ねぇということでは?


“それもそうね。雷属性の細かい制御は並大抵の能力じゃ、ユーリアちゃんでもなければ無理ね。”


マジかよ、このちんちくりんが……?


“見た目で判断してはダメよ。というか、あなた自身がそう――――?”


クソムシは目を赤く染めて、あの教会の壁の穴の方を向く。ほぼ同時にウサギ野郎は眉を顰め、ウサギの耳の穴を後方に向ける。


”シッ、全員静かに。…………教会内に誰か居る。”


「あの、どう――――」

「コハルさま、お静かに。」


…………確かに、あの壁の穴の方から独特な…………魔力なのは分かるが、あれは…………?


“今、とても濃い闇属性の何かが動いた。”


「…………アンブッシュですか?」


“魔物の待ち伏せというよりも発生かもしれないわ……いいえ、あの井戸の件を入れると待ち伏せもありうるかも。ユーリアちゃんは一旦置いといて、少し手を貸して。”


◇◇◇◇◇


寝室へ繋がる割れ目へ移動する。背後にはボロボロのパロマちゃんと全身真っ茶色のサンディちゃん。ユーリアちゃんがいれば完璧だけど、足りるかしら。


中を覗く。

コハルちゃんがぼーっとした顔つきで立っていた。立って、北側の壁を見つめている。その体には溢れんばかりの闇の魔力が渦巻いている。

この感じ、あの時の、ソウルゴーレムと対峙した時に教会の方に落ちた光と闇が混ざり合ったような雷に似てる。コハルちゃん……では無いわね。間違いなく。


「…………イルミーネス……さま……?」


“あなた、何か知ってるの?”


「……いえ……。」


サンディちゃんはウサ耳を力なく垂らし、体が僅かだけど震えている。

この子は一度、いや、何度か会ってるのかもしれないわね。

……雰囲気、その危険な程の闇の気を除いて、わたしには害のあるような感じは一切しない。

それに、そのイルミーネスという名、間違いでなければメテオリティスの地を治める魔族の女王、イルミーネスと同じ。その変わった名からして同名は非常に少ないはず。


……虚ろな目は開き、体が動いた。気が付いたわね。チャンネルは……コハルちゃんと同じかしら。


「……あら、わたくし…………。またコハルさまのお体を……。」


“コハルちゃんじゃないのね。あなたは誰かしら?”


「あら…………お労しや……。あなたは虫に変えられているようですね。ごめんなさい、わたくしに戻す手段は持ち合わせておりません。」


通じたわ。

……それって、さっきの器と魂の話と似ていて、器はこの通りコハルちゃんとイルミーネスさんが共用で、魂までも同様に共用ということになる。

即ち、二人は魂も混ざり合い、一つになっているということ。念話は魂の方を参照するから全く同じということは……わたしが目を通した文献が正しいのであれば、絶対に無い。


“それはいいわ。もう諦めてるし。ところで、コハルちゃんの体を勝手に使ってるようだけど?”


「わたくしはイルミーネスと申します。あの……わたくしは……その……。」


……サンディちゃんは身を引いてパロマちゃんの背に隠れるようにじっと見つめている。

…………なるほど。何故コハルちゃんを狙っているのか、話そうとしなかったら、あんまり詳しく話を聞かなかったけど………………現魔王と、恐らく前魔王のイルミーネスさんとの間で何か……そしてサンディちゃんは――――


「わっ、わたくしはメテオリティス国の前魔王……あの……その…………イルミーネスと申します……。」


急に大声で自己紹介を始める。それも前魔王の付近で急に声が小さくなり……そして俯く。


「……魔王……?」


魔王……ねぇ。登場して早々、色々ぶっ飛びすぎてるわねぇ。びっくりするほど魔王感無いし。


“あの……何故コハルちゃんの体を?”


「わたくしの体は、現魔王■■■■により滅ぼされ、そして気付いた時にはわたくしに瓜二つのコハルさまの体の奥深くに居りました。」


名前にはジャマーが掛けられているわね。その言葉をその本人を指して使用する際は誰が喋っても聞き取れない、どの属性にも、無属性にすら属さない非常に高度な魔法で、1000年以上前に一度、神々が降臨した話が記された古文書に名前はどうしても聞き取れなかったって話が記されてた。多分、これかも。


……しかし、コハルちゃんとそっくりって……当然それだけでは通用しないわ。偶然にしても……器が全く同じであれば引き寄せられることがあるとは言っても……。

…………コハルちゃんはオルビスだわ。製作者は全く不明だけど、イルミーネスさんに関連する人物が作ったの?

確か…………珍品好きのエトランジュ公爵邸に保管されていた文献では、オルビスはかつて人であった魂が憑依すると書いてあった。アンドロイドの類のように中身までも作られているというわけじゃない。


「原因は分かりませんが、コハルさまが眠っている時に、体内に蓄積された闇の魔力を消費して現世に現れているようなのです。」


ちょっと待って。

……………あれだけやっちゃ駄目って口酸っぱく言ったはずの集落の人々への治療で闇属性の魔力が蓄積、それも90%超過してたのが……今、まさに、徐々にだけど減っている。それに、この感じと口調からして……。


“もし……だけど、前にコハルちゃんの体を使った?”


「あっ……はい。そうです。あの時は、現魔王と、この地の底に埋まっていた邪な者から守るために手一杯でしたから、どうしてコハルさまのお体から、わたくしが顕現したのかは……分かりません。」


……蓄積量が非常に多い状態で維持した時に、感情の昂りか何かが重なった際に出るのかもしれない。

コハルちゃん自身、激昂するとかそういうことは全く無いから何がトリガーかは本当に謎だけど……いいえ、だーいすきなものを触ってるときは物凄く興奮してるわね。うん。

それでならないということは、内的なものではなく、外的なもの……かしら?


「ところで……皆さん、眠られているのでしょうか? テルミナさまに至っては……。」


パロマちゃんの足元でぶっ倒れてるし。体の周りを白い線で引かれて、アルファベットや数字の書かれたプレートが置かれていても何ら違和感が無い倒れ方だわ。まぁ、単純にあの遠くの歌声で眠らされているということなんだけど……イルミーネスさんはコハルちゃんと違って魔王というだけあって、耐性はあるのね。


“ん? テルミナちゃんの名前を知ってるの?”


「はい。テルミナさま、ユーリアさまとご一緒しておりました。」


あの時、地下の施設では既にコハルちゃんだったけど、イルミーネスさんが引っ込んだ直後だったというわけか。

テルミナちゃんに話を聞きたいけど、起きなさそうだし、仮に起きてもわたしとはまともに会話してくれなさそうだから、あの状態でもユーリアちゃんを起こして合わせた方がいいかも。


“サンディちゃん、ユーリアちゃんを…………サンディちゃん?”


「気配がねぇと思ったら……あいつ何処行きやがった?」


…………逃げたわね。あの戦い方が出来るほど瞬時にデバイスに入れる能力があるんだからきっとどこかに設置したデバイスに入って、手すりでもナナフシの振りでもしてるのかもしれないわね。


まっ、でも仕方ないか。イルミーネスさんに対して恐れてるように感じてる様だったから、合わせない方がいいかも。

だけど当のイルミーネスさんは、あの見え見えの状態で別に何かに気付くような振りは無かったし、向こうからしたら知らないことなのかもしれないし、鋭いサンディちゃんもこのぐらいは気付いてそうだから、別にそこまでしなくてもいいとは思うけど。


「サンディ…………さま?」


“あら、その名について何か知っているようね。”


「はい。かつて、メテオリティスの地にヨナさま……遥か西方の地からやって来られた兎族の賢者の方が居りまして、そのヨナさまは先天的に子を成せる体では無く…………これ以上言っていいのか分かりませんが、世界の端から端まで、様々な術をかき集めサンディさまを作り上げたのです。」


“それが……そのサンディちゃん?”


「あっ、いえ、名前が同じであるのと、兎の耳がございましたので。あと、ヨナさまの面影がございまして……。サンディという名は多いので人違いでしょう。おそらく。」


“じゃあ、アイビーという名はサンディちゃんに関連してるかしら?”


「あっ…………。あの……アイビーさまは後にヨナさまがお引き取りになった猫族の女の子でして……。あっ、はい。孤児です。」


ストレート、いやフラッシュ……………フルハウスかな?


「猫族……あいつはアタシが咄嗟に思いついた名前を付けただけで違うだろ?」


“もしかして、黒髪じゃなかった?”


「あっ、いえ、短い黒髪で、とっても…………口調が男勝りといいますか、あと、獣人だけに非常に力が強くて……いえ、親は分かりませんので何に似たのか分かりませんが強過ぎる感が……。あぁ、あと、物凄く機械に強くて何でも直してしまうのですよ?」


ロイヤルストレートフラッシュかしら。


「マジかよ……。」

「ですが――――」


小声で呟く。まだ続きがあるのかしら?


「いえ、これは……あっ、聞かなかったことに……。」

「…………?」


イルミーネスさんは伝えるかどうか迷う素振りをする。ですが……の後に重要な何かあるのだろうけど、三人の何れに……サンディちゃんの行動に関することに関連する何かが……いいえ、今はやめておきましょう。自称ではあるが魔族の女王、そしてコハルちゃんと同等の異常な程の魔力、何が起こるか分からない。あの白黒スパイラルの落雷の黒は間違いなくこの人からだし。


“パロマちゃん、この人を味方に取り入れたら心強いけど、話がややこしくなる惧れがあるわ。何より、この人の力……鑑定で見れないから分からない。弱くても強くても大変。”


鑑定しようにも、どうもコハルちゃんの魂が上方にあるおかげでそっちが優先される。恐らく、能力的には同じなのかもしれない。想像でしかないが、そうでなければ弱い方の魂が食われてしまうはず。

これに関しては似た例は多い。有名どころだとスライムの核あたりが分かりやすいかも。

他にも白黒スパイラルの雷もそう。光と闇が一定の比率で混ざり合ってたもの。互いに相対する性質上、僅かでも違いがあれば、どちらか弱い方がかき消される。


「あっ、あの、ところで、何故アイビーさまのことを?」


“サンディちゃんが言ってたのよ。ところで、そのサンディちゃんが逃げちゃったけど、何か心当たりある?”


「なぜこのような場所に……。ここは恐らく、時の監獄。トキワタリから追跡を逃れるための時の狭間。わたくしも何故このような場所に……?」


トキワタリ、あの時空の管理者の集まりか。属性の中にチートの極みである時空魔法がある以上、この大宇宙が生まれた時から、どこまでかは分からない遠き未来に至るまでの全ての時系列を管理し制御する集団。それなりに時空魔法を扱うわたしですら名前と、大樹と末広がりな根っこがエンブレムであるということ以外よく知らないし、胡散臭いイメージしかないけど……へぇ、ここが電磁波遮断ならぬ、時空遮断のねぇ……。


“その話、興味あるわね。時の監獄と、そのトキワタリで分かることを教えて欲しいんだけど?”


「おい、今それどころじゃないだろ? 確かに、同じ時空魔法を扱うモンとしては知っておきたい話だが、あの野郎……サンディはどうするんだ? それにアイビーも記憶喪失なんだ。あいつに付いてもっと聞くことがあるだろう?」


“まぁ、そうだけどね……。あなたがここから出る鍵を持ってるかもしれないし。”


「えーっと……。とっ、とりあえず、トキワタリから――――」


ブツッ。


…………今の脳内に走った電撃のようなものは何?


「ッ…………。クッソ……なんだこれ…………。おい、クソムシ、お前何かしたかっ!?」

「なっ、なんでしょう……今、頭の中で火花のような…………?」


…………。


「…………。」

「…………なっ、何だ?」


何話してたんだっけ?


『うぉわぁぁああああああああっ!!!! ぬごわぁっ!! くっせぇぇぇえええええええっ!!!!!!!!』


“ユーリアちゃんが起きたわね。”


「あいつ……耳に突き刺さるような声出すなっての。耳が痛ぇ……。」

「あっ、いけません。今すぐに洗浄魔法を施します。」


闇属性版の洗浄魔法なんて存在するのね。

コハルちゃん走りでテコテコと汚泥塗れのユーリアちゃんを拾い上げてコハルちゃんがするように指先に濃い紫色の光を灯す。効果は同じなのか、みるみる内に

キレのある白さと黒さを取り戻す。

ただ、伸びきった宿主はそのまま。また気絶したのかしらね。よく倒れる子だわ。

カムバック出来る治癒魔法を持っているのか、施そうとするので止める。


“これ以上は魔力の無駄遣いだからいいわ。”


「大丈夫なのででしょうか…………?」


“何かの衝撃で生き返るわ。この堆肥以上の臭いで何度も気絶しては生き返ってるし。”


左手でユーリアちゃんを抱え、右手で額を触れて怪訝そうな顔をする。まぁ、常人の発想ならそうでしょうね。

………………しかし、本当に…………魔王さを感じないわね。フィラーも疑問符も多いし、何より口調がコハルちゃんのそれだし。威厳が全くない。


“いっ、いけません…………うわっ!!!!”


サンディちゃんの念話が飛ぶ。同時に屋根から白煙を上げる何かが転げ落ち、火花を上げたと思ったら破裂して部品をまき散らした。更にそれと同時に目を回すサンディちゃんが転がり出てきた。昔よく見てたアニメで出てくる、ボールから飛び出すモンスターみたいね。懐かしい。


「……何してたんだ? アイツ。」


“アンテナの振りでしょうね。きっと。”


「あらら、酷い汚れです。お待ちください。今、参ります。」


献身的な魔王様ねぇ。わたしのイメージしてた魔王とは偉い違いだわ。献身的といえば、北エーテル大陸の魔族の地の女王も、エルフが大半を占めるからか他の大陸の魔王と比べれば優しい方だけどここまでじゃないわ。

……目を離した隙にメリハリのある白い髪色に戻っていた。しかし、白いウサ耳は垂れ、ユーリアちゃんと同じく目を回したまま。


「…………あの、サンディさまもそのままと、言うわけではありませんよね?」


“えぇ、そのままでいいわ。”


眉間にしわを寄せ、口を三角にして、何でって言いたそうな顔をする。コハルちゃんなら……しなさそうな顔ね。ようやく違いが見えたわ。


「……お前、何というか、手厳しい野郎だな…………。」


パロマちゃん、違うわ。だって、魔力が勿体ないんだもの。いいえ、体内に蓄積した闇属性を消費してるので大歓迎だけど、聞きたいことも、色々と協力してほしいこともあるんだもの。

……どうしようかな。リスクを取ってでもアイビーちゃんの件を話すべきか。


「では、サンディさまとユーリアさまをお部屋にお運びします。」


“アステラちゃんの横が空いてると思うからそこでお願い。”


「承知しました。」


あー……アステラちゃんも厄介なことになってるみたいだから、やること多いわ。


“ねぇ、やっぱりアイビーちゃんの事話してみるわ。”


パロマちゃんが腕組みをして視線を左に寄せたり上に寄せたり、何か不思議に思うことがあるのかしら?


「あぁ? いや、頭ん中で静電気みたいなのが走るちょっと前に、あの女が話してたこととか、お前が訊きたそうにしてた事とか、あったような気がするんだが……?」


“………………? いや、別に何も……?”


何かあったかしらねぇ? 身の上話とか? メテオリティスなんて今や上京組

の話を聞く程度しか知る由もないから、こういう偉い人からは濃い話が出来そうだから、訊きたいこともあるけど……?


…………もしかして、想像だけど、あくまで想像だけど、わたしたち、誰かに記憶操作に遭った?

この感じだとイレース系のようなやんわりしたものではない。すっぽり抜け落ちるのは間違いなくデリート系。それも、デリート系は至高のXYZ級ですら操作を誤ると廃人にしてしまうほどの恐ろしい禁忌指定の時空魔法。カオス級かコスモス級か知らないけど、一体誰が?

…………そう仮定すると、パロマちゃんがそれをレジストする程の能力を持っているということが…………欲しいわ。本当に欲しいわ、この子。


“パロマちゃん、わたしの弟子になって欲しいの。”


「はぁ???? てめぇ、いきなり何だ? 寝言は寝て言えクソムシが。」


だわねぇ。そうよねぇ。やっぱりねぇ。今すぐに土下座して懇願しなければならないのにフンチュウだから出来ないわっ!!

やっぱり諦められないっ!! 戻りたいっ!!!!


「ただいま戻りました。 ……あの、どうされましたか?」

「あっ? あぁ、キメェけど気にするな。つーかマジでキメェから仰向けになって足ガチャガチャさせんな。体も左右に振るな。」


あー、欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しいっ!!!!

いや、待って。そんなに強い時空魔法が使えるんなら、あのクソバトも突破出来るんじゃない?


「うわ…………急に裏返りやがった。」


“ねぇ、今のあなたならあのクソバトを上回れると思うの。”


「あぁ? アタシにあいつを出し抜けって言うのか?」


“えぇ。完璧ではなくても、イルちゃんとわたしとサンディちゃんとユーリアちゃんが居れば押し通せるわ。”


「いっ……イルちゃん……。」

「お前、こんな感じでも一応魔王だろ……。余りにも失礼だろうが。」


一応って、あなたも大概だと思うわ。まぁ、魔力を除くと魔王感ゼロだから仕方ないけど。


「あっ、いえ…………ウフフッ……わたくしとしては嬉しゅうございます。でも出来れば、わたくしの真の名はミーナですので……あっ、いえ、ごめんなさい、わたくしったら、なんと厚かましいことをっ!」


コロコロ表情が変わり始めた。これも終始笑顔をほとんど崩さないコハルちゃんとは違うわね。面白いわ。


“じゃあ、ミーナちゃんね。”


顔がボンッと真っ赤になった。これ、いいわね。いまだかつて、魔王をここまでイジり倒した人っているのかしら。わたし、フンチュウだけど。


「クソムシ…………こんなのが本当に魔王なのか…………?」


“魔王にも色々あるのよ。皆が皆、極悪非道な奴らばかりじゃない。そもそも、単なる魔族の王なんだから、こういうものよ。というか、こんなの呼ばわりは失礼の極みよ。”


さて、ミーナちゃんが居る間に作戦会議をしておきましょう。当然、この盗聴防止用の防護魔法は展開した状態でね。



◇◇


ん…………知らない、天井……青天井だ。


「知らない、青天井ですね。」


見知らぬ青天井。

どこまでも広がる透き通った青い空、クジラのような巨大な白い雲が右から左へ。初夏のさわやかな風が気持ちいい。

あたしの横にはマリンブルーのサイダーが注がれたグラスが一つ。蝶の口吻のようにくるりんと曲がったストローが可愛らしい。


「さぁ、知らぬお隣さん、この美しい空に乾杯といこうじゃないか。」

「そうですね。わたくしもそう思っていたところです。」


左隣のお隣さんは右手で持ってきたので、普段は右だけどサービスで左で持っちゃう。あたし実は両利き。機器や器具を使ったりするのは右手、それ以外は左手。茶碗は左手、カップは右手。文字は気分次第。


グラスとグラスが交わり、氷がカリンッと音を立てる。

あぁ、透き通るようなマリンブルーも綺麗だなぁ。あっ、ラボの鯖の冷却器チューブの交換とクーラント入れ替えやらないと。

……あの地獄絵図を思い出したと同時に青いサイダーがゲテモノと化した。クーラントは甘い毒です。決して口にしてはいけませぬ。


…………あれ…………?


…………待って、なんであたし、ちゃんとした人の手付いてんの?


「どう致しましたか?」

「えっ、ちょっ………………。」


サマーチェアから立ち上がり、手足体を見てサイダーを一気に飲み干す。

マジか。元の体に戻ってやがる。どういうことだ? どういう理屈だ?

つーか、ここ何処だっ!?


「あっ、あの、どうかされましたか?」


……………待って、お隣さん、もっっっのすっっっごいきゃわっきゃわなウサちゃん人間じゃん。ヤバい、悶え死ぬほどかわいい。えっ、待って、マシでヤバい。可愛すぎて死ぬ。死ななくても過呼吸でチーンしそう。チーン♪


「グラス、落としましたよ。砂地だから良かったですが……。」

「…………あたくし、ユーリアと申します。ちっ、チミの名は?」

「チミの名はって……ん? この声、ユーリアという名、あの時見たお写真と同じ姿……。もしやルーナディアさまですかっ!!?」


ルーナディアって…………っ!!


「コメットちゃんっ!!!!?」

「…………の中身です。」


待って、こんなきゃわっきゃわのきゃわりーんな子に跨って飛んでたってのっ!!? マジでマッ!!? マッ!!!!?


oh マンマミーア…………嫁に貰う前になんてプレイをしてしまったんだ……。


「何で腕組みして明後日の方向に向いてるんですか?」

「うっ、うん。何でもないよ、気にしないで……くれたまえ。」

「何故語尾だけ……。」


直視したら恥ずか死ぬ。同じ女の子同士、別に良いじゃないかと思うが、そうはいかない。そうはいかないのだ。


「…………ずっと向こう、人が集まってますよ。あれは……ソラリスさまですね。横の方は、少し背が高いように感じますが、エレノアさまでしょうか。」


えっ、ノアちゃん?

……ソラリスって誰だっけ?


「あー……あの金のツインテと黒服のちんちくりんはあいつだなぁ……。もう一人、ちょっと背の高い金髪ツインテールも居るけど……。」


……輪郭からしてテルミナちゃんのように見える。元の姿に戻っているということは、あの子も元に戻ってるのかも。


「見に行ってみようか。」

「それは構いませんが、もし可能であれば、わたくしが誰なのか、黙っていていただけると助かります。」


……どういうこと?



あぁ、サマーチェア取りに戻るのが面倒くせぇ。とはいえ、砂地で寝たくねぇしな。仮に水着であったとしても、直接は良くない。


「あぁ~疲れた。良い空模様ね。服全部脱いで海に飛び込んでいい?」

「やめろ。今回はあきらめろ。」


つーか、ノアみたいな見た目しやがってるし、脱ぐんじゃねぇ――――


「だーれだ?」


急に景色が暗転しやがった。両目を誰かが押さえてやがる。プラムならやりそうだが、さっきまで波打ち際まで寄ってたからワープでもしないと無理だ。


「だーれだって、言ってんの。このバカ犬。」


そもそも声質が違う。この声には聞き覚えがあるがノイズや電子音が全くない。

それを抜きにすると…………。


「んんー? 可愛い女の子が居るわね。横のウサギの子も可愛いわね。」

「あらら、どこから来られたのでしょう?」

「イルミーネスさま、こんな方々よりアモールを見てくださいっ!!!!」


…………間違いなくユーリアだな。

ってか、この目を押さえてるの、触手でもなく、手だな。


「おい、ユーリアも戻ったのか?」

「チッ、つまんねぇ野郎だな。」


振り返ると、わたしと背丈が同じで…………イラッとするぐらい可愛い顔した奴がそこに居た。

…………隣のウサギの耳が付いた、輪をかけて可愛いらしい女は誰だ?


「ふふーんだ。これがあたしの真の姿。どう?」

「えっ!!!!? 師匠っ!!!!?」


ユーリアはテルミナに脇を抱えられ連れて行かれた。ざまぁ。


「ちょいちょいちょいちょいちょいちょいちょい待てぇっ!!!! ってか、予告無しに持ち上げて振り回すなっ!!!!」

「あぁ~♡ 師匠ぉ♡ お愛しいお姿で……。」

「テルミナちゃんっ!!!! かっ、可愛いけどお願いだから今はちょっと待ってっ!!!!」


テルミナは何度も口づけしながらぶん回されてる。

まぁ、いい薬だわ。


「ところで、そこのあんたは誰だ?」

「わっ、わたくしですか? わたくしは……えーっと……。」


自分の名前が分からないなんて、記憶喪失か?


「うわぁ……ひどい目にあった。おぇぇ……。」

「人体なんだから出るぞ。吐くんじゃねぇ。」

「あの、ルーナディアさま……。」

「ん? どうしたの?」


兎族の少女がユーリアの耳に口を近づけてコソコソと話してる。

というか、この二人は知り合いか?


「じゃあ、えーっと、どうしようかな……じゃあ、この皆を導く美しい太陽、そして癒しのバケーション…………サンディでいい?」

「えっ、ちょっ!! ちょっとそれは……。」


…………兎族の方の顔が真っ赤になったぞ。大丈夫か?


「えーっと、この子はサンディちゃんって言うんだ。」

「あっ、えー………………サンディです。」


めっちゃくちゃ声が小さくなったし、俯き気味なんだがな。


「あっ、あぁ。わたしはルピナスだ。」

「よっ、よろしく……お願いします。」


…………。


会話が続かんな。これはこいつの所為じゃなく、ユーリアの所為な気がする。


「…………ルーナ……ユーリアさま。」

「どうしたの?」


サンディはユーリアの手を強めに握ってどこかに歩いて行ってしまった。

しかし、夢の中でもウサギか……。何なんだよ、ここは。


「師匠~……もっとキスキスブンブンしていたかったなぁ。」

「ユーリアちゃんもサンディちゃんも、可愛い子だったね。」

「あぁ、まぁ、そうだな。」


◇◇


「ねぇ、手痛いから、そんなに強く握らないで。」


何だか怒った彼女に腕握られて路地裏に連れて行かれる彼ピみたいな構図。

あたし、何か変なこと言ったかな?


「ここなら大丈夫ですね。誰も、着いてきていませんね?」

「あっ、うん。誰も居ないよ、どうしたの?」


あたしは大きなヤシの木を背にコメットちゃんに詰め寄られる。壁ドンならぬ、木ドン。ヤシの木ドン。ヤシの木をドーン。アパートの隣の人に怒られないクリーンな壁ドン。アパートの壁を突き破らないスマートな壁ドン。アパートを倒壊させないセーフティな壁ドン。新感覚の極み。


「ルーナディアさま、わたくしの名前、取り急ぎ付けて頂けたのは感謝致します。」

「あっ、うん。もしかして、気に入らなかった?」

「いいえ、何をどう、何をどんだけぶん回せばあんなストレートフラッシュが、いえ、ロイヤルストレートフラッシュが起こるのですかっ!!?」


どっ、どういうこと?

その時、あたしの直ぐ横をヤシの実メテオが通過して木の幹に当たり飛び跳ねて転がる。転がるヤシメテオは運悪く通過中のカニを押し潰し……あっ、砂の中に埋もれただけだった。良かった。


「言うつもりはありませんでしたが……あの人に知れた以上どうせバレますから言いますが、わたくし、本当の名はサンディと申します。」


えっ、マジ?

えっ、えっ? マッ!?


「もう一度言います。わたくしはサンディと申します。以後、お見知りおきを。」


ストレートアップをドンピッシャーンしちゃったってこと?

一生分の運を使い切ったような気がする。


「…………ねぇ、サンディちゃんはドロップアイテムじゃなかったの?」

「それについては、またローリエさまが居られる時にお話致します。」


ローリエさん、あたしの知らない間に一体何を話したの?

早くここから出て話を訊こう。


「ねぇ、ここって何処なの? 夢の中にしてはリアル過ぎるんだけど。」

「…………遠くから眠りを誘う歌声が聞こえたみたいなのです。恐らくその所為でしょう。」


……確かに薄っすら聞こえてたけど、別にそれで眠くなったりしなかったけどな。

…………というか、今も、波の音に交じって何かが聞こえる。


「…………ジャングルの中から、女の子の声がします。」


……悲鳴でもない、歓喜の声でもない、何だろう、この妙な感じ。それに、ここだけ、ジャングルの奥地へと続く獣道がある。野生生物や魔物に連れ込まれた……?


「誰か迷い込んでるの?」

「……可能性があります。ですが、この奥にもしかすれば遊び場があるのかもしれません……かなり鬱蒼としておりますので可能性は低いですが。」

「行ってみる?」

「そうですね。人の声を真似する鳥であっても、それはそれで、戻って来られないほどでは無さそうですし、そもそもの話、この世界自体が非常にリアルな夢の中でしょうし、どうにでもなります。」


……どうにでも……なるのかなぁ?


◇◇◇◇


うーん?

あれは……もしかして、ルピナスちゃん?

……ノアちゃんにコハルちゃんも。横の黒っぽい服の小さい子は知らないけど……あのルピナスちゃんとは違う金髪ツインテールの給仕服の子は……あの感じ、何となく見覚えがある。


「知ってる人?」

「えぇ、半分ぐらいはよーく知ってる子。あなたのいい話し相手になるわ。」

「ほんとかっ!!?」


メーヴェちゃんは手を握りしめ、正の感情の全てが顔から全身から溢れ出る。

大海の魔物に襲われ、海賊船が沈んで、一人だけこの世界に引き込まれて……余程寂しい思いをしたのね。

両手を広げ、砂浜を駆けだす。


「メーヴェちゃんっ!! 走ると危ないわよっ!!」

「いでっ!!!!」


ほら言わんこっちゃない……というか、単純に転けたのではなく何か衝突したような感じというか…………。


「いっでぇぇ…………。」

「…………なにこれ?」


透明な壁のようなものがある。


“これ以上、進めません。”


「あっ、何か聞こえた。これ以上進めませんって、どういうこと?」

「あーっ、何でここが夢の端なのっ!?」

「夢の端?」

「ここって、あたいの箱庭の一つなんだ。でも、こんな中途半端なこと、初めてだよ。」


箱庭って……その文字の通りなら相当高位な時空魔導士が持つプライベート空間よね?


「あなたって、時空魔法も使えるの?」

「よく聞かれるけど、あたい、水しか使えないよ。」


メーヴェちゃんは壁をドンドン叩いてる。まだ少し距離はあるからあの子たちは気付きも……あっ、ルピナスちゃんが気付いたわ。



あー、怠い。

太陽が明るすぎてウザい。アモールと名乗る子の声が高過ぎて耳に刺さる。いつの間にかチャンバラごっこを始めたプラムとテルミナがうるさい。


「師匠ッ、あの時の腕はどうしたんですかっ!?」

「えっ、だからあたしはノアちゃんじゃなくてプラムっ!!」

「海、綺麗ですね、イルミーネスさまっ!!」

「そうですね、アモールさま。」


…………グラモは気絶しっぱなしだけど大丈夫だろうか?

……ヤドカリが服の袖を引っ張ろうとしている。そのままほっといたらフナムシでも中に入りそうだ。それはそれで、もう一度あの悍ましい悲鳴を聞くことになる。


「おい、起きろ。」


……夢の中で起きろって言うのも新鮮だな。夢の中で寝るとか気絶するってどういう気分なんだろうに。


……何か分厚いアクリルの板を叩くような音がする。

音のする方に…………誰だあれ?


「すごい、どっちもすんごく綺麗な人。」

「師匠、まだ稽古の途中ですよ? ……誰、あの人?」

「横のすごく背の高い女性、あれ、知ってる。アルビノのダークエルフね。」


ライトエルフやハイエルフと、そのアルビノのダークエルフの違いが分からんのだが。

しかし、白に近い金色の長い髪に白い肌、やや大きい胸に、変わってるけど美しい衣装……けど、何だろう。雰囲気はそうでもないが、あの人、こっち側の人かもしれない。


「あの衣装はディアマンドの民族衣装、その中でも特に騎士が身に着ける衣装ね。しかも結構高位の。」

「あの国か。もう無いけど、エルフの国で、ダークエルフが多かったって聞いたな。」


そういえば、あのクソダヌキもそこだな。まぁ、あいつも顔は悪くは無いが、えらい違いだ。


「へぇ、強そうね。横の小さい子も……何だか足を貰った人魚を見てるようね。」


あぁ、何かに似てると思ったらアンに読み聞かせしてた物語に出てくる人魚姫か。衣装がこの前読んであげた物語に出てきた女海賊っぽいから……両方足したらそうだな。そんな感じ。

……つーか、さっきから空中をガンガン叩いてるけど……大丈夫か?


「でもあの背の高い人、何だろ、何処かで…………何というか、戦ったことある気がする。」


……初対面のはずだが。もしかして、本来の姿の時に一度出会ってる?


「こらーっ!! もう一度わたしと戦えぇーっ!!」

「おい、走んなっ!! 足元カニがちょろちょろ走ってんぞっ!?」

「くるるぁーっ!!!! ぐふっ!!!!」


鈍い音と共にその方向に映る雲や砂浜が振動する。分厚いアクリルの板にでも衝突したような音。

テルミナは仰向けで倒れ、頬を抑えてじたばたする。当たった所を手で触ると、確かに透明な壁がそこにあった。


壁のずっと向こうに居る人魚姫似の子は笑顔で大きく手を振り、背の高い方は微笑み、小さく手を振っている。

…………背の高い方、全く見たことが無いはずだが……不思議と会ったことあるような、妙な感じ。誰だ? 誰なんだ?


……背の高さは……絶対に違うと思うがジーナに近いんだよなぁ。


◇◇◇◇


まさか、ツインテールちゃんがメーヴェちゃんと同じことするとは思わなかったわ。

だけど、はっきりと正面から見た感じ……あの感じ間違いなく、テルミナちゃんだわ。コハルちゃんの力をドーピングしてあたいを圧倒した、あのテルミナちゃんだわ。可愛いけど、凛々しい顔。この生身でもう一度剣を交じえたいわね。


フフッ、声は通じてないみたいだし、砂を使ってあたいは誰なのか伝えてもいいけど、何となく、もう二度と会えない気がするからいいわ。


「あーもーっ!! この壁っ!!」

「あの子たちは、遊園地からずーっと南に行ったところにある教会に居るわ。もう偽物の海賊船から離れて自分の思う場所に行きなさい。」

「…………そうなのか?」

「そうよ。あたいなんかよりもずっとずっと、面白い話してくれるわよ。」


瑞々しい口元を指で押さえボーっと遠くを眺める。この子のためにも、あたいのためにも、あの遊園地からは離れて欲しい。


「…………そうだなっ!! そうするぜっ!!」


◇◇


ジャングルに入って早々、苔むしたウサギの石像が幾つも並び、行く先を示すように顔を向けている。


「本当に石像の向いてる方向に進んでいいのかなぁ?」

「おそらく。声はその方向からしますし。」


……魔物とか出ないのかなぁ?

もう波の音も聞こえなくなってから、恐ろしいほどに無音だ。鳥の声も動物の声も何もない。ただ、女の子の声だけがする。砂浜とは違う世界にでも迷い込んだみたいだ。


「ねぇ、あの時のエネミーレーダーとか使えない?」

「………………まことに申し上げにくいのですが、それ等はコメット8000の機能でございまして……。」


マジかよ。しかもそれ等って、等って、まだ他にも使えない能力があるの?

…………今はいいわ。蚊も居ないし蛇も居ない。今すぐに困った事にはならないんだろうし。何より、可愛いは正義。多少使えない能力があっても可愛さで何とかなる。何とかならなくてもあたしが何とかしなければならない。


…………それよりも、あっちに居た時の見た目を参照してるからか、ラボの靴を履いてるので歩きにくい。ここで足を挫いたら面倒だぞ。誰も治癒魔法は使えないし、ポーション一本すらも無い。


もう十分ぐらいジャングルを歩き続けただろうか、幾つかのウサギの石像が集まっているところに辿り着く。それ等全て同じ場所に向き、そしてその先には……。


「これは……。遥か昔、アルカ大陸の北に存在したと伝えられる日本国に存在した鳥居というものですね。」


日本国、千年以上前の地殻変動で今は一部を残して海に沈んでるけど、沈む前の予言に従って全国各地に原住民が散ったという話が残っていて、そのおかげで言葉と文化はしっかりと世界各地に伝わっているあの伝説の国……。本当に色んな話が残っていて、過去に戻れたら一度行ってみたい国ナンバーワンの伝説の国……。一度、スシの原種を食べてみたいなぁ。


「その鳥居というものは聖域と俗域との境界を示す門の一種です。」


苔がむして黒ずんではいるけど、そこはかとなく神々しさを感じる。

…………ここから先は聖域ということなのか。

それにしても何というか、周辺の木の種類からして場違いというか、本当にずっと、ここにあったものなのだろうか。


「行きましょうか?」

「…………怖いなぁ。でも引き返せないよ。この先から声が聞こえるんだしさ。」



◇◇◇◇◇


「……はい、これで治りましたよ。」

「あっ、あぁ……悪い。」


“ここは有難うございますでしょう?”


「…………その、有難う……ございます。」

「ウフフッ、どういたしまして。」


ミーナちゃんのこういうとこ、コハルちゃんそっくりね。魔王感全く無いわ……って、何度目かしら?


さて、パロマちゃんの傷口も塞がって、ここからは作戦会議ね。どうあのクソドラゴンのアジトに乗り込んで、クソバトを黙らせて、アイビーちゃんと子分たちを取り戻して、そこから二匹をどう処理するか。ここで行動を誤ると振り出し未満に行っちゃうから、慎重に慎重に行かないと。


「おい、どうしたんだ?」

「いいえ、あの……少し眩暈が……。」


ミーナちゃんの様子がおかしいわね。コハルちゃんの体内の闇属性蓄積量は……56.03%でまだ十分な量あるわね。ということは、コハルちゃんが目覚めそうってことね。

……歌も聞こえない。聞こえないというか、何か凄まじい水属性の塊がこっちに向かってきてるのだけどこれはどういうことかしら?


「んー?」


ノアちゃんが反応する。無表情でキューブパズルをクルクル回してた手を止め、じっと壁の方を向いてる。その方向は南。歌声の聞こえた方もそっち。


「う…………ん…………?」

「うっ…………何なんだあの夢は……?」

「……あら、わたし…………立ったまま寝ていたのでしょうか?」

『あれ、なんでわたし、ここで寝てんの?』


“ふわぁ…………もっとルピナスちゃんと居たかったなぁ。”


皆が起きて、ミーナちゃんもコハルちゃんに戻ってしまった。

起きてないのはユーリアちゃんとサンディちゃん、アステラちゃんだけか。


「このウサギ人間……夢の中に居た奴だな。確かサンディって言ってたっけ。」


夢の中ではちゃんと敵対せずに自己紹介したのね。


『あーっ、師匠が元に戻ってるっ!! でも、この姿も可愛らしくて大好き♡』


元に戻ってる……?

というか、同じ夢見てたの?


「…………夢の中に居られたアモールさま、一体どこから来られたのでしょう?」

『あの子、うっさくて苦手ー。なによ、コハルさまに向かってイルミーネスさまぁって。不敬よ。不敬の極みよっ!!』


イルミーネスさま?


「……あの高い声、耳に突き刺さるからもう聞きたくねぇな……。」


“あの子、夢魔族……夢の中だから迷い込んで出てきたんじゃない?”


『あっ……でもイルミーネスって、あの時コハルさまの雰囲気が変わって出てきた……。』


皆が同じ夢を見ている、イルミーネス、夢魔族……ちょっと訊きたいことが多いわね。あぁ、わたしも行きたかったな、夢の世界。こういう時ばかりは自身の耐性を恨むわ。


“あーっ、えー……全員に質問。全員同じ夢を見てたの?”


「そういえばそうですね……。」

『そうだよ。そういえば、クソムシは居なかったね。』

「……そういえば、そうだな。あんまり疑問にも思わなかったが、普通に意思疎通出来てたな……。」


“あたしなんか全盛期の姿に戻ってたわ。ユーリアちゃんも本来の可愛らしい姿に戻ってたし。もっと夢の中で居たかったかも。”


そういうプラムちゃんはひらひらとルピナスちゃんの頭に留まろうとするも手で跳ねのけられた。


“次に、ミーナちゃ……イルミーネスさんの名前を言い続けるサキュバスの子について何か知ってる?”


こればかりはミーナちゃんに話も何も聞いてなかったから、今の内に話を訊いて次にミーナちゃんが出てきた時に話さないと。


「いえ、全く……。女の子で名はアモールと申しておりました。」


“分かったわ。”


夢を司り、人に甘い夢を見せる。夢魔族の子は夢の中で生まれ、赤子は現世へ出させる。現世で育ち、成体となればパートナーを探しに夢の中に消える。そして、夢の中で成した子は再び現世へと出させ、そこで育てられる。そして夢の中へ消える……だから夢魔族。もしくは、幻魔族。この世界で最も謎に包まれた種族。だからあの吸血鬼の話は、夢魔族を謳う単なる魔族か何かその辺。

それにしても女の……子?


“ねぇ、その子は成人? それとも幼体?”


「子供でした。ルピナスちゃんよりもまだ小さいぐらいの子です。」


ルピナスちゃんから舌打ちが飛んだような気がするけど、まぁいいわ。

夢魔族の成体で女性の場合、本当にこの世全ての男どもを虜にする程の美貌。子か大人かは一目瞭然。


“子なら猶更夢の中には入ってこない。人に夢は見せても夢の能力が無いんだもの。”


夢魔の人の夢に入る能力は成体にならないと得られない。

……夢の中で元の姿に戻っていたという話が正なら、コハルちゃんの中の奥深くに魂がある可能性がある。


「おいクソムシ、外で待ってていいか? 息苦しいんだが……。」


“あっ、ごめんなさい。いいわよ。”


こんな狭い部屋に詰め詰め。どこかいい拠点があればいいんだけどねぇ。

サンディちゃん、土魔法で家でも作れないかしら…………あら?


“ちょっと、サンディちゃんとユーリアちゃん、どこ消えたの?”


「あぁ? 本当だ。」

『師匠っ!? 師匠っ!! どこーっ!!?』


“ついさっきまで居たのに…………?”


……困ったわ。何かあればわたしが気付くはずなのに……。



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