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1-15-5 記憶(5)

…………。


「おい、クソムシ。何でアタシがこいつと戦わなければならねぇんだ?」


“とにかく頑張ってっ!! 畑の耕された部分は入っちゃ駄目だからね。あと、教会に被害を与えなければ好きにしていいからっ!!”


あの野郎、こいつがどんなレベルか知らねぇが、もし本気で戦うようなことがあったら集落まで被害が出かねんぞ……。


「あの……コハルさまを戴くのはわたくしです。この勝負の行方、わたくしがもぎ取ります。」

「チッ……あいつはやめとけ。お前に人の心があるのなら、あいつを捧げるのは出来ねぇはずだぞ。」

「コハルさまがどういう方かは……何時間かはご一緒でしたが……全ては存じ上げません。ですが……こちらにはこちらの事情があるんですっ!!」


まぁ、人の命を捧げようとしてる時点で人の心もクソもねぇんだがな。アタシもそうだが……。

あのちょっと聞き取れなかった何とか神が何かは知らんが、拉致して捧げる時点でただじゃ済まないだろ。あのクソジジィですら、取り込む前提だし。

それに……あいつの目的はあまり話そうとしなかったが、アイビーって名の子が絡んでるみたいだな。あいつは……アタシが付けた名前だから絶対にあり得んけど――――


「来ないなら行きますっ!!」


サンディの両手に橙色に光る金属製のナイフが現れる。ブツが存在しないアイテムボックスか。こいつが何なのか知らないけどシーフなら引っ張りだこじゃねぇか。


「お前はシーフなのか? それともアサシンか?」

「わたくしは……わたくしのジョブはニンジャです。」


“くのいち……良いわねぇ。パロマちゃんが就いてる系列の最高ランクのジョブよ。”


マジか。どっちのニンジャか知らんが、乱闘するタイプのニンジャなら手に負えんぞ。貧相な体格からしてそれはあり得んとは思うが、両手剣なら――――


「ぼーっとしないでください。その細首、取りますよ?」

「マジか――――」


迅いってレベルじゃない。

なんも感じなかったのにもう背後に回られてる時点で、こいつ……。


“後ろ気を付けてっ!!”


「はぁ? って居ねぇしっ!!」


ダンッ!!!!


アタシの少し後ろで何かが爆発した。破片を背で受ける。クッソ痛ぇ……。


「さっさと本気を出してください。あの時のように翼をお広げ下さい。」


サンディは再び元の位置に戻っていた。その地面には橙色の刀剣が刺さっている。左手の一本で戦うってか。ナメられてんな。

……右手の指と指の間に黒いナイフのようなものが何個か握られている。まさか――――


「これは飛びクナイと言います。」


うわっ!!!!


「東洋の両刃のナイフのようなものですね。」


ちょっ!!!!


「本当はこれは武器ではなく道具なのですよ。」


クソッ!!!!


「これで穴を掘ったり穴にロープを通して木に引っ掛けたり――――」


こいつっ!!!!


「わたくしも正直ニンジャとしての経験は深くありません。クナイについての出自は民生品の書物に書いてあった程度しか知りません。ですが――――」


クソ野郎、何て動きしやがるんだっ!!

クナイがアタシの周囲に飛んで、躱したと思ったら四方八方から現れて斬り付けてきやがるっ!!

二三発は貰ったが、まだこの程度なら――――


「クナイは爆発するようです。便利ですね。スコップ替わりには危険ですがこれで敵軍の基地の壁に風穴を開けられます。」


はぁ――――――


周囲に爆発音が響く。二度も喰らわぬと瞬時に距離を取るも、飛び散った破片で全身に裂傷、中身の線がしっかり見えてやがるし、何本か切れやがったな……。


“馬鹿ね、あなたぐらいの精神力なら、戦闘中でも時空魔法で止められるでしょうっ!? あの時の大規模な停止魔法はどうしたの?”


チッ、そんな急に頭回んねぇんだよっ!!

……それが出来てりゃノーダメージってか。


「やっと本気を出しましたね。その背中の翼、どういう仕組みなのでしょうか?」


寒気がする。精神的なものではなく、明らかに周囲の気温が下がっている。

サンディの足元に青白い魔法陣が展開される。この色は間違いなく氷属性。

白い筋は龍のように天に登る。雹でも降らす気か?

こうなりゃ西の方角に飛んで距離を取る他に無いっ!!


「逃げられますかね?」


案の定何かが降ってきた。落下してくるものは……丸い粒ではなく尖った氷の塊。刺さったらただ事ではないぞこれは……。


“氷属性のランクは……Sランクね。広範囲型アイシクルメテオ、氷属性上級魔法……。相手の異様な速さと、デバイスに憑依出来ることをいいことに、それを利用したワープ技に圧倒されて手も足も出せてないけど、今のところカオス級の時空魔法が使えるパロマちゃんが上ね。だから、何がどうなっても、真っ先にコハルちゃんから手を引いたパロマちゃんが勝たないとダメなのよ。でも……この戦いにドーピング済みのテルミナちゃんを投入したらどうなるのかしらねぇ……。ウフフッ。”


念話で何ブツブツ言ってやがんだ……?

そろそろ野郎の足遅らせてそのクナイも刀剣も切り裂いて破壊して――――


「後ろです。そして、下です。」


野郎の声がした途端、来た方向にぶっ飛ばされた。


“土属性のランクはXSランク。流石はXS級の錬金術師だわ。いいわねぇ、この子もチート級の塊だわ。あの子、ニンジャのランクはCだし、本来ニンジャになるにはS以上でなければならないシーフやアサシンも、前者はDで後者に至っては未経験。人を殺めずニンジャになれるのは兎族の特権だけど、これは無いわね。低すぎ。パロマちゃんなんかシーフはS、アサシンもA+。ずっと、元からの錬金術師をやってりゃいいのに、深い理由があるのよね。”


教会よりも高く、丘よりも高く宙を舞い、再びあの畑へ……じゃないっ!!!!


“あの突き上げを食らって持ちこたえたわね。”


「おいクソムシっ!! あいつに勝てるのかっ!?」


“勝てるわよ。氷も土も、ランクは高いけど、戦闘経験が付け焼刃。持前の知能の高さと運動能力でカバーしてる状態。時空属性が効くかわからないけど、あなたの能力値ならごり押せるわ。やってやりなさい、パロマちゃんっ!!”


「このクソムシが……。」


本来なら全く戦う必要のない話だ。アタシは降りたからな。だが、こいつは引き合わせて、どうせデータ採りがしたいだけで戦わせてるんだろ。


“あっ、背中にお札みたいなのが張り付いてるわ。”


「このお札、高いんですからね。」


またアタシの背後に現れやがった。

……間違いなく、デバイス内でワープしてやがる。どういう理屈か分からんが……それぐらい切羽詰まった時でも分からねぇと……畜生……機械の脳みその癖にもう少し頭が回ればなぁ……。


「どうしたんです? 降参でしょうか?」


“この際、ジョンさんから貰った重力属性を試してみなさい。”


「クソムシッ!! てめぇ、遊んでる余裕なんざねぇんだよっ!!」

「ルナクローラーさまと何か話してるのですか?」


アタシの体はボロボロ、このウサギ野郎は無傷で余裕の表情。こんなチート級に迅い野郎相手には……時空属性しかねぇのか……?


「続きをやりましょう。この感じではデバイスワープは割れてしまってますからもっと別の方法で…………。」


“時空魔法……ランクB。パロマちゃんっ!! あなたなら余裕で無効にできるけど、効いたふりをしてっ!!”


「はぁ?」

「効きが悪いです……。」


“Bの割にはかなりの高出力ね。Aに近いわ。”


効いた振りってなぁ……。時空属性の使い手はかなり珍しいから喰らうのも久しぶりだけど、こんなに空間が波打ってたか?


“遅延魔法、スロウね。時空属性に得点のある兎族だからかB判定の癖にかなりの威力だからXSランクでも多少は喰らうわ。でもあなたなら無効。適当にゆっくり動いて。”


馬鹿言えクソムシがッ!!

あークソッ、何か手があんだろ、しゃーねぇなっ!!!!


“そうそう、その調子。”


……チッ、恥ずかしいな。何だこのスロウ芸はっ!?


「効いてますね……。」


この大根芝居でかよっ!!


“そのサボテンチックなポーズいいわね。あっ、今よ、乗っ取って。”


何をどう乗っ取るってんだよっ!?


“時空魔法、言うまでも無くあなたが上だから、手繰り寄せるのよ。乗っ取ってその全てをサンディちゃんに返却、そしてあなたのカオス級の停止魔法でカッチカチに固めてやるのよっ!!”


どーやるんだっ!!!?


…………魔法はイメージか。チッ、こればかりは滅茶苦茶だ。


“来るわよっ!!”


「その細首を、刈り取ります。」


どの魔法も無数の紐が風に靡いてるようなもの。その紐の数が多く密度が高いほど、紐が硬く、且つ柔軟性があること、紐は己の魔力に対して素直であること、他なんだっけか。それら全て、アタシの方が上だ。カオス級が何のことかは知らんが、この程度なら何も喰らわん。アタシの時間はアタシのもんだ。お前なんかに制御されてたまるか。


「えっ…………?」


“完璧。びっくりするぐらい完璧。”


野郎はカッチカチに固まった。刀剣を構えた状態で、アタシの首元で完全に止まっている。こいつ、本当にアタシの首を貰うつもりたっだのか?


“今の内にコハルちゃんの畑に埋めましょう。”


えげつねぇこと言いやがるな。壁に向けて解けるまで放置でいいだろ。

それにしても、足元が浮いてやがるな。地面を蹴って浮いたんだろうけど、この前傾姿勢で……碌に動かねぇアタシの所為だからまぁいいけど、お前みたいな罠を駆使するやつ相手だと停まり切れずに壁に衝突したり蹴り転がされたりで、上級者相手だと猶更まともに戦えんぞ。正面からでなく、もっと影から――――


“ちょっと待って、これは…………?”


「あぁ? 今度は何だ…………?」


停まっているはずの野郎は少しずつ後ろに向かって進んでいる。


「。すまりとりか――――」

「……何だこいつ?」

「、をびくそほのそ」


“その細首を刈り取りますを逆に言ってるわ。間違いなく時間が遡行してる。あなた、何したの? 遡行してるなら間違いなく、魔力や魔法がこの世に現れたあの核戦争後初めての快挙よっ!!”


「知るかよ、イメージでこいつの魔法を乗っ取ってから、追加で停止魔法をぶち込んだだけだが?」


いや、本当に知るかよってんだ。

野郎は徐々に後ろに進むにつれ、ガタガタと震える。無茶な魔法に掛かったから体に来やがったのかもしれん。


「ああああああああ…………。」


“サンディちゃんとパロマちゃんの時空魔法が混ざって一つになってしまった所為で体内で好ましくない揺らぎが起こってるわね。強制解除出来る?”


スロウや停止魔法の解除は何度もやってるから余裕だが、変質しているのなら解除出来るかどうかも分からんぞ?


…………よし。


「うわぁっ!!!!」


解除した途端、ゴムパチンコで弾を飛ばしたようにブッ飛んで行った。


“前に進もうとする意思と意思に反した時間遡行でヒズミが急激に蓄勢されて、時間遡行による力の向きが保存されて…………良いわねぇ。”


良くねぇよ。


“……だけど、最ッッッ高だわ。今まさに目の前で歴史がめっちゃくちゃに動いたわっ!!!!”


クソムシは目を真っ赤にしてその場をグルグル回る。ガチの恐怖映像よりも怖ぇんだが。


「いっ、一体……一体何なんですか?」


よろめきながらも戻ってきた。コイツ、体大丈夫なのか?


“あなたは歴史の1ページを身をもって受けたの。光栄に思いなさいっ!!”


「なっ、何ですか、歴史の1ページって、その時歴史が動いたんですか? 何が動いたんですか?」


歴史も何も、お前が逆方向に動いたんだが。


“…………あら。時空属性がBからXSに上がってる。”


「は?」


“……あなたがXS級の重力属性を喰らって重力属性を得たのと同じで、XS以上の逸材が放つ魔法を喰らうと新たな属性を得たりとかランクが急増したりとか稀にあるの。だから、カオス級の時空属性を与えたから上がっちゃったってわけ。”


「……………………馬鹿かてめぇ。」


“あくまで稀よ。博打に負けたのよ。でも……この地って、その稀が多いわねぇ。もしかして、無属性を持ってるのかしら。ねぇ、サンディちゃん?”


「あっ、はい。何でしょうか?」


“あなたって無属性持ってる? 兎族への詳細な鑑定はわたしでも困難だから教えて。”


「あっ、あなた……勝手に鑑定したんですね。別に構いませんし、あなたには絶対に敵わないと思いますし……無属性は持っていませんよ。おそらく。」


“おそらく……ねぇ。まぁいいわ。ところで、どっちが勝ちなの?”


「それは…………。」

「まだ決まってねぇだろ?」


アタシと野郎は向かい合う。そのムッとした表情、こいつもまだ戦うつもりだ。

当然、アタシも手も足も出せないまま終われない。


◇◇


…………見知った、天井。妙に静かだな。


あれ、何でみんな寝てるの?

テルミナちゃんに至っては事件性を感じるんだけど?


……後ろでカチカチと音がする。頭の上に羽を広げた妖光蝶を乗せたノアちゃんは起きてキューブパズルをクルクル回してる。


『ノアちゃん、何かあったの?』

「ううん、わかんない。」


キューブパズルから目を逸らすことなくただひたすら回し続ける。揃ったと思ったらまたバラバラにして揃える。確かに楽しいとは思うけど、そこまで夢中にはなれない……。


……横で寝てるのはアステラちゃんだ。悪い夢でも見てるのかうなされてる。少しでも力になってあげたいけど、あたしが近づくと締め付けるように抱き着かれるからなぁ……。いや、それでも少しは力になって――――


外から何やら音がする。中々平穏ではない感じの音だ。

直ぐ近くだし、そこの壁穴から出るのは止そう。講堂から回り込んで正面のドアから――――。


『えっ、コメットちゃんもっ!?』


コメットちゃんは講堂の隅で横倒しになっていた。それに何だか基板でも焼けたような匂いを放っている……?


“コメットちゃんなら大丈夫よ。それよりも、あなたもあの歌声をレジストしたの?”


窓の直ぐ向こうにローリエさんが浮かんでいた。


『だっ、大丈夫ってどういうこと? 歌声って、何?』


“まず、あれを見て。”


ローリエさんが指すあれ。その先の上空に何かがぶつかり合っている。一人は妖精のような白い羽を広げ、もう一人は空中の何かを足場に飛び跳ね、羽が無いながらも空中戦を披露している。

二人とも二本の剣を手に、剣戟を披露し、間に氷属性らしき魔法や、突風を放って突き飛ばそうとする。

…………だけど、羽の子、何処かで…………。


“あなた、本当にいい仕事してるわね。あの子、借りていい?”


『えっ、ちょっと……言ってることの意味が分からない。』


“書いて字の通りよ。あの子を借りる……いえ、あの子を弟子にするわ。”


ますます意味が分からない。


“じゃあ、降りてきた時に判断してちょうだい。尤も、訊いてもあの状態じゃ、記憶に無いかもしれないけど。”


◇◇◇


こいつ、氷属性でさっきの氷柱みたいな足場を作って、それを踏んで跳んでやがる……。


「空中戦は初めてですけど、案外出来るものですね。本当は地面を隆起させてとこまでも追いかけてやろうと思いましたが、ルナクローラーさまに畑を荒らすなと言われましたのでね。」

「お前みたいな無茶苦茶は知らねぇよ。」


その上、剣を振っても弾かれる。力が無い同士、力が平衡してやがる。ちっとも先に進まない。


“もうそろそろ地上に降りてきなさい。無駄な体力は使わないの。”


「そうですね。このような広大な荒野、本当にここは、現世では無いのですね。」


…………ここは耕された畑の上……。


“サンディちゃんの場所、丁度高濃度の肥料溜まり、即ち浅い肥溜めがあるわね。落としましょう。”


同じことを一瞬思ったが、それを実行させようとするコイツも、本当にいい加減血も涙もねぇな。


野郎は氷柱を足場に徐々に高度を下げる。まだ教会の屋根程度の位置なら、アタシの弱い重力属性で叩き落してもダメージは小さいだろ。

重力属性……初めてだが……………魔法はイメージ。ハエを叩き落すイメージで…………。


「えっ? ……うわぁぁぁあああっ!!!!!!」


“Gランクなのにちょっと効き過ぎよねぇ……あら。重力16倍弱点。龍族の気が強いコハルちゃんと同じね。軽量種族なのに珍しい。”


明らかに軽いはずの体が鉄の塊にでもなったかのように落下し、肥溜めに突っ込む。糞飛沫は教会の屋根ほどにまで上昇しているアタシまで飛んだ。最悪かよ。

……つーか、教会の壁沿いで座り込んでやがるヤツは肥塗れじゃねーか。


“大丈夫よ。防護魔法で保護して、時空魔法でも停めてるから。ところで、今ので重力属性がGからCまで上がったわ。”


上がり過ぎじゃねーか?

そんなにポコポコ上がっていいもんじゃねーだろ。GからFに上げるのですら何ヶ月も掛けて特訓してるヤツだっているのに。


“それほど、レベルの高い子にダメージを与えたのよ。”


付け焼刃とか言ってなかったか?


“それはジョブやスキルの話。素の能力だけでかなりの高みには達してるわ。それよりも、サンディちゃん、生きてる確認して。”


チッ、世話が焼ける。

見事に顔から突っ込んで肥をまき散らしてピクリとも動かない。

……これはやってしまったか……?


「んぐぐぐぐぐ……………。」


ガタガタと動き出した。


『二人とも大丈夫っ!? ちょっ、傷だらけじゃんっ!!!!』


“あっ、ユーリアちゃん。今は行っちゃ駄目よ。”


何だこのクリオネみたいなデバイスは?


『あっ、あれ…………えっ? パロマちゃん?』

「……何でアタシの名前を知ってるんだ?」

「んおわぁぁぁぁあああああああああああっ!!!!!!」


野郎の籠った叫びと共に背後からネチャっとした物体が飛び散った。

背後から飛んできたかなり大きい茶色い塊はクリオネみたいなやつの体に当たり、そのまま地面に落ちてクソの山と化した。

当然、アタシの背中も肥塗れで最悪。要らんことするんじゃなかった。


『ぎゃああああああああああああああっ!!!!!! くっさぁぁぁああああああああああああああああっ!!!!!!!!』

「なっ、なんなんですかっ!!!? ちょっ、これ……くっさっ!!!!!!」


あの時落ちたところがごく少量で良かったよ。くっせ。

クリオネの野郎は糞の山に埋もれてぴくりとも動かなくなった。


「ゲホッ、ゲホッ…………。はぁ……最悪ですか…………ん? この畑の土……丁寧に作られていますね……。」


……こいつ、黒塗れで耳も髪も服も何もかも茶色に変色してそれどころではないはずだが、何故かしゃがみ込んで畑の土を手で触ったり匂いを嗅いだりしている。


「外の土は酷い状態なのに、この土は…………。あちらに少量だけ残ったお野菜も、この不毛の地でよく育ってる……。」


“あらら、勝負終わっちゃったわね。もうちょっと剣と剣でキンキンカンカンを期待したのに。それにまだ雷属性の測定だって残ってるのに。”


こいつ、まだ実験をやらせるつもりだったのか。


“当然。兎族は鑑定魔法そのものの源流だから効果が薄くて、わたしでも浅いところまでしか見れないわ。”


源流っつって、兎族が編み出した魔法なのか。初めて知ったが、こんな奴等がな。


「この土と肥料の配合量は……………そもそもこの肥料、何のフンでもありませんね。おそらく――――ルナクローラーさま、この畑はどなたが?」


“コハルちゃんよ。この肥料もコハルちゃん特製のブツよ。”


「………………コハルさまが……。畑をこのような状態にしてしまいましたが……畑仕事の見学はお請けいただけるでしょうか……。」


“大丈夫なんじゃない? あの子なら直ぐ横でメモを取ってても気にしないし、質問してもゆっくりとだけど返してくれるわ。ところで、一つ条件があるけどいい?”


「…………心得ております。ですが……少し考えさせてもらってもよろしいでしょうか?」


“…………絡んでる者の規模がクソドラゴンと例の何とか言うヤツとで異なるから硬いわね。パロマちゃん、両方とやり合うことになるかもだから、協力願えるかしら?”


「……チッ。だが…………本当にあいつ等を無傷で助けられるんだろうな?」


“極力……としか言えないけど、やってみるわ。”




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