第50話 そして新たな力(スキル)へ
「子供が生まれない?」
重婚制度に驚いていた僕だったが、その理由は想像以上に深刻だった。
この国では子供の出生率が極端に低いらしい。
「いえ、全く生まれない訳ではないのですが……」
「?」
「出産が少ない上に生まれてくる子供は、ほとんどが女性……女の子でな……」
「!?」
ミラージュとラックは口を重くして語っている……まさか、この国でも少子高齢が問題に……いや……それ以上の事態かもしれない。
「でも、全く産まれない訳でもないのです。」
「男児二割、女児八割程度だな」
「そ、そんなに、低すぎませんか!?」
「はい、だから結婚も奥さんが多く必要なんです」
[だが、ここ10年ほどは子供が生まれない年もあってな……かなり深刻な問題になっているのだ……]
なるほど、出産率の低さにも驚いたが、この国の多重婚には納得できた。
「だけど多くの奥さんが必要でも、私みたいに一人しか産まれない事も多いんです……」
「あれ?それだと……例えば……ミラさんの場合……ミラさん自身が家督を継ぐとか?」
「どうでしょうか……あまり考えたくはないのですが……多分、婿を招いて……になるかと……」
「なるほど、婿か……」
それでも、この男性率だと理想の殿方を探すのも一苦労だな……
そんな話をしていると、ミラージュの様子が少しおかしい……
「ミラさん……もしかして……結婚はあまり考えてないとか?」
「は、はい……」
少し、ミラージュの顔が強張ったような気がする。やはり結婚には抵抗があるようだ。それもそうだ、彼女は男性(正確には魔族だけど……)に対する心に大きなトラウマがある。
例えをミラージュにした事に僕は少し失敗した気がしたが……
「まぁ……無理もないのだがな……そもそも、私も婿を招くのは反対だな」
[え?どうして?]
僕は、つい聞き返してしまった……
ミラージュが婿を拒否するのは分かるが、ラックが反対する理由が分からない。
僕はラックに問い詰めてみた。
「男性の出産率が低いせいか、その子供は甘やかされる傾向があるようだ……」
確かに、希少な男の子を大事にするのは親としては自然な事なのだと思う。
しかし……
「そのせいだろうか……お世辞にも性格の良い男性はいないのだ………」
確かに、ギルドにいた【インプ】や街にいた盗人も男性だった……
つまり、甘やかされて育った男性は、多少のワガママなら許され自己中心的な性格になっている……っと……
「私はミラには良き相手に巡り合ってほしいのだが……少なくとも、カケル殿のような誠実な男なら安心できるがな」
「そう言う、ラックさんもなかなかの忠義心だと思いますよ」
「私のは少し特殊だからな……」
「?」
ラックも少し寂しそうな顔をして答えてくれた……やはりラックも事情があるのかもしれない……あまり深く詮索するのはやめよう。
とりあえずは、この国の男性は批判的だが、僕の評価はまずまずらしい……
「とにかく、男性が全てとは言わないが、ミラも男性恐怖症だし……当面は様子見と言ったところだろう」
「むっ……私は、乱暴な男性が苦手なだけで男性恐怖症じゃないですよ!!」
「……それを男性恐怖症と言うんじゃないのか?」
呆れた顔でミラージュに問いかけるが……
「なら、カケル殿を婿にするという手もあるな」
ラックは酒の勢いで笑いながら言った。
「な!?何言ってるんですか!!」
ミラージュは、顔を真っ赤にしながら、ラックに怒鳴り散らしていたが、満更でもなさそうだ……会話を聞きながら僕も少し照れくさく感じた……
「まぁまぁ、この国の事情は分かりましたから」
しかし……このままだと、いつの間にか2人の口喧嘩に発展しそうだったので、僕が仲裁に入りこの話は終了となったのだか……
「ところで、カケル殿の魔導具が壊れてしまったとか?」
夕食の再開を始めた途端……ラックは急に僕の事にシフトチェンジしてきた。
「あ、はい………」
そう、僕のEXスキル……フルドライバー【スーパーカブ】は先の模擬戦で走行不能なほどに破壊してしまったのだ……
「では……もう、魔導具は使えないのかな?」
「いえ、とりあえず修理してまた使えるようにするつもりです」
「そうか、なら良かった」
ラックは少し不安な顔をしていたが、直せると分かった瞬間、安堵の顔を見せた。
……とはいえ……リカバリー機能がなかったら、完全に直せたかどうか……僕自身も自信がなかった……
〈一応、復元率を確認しておくかな?〉
〈ステータスオープン!!〉
ゴクゴク……
僕は、お酒を読みながらステータス表示を確認した。
■ スーパーカブ 復元率…… 8%
やはり、まだまだ完全復活には程遠い……
この調子だと、数日はドライバー業もお休みだな……
スーパーカブも使えないとなると……やれる事と言えば……
そうだ!!剣や魔法の勉強をするのはどうだろうか?それに、王都にライセンスを受け取りに行かなければならないし……
それに少しでも、王都……いや……この世界の知識を頭に叩き込まないとならない。
それなら、図書館とか資料館みたいな施設があれば嬉しい。
やる事は、山盛りだな……
そう考えながら、ステータス表示の一覧を確認していると……
「ん?……!!!ブッーー!!」
「キャ!!カ、カケルさん!?」
口に含んでいたエールをまたも噴き出してしまった!!
ゲホッゲホッ……
「カケルさん大丈夫ですか?」
「は、はい……すみません……」
「カケル殿、やはり体調が良くないのではないか?」
ラックが再び心配そうなる顔になる……
「すみません……やっぱり、少し疲れてるみたいです……」
「カケルさん……本当に大丈夫ですか?」
ミラージュも心配してくれている。先のカマー戦の疲労を心配してくれているのだろうか……
「ごめんなさい……今日はこれで部屋に戻って休みます……今後の予定は明日お話します」
「そ、そうか?」
「カケルさん、部屋まで付き添いましょうか?」
ミラージュも心配そうに言ってくれるが……
「だ、大丈夫ですよ……一人で戻れますので、それでは失礼いたします」
僕は、そう言い残し逃げるようにその場を離れた。
そして……
バタン!!
「お、おい……ウソだろう……」
僕は、自分のステータス更新の一覧を見て驚いた。
「こ、これは……」
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■ パラディンのレベルが上がりました。
■ EXスキル【フルドライバー】のレベルが上がりました。
■ 新しいスキルを取得しました。
■ パラメータの能力が更新されました。
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「ついに、きた!!キターーーッ!!」
転生してから、一番の歓喜になった!!
この瞬間をどれだけ待ったか……
「俺は今モーレツに感動している!!」
何処かで聞いたことのある台詞を吐いてしまったが、この後……
「ゴクリ…では……」
恐る恐る人差し指を伸ばし、ステータスの詳細を開くのだった――。




