1-5 昼食
え、今この髭面のおっさん、王太子って言ったよね?僕は絶対に違うってことは、え、
「ダグラスって王太子だったの?」
「やっぱり気づいてなかったか。そう、俺はこの国の王太子、ダグラス・ミッチェルだ」
おーっと、それは聞いてないぞ。特に目立たず騒がずで終わる予定の学校生活は玄関から崩壊してたのか。
どうりで周囲からの視線が痛いわけだよ。幼い頃から社交界に出て王太子の顔なんてみんな常識だろうし、その横にいる僕があまりにも冴えなくて驚いたんだろうな。
ん?でも最初この人僕に有名人、って、、、。それに今料理人のおっちゃんにもなんか言われたような、、、
「ま、聖女と勇者の息子であるレイに比べたらみんな俺には見飽きてるだろうしな」
いやだからなにそれ?
「あ、あのさ、それ、人違いとかじゃない?僕の両親はしがない看護師と騎士なんだけど、、、」
そういうと、ダグラスはこれ以上面白いものを見たことも聞いたこともないというように目を大きく見開いて爆笑した。
「あっはっはっはっは!!!!!本気で言ってるのか、それ?今日帰ったらご両親に聞いてみるといい」
煮え切らない気持ちを抱えながら届けられたハンバーグに舌鼓を打ち、悶々としながら入学式を迎えた。
そして帰宅。
「ただいまー」
「おかえりレイ!どうだった?お友達はできた?あぁ手を洗ってきて、お茶にしましょ!」
「母さん、落ち着いて。父さんは家にいる?」
「呼んだかい?いとしの息子よ。」
「ちょうどよかった。少し聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」
「いいとも!どうしたんだい」
「あのさ、僕って聖女と勇者の息子なの?」
僕はあの時ほど強張った両親の顔を見たことがない。それだけでもう十分答えがわかるほど僕は大人になったんだ、となぜか感慨深く思ったのは現実逃避だろうか。
「それについてはゆっくり話そう。さ、座って」
口火を切ったのはおしゃべりな母ではなく、意外にも父だった。
「結論から言おう。そうだ。父さんは勇者で母さんは聖女、お前はその息子だ。」
息が、できなかった。いや、存在は知っていた。20年前の人魔大戦争で魔族側の王、通称魔王を倒した勇者パーティ。どんなに硬い皮膚をも一刀両断にする聖剣の主・勇者。回復師かつ特殊効果付与師の聖女。遠距離からの攻撃を得意とする魔法師。近接攻撃と盾役で防御を一手に担う耐久者。この4人の旅の軌跡は伝説となり今後も語り継がれていくはずだ。
そんなすごい人たちの息子?僕が?ありえない。7歳で全国民が受ける魔力測定でも平均値程度だったし、魔法の属性も土の一種類だけだ。聖女と勇者に特有の光属性は僕にはない。
「もしかして、旅の途中で僕のこと拾った、、、?」
そう聞くと母さんは唇を噛み締めてくぐもった声で話し出した。
「いいえ。あなたは正真正銘私たちの息子よ。実は魔力測定は神官の人にお願いして嘘の結果をあなたに教えてもらったの。本当はこっち。」
そう言って差し出した一枚の紙にはこう書いてあった。
魔力量:SS(平均の十倍)
属性:火・風・土・光
称号:人類の希望
おーっと、これも聞いてないぞ。あまりの情報量の多さに僕は貴族のご令嬢みたいに意識が遠のいていくのを感じた。意識が途切れる瞬間、両親が僕の名前を呼ぶ声が聞こえた気がした。
愛されてるなぁー、、、。




