1-6 夕食
ふと目を覚ますとそこは自室だった。
「目が覚めた?」
声の方へ目を向けるとそこにはいくらか疲れた顔をした母さんがいた。
「今何時?」
「ちょうど18時。」
家に帰ってきたのが15時ごろだとすると、ちょうど3時間くらい意識を失っていたということか。
「夕食の用意ができてるけど、部屋で食べる?」
「いや下で食べるよ。心配かけてごめんね母さん。」
「いいのよ!むしろ母さんたちの方こそ、、、。いつかは気づく日が来るってわかってたのに。ごめんなさいね。下で待ってるわ。」
いつも元気な母さんからは想像もつかないほど悲しげに話すから、僕も両親に嘘をつかれていたことに対する怒りをそのまま両親にぶつける気にはなれなくて、暗い自室で1人深呼吸をする。
よし。僕は大人だ。前世と足したら両親の兄弟と言っても差し支えない精神年齢なんだ。理解してあげなくちゃ。何度かそう言い聞かせたけどやっぱり心に住み着く何かが欺瞞で作られた家族の中で僕だけが真実を知らなかった、いや家族だけじゃない、世間も僕の出自を知っていたのに世界で僕だけがそれを知らなかったという事実に、悔しい!と叫び続けてる。
僕に嘘をついていた理由なんて分かり切っている。僕がいろんなところで言いふらして危ない目に遭ったりしないようにとか、天狗になって努力をやめたりしないようにとか、そもそもその肩書きを重荷に感じて挑戦することをやめたりしないようにとか。優しい人たちなのだ。大方こんなことだろう。理解できてしまう自分にも腹が立つ。
こんなにもむしゃくしゃした気持ちになるのはお腹が空いているからかもしれない。とりあえずご飯を食べよう。
階下に降りると待ってましたとばかりに豪華で暖かな食卓が広がっていた。
「レイ!体調はどうだ?ご飯食べられそうか?」
「今日は記念すべき入学式だもの!レイの好物をたくさん作ってみたのよ」
ミートボールにパエリア、シーザーサラダにエスカルゴ。本当に僕の好きなものばかりで目頭が熱くなる。
「レイ?気に入らなかった?」
「、、、ううん、美味しそうだよ、ありがとう。いただきます。」
「ああ、いただきます。」
美味しさと涙を堪えるのに必死でそれからの記憶はあまりないが、ダグラスと仲良くなったという話をすると、両親が驚き喜んでくれたことだけは覚えている。あとは母さんと父さんが僕に対してどんなふうな思いで職業や出会い、僕の魔力について嘘をつくことに決めたのかを訥々と話してくれた。
大方、僕の予想通りだった。
夕食を食べ終わり、風呂に入って寝る支度をし、ベッドに入ったところで、明日の用意を全くしていないことに気がついたが、今更起き上がる気もしなくて目を瞑った。準備はしていない方が明日への不安を感じずに済みそうだったから。




