1-2 校門にて
ザワザワザワ
風に揺れる桜並木を、僕と同じように新品の制服を着て歩く生徒たち。
「ごきげんよう」
「ごきげんよう、本日はお日柄もよく−−−」
この人たちの背筋を基準に垂直を決めています、と言われても納得してしまいそうな程、真っ直ぐに伸びた姿勢でたおやかに笑い合う女子生徒たち。
「あぁ、先日はどうも。」
「これはこれは、ご縁がありますね」
もしやサラリーマンの前世を持っているのだろうかと疑いたくなるような社会人ぶりを披露してくれる男子生徒たち。
なんだろう、桜並木の下でお喋りとか日常茶飯事なはずなのに、すごく変な感じだ。でもこれが緊張なのか、期待なのかは自分でもわからない。
いやでも、やっぱり緊張だろうか。
考えてもみてほしい。
思春期真っ只中、親と口もきかずに下唇を突き出しながら『自分、不機嫌です』って顔を晒して歩いてた記憶の中の中高生とは違って、目の前の人々は体が追いついてないだけの大人だ。
正直、こんなすごい人たちに仲良くしてもらえる自信がない。
だって、うちは底辺貴族だし、親も放任主義で僕は貴族教育なんてものとは縁がなかった。マナーの先生は愚か、家に先生と名がつくものは御歳20になるペルシャ猫のイギーだけだ。あの猫は多分人間のいないところで普通に立って歩いて回覧板とか回してると思う。
話は逸れたけど、とにかく!もう既に僕はおうちに帰りたい。
晴れ晴れとした青い空に見合わない暗い雰囲気を漂わせながら1人トボトボと歩く。
「あら、あの方ってもしかして、、、」
「しっ!ご負担にならないように控えてほしいと通達がありましてよ」
「いけない、危うく話しかけるところでしたわ」
「いえ、誰だってお近づきになりたいですわ、だって」
「あーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!
聖女と勇者の息子だーーーーーーーーーー!!!!!!!」
10メートル離れていても鼓膜がはち切れるんじゃないかと疑うほどの声量で僕を指差しているのはすごく派手な人だった。赤い髪に黄色い目、背は僕と同じか少し小さいけど、ツンツンした髪型のせいで大きく見える。
って、え?




