表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハズレスキル『半額シール』で異世界無双!〜ただの紙切れで敵のステータスを値引きしてたら、いつの間にか神造兵器を量産してました〜  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
51/84

EP 6

神と魔王の裏工作と、崩壊するカメラ枠

「……スーパーの店長? はっ、冗談キツいぜ。てめぇみたいな底辺の一般人が、俺の『絵(配信)』を邪魔する気かよ」

 ポポロ村の焼け焦げた広場。

 純白のフリルドレスを着たリーザを庇い、防犯用さすまたを構えて立ち塞がった俺――折原晴也を見下ろし、偽勇者ゼロスは鼻で笑った。

 彼の纏うオリハルコンの鎧から放たれる、課金によってバグレベルに引き上げられたステータスの圧は、ただの人間である俺の身体を物理的に押し潰さんばかりだった。

(ヒィィィッ! 怖い! 怖すぎる! 剣を抜かれたら、一瞬で俺の体が上下に分割されちまうゥゥッ!)

 内心では悲鳴を上げ、膝の関節は生まれたての小鹿のようにガクガクと震えている。

 だが、俺は顔の筋肉を総動員して、極めて冷徹な『クレーム対応用の営業スマイル』を崩さなかった。

「邪魔しているのはお前の方だ、偽装表示の不良品。ここは俺のシマの入り口だ。お前のような質の悪いヤカラが居座っていては、店のブランド価値が下がるんでね」

「チッ……。口の減らねぇ店員だ。まあいい、どうせ配信のサーバーが落ちてて、今のこのシーンはカメラに映ってねぇからな。ここでてめぇの首を撥ねたところで、俺の評価スパチャには傷一つ付かねぇ」

 ゼロスが、薄汚い笑みを浮かべながらオリハルコンの剣を振り上げた。

『おいゼロス! 待て、待つんだ!』

 その時、ゼロスの耳の通信機から、炎上神ワイズの焦りに満ちた声が響いた。

『ダメだ、サーバーが復旧しちまった! 今、お前の映像が全世界に流れ始めている!』

「なんだと!? 復旧したならいいじゃねぇか! これから俺がこの小娘を助けて――」

『バカ野郎、映像の『画角』を見てみろ! 完全に最悪だぞ!!』

 ゼロスがハッとして空を見上げると、上空に浮かぶ遠隔撮影用ドローンのレンズが、信じられない方向を向いていた。

 あろうことか、カメラのレンズはゼロスの「厚底ブーツで無理やり底上げされたカカト」を超ドアップで映し出し、さらには彼が先ほど瓦礫の陰にポイ捨てした『ポポロシガーの吸い殻』を、舐め回すようにズームで配信し始めていたのだ。

「な、なんだこれは!? おいドローン! どこを映してやがる!」

 ゼロスが慌ててカメラに顔を向けようとするが、ドローンはまるで意思を持っているかのように、ゼロスのイケメンを徹底的に見切れさせ、彼の不自然な足元や、口臭スプレーの空き瓶といった「見せたくない裏側」ばかりを巧妙に映し出していく。

『くそっ! ドローンの制御系までハッキングされてる! どこの誰だか知らないが、相手はネットワークの神か何かか!? 防壁ファイアウォールを書き換える速度が異常すぎる!』

 ワイズの悲鳴が、通信機越しに響き渡った。

     *

「「アッハッハッハッハ!! いい気味ね!!」」

 その頃、スーパー折原のバックヤードでは、世界を統べる神と魔王が、悪役そのものの高笑いを上げていた。

「魔王軍のサイバー攻撃(DDoS)でサーバーの防壁に風穴を開けたところに、天界のシステム権限バックドアでドローンの制御権を物理的に強奪したわ! 完璧な連携プレイね!」

 芋ジャージ姿の女神ルチアナが、エンジェルすまーとふぉんを片手に、ドローンの操作インターフェースを完全に掌握し、ジョイスティックをグリグリと回していた。

「ええ! しかも見てなさい、配信のコメント欄! 私が魔王軍のボットネットを使って、『厚底バレバレで草』『ポイ捨てダサすぎ』っていうスパムコメントを毎秒一万件の速度で書き込んでやってるわ!」

 緑色のエプロンを着た魔王ラスティアが、残像が見えるほどの速度でキーボードを叩きまくっている。

 武力で表に出ることを俺から禁じられた彼女たちは、その有り余るエネルギー(とオタクとしての情熱)を、すべて『裏方からの嫌がらせ(インフラ妨害)』に全振りしていたのである。

 世界の頂点に立つ二人の圧倒的な演算能力と魔導知識を前に、新入りの炎上神ワイズのシステムなど、赤子の手をひねるようなものだった。

「ですがルチアナ様! ラスティア様! 奴らもドローンの制御権を取り返そうと、裏で必死にコードを書き換えてきています! このままでは、すぐにカメラの画角が元に戻ってしまいます!」

 背後でガチャのポイントを温存しながら待機していたルルナが、モニターを見つめて叫んだ。

「チッ、しぶといわねワイズのクソガキ。……なら、物理アナログでいくわよ!」

 ルチアナがスマホを放り投げ、バックヤードの小窓をガラリと開けた。

「ルルナ! ガチャのポイントを使って、地球の『嫌がらせアイテム』を出しなさい! 殺傷能力がなくて、ひたすらウザいやつよ!」

「は、はいっ! 善行ポイント100消費! 出でよ、地球の玩具!」

 ポンッ! とルルナの手元に現れたのは、地球の子供が遊ぶ『輪ゴム鉄砲』と、『銀玉鉄砲』、そして大量の『消しゴムのカスを丸めたもの』だった。

「上等よ! これに『究極の闇魔法』をエンチャントして撃ち込んでやるわ!」

「私は『天界の神気』をコーティングして、レンズのど真ん中に消しゴムのカスをぶつけてやる!」

 神と魔王が、バックヤードの小窓から顔を出し、子供の玩具に世界を滅ぼすレベルのオーラを込め始めた。

 ビシッ! ピシィッ! ぺチッ!

 狙撃手もかくやという精密なコントロールで放たれた輪ゴムと銀玉が、空中に浮かぶドローンのカメラレンズに次々と直撃していく。

「ギャハハハハ! 命中! ざまぁみさいワイズ!」

「いいぞ! もっとレンズを傷だらけにして、画質を最悪のガラケーレベルまで落としてやりなさい!」

 神話の時代から続く因縁を持つ天界と魔界のトップが、スーパーの裏窓から並んで「輪ゴムと消しゴムのカス」を飛ばしてキャッキャとはしゃぐ姿は、シュールを通り越して狂気でしかない。

 だが、その『姑息で致命的な嫌がらせ』は、確実に炎上神の台本シナリオを崩壊へと導いていた。

     *

「あ、痛ェッ!? なんだ、どこからか輪ゴムが飛んできやがったぞ!?」

 広場に立つゼロスが、顔にペチッと当たった輪ゴムに怒りの声を上げた。

『ゼロス! ダメだ、カメラのレンズが謎の物理攻撃を受けて割れかけている! 画質が最低レベルまで落ちて、君の輝くオリハルコンの鎧が、ただの黄ばんだブリキにしか見えなくなってるぞ!』

「なんだと!? ふざけんな、俺はかっこいい絵(PV)を撮ってスパチャを稼ぐために、高い金払ってステータスを買ってんだぞ! これじゃあ丸損じゃねぇか!」

 ゼロスがカメラドローンに向かって喚き散らす。

 だが、その醜態すらも、荒れ狂う画角とノイズまみれの映像で、全世界に無様に配信され続けている。

「勇者様……? どうされたのですか……?」

 避難していた村人たちが、スーパーの窓越しに、一人でドローンに向かってキレ散らかすゼロスの姿を訝しげに見つめ始めていた。

 絶対的なヒーローのメッキが、少しずつ、だが確実に剥がれ落ちていく。

「……見苦しいな、不良在庫」

 俺はさすまたを杖にして立ち、鼻で笑ってやった。

「カメラ(外見)を取り繕うことにばかり必死で、目の前のお客様(村人やリーザ)のことは一切見ていない。そんなハリボテの商売で、いつまでも客を騙し通せると思うなよ」

「……てめぇッ!!」

 ゼロスの顔が、怒りで真っ赤に染まった。

 カメラの前での爽やかな好青年の仮面は完全に剥がれ落ち、そこにあるのは、自尊心を傷つけられたチンピラの醜い素顔だった。

「よくも……よくも俺の『完璧なシナリオ』に泥を塗ってくれたなァッ! このクソ店員が!」

 ゼロスが、殺意をむき出しにしてオリハルコンの剣を構え直す。

「もう配信(絵)なんかどうでもいい! ここにいる連中を全員皆殺しにして、魔物の仕業ってことに偽装してやる! てめぇら全員、俺の剣の錆になりやがれェッ!」

 ゴアァァァァァッ!!

 ゼロスがユニークスキル【マネー】にさらに金貨を突っ込み、ステータスを極限まで引き上げた。

 彼から放たれるオーラが、物理的な突風となって広場の瓦礫を吹き飛ばす。

「店長さんッ! 逃げてくださいの!」

 リーザが俺の背中に庇われながら、悲痛な叫びを上げた。

「プロデューサー! 下がれ、そいつの力は異常だ!」

 壁に叩きつけられ、血を流しながらも立ち上がったイグニスが、大斧を引きずりながら叫ぶ。

「逃げるものか」

 俺は、エプロンのポケットの中で、汗ばんだ手で『半額シール』と『廃棄処理シール』を指の間に挟み込んだ。

 足の震えは止まらない。相手のステータスは、俺の何万倍、何十万倍もある。剣がかすっただけで俺の体は両断されるだろう。

 だが、小売業の店長として、絶対に退けない時がある。

(あいつの力は、金で買っただけの『虚構(システム上の数値)』だ。俺のシールなら……絶対に、あいつの『価値』を書き換えられるはずだ!)

「来い、偽勇者」

 俺はさすまたを前に突き出し、冷徹な目でゼロスを睨み据えた。

「お前のその金ピカのパッケージごと、粗大ゴミに出してやる」

「死ねェェェッ! クソ店員!!」

 ゼロスが厚底ブーツで地面を蹴り、音速を超えた踏み込みで、俺の首を刎ね飛ばすべくオリハルコンの剣を真横に振り抜いた。

 神と魔王の裏工作によって舞台カメラは整えられた。

 あとは、俺自身の手で、この不良品のメッキを完全に剥がし切るだけだ。

 スーパー折原の命運を懸けた、店長と偽勇者による命懸けのインファイト(返品処理)が、ついに始まった。

読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけましたら、★評価やブックマークで応援していただけると励みになります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ