表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハズレスキル『半額シール』で異世界無双!〜ただの紙切れで敵のステータスを値引きしてたら、いつの間にか神造兵器を量産してました〜  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/48

EP 2

「ポイント(売上)システムと、ガチャ依存の聖女様」

ゴブリンを倒し、ふかふかの腐葉土の上でようやく安堵の息を吐き出した直後だった。

『チャリーン♪』

静寂の森に、まったくそぐわない音が響いた。

聞き間違いではない。スーパーのレジで、毎日何百回と聞いていたあの軽快な電子音だ。

俺が周囲を見回すと、目の前の空中に半透明のホログラムのようなウィンドウがふわりと浮かび上がった。そこには、赤と黄色の派手なスーパーのポップ体で、こう書かれていた。

【本日の売上(店長ポイント):15p】

「……売上? 店長ポイントって何だよ!」

思わず空中のポップに向かって叫んでしまった。

異世界に来てまで、俺は日々の売上ノルマに追われなければならないのか。どんだけブラックなんだ俺の魂は。過労死してまでポイントカードの管理でもさせられるというのか。

だが、冷静になってポップの下に書かれた小さな注釈テキストに目を凝らすと、そこには驚くべきスキルの真実が記されていた。

『※対象のステータスや価値を値引き(デバフ)した際、削り取った分の概念的価値がポイントとして還元されます。ポイントを消費することで、新たなシールを発行できます』

(なるほど……さっきの『半額シール』は、ただ敵を弱体化させるだけじゃない。奪った敵の強さを、俺のポイントとしてストックする機能があるのか)

「あの、晴也さん……ですよね? 助けていただいて、本当にありがとうございました」

頭を抱える俺に、少女がぺこりと深く頭を下げた。

泥で少し汚れてはいるが、プラチナブロンドの髪に澄んだ青い瞳を持つ、非常に可愛らしい顔立ちの少女だった。

「私、ルルナと申します。これでも一応、勇者鍵田竜かぎたりゅうと聖女セーラの子孫なんです。でも、おばあちゃんたちの血が強すぎて、周りからのプレッシャーがすごくて……。さっきも焦って魔法を外してしまって」

「鍵田竜って、絶対日本人じゃん」

どうやらこの世界には、過去にも俺のような日本からの転生者がいたらしい。しかも勇者として名を残しているのか。

そんな話をしていると、ルルナがふと足元に落ちていたものに目を留めた。ゴブリンが落とした、汚れた牙とボロボロの革袋だ。

ルルナはそれを拾い上げ、森の隅に掘った小さな穴へ丁寧に埋め始めた。

『ピコン♪ 善行:ゴミ拾い(森の清掃)。1p加算。現在の善行ポイント:100p』

ルルナの頭上に、俺のスーパーのポップとは違う、どこか神聖で透明感のあるシステム音声が響いた。

その瞬間だった。

ルルナの青い瞳が、獲物を見つけた猛禽類のようにカッ! と見開かれた。清楚な聖女の面影が、一瞬で吹き飛ぶ。

「ああっ! 貯まりました! ついに100ポイントです晴也さん!!」

「えっ、急にどうしたの!?」

「回せる……! 『ランダムボックス』が回せます!! はぁ、はぁっ……!」

ルルナは荒い息を吐きながら、震える手で空中に半透明の箱――どう見ても、地球のスマホゲームでよく見る「ガチャ画面」――を呼び出した。

彼女のユニークスキル『ランダムボックス』。それは、皿洗いやゴミ拾いなどの「善行」を積むことでポイントを稼ぎ、地球のアイテムをランダムで召喚できるという血継スキルらしい。

「偉大なるご先祖様……どうか、私に奇跡を……! 勇者様が遺した『コンビニ』という神殿の供物が出ますように……! 『レンチン』の炎の加護を……えいっ!」

「いや、コンビニは神殿じゃないし、レンチンはただの電子レンジだよ!」

俺のツッコミを無視して、ルルナが祈るように空中のガチャボタンを押す。

箱がまばゆい光を放ち……いや、最初は虹色に光るかと思いきや、途中でスンッと地味な銀色に落ち着き、ポロッと小さな赤い物体が手のひらに落ちてきた。

「見事です! 勇者の故郷のアーティファクト! 炎を操る魔道具を引きました!」

ルルナは顔を紅潮させ、星のような目を輝かせてその赤い物体を天に掲げている。

だが、俺は限界まで細めたジト目で、そのアーティファクトとやらを見つめた。

「ルルナ。それ、ただの100円の使い捨てライターだよ。レジ横に置いてあるやつ。しかも中身のガス、半分くらいしか入ってないぞ」

「ヒャクエンライター……!? なんて恐ろしくも力強い響きでしょう。これぞ日本の究極火炎魔法……!」

「俺の話、1ミリも聞いてないな?」

完全にガチャ依存症の目だ。聖女の血筋なのに、業が深すぎる。

しかし、お互いに「ポイントを稼がなきゃ何もできない」という数字の呪い(ノルマ)を抱えている点では、奇妙な親近感が湧いたのも事実だ。

俺たちはひとまず、魔物の出没が少ない緩衝地帯である「ポポロ村」を目指して歩き出した。

鬱蒼とした森を抜けながら、俺たちは互いの身の上話をした。

「ルルナも大変だな。俺も前世は七十二時間連続勤務とかで、ずっと理不尽な数字に追われてたよ」

「ななじゅうにじかん!? 日本にはそんな過酷な耐久修行クエストがあるのですか!?」

「いや、ただのブラック企業なんだけど」

「私なんて、さっきも1ポイント欲しさに焦ってゴブリンの前に飛び出しちゃったくらいで……。ポイントが貯まると、回さずにはいられないんです。ああっ、あと3ポイントでまた回せるのに! 晴也さん、何か食べるものはありませんか!? 私に皿洗いをさせてください!!」

「落ち着け! 今こんな森の中で皿洗いなんてできるか!」

隙あらば道端の雑草を抜いて「草むしり:1p」を稼ごうとするルルナを宥めながら、俺は苦笑した。

社畜と、ガチャ依存の聖女。

どちらも数字とシステムに踊らされている、不器用な底辺同士だ。

やがて、木々の隙間から木造の防壁が見えてきた。

のどかな田園風景と、煙突から上がる生活の煙。あれが目的地のポポロ村だろう。門番がのんびりとお茶を飲んでいる姿すら、遠目に見える。

「あそこがポポロ村です! よかった、これでようやく休めま――」

ルルナが安堵の笑みを浮かべ、肩の力を抜いたその時だった。

ブルゥゥウウウウンッ!

俺の足元から、内臓を揺らすような重低音の唸り声と、激しい地響きが伝わってきた。

林の奥の太い木々が、次々とバキバキとへし折られていく。

土煙を上げて森を突き破り、俺たちに向かって猛突進してきたのは、岩のようにゴツゴツとした巨大な角を持つ、トラックサイズの猪型魔獣だった。

「な、はぐれロックバイソン!? どうしてこんな村の近くに!」

「おいおいおい! 休ませてくれるんじゃなかったのかよ!」

血走った真っ赤な両目が、完全に俺たち二人をロックオンしている。

安息の時間は一瞬で終わりを告げ、圧倒的な暴力が再び俺たちに牙を剥いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ