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土の穢れとは

「オスカー様、ほうれん草の種植えまで全部終わりましたよ」

「おう!リーシア、今日もありがとうな。お疲れ様」



あとはじゃがいもにほうれん草の芽が出てくれるまで畑仕事は一旦終了だ。

本当はもっと作物を植えておきたいところだが、農作業にばかり時間を

当てている事は出来ない。何故ならそれ以外にやる事は山ほどあるからだ。

日々の食料の調達もそうだが、巻き割りや洗濯

家の修繕や肥溜めと汲み取り式の便所が必要だし、何かと手が足りてない。

日々三人で行く抜くことで精いっぱい・・・・なのだが。


最近俺の頭の中はある違和感を抱えていた。

今までさほど気にかけてもいなかったが、だがよく考えれば

どう考えてもおかしい。

なにか作業を終える度に脳裏によぎるその正体。


土の穢れ。

魔導大戦による土の穢れ。それは禁じられた魔法を使用したことによる

大気や大地等に存在するのマナの変質にあるのではないかと言われている。

俺はその大戦を直接見た訳でもないからそれがどんなものかわからない。

父であるマーヴィンから聞いた話では、それは凄惨な戦争であったらしい。


空は血のように紅く燃え、海は煮えたぎり、土は腐り、風は疫病を振りまいた。

ほぼ全ての作物は枯れ人もモンスターも動物達も姿を消した。

なのに・・・明らかにおかしな点がある。


「おい孫六爺さん、随分難しい顔して考え込んでいるじゃないか?

一体何を悩んでいるんだい?」


「おい、トトノエいい加減その呼び方はやめろっていつも言っているだろ?

・・・・なあ、なんでこの世界の植物は戦争の影響を受けていないんだ?

いや植物だけじゃない、魚とかもそうだ。何か理由があるのか?」


「ふむ、気づいたのか。まぁ気づくよね普通。土の穢れで作物が作れないなら

当然植物全体に影響していないとおかしいもんね」


「そうなんだよ。作物が世界的に作れないほどに土が穢れているなら植物が

絶滅していてもおかしくないよな?」


前世の感覚で言えば毒による土壌汚染や放射能による汚染に近いだろうか?

だとすれば全ての動植物に影響がでていないとおかしいのだ。

確かに少なからず影響はあって動物やモンスターはほとんど見かけないし

森の植物は所々枯れている。でもその程度だ。

その程度で済んでいるからこそまだ俺達は生きながらえている。


「それはね豊穣神である『ウカノミタマノカミ』様の御力によって植物を

豊漁の神である『コトシロヌシ』様の御力で海と川に住む生き物たちを

救済されたからに他ならない」

「救済・・・?」


「ああ、汚染されたマナに対してある程度の耐性を付与したのさ。

だからこの世界では何とか生態系をギリギリ維持できているんだ」

「じゃあ作物も・・・」


「それは無理だよ。そもそもこの世界がこうなったのは人間が戦争を始めた

からだよ?それを人間だけが食べる作物の為に、態々神が力を

揮わなくちゃいけないのさ。」

「それはそうだが・・・・」


確かに戦争を始めたのは愚かな達だろう。

それも恐らくは一部の権力者たちだ。

この世界の全ての生物に影響を与えた功罪は大きいとは思う。

しかし何の罪もない善良な人達だって多くいたはずだ。その人々達までもが

その代償を支払うのはさすがに理不尽と感じてしまう。


「まぁ・・・とは言え豊穣神様は慈悲深いお方だ。それでもなお人々を救い

たいと考えておられたのだが、多くの植物を守るために御力を使い過ぎて

しまってね。ただでさえ人が作った作物に加護を与えるのには多大な力が

必要になるんだ。彼女が力を取り戻すまでかなりの時間を要するだろう」


「そうだったのか・・・・もしかしてそれで俺がこの世界に?」

「そういうこと。君は豊穣神の代理人として五穀豊穣の権能を使い作物を育て

収穫することで、それが豊穣神様への供物となる。

だからいっぱい作物を育てれば育てるほど神様は力を取り戻していけるんだ」


「それは責任重大だな。・・・・しかし今は作物を作れるのは俺と

マーガレット達たった三人しかいない。しかもリーシアはまだ子供だぞ。

たくさん作るにしても限度があるんだが・・・」


俺は勇者じゃなければ英雄でもない。

前世はただの農夫、米農家だ。

米作りのノウハウについては自信があっても世界規模の飢饉に対してとなると

さすがに無力だ。圧倒的に人手が足りない。


「それには心配に及ばないよ。君には縁結びの神様からも助成を得てある。

これからこの土地には勝手に人が引き寄せられるだろう。じきに人手の部分も

解決するだろう」


そういう事らしい。であれば今は自分にできる事をするしかないか。

といっても作物を作る以外に大したことは出来ない。

それでもいい。俺の作った作物が誰かの為になるなら農家冥利に尽きる。



──それから数日後、トトノエの言った通り俺の畑に来訪者があった。


「オスカー様!!畑に血まみれの女性が倒れています!」

「なんだと!?どこだ?」


マーガレットに案内してもらいその場所に向かうと畑の横の茂みに

血塗れの女性兵士が倒れていた。息はあるようだが出血が酷い。

これは早く手当てをしないと手遅れになるな。


「マーガレット、足の方を持ってくれ。家に運んで手当てをしよう」

「わかりました!」


こうして俺は傷ついた女性兵士を家に運び込んだ。

縁結びと言っていたが、まさかこんな形で?

まあいいか。流石にこんな状態の女性を放っておける訳もないしな。

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