まえがき
連投ですぜ。
お父様、お願いします。辞めて下さい、止めて下さい。私なんかに固執しないで下さい。私に使うお金を国のために使って下さい。早く新しい妻を選んで下さい。私なんかを生かすために、高価な魔石を大量に使わないで下さい。どうせ死ぬんです。早く死なせて下さい。赤子なんて、またつくればいいんです。国王なのだから、非情な計算も、非情な決断も出来なければいけないじゃないですか。お願いします。装置を止めて下さい。死なせて下さい。ゆっくりと私は死へ向かっているんです。死ぬんです。それが運命なんです。それに逆らって、無駄なお金を使わないで下さい。それは国のためのお金です。早く止めて下さい。早く辞めて下さい。早く殺して下さい。どうせ、赤子を治療する術なんてないんです。早く、早く、早く、早く、早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く。
赤子から立ち昇る魔力が意識を伝える部屋の前で、壁を叩く音がした。それは、国家予算を食い潰してまで、魔導具【遅刻の揺り籠】を5年ものあいだ起動させていた男の、心からの無力感の現れだった。
「アリス………………嗚呼、アリシア。僕だって、解っているさ。でも、でもっ。心から愛した女の生きた証しが残らないなんて、僕は嫌だ――。嗚呼、こんなスキルが嫌になる!!中途半端に希望を見せて、それでさえ、ただの可能性だ。でも、アリス。必ず、必ず生きて貰うさ。たとえ、君になんていわれようと………………」
出産前に病に罹って死んだ妃の娘、たった1人の、自分たちの子供。心から愛した女の生きた証しを残そうと、最愛の娘に国家予算を使った大馬鹿は、それでも天才だった。国家予算を魔導具の運営に使っても尚、黒字経営に出来る程度には賢王であった。だから、
「アリス。5年前から、君が救われる未来は確かに存在するって知っているんだ。だから、僕は諦めないよ。それが出来る人間を、見つけたから」
彼、フェリクス・フォン・エクリアスは、娘を諦められなかったのだ。父親である前に王であるべきだが、そうはなれなかったのだ。そして、彼は今日も赤子から渦巻く魔力によって伝えられる意識の奔流に無力感を感じる。それが娘に対する贖罪だと思い、そして、偶に未来の可能性を映す、その瞳を信じて。
え?赤子が魔力で意志を伝えるのはおかしい?しかも時が遅くなる部屋で?
ふっ、その辺を考えていないとでも?アリスちゃんはとある職業に就いています。




