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本好き勇者のお店屋さん〜クソ雑魚勇者の辺境店舗  作者: 夏飼 今日輸
序章 本選び 本好き勇者と魔物達
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14/42

13ページめ

 本を読んで過ごして、3日目。アークが言っていた日だ。法魔さんを呼んで、アークの元に送ってもらう。一体、話ってなんだろう。

 いつも通り、気の抜ける挨拶をして室内に入る。


 ゴン………ゴン………ゴン………。


 ナンダコノ『しゅーる』ナコウケイハ。


 ゴン………ゴン………ゴン………。


 そこでは、アークが壁に頭をぶつけながら、何かをブツブツとつぶやく、という光景が広がっていた。『シュール』って、こういう事なんだな。少し現実逃避しつつ、アークに声をかける。


「アーク?どしたの?」


 すると、死んだ目でアークが答える。すっごく怖い。


『済まん。少し、自分が嫌になってな』


 ほんとに、大丈夫か?この人。


「え、えーと、用事は?3日待ってくれって言ってたじゃん」


 少し戸惑いながら、アークに本題を切り出す。なんだか、いつものアークじゃない。僕の知っているアークは、こんな死んだ目をしていない。


『カイト。済まない―――』


 僕の知っているアークは、こんな覇気のない声を出さない。

 アークは、そこで言葉を切り、何かをこらえるようにうつむく。


『ここから、でていってくれ』


 そして、そう言った。


「―――は?」


 ひゅっ、と喉が鳴った。怖かった。家族だと思っていた人から、こんな事を言われるなんて、思っていなかったから。〈なんで〉。そんな自分の疑問に答えるため、脳が高速で回転する。アークがまた謝る。少し遅れて、僕もそれに反応する。


「魔神様の指示?なら、しょうがないよ。法魔さん、魔力、貸してくれない?」


 その言葉にアークが目を丸くし、法魔さんが目を輝かせる。


『なんで、解ったんだ?』『はい!喜んで!!』


 これから特に必要になるであろうスキル指南書を、法魔さんの魔力を借りて取り寄せながらアークの質問に答える。もちろん情報輸入先生に選んでもらった。こうした方が確実だ。


「魔神様に言われない限り、家族同然の人を捨てない人だって、信じてるから」


 まぁ、結局の所、それだけの事だ。その理由だったらいいなと思った。それ以外の理由だったら、嫌だと思った。それ以外、信じたく無かった。


『ありがとう』


 アークがそんな事を言う。僕は、それに「当たり前の事じゃん」と返そうとする。


「がぽっ」


 でも、口から出たのは、そんな音と血液混じりの唾液だった。うへ。魔力の過剰出力(キャパシティオーバー)だ。手元に出現した本を見て、アークも気付いたらしい。頭に手を当ててから、僕の顔を拭き始める。ちょ、荒い。痛い痛い痛い。


「ちょ、ア、やめ、痛いって!」


 必死で抵抗して、顔の皮が剥がれないうちに止めてもらう。本当に、剥がれるかと思った。


『殺していいですか?』


 その声に振り向くと、臨戦態勢の法魔さん。それを全力で止めて、改めてアークに言う。


「では、用意を済ませたら、出て行かせていただきます」


 声が震えていなかったか、自分では解らなかった。




 家に帰って、マジックポーチの材料を法魔さんにもってきてもらう。その間に、錬金術のスキル指南書を読んでおく。さっき取り寄せた物だ。


「ふぅ」


 息をついて本を閉じる。辺りを見回すと、隣に法魔さんが立っていて、少しびっくりした。読み終わるのを、待っててくれたのだろうか。本を読んでいると周りが見えなくなる癖、直したほうがいいかな?


『こちらが、《イーターフロッグの胃袋》です』


「ありがとう、法魔さん」


 いったい、どれぐらいの時間で10枚も取ってきたんだろう。イーターフロッグって、胃袋を破壊しないように仕留めるの、かなり難しいはずだよな。異次元胃袋でなんでも喰っちゃうし。ん?よく見ると手形っぽいのが………。胃袋を掴んでひきず―――。うん。これ以上考えないようにしよう。

 事前に調べておいたマジックポーチの作り方の手順通りに、胃袋5枚に錬金術と空間魔法、そして時間操作を込める。すると、光と共に胃袋がポーチ型に変化した。『なろう系ファンタジー』作品のお約束、[内部時間の止まる物入れ]の完成だ。けっこう『チート』のお約束だよなー。


「これで僕も『チート』の仲間入り。ふふふ」


『? 何を言っているのですか?』


「なんでもないデス」


 恥ずかしい。あとは、出発の準備だ。

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