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レイヴン戦記  作者: 一弧
第一章 急転
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魔女達の後夜祭

 『悪魔の饗宴』は終焉を迎え、オルトヴィーンとフリートヘルムは用意された寝室へと案内された、フリートヘルムの部屋の前まで案内したカイが寝室に入る前のフリートヘルムに声をかける、


「一人寝がお寂しいようでしたら、だれか伽を申し付けますがいかがいたしますか?」


「いや、けっこうだ!」


「では、失礼します、よい夜を。」


 友好諸侯の領地に招かれた際に、女を供与されるのはよくあることだが、あんな光景を見た後で、さっきまで嬉々として男の物を潰していた女達と行為に及ぶ気には全くなれなかった。

 オルトヴィーンに言わせれば『悪魔の饗宴』という事になるが受け止め方は立場によってかなり異なる物があった、今回嬉々として参加した女達は皆知っていたのだ、もし奴らの奇襲攻撃が成功して村が陥落する事態となったら、自分達が慰み者にされたであろう事実を。余談ではあるが、この晩、祭りの昂った気分で夫に挑みかかったが、どうも夫の元気がなかったという声があちこちで聞かれた、実際にテオドールもこの日は、後夜祭を開く女達を尻目に一人早めに就寝した。


「「「「「「かんぱ~い!」」」」」」


 領主屋敷の女性陣は全員そろって後夜祭と称する飲み会を開いていた、ちょうどオルトヴィーンの持って来たワインの樽があったので、樽を傍らに置いての酒宴となった。

 誰も口に出しては言わないが、もし敗れていたら彼女達こそ村の女達よりはるかに惨たらしい扱いを受けていたであろう事実を支配者であり、状況によっては征服者の側にまわる立場であるが故に知っていた。だが終わってしまえばそこまでで、それほどの高揚感はない、ただゴミ掃除が終わった程度の認識であった、それに復讐とも言える行為が終わったことで、ゲルトラウデにも一つの区切りがついたであろうから、その話題に触れることは蒸し返しに繋がりかねない、今日を境に永遠に葬り去るのが彼女の為であると、皆そう判断していた。

 そうなると専らの話題はフリートヘルムについてである、まずはユリアーヌスが口火を切る、


「まず、どんな人なの?まぁなんとなく分かった気はしますけどね。」


「うん、あんな感じの人。ただ弁護するなら行政官としては優秀だと思うわ、領地の運営に関しては領内経営の大半を父から引き継いで特に問題なく運営してるみたいだからね。」


「ああ・・・官僚と戦争屋じゃ相性最悪なのも分かるわ・・・・・」


「端的に言うとそうなるんでしょうねぇ・・・・・」


「二人の前で言うのは心苦しいけど、宮廷貴族の考え方としては、あれが正論なのよねぇ・・・・」


「私のせいで恥をかかせてしまって申し訳ないです。」


「いいのよ、だいたい同じテーブルで飲み食いしてる光景見たら、うちのなんてギャーギャー文句言い出すわよ、品格が~家格が~って」


 ブツリとソーセージにフォークを突き立てながら話すヒルデガルドを見ると、言いたくなる気持ちも分ると一同は思ったが、とりあえず黙っておくこととした。


「現実的な問題としては、世代交代後でしょうね」


「戦争で大きな貸でもできれば、オルトヴィーン伯爵のように、友好関係が築ける可能性も高いんでしょうけど、そんな都合よく伯爵領に隣接する地域で戦争が起こるわけもないですからね。」


「いっその事、伯爵領に攻め入って全部制圧しちゃったりして」


「自分の実家だろう・・・・・・・・」


「だから、私が継承する~~みたいな感じで~」


「そうなると、どこからまず攻めるのか地図を持ってこい!」


「はい!」


 地図上の村のポイントを示しながら、どう攻めればいいかを、ああでもないこうでもないと、議論をはじめた、エレーヌもかなり酔いは回ってきており、「いざとなったら私が一騎打ちでしとめる!」と騒ぎ出したかと思うと、真剣に進軍ルートを真顔で語っていたゲルトラウデが何の前触れもなく大量に嘔吐してぶっ倒れたり、収集のつかない後夜祭はいつ果てるともなく続いた。



 部屋をノックする音で目が覚めた、朝食の準備ができたとの事だったのだが、違和感があった、その呼び出しの声は男の声であり、聞き間違いでなければテオドールの声に聞こえたからである。違和感の正体を突き止めるべく、着替える事もなく部屋の扉を開けると、やはりそこにはテオドールが立っていた。


「貴公は一体何をやっているのだ・・・・・・」


「え~と、どういう意味でしょうか?」


「こんな呼び出しなど侍女の仕事であろう!家格が・・・あっいや・・・少しおかしいとは思わんのか?」


「まぁ、多少は・・・・」


「なら、何故文句の一つも言わん?」


「怖いからです・・・・・あれ見て女は怖いって思いませんでしたか?」


 何も言えなくなってしまったが、当主に侍女か侍従のような真似をさせ、本当の侍従や侍女は何をしているのだと、気にかかり、聞いてみることにした、


「この家では侍女や侍従はどうしているのですか?さすがにいくらなんでもおかしいかと。」


「侍従はおりませんで、従士長が一名いるだけです、その従士長は伯爵家の家人のご案内をしております、さすがにそれを私がやるのはまずいですからね・・・・侍女は全員二日酔いで、今日はちょっと動けそうにないのです・・・・すいません。」


「すまん、聞き間違えたようだ、もう一度言ってくれ。」


「全員二日酔いで倒れてます。」


 開いた口が塞がらなかった、名目上は侍女となっているヒルデガルドがどうなっているかも予想がついてしまうため、何も言えなかった。さらに追撃とも言うべき発言があり目眩を覚えた、


「ああ、朝食は腕に寄りをかけて作りましたので、期待しておいて下さい。」


「え?貴公が作ったのか?」


「はい」


 彼は自分の常識が音を立てて崩れる気がした、しかしそれもまだ序の口で、滞在中にいくつもの常識がここでは通じず、規格外という言葉の意味を知る事となる。 

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