エピローグ
予想はかなり早くに的中する事となった。
商会が村へ到着した3日後に侯爵家から正式に縁談の申し込みが入って来たのである、完全に筋書き通りであり3日では他との婚姻の成立など絶対にできないタイミングであっただけに、完全に詰んだ状態でシナリオは進行していたことが伺えた。
縁談の内容はレオ公爵の後継者にあたる長男が妻を亡くし現在独り身であるため、その後妻にどうか?という内容であった。末端宮廷騎士家にとってはありえないほどの好条件であった。
何度も確認を取った末、エトヴァンも納得しての了承となったが、その際には親族として式に参加するために南方の公爵領地まで行く事となり、面倒な事を感じさせたが、今後場合にっては戦場となる場所を実際に確認しに行く目的もあるため、行かざるを得ないと感じていた。
「戦争より気が重い・・・」
彼の呟きは本心からのものであったが、逆にヒルデガルドはこれからの外交戦に想いを馳せるかのようであった。
「公爵はどう出るか、腹黒ババァが難敵と言った相手のお手並み拝見と行きましょうか」
彼女の中で敵討ちとは違うが、ライバルの討ち洩らした難敵を討ち取ってやるといった感情があったのかもしれない。
そんな新たな戦いに挑むような面々を眺めながら、一人の人物が静かに退場しようとしていた。
三代に渡って仕え続けた忠臣も寄る年波には抗えず、静養生活に入っていたがそれも限界が訪れようとしていた。
「ご苦労様でしたね、ただもう少し土産話を持っていかれたらどうですか?」
「いえいえ、もう十分過ぎるほどですよ、レギナント様になにか言伝があれば伝えておきますが?」
「それはいつか自分で伝えますから結構ですよ」
カイにとって思い出話ができる相手はエレーナくらいしかいなくなり、初代であるジギスムントについて共に語れる相手などは誰一人残っていなかった。思えば数多くの戦友に先立たれながら、最後の主が盆暗からは程遠い人物である事に安心感を覚えながら、ベットの上でゆっくりと息を引き取る事が出来るのはどれだけ幸せなことであろうか?そんな事を考えながらの最後であった。
世代交代の波はどこの領地にも訪れていた、オルトヴィーンも正式に家督の継承を発表し、ヴァレンティンの摂政の職を辞し正式にフェルディナントの親政が始まる事となった。
山中にある小領地における老臣の死は世にとってとるに足りない事であったが、この村において世代交代の過渡期を象徴するものであった。
その葬儀は本人の意向もあり地味なものとなったが、村人の多くは参列し、この村の成り立ちから関わった人物の死を悼んだ。
『伝説の生き証人の死は伝説の終わりを意味し、創世の神話の語り部は三流詩人の手に委ねられた』
後世の詩人が伝える葬儀の模様であった。




