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第11話 ヲタク少女、実力を発揮する


 ◇


 ユイたんさん、そして無事に垢バレしたあたし、田中コトネはダンジョンを進む。


 その時、


 ピキィン!


「むむっ!」


 あたしはモンスターの気配を察知しました。


 周囲を見渡し、対象を確認。

 それは、赤黒い毛並みの巨体の姿。


「あれは……」


 ブラッディベアー。

 鋭い牙に巨大な牙を持つBランクモンスター。

 身体に返り血のような真っ赤な模様があることで、その名が付けられました。


「コトネちゃんすごいね、さっきのホーンラビットの群れといい、あんな遠くのモンスターを見つけられるなんて……!」


 ユイたんさんは、額に手を当てながら言いました。


 "それ、ワイも思った"

 "目を凝らしてようやく見える距離"

 "プロダンチューバーでも、こんな距離の索敵は難しいぞ"

 "スキル……はないんだもんな"

 "でも何かカラクリがあるとみた"


「これはですね、なさすぎて得たものがあった……とでも言いましょうか」


 "よく分からんけど深いな"

 "とんちか何か?"

 "言葉遊びか"


「もしかして……コトネちゃんが魔力を持っていないのと関係してる?」


「イグザクトリーでございます、ユイたんさん!」


 あたしは紙吹雪でユイたんさんを讃える。


「このあたし、田中コトネが魔力ゼロなのは周知の事実。誰しもが持つものを持ちえない。しかしそれは、自分の知らない概念に対して敏感(・・)になるということ……!」


 簡潔に言うと、あたしは人やモンスターに宿る魔力を感じ取る(・・・・)ことが出来るのです。

 通常、魔力は目には見えず、魔道具を使わなければその存在を確認出来ません。

 これは、魔力を持つ方々にとっては常識……らしいのですが、どうやらあたしは違ったみたいで。

 何というか……生まれつき出来たことなので当たり前になってるんですよね。

 ブラッディベアーを見つけられたのも、モンスター特有の獰猛な魔力を感知したからです。

 まぁとにかく、魔力が備わっていないあたしだからこそ、出来る芸当なのであります!

 

「ちなみに、集中すればもっと広範囲を探知できます!」


「すごーい! コトネちゃんならどんなモンスターでも見つけられるね♪」


 "それめっちゃすごくね??"

 "不意打ちとかまず効かないじゃん"

 "常時、索敵スキル発動してるようなもん"

 "索敵スキル自体が割とレアなのに"

 "レアモンスター狩りとか捗りそう"


 おおう、あたし、褒められています……!

 思えば、この能力を説明したことは数える程度、知っているのはマブダチのマキナちゃんくらいです。

 魔力ゼロという事実を説明しないといけないので、あまり勧んで話すことはないのです。


 ブラッディベアーは、この先にある『遺跡の森』手前をのっそり歩いている様子。


 このまま行けば、間違いなくかち合うでしょう。


 "コトねる、今までの話が本当なら、あそこのブラッディベアーも瞬殺出来るんじゃね?"

 "いやぁ流石に無理でしょ〜"

 "そうだなぁ、あの遠くのブラッディベアーを瞬殺して、またすぐに戻って来るとかしない限りはなぁ〜"

 "出来ない出来ない"

 "どうだろ〜口だけだったりしない?"


「なっ、あたしは決して嘘は付いてませんよッ!!」


 むきー!

 あたしがDライバーに向いてないことは、あたしの素を見てもらわないと意味が無いのです!


「ユイたんさん、ここはあたしが!」

 

 あたしは踏み出し、遠方のブラッディベアーに迫る。


 ビュンッ!

 音を置き去りにする一歩、すぐさまブラッディベアーの後ろに着き、飛び付く。


 グアッ!?


 そのまま首に腕を回し、捻り上げる。  


「せいっ!」


 ゴキッ!!


 だらん、とブラッディベアーは力なく崩れ落ち、魔石に姿を変えました。

 わざわざ正面から必要はありません、先手必勝です。


 あたしは魔石を持ったまま、すぐさまユイたんさんの元へ戻りました。


「どうですか、これで分かっていただけましたか!」


「すごいよコトネちゃん! Bランクのブラッディベアーを、気付かれる前に倒しちゃうなんて……しかもあんなに早く!」


 "マ、マジかよ……!"

 "出来ちゃうんかいいいいい!?!?"

 "プロの暗殺者かよ"

 "ノリで言っただけなのに"

 "申し訳ございませんでした、コトねる様"


 むふーどうですか、どうですか! 


「やっぱりコトネちゃんDライバーに向いてるよ、絶対始めた方が良いって! 『戦乙女(ワルキューレ)』に入って一緒に配信しよ!」


 "マジでやった方が良い"

 "コトねるがDライバーやるなら間違いなくフォローするよ"

 "俺も"

 "ワイも!"

 "期待の新星"


 ふええええええええええ!?!?

 な、何かマズい流れになってますよぉ!

 というかコトねるって……まるでDライバーちゃんの愛称じゃないですか!


「絶対やりません! あたし、Dライバーは絶対やりませんので!」


「え〜もったいないよぉ〜」


 仏頂面のユイたんさん、そんなお顔も可愛らしい……じゃなかった!

 Dライバーちゃんは崇高な職業、あたしのようなモブが入ってしまうことで、価値を下げたくはないのですよ。


「分かった……なら、コトネちゃんの魔力探知、もう一度見てみたいなぁ〜」


「ふえ?」


「だってとってもカッコよかったもん、見せてくれたら嬉しいな」


「うーん、ですが……」


「駄目かなぁ、見たいなぁ、コトネちゃんの素敵なところ、もっと見たいなぁチラッチラッ!」


「ぐっ!?」


 期待されている……あたし、最推し(ユイたんさん)に期待されてます!

 これ以上、あたしが目立つとマズい気がしますが……。


 ここで裏切るなど、出来るはずが、ない!


「――し、仕方がありませんねぇ、ちょっとだけですよ!!」


「わぁい、私すっごく嬉しい!」


 "チョロいな"

 "あっけなく落ちたな"

 "チョロイン"

 "田中チョロインコトネ"

 "推しと押しに弱いチョロインコトねる"

  

 チョロくて結構!

 推しを悲しませること、それだけは絶対NGなのです。


 こうなったら全力フルパワーを、全細胞を、魔力探知に集中!


「むむむむむ!!!!」


 ピキィン!

 遺跡の森にて、大量の魔力を感知!

 澱んだ魔力が複数、大きい物が1つ。

 

 そして、これは……。


「マズいです!」


「どうしたの……コトネちゃん!」


 あたしは遺跡の森に目を向ける。



「――誰かがモンスターに襲われています!」



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