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今世もぼっちなのでソロでダンジョン全踏破します〜【スキル:孤独】持ちの配信者、ボス部屋も埋めたいので失礼しますね〜  作者: 絹田屋


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第18話 残機、って言うらしいですよ


 次の日も、ウロボロス大迷宮に潜った。同じ階層の隅々まで。変動パターンに合わせた歩き方にも、だいぶ慣れてきた。


 昨日の小部屋のことは——まあ、考えても仕方ない。ギルドに報告したらダンジョンニュースになって。発見者としてちょっと注目を集めることになってしまったけど。


 俺はマスを埋める。それだけ。

 ……はずだったんだけど。

 通路の先に、人がいた。やたら明るい色の装備。こっちに気づいて、ぶんぶん手を振ってくる。


「どーもっ! あんたが噂のマッパーさん!? 俺の死体、見つけてくれた人だよね!?」


 〔だんちょー〕本物のワンモアきたああ

 〔ねむ〕うわ生きてる

 〔名無し〕昨日の死体の本人が来た件

 〔通りすがり〕情報量の暴力


「あっどーも。そろぼっちさんとこの視聴者さん、こんちわ〜! 俺のカメラはそろぼっちさんの顔隠してるから安心してな! まぁ言うても配信通したら顔は非公開になるようご本人が設定済みなんだけどさ!」


 ワンモアさん、だ。くるくると変わる表情に、明るい声。いわゆる明るいイケメン、みたいな雰囲気。

 昨日の死体と、同じ顔。同じ装備。でも、こっちはぴんぴん動いて、笑ってる。


「いやー、バズってたよ! 『そろぼっちが深層でワンモアの遺体発見』ってさ! あれ、俺の残機なんだよね」

「……残機?」

「そうそう。俺のスキルって残機っていうの。ゲームであるじゃん、残機制。俺って自分のストック、何個か持てんの。死んでもひとつ減るだけ。本体はピンピン。それならやる事はひとつ! 死にゲー配信! つまりはそれで回してんのよ。今日はそのネタバラシ配信ってわけ」


 残機。

 ゲームの、あれだ。やられても、ストックがある限り、復活する。それがスキルになってる。無敵みたいに思えるスキルだ。


 でも、と思う。

 この世界に、蘇生はない。死んだら、それきり。

 じゃあ、減った残機は。ストックのひとつひとつは。あれも、ワンモアさんなんじゃないのか。

 昨日の、あの死体。手を合わせたあの人は……。


「あの。残機って……減ったら、戻らないんですよね」

「お、鋭いね。戻らない戻らない。一回使ったら、それきり。まあ、補充は効くんだけどさ」

「……あの死体は、戻らないんですか」

「だね! もう使っちゃったやつだし。あ、回収とか供養とか別にいいよ? どっちも金かかるしさ。装備で気に入ったの、あったら剥いでっていいし! 気にしないで!」


 〔だんちょー〕死生観どうなってんのこの人

 〔名無し〕自分の死体の装備、売り込んでくるな

 〔ねむ〕さらっと怖いこと言う

 〔ワンモア民〕大将はいつもこうだぞ

 〔通りすがり〕明るいのに内容がホラーで草


 からっと、笑ってる。

 悪気はまったくない。本当に、なんとも思ってないんだ。自分の死体を。

 背筋が、またひやっとした。昨日とは、少し違う冷たさだった。


 俺がもし、同じスキルを持ってたとしても、たぶん同じことはできない。

 でも、この人を責める気もない。残機があるのは、この人の力で。どう使うかは、この人の自由だ。

 ……ただ。

 昨日、俺が手を合わせたのは。残機とか、本体とか、関係なかった。そこに、動かなくなった人がいて。だから、手を合わせた。


「変なこと、聞いていいですか」

「どーぞどーぞ!」

「減った残機の、お墓とか。あるんですか」


 ワンモアさんが、きょとんとした。

 初めて、笑顔が止まった。


「……いや。考えたことなかったわ。だって、俺だしなあ」


 〔だんちょー〕急に黙ったぞ

 〔ワンモア民〕大将がたじろぐの初めて見た

 〔ワンモア民〕いつものノリどこいったwww


 お互い、それ以上は言わなかった。

 俺の答えを、押しつける気はない。人それぞれだ。ワンモアさんには、ワンモアさんのやり方がある。

 ワンモアさんは、すぐいつもの調子に戻った。


「いやー、面白い人だわあんた! また絡もうぜ! あ、今から俺、死んでくるんで! そっちでも配信よろしく!」


 ぶんぶん手を振って、奥へ駆けてった。死ににいくらしい。


 止める間も、なかった。

 駆けてった先は——昨日の、あの蛇のところだった。グランドサーペント。俺が、起こさないように脇を抜けた、あれ。


-----


「うぇーい! どーも! 今日も派手にいきまーす! グランドサーペント、素材おいしいんだよね〜! 鱗か牙、とってきまーす!」


 わざと、大きい声を出してる。敵の気を、引くためだ。素材のために、ボスに自分から突っ込む。死ぬのも、込みで。


 蛇が、ぬるりと頭を上げた。

 次の、瞬間。


 鋭くてでかい牙が、ワンモアさんに振り下ろされた。

 ぐしゃ、と鈍い音。

 ビチャッ、と生暖かいのが、頬に飛んでくる。ゴーグルのレンズにも、赤いしぶき。


「……」


 声が、出なかった。

 さっきまで、笑って喋ってた人が。一瞬で、動かなくなった。


 〔だんちょー〕えっ

 〔名無し〕死んだ

 〔ワンモア民〕いつものやつだけど近いとガチで生々しい

 〔通りすがり〕レンズの血、臨場感やばすぎ

 〔名無しがWatching〕グロすぎて草


 奥から、足音。のんびりした鼻歌まじり……。


「ふー、死んだ死んだ! いやー今の痛かったわ!」


 同じ顔。同じ装備。さっき死んだ人が、何事もなかったみたいに、立ってる。

 これが残機スキル……。


「な? こういうことよ! じゃ、今度こそ行くわ! また配信でね〜!」


 死体に刺さった牙。それを抜いて、アイテムボックスに放り込んでいた。ひらひら手を振って、今度は別の方へ、消えていく。

 後には、さっきの死体が残った。昨日のと同じ。動かなくなった、ワンモアさん。


 グランドサーペントは、興味をなくしたみたいに、ゆったりと移動し始める。寝ぐらへ帰るのだろう。


「……さっきまで、こっちのワンモアさんと話してたんですけどね」


 膝をついて、手を合わせた。

 本人が気にしてなくても。これは、これだ。


 〔だんちょー〕南無……

 〔ねむ〕なんか複雑になるね


 残機。蘇生はない。死は戻らない。だからこのワンモアさんはもう死んだ。……世界は、たまに変なことになってる。


 でも、俺のやることは、変わらない。


「ひとまず……。グランドサーペントが陣取ってたところも埋まりましたね。次のマス埋めに行きましょうか」


 〔名無し〕メンタルつよ

 〔だんちょー〕それでこそそろぼっちだよ

 〔ねむ〕がんばれ

 〔ワンモア民〕うちの大将がすみませんでした

 〔通りすがり〕よその配信に迷惑をかけるなwww


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