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今世もぼっちなのでソロでダンジョン全踏破します〜【スキル:孤独】持ちの配信者、ボス部屋も埋めたいので失礼しますね〜  作者: 絹田屋


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第14話 なんか付いてくるんですけど


 配信をつけた。

 ウロボロスの低層。今日も、空白に戻ったマスを埋め直しにいく。

 ……はずだったんだけど。


 なんか、後ろに人がいる。

 ちらっと振り返る。一人、二人——いや、もっといる。冒険者と、たぶん他の配信者。ぞろぞろ付いてきてる。


「…………気のせいじゃないな」


 〔だんちょー〕えっ何

 〔名無し〕何かモンスターきた?

 〔名無し〕なになに

 

「ちわーっス! そろぼっちさんですよね!?」


 やたら声のでかい男が近づいてきた。攻略系の若手配信者っぽい。


「いやー、急にスミマセン! そろぼっちさんの地図、最新のウロボロスが一発で分かるんで! 俺らも便乗させてもらおっかなって!」


 返事も待たずに、ずいっと距離を詰めてくる。


「あっ、申し遅れっした。リク、っていいます。これ、俺のステータスっス! 攻略B級、火力は界隈でも上の方で!」


 ぐいっとステータス画面を見せてくる。やたら距離が近い。


「で、こいつらが俺のパーティ! ほら、お前らも挨拶!」

「タンクのゴウっす。防御ならまかせて……っと、これステータス」

「斥候のサキでーす。罠解除、得意です。あ、わたしのも見てください」

「弓のミオ! よろしくねー、登録もよろしく!」


 ぐい、ぐい、と画面が何枚も突き出される。近い。距離が近い。

 スキル欄が、ちらちら見える。『前向き』『仲間思い』『負けず嫌い』……みんな、俺とは真逆だ。


「うっ。そう、そうなんですね……」


 ……ステータスは、別に聞いてないし。一気に来られると、ほんと困る。


 〔だんちょー〕うわ人きた

 〔ねむ〕そろぼっちに群がってる

 〔名無し〕無料の最新地図そりゃ来るわ

 〔名無し〕てか何こいつら、そろぼっちで売名?

 〔通りすがり〕ソロ配信者にソロさせない圧

 〔名無しがWatching〕便乗ダサすぎでしょ


 地図は配信で出してる。誰が見ようが、勝手だ。便乗もまあいい。

 

 でも、ここはウロボロス大迷宮。高難度ダンジョンだ。


「あの。……マッピングの邪魔はしないでくださいね?」

「そりゃもちろん! よろしくッス!」


-----


 歩き出す。右手を壁に。いつもの右壁伝い。

 でも——全然調子が出ない。

 頭がぎゅうぎゅうする。後ろの気配が多すぎる。誰がどこにいるのか。何人いるのか。気にしないようにしても、勝手に数えてしまう。


 この前の試験は、四人でもなんとかなった。距離を空けてくれたし、みんな地図だけ見て、黙ってついてきてくれたから。

 でも、今日は違った。


「そろぼっちさん、次どっちっスか?」「うおっ、今の隠し通路!?」「あの、今度コラボとか!」


 ひっきりなしに話しかけてくる。気配だけじゃない。声が頭に直接刺さってくる。

 壁を叩く。音がいつもみたいに頭に入ってこない。隠し通路の場所がぱっと浮かばない。


 〔だんちょー〕そろぼっち大丈夫か?

 〔ねむ〕いつものスパスパ感が無い

 〔名無し〕辛そう

 〔通りすがり〕明らか邪魔じゃんこいつら

 〔リク民〕リクさんのおかげで盛り上がってんだろ笑

 〔名無し〕誰だよリク民、巣に帰れ

 〔リク民〕は? 元々過疎ってたくせに

 〔だんちょー〕やめろやめろ荒らすな

 〔通りすがり〕コメント欄が戦場になってきた


「……ちょっと、調子出ないな」


 らしくない独り言が漏れた。


-----


 その時だった。

 足元の床がぐらっと揺れた。変動だ。通路がまた書き換わる。

 書き換わった先に、罠があった。床の色がわずかに違う。落とし穴のサインだ。

 いつもの俺なら、気付いてわざと踏んでから避けてる。でも、今日は……足が止まらなかった。


 〔ぽん酢〕止まって! 次の一歩、抜けます


 とっさに足を引く。

 ぎりぎりだった。爪先の先で、床がすとんと抜けた。下は——見えない。

 しん、となった。後ろのぞろぞろも。


 〔だんちょー〕今の危なすぎ

 〔ねむ〕ぽん酢さんナイス

 〔名無し〕そろぼっちが罠踏みかけるとか初めて見た

 〔通りすがり〕人多いの完全に影響してるやん


-----


 分かってしまった。

 今まではよかった。ラーデンもコモルも、浅くて安全で、構造も動かない。だから、誰が後ろにいようが、好きに埋めてられた。

 でも、ここは違う。変動して、危なくて。そこで人に囲まれると——俺は落ちる。本当に危ない。自分も、この人たちも。

 言わなきゃいけない。


 でも、面と向かっては——無理だ。喉が固まる。素の俺は、人に頼むのがいちばん苦手だ。

 だから、配信に向かって言った。後ろのみんなにも、聞こえるように。


「あの。後ろの、みなさん」


 声が少し震えた。それでも、続ける。


「俺、スキルが『孤独』で。人が近くにいると、実力が出ないんです。前に四人で無理って言ったの。あれ、ガチなんで」


 ぞろぞろしたものが静かになった。聞いてるみたいだ。


「だから……地図は、ずっと配信で出します。それ見て、離れてついてきてもらえると。近くにいられると、こうやって危ないんで」


 しばらく、誰も喋らなかった。

 それから、リクが頭をかいた。


「……っぱ、そうっスよね。すんません、調子乗って」

「リク、気にするな。もう行こう」


 〔名無し〕ほんとこいつら何しに来たの

 〔通りすがり〕気にするなってそれそろぼっちが言うことだろ

 〔リク民〕は? ソロあぶねーからリクさん声かけたんだが?

 〔名無し〕大きなお世話すぎ

 〔リク民〕はーいもう良いですさよなら^^


 コメントが荒れてるのを見ながら、心を落ち着かせるために深呼吸をする。

 

「地図、あんがとな! また配信で見るわ!」

「いや。地図は、好きに使ってください。それは、ほんとに」


 複数の気配が、すっと引いていった。離れて、でも配信は繋いだまま。各々の画面で、俺の地図を見てるんだろう。

 後ろの気配が消えた。

 頭の中が、すうっと軽くなる。


 ……戻ってきた。いつもの俺だ。


 右手を壁に当てる。叩く。音がすっと頭に入る。隠し通路の場所がぱっと浮かぶ。罠も変動も、全部見える。


 〔だんちょー〕お、戻った

 〔ねむ〕いつものスパスパ感

 〔名無し〕距離取ったら復活したの面白すぎる


 不思議な感じだった。

 後ろには誰もいない。一人で歩いてる。いつも通り。

 でも、画面の向こうにはみんないる。さっきの人たちも、常連も。

 離れてるから、ちょうどいい。


 ……これくらいの距離が、俺にはいちばん埋めやすい。

 それに、独り。独りが一番、息がしやすい。


「はい。じゃ、気を取り直して、続きいきますね」


 さあ、いつものやつだ。ひとりで、ゆっくり。


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