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今世もぼっちなのでソロでダンジョン全踏破します〜【スキル:孤独】持ちの配信者、ボス部屋も埋めたいので失礼しますね〜  作者: 絹田屋


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第12話 ウロボロス、でかい


 配信をつけた。

 いつものコモル旧坑道。でも今日は、ラーデンを通ってきてない。


「はいどーも。あ、先に報告です。コモル、直で入れる入り口、見つけました」


 〔だんちょー〕は?

 〔ねむ〕またしれっと

 〔名無し〕入り口て

 〔通りすがり〕今までラーデン経由じゃなかったっけ


「この前、外周のマス埋めてたら見つけたんですよ。地上に出る縦坑があって。塞がってたんで、どかしました」


 〔だんちょー〕どかした???

 〔名無し〕岩盤を??

 〔ねむ〕通勤路の最適化で草


 マスが繋がると、こうなる。埋めた甲斐があるってもんだ。


-----


 コモルの奥。例の結界の前。

 この前はここで弾かれた。でも今日は——。ゴーグルの隅で、B級の印がちかっと光る。

 結界に手を触れる。すうっと抜けた。


「……入れた」


 その向こうは——


 でかい。

 とにかく、でかかった。

 天井が見えない。ゴーグルのライトが上まで届かない。横もどこまで続いてるのか分からない。今までのコモルとも、ラーデンとも、桁が違う。


「うわ……ウロボロス、でっか」


 配信の視聴者数。見たことない速さで、数字が伸びていく。

 チャットも追いつかない。速すぎて、もう一個ずつは読めない。


 〔だんちょー〕うおおおでかい

 〔名無し〕でか

 〔名無し〕は????

 〔名無し〕wwwwww

 〔ねむ〕画面の奥が暗くて見えない

 〔名無し〕草

 〔通りすがり〕視聴者爆増しててワロタ

 〔名無し〕B級なりたてが来るとこかこれ

 〔名無し〕↑な


 遠くで、地鳴りみたいな低い音がした。何か大きいのがいる。格上の気配。

 ……まぁ、向こうが来なけりゃそれで良い。俺は攻略したいんじゃなくて、マスを埋めたいわけだし。


-----


 俺は歩き出した。

 右手を壁に当てる。いつもの右壁伝い。でかかろうが、やることは同じだ。一マスずつ埋めていく。

 歩いて、叩いて、埋める。方眼紙のマップに、色がついていく。

 埋めるマスがたくさんある。これは——最高だ。


 ふと振り返る。

 さっき埋めたはずの通路。そこの色が抜けていた。空白に戻ってる。


「……あれ?」


 もう一度近づく。埋め残しや埋め忘れはあり得ない。

 ……というか、壁がない。さっき確かにあった壁が。代わりに、知らない通路が口を開けてる。

 チャットに投げ銭付きの、派手な色したスーパーチャットが飛んでくる。


 〔ぽん酢〕それ、変動です。たまにある、地形が勝手に書き換わる現象です

 〔ぽん酢〕地図が当てにならなくなります。遭難に気をつけてください

 〔ぽん酢〕このへんの低層は、まだ穏やかなほうです。動くのは数日にいっぺん。そのかわり、動くときは一帯まとめてです


「あっ、ぽん酢さん。有力な情報と投げ銭ありがとうございます……。変動。変動っていうんですか、これ」


 〔だんちょー〕これで穏やかなの……?

 〔ぽん酢〕運がいいですね。初日に寝返りに立ち会えるのは、めったにない

 〔だんちょー〕えっ

 〔ねむ〕埋めたとこが消えた?


 俺はもう一度マップを見た。

 埋めたところが、ぽつぽつ空白に戻っていく。片っ端から、崩れて書き換わる。

 当たり前だけど、こんなこと初めてだった。コモル旧坑道は広くてゴツくて見慣れない罠が多めだったくらいで。ラーデン公営ダンジョンも一部の難所はあったけれど。埋めれば、埋めたままだった。でも、ここは——違う。


 埋めても、埋まらない。

 歩いた分が形にならない。埋めたそばから、なかったことになる。

 地図は裏切らない。そう思ってた。歩いた分だけ、ちゃんと返ってくると。

 でも、ここのは。書き換わっていく。


 しばらく立ち止まってた。

 

「…………」


 〔だんちょー〕あれ、もしかしてメンタルやられた…?

 〔ねむ〕そろぼっち、大丈夫?

 〔名無し〕固まってる

 〔通りすがり〕そりゃ埋めても消えるんじゃキツいわ…

 〔名無しがWatching〕無言こわい


 書き換わるってことは……。

 このマップは、永遠に完成しないんじゃないか。

 ……永遠に、埋めるとこがあるってことなんじゃないか。


「最高じゃん」


 〔だんちょー〕前言撤回

 〔ねむ〕そういう結論

 〔名無し〕メンタル強すぎだろ

 〔通りすがり〕地獄を天国と言い張るな

 〔ねむ〕この人ほんと地図が好きなんよ


「変わるなら、変わるたびに埋めればいいんで」


 〔だんちょー〕付き合うわ。こっちも暇だし

 〔ねむ〕いってらっしゃい

 〔名無しがWatching〕作業用が無限に伸びて草


 俺はまた右手を壁に当てた。

 ……ほんとは、変わる迷路に壁伝いは効かない。たどってる途中で壁ごと組み変わったら、「片壁をたどれば必ず全部回れる」の理屈が崩れるからだ。それでも、右手は当てる。理屈じゃなくて、癖と、験担ぎ。変わった分は、変わった後の壁で、またやり直せばいい。

 空白に戻ったマスを、もう一度埋めにいく。何度でも。


 果てしない暗がりの奥。埋めても、埋めても、終わらない。

 ……それのどこが不満なんだ。

 さあ、続きだ。崩れたそばから、また埋めればいい。


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