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魔王は世界の平和を希う  作者: うさみかずと


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4/5


 扉を開けると来店を告げる鐘の音が聞こえてくる。


「おっ来たな二人とも」


「みんなお待たせぇ、リリアとロキ無事に帰還しましたよぉ」


 リリアが高らかにそう言うと酒場に集まっていた村人たちが一斉に拍手と感謝の言葉を上げた。


「ご令嬢私たちの村を悪政から救っていただきありがとうございました!」


「ご令嬢一行に万歳!」


 リリアを讃える声が降り注ぐ中、中央に用意された円卓には仲間たちが勢ぞろいしていて、


「お嬢、ロキ坊」


 スケイルが二人を手招きする。


「なんだなんだリリア、デコに包帯なんて巻いて」


「一発くれたやったの、ご愛居だよドラコ」


「リリアーヌ心配しました、今すぐ私の魔法で回復を」


「ありがとアーシャ、でもあとででいいよ」


「ご令嬢ささどうぞ」


 席に座るとさっそくアルダンがグラスにワインが注ぎに来た。


「スケさん、カクさんご苦労様……ドッペルは?」 


「ドッペルなら今ご令嬢のグラスにワインを注ぎましたよ」


 振り向くとアルダンの身なりをした男が舌を出していた。男は両手で顔を隠すと全く別人に姿を変えた。


「ご機嫌麗しゅうお嬢さん」


「ドッペルも潜入捜査ご苦労様、ほらこの子がロキだよ」


 ドッペルが見下げるとロキは不思議なものを見るような顔した。


「初めましてロキ、私はドッペル・エイトマンちゃんだよ」


 そう言い終わるころには茶髪の爽やかな男性から褐色肌の幼い女の子に変化しておりロキとほぼ変わらない背丈になっていた。


「仲良くしてね」


 そう言って手を握られ、どう反応してよいか分からないロキを一同はからかうように笑っていた。


「ドッペル、新入りを困らせないの」


「分かりましたよお嬢さん、いつもどおりにしますよ」


 肩をすくめながら茶髪の爽やかな青年の姿に戻りひとつ空いた席につくとリリアはンフフと笑ってグラスを手に取った。


「みなさん、まずはこのような会を開いていただきありがとうございます。私たちはアルダンさんの宿に一泊したのち早朝よりこの村をあとにしますので途中で宴を抜けることを許してください。そして明日からまた平穏な日々をお過ごしください」


 盛大な拍手の後にみなグラスを掲げる。


「それでは平和な村に乾杯!」


 村には久しぶりの宴が始まった。



 ☆☆☆



 深夜、あれだけ騒がしかった酒場の盛況もずいぶん静かになってきたころだった。リリアの護衛のため彼女の部屋で毛布にくるまって瞼を閉じているロキはぼんやり昔のことを思い出していた。


 あの日、ロキが住む小さな町は帝国の魔法軍隊に包囲され一方的な殺戮と侵略を受けていた。自分たち家族はかつて帝国が異世界より召喚した転生者の末裔で強力な魔法も使うことができ、町の自警団と応戦したが圧倒的な魔法の質量で押し切られまるで実験の一部のように蹂躙された。ロキの姉は助からないと悟り自分の命と引き換えにしてロキに魔法をかけた。


「姉さん……」


 思わず言葉が漏れた。


「ロキ坊……ロキ坊」


「はっ」


 身体に触れられてとっさに攻撃姿勢に入っていた。


「おいおい、俺だよ」


「スケイル」


「交代だ。部屋の外にいるドラコの爺さんと変わってきな」


「分かった」


「お前ちゃんと寝たか?」


「寝たよ」


 言葉少なく部屋の外へ出ると巡回中のドラコと目が合った。


「ドラコ交代だ、自室で休んで」


「あぁもうそんな時間か、じゃあルーキーあと一周分この老いぼれと巡回しないか?」


「まぁ別に良いけど」


 二人は廊下を歩き始めた。


「気になるのか?」


「なにが?」


「まったく質問を質問で返すなよ、なんで魔王の娘である平和主義者のご令嬢に俺たちが同行しているのかだ」


「あぁ、そうだね気になってた……ドラコは竜人?」


「ご名答、よくわかったな」


「分かるよ、翡翠の瞳だし、それに魔力量がみんなの比じゃない」


「なるほどリリアの言う通りただの子どもってわけじゃないな」


「そんなことで感心しなくてもいいよ、それにまだ僕の質問に答えてないけど」


 ドラコは嬉しそうに頬を緩める。


「そうだな悪かった、他の連中はどうか知らないが、俺がリリアに従う理由は退屈しないからだ」


「退屈しないから?」


「そうだ、あいつと同行したなら分かるだろ、危なっかしいったらありゃしない」


「そうだね」


「だが、そこが面白い。竜人なんてもんは他の種族の倍は生きる。常に退屈との戦い、長生きも見方を変えれば生き地獄だぜ。でもリリアについて行けばただ生きてたんじゃ味わえないなにか凄いものが見れるそんな気がするのさ」


「ふーん」


「まぁ新入りのロキにはよく分からないかもしれないが、いずれ分かる。俺たちのボスは優秀だ」


 ロキは何も答えなかったがドラコは悟ったように笑って頭を撫でた。


「やめてよ」


「わるかったな、こんな俺にも大昔にお前みたいなガキを育てた経験があってな、その癖が抜けねぇだけだ」


「家族がいるのか、ドラコ?」


「話過ぎちまったようだな、さて俺は一休みするよ、巡回よろしくな」


 わざとらしく欠伸をしてリリアが眠る部屋の隣の部屋に入っていく。


 ロキは小さく息を吐きながらもう一度同じルートを歩き始めた。



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