表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦場からこんにちは Side.B  作者: Aa_おにぎり
三章 君のしんいは?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/41

Cace.38

「そもそもどうやって犯人は国を渡ったんですか?」


警視庁の刑事部でジュリー・ジュネストは首を傾げた。彼女は現在、この一連の紋様事件に関する会議を報告し終えて会議から戻ってきたばかりであった。


「今、入国管理局が総出で調べ上げているさ」


その疑問にジェブロールは疲れた様子で机に資料を放り投げる。


「今のところ紛失したパスポートでの出入国は確認されず、犯人がどうやって海峡を渡ったかも不明と来た」


彼はそう言い、いまだに入国管理局から照合結果の連絡一つもない状況に頭を抱える。


「船を使ったとか?」


ジュリーはそう言うと、ジェブロールは鼻で笑う。


「馬鹿いえ、海峡は最短で三四キロもある。おまけに潮流が激しい上に毎日何隻の船舶が通過していると思っている?」


連合王国と共和国を挟む海峡は常に多数の商船や軍艦が航行しており、潮の流れも激しいため、まず三四キロ以上を航行しなければならず、密入国をしようものなら連合王国の荒れた海で鍛え上げられた沿岸警備隊に見つけられて通報が入る。


「それをやるなら連合王国側に協力者が必要になってくる。犯人は共和国籍の可能性が高い以上、その線は薄いだろうな」


ジェブロールはまずそう否定する。


「おまけに、ロンデニオンの一件は軍の思惑があったって言うんだろう?最初の狙撃が模倣犯で、慌てて入国したとなると…ボートを用意するだけ事件日になっちまう」

「…ですが一応調べておくのは?」

「そう言うのは上に言ってくれ。報告書は自分で書けるだろ」


ジェブロールはそう言うと、ジュリーもそれに渋々頷いてから次の推察をする。


「犯人は顔も名前も割れていませんから、普通にパスポートで出入りをしたのでは?」

「犯罪者がそんなことをすると思うか?」


ジェブロールはまともな犯罪者であるなら、指名手配を避ける目的で偽造パスポートを用いるに決まっていると想定していた。


「でもタバレさんが言ってましたよ?『今回の犯人は自分の行いは正義だと思っている』って」

「そんな馬鹿な…」


ジュリーの言葉にありえないとジェブロールは思ったが、同時にタバレにわざわざ接触をしてきたと言う犯人の動きから妙に否定できないとも思ってしまった。


「おいおい、まさか調べろって言うんじゃないんだろうな?」

「無理ですよ。前後一週間で調べても到底調べ上げられません」


そんな事をすれば数百万人規模で国内外を請わず調べなければいけなくなるので、もはや迷宮入りである。


「何か犯人につながる手がかりでもあった方がいいってのによ…」


ジェブロールがそう溢して新しい煙草に火を付けた。


「…あっ!名前、そうだそうだ」

「どうした?」


ジュリーは何か思い出したようにジェブロールに言う。


「いい名前がありますよ。メメント・モリ」

「はぁ?なんだその名前」


首を傾げるジェブロールになぜそんな命名にしたのかジュリーは言う。


「この前、タバレさんに会った時に部屋に貼ってあったボードに『メメント・モリ』って書かれていたんです」

「…なんだそれ?」

「古い言葉で『いつか必ず死ぬことを忘れるな』って意味だった気がします」


なんでそんな古語を彼女が知っているのか定かではないが、ジェブロールはジュリーに言う。


「まあ、タバレらしい命名方法だな」


ジェブロールはその命名をしたであろう人物が容易に浮かぶと、そこでその仮称をやや気に入った様子で事件を見る。


「捜査会議では、この残りの十七名に監視をつけることを決めました」

「監視?護衛は」

「内務大臣から『これ以上の捜査官を割くのは厳しい』と言う理由で拒否されました」


ジュリーはそう答えると、ジェブロールは眉間に指を当てて軽く揉んだ。


「確かに十七人もいれば護衛なんてやってられないが…」

「あくまでも内務省は逮捕のために釣り出す方法で行くようですね」

「まあ、被害者になりうるリストはこちらが握ったからな…」


ジェブロールはそう言い、捜査会議にも挙げられたこのリストを見る。

少なくとも被害者に該当しうるリストが出来上がったとし、この日の二つの殺人事件でその可能性は高いと断定できた。


「問題は、なぜこれを最初に軍部は隠したかだな」

「そうですね。私が照会をかけた後、間違ってたらしいですけど…」


ジュリーはそう言って自分の今まで行ってきた捜査を振り返る。


「で、その直後にお前に襲撃だ。確実に軍は何かを隠しているぞ」


彼は確信めいた様子でジュリーに言うと、彼女は襲撃された側として思う部分があった。


「でも軍で隠すって、何を隠すんですか?」

「さあな。そこら辺はタバレに頼んだんだろ?」

「そうですが…」


ジュリーは事前にタバレに依頼をしており、その為に積極的に支援をしていた。そしてそのことをジェブロールにも報告をしていた。


「タバレは軍務省に呼ばれたって話だ。多分、憲兵隊を裏で仕切ってた奴に言われたんだろう」

「…なんだか、タバレさんを中心に事件が動きそうですね」

「ああ、特にアイツは犯人とチェスをしたしな」


ジェブロールは苦笑気味に、私してやや恨みを込めて呟くと、タバレと聞いてふと思い出したようにジュリーに聞いた。


「ああそうだ。ジュリー、次の会議はいつだ?」

「五日後です」


国家警察総局で行われる会議の日程を聞いたジェブロールはそこでジュリーに言う。


「今、ルコックとアンドレイがタバレと一緒にいる。そこに加勢に行ってこい」

「え?二人が出て行ったんですか?」


一体どうしたんだと首を傾げるジュリーに、ジェブロールは軽く耳打ちをした。


「タバレが次の被害者を予測した。そして実際に襲撃を受けたらしい」

「っ!!」


その一言で、今までの経験でジュリーは色々と察することができた。


「タバレはお前を狙撃手に求めている。二日ほどでいい、行ってくれるか?」

「分かりました」


ジュリーは二つ返事で頷くと、次にジェブロールからこう言われる。


「武器庫から狙撃望遠鏡付小銃(MAS-36)を持っていけ」

「え?あれって許可がいるのでは…」

「俺から言ってある」


ジェブロールはジュリーに地図を渡しながらそう伝えると、彼女は頷いてから刑事部を後にした。


「…無線で伝えないとな」


彼はタバレの推察が当たりかけていると予想してルコックに無線を持たせていた。事を思い出すと、座っていた席に置いてあった無線機に手を伸ばした。






そして無線はすぐに川辺の覆面パトカーの車内で待機していたルコック達に伝えられる。


「了解しました」


ルコックは無線でジェブロールにそう返すと、隣で座っていたアンドレイが言う。


「何?ジュリーちゃん来るの?」

「ええ、捜査会議が終わって帰ってきたみたいですね」

「あれ?でもあれって昼前で終わりじゃねえのか?」


アンドレイは腕時計を見て今の時刻を見て首を傾げると、ルコックは苦笑気味にため息を吐いた。


「まあ警部補のことです。多分どこかで仕事に疲れてサボってたんじゃないんですか?」

「ふはははっ、いっつも警部に扱かれてるもんな」


ルコックにアンドレイは吹き出して笑った。着任早々に紋様事件に巻き込まれたことで、散々な日々を送っており、アンドレイは暇を見つけてサボりたくなる理由を察せた。


「正直、警部補にはあまりサボってほしくないんですが…」

「何で?」


彼が聞くと、ルコックはタバレから知らされたある懸念をアンドレイに言う。


「まだ内密ですが、先生はこの事件の犯人が警察関係者じゃないかと疑っているんですよ」

「…は?」


ルコックの告白にアンドレイは首を傾げた。意味がわからないと言った困惑顔を浮かべていた。


「警察が連続殺人?本当だったら懲戒免職じゃ済まされねえぞ?」

「ええ、銃殺刑は確実でしょうね」


ルコックは頷くと、タバレから聞いた懸念を伝える。


「ですが、先生が犯人と話した時。彼は詳しく事件のことは話さなかった」

「…変に探られないようにする為じゃねえの?」

「ええ、先生も同じ事を言っていました」


ハンドルを握り、アパートを見上げるルコックは続けて話す。


「犯人は恐ろしく慎重かつ、綿密な計画を練って犯行に及んでいると」

「そんなやつだ。タバレ探偵のことも知ってたんじゃねえ?」


アンドレイはタバレの推察した人物像に苦笑気味に返した。


「ええ、故に『詳しく話せなかった』と先生は推察していました」

「…何でそうなる」


ルコックの話にいまいち付いていけないアンドレイはそう溢すと、彼は言う。


「通常、殺人犯というのは警察がどこまで自分を追いかけているのか恐怖で何度か殺人現場に戻ってくることがあります」

「ああ〜、俺も勉強会でやったな」


アンドレイはそこで心理学の勉強会に参加察せられた時に教わった授業を思い出す。


「ですが今まで一度も犯人は殺人現場に現れていないそうです。捕まえても事件現場に訪れるマニアばかりだとか」

「…」

「そこで先生は警察の内部に犯人、あるいは犯人の協力者がいて、内部の情報を漏らしていると推察しています」


そこまできてようやく、アンドレイは理解が追いついた。


「…ああ、それで『下手に話すとどこから情報が漏れるかわからないから、曖昧にしか言わない』ってことか?」

「ええ、先生はそのように推察しています」

「…冗談じゃねえよ」


タバレの推察は恐ろしいまでに当たっているような気がしていた。


「一番多くて十三人を殺した犯人が横で仕事しているとか勘弁してくれよ」

「ええ、流石に下手に公表できないから警部とアリバイの無い捜査関係者を洗いざらい調べているよ」

「…言っとくが俺はシロだぞ」

「当たり前だ。事件発生時刻にお前は自宅にいたってのは奥さんから聞いているよ」


ルコックはそう言うと通りの奥で地図を片手に睨めっこしているジュリーの姿を見つけた。


「おい、警部補だ」

「オッケ。迎えに行ってくるわ」


アンドレイも通りの奥で探しているジュリーを見つけると車を降りる。何となく、あのままだと街中で道に迷いそうな危ない雰囲気があったので、ルコック達はとりあえず見える範囲まで辿り着けたことに安堵していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ