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戦場からこんにちは Side.B  作者: Aa_おにぎり
三章 君のしんいは?

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Cace.37

タバレはヘディを見送った後、近くの公衆電話に入ってタバレは電話をかける。


「(彼女の家の周りにいる監視員は交代を含めて最低四名いるとすると…)」


彼はそこで先ほど見送った時に確認した彼女のアパート周りの確認を行った時、いくつか候補を見ていた。


「…」


そして電話をかけた先で少し待つと、電話のつながる音がした。


「ああ、もしもし警部?」

『タバレか』


電話を繋いだのは、今はまだ刑事部に詰めているはずのジェブロールだった。


『何の用だ?』

「電報は見ましたか?」

『ああ、ルテティアの次の被害者候補だろう?』

「ええ」


電報は端的に『増援を求む』とだけ送った。これだけでジェブロールはタバレの予測が当たったと理解した。


「要望通り、ルコックとアンドレイを送った」

『できれば射撃の上手いジュリー警部補が良かったのですが…』


知り合いとはいえ、タバレの本心が漏れるとジェブロールは言う。


「無理決まってんだろ。アイツは国家警察総局に出向中だ」

『そうですよね…』


刑事部で煙草を吸って資料を読み漁っていたジェブロールはタバレにそう答える。

ジュリーは現在、刑事部から紋様事件の捜査資料の共有と会議を終えて帰ってきている途中だろうと推測する。


「護衛か?」

『いえ、彼女を狙撃ポイントに待機させて欲しかったのですが…』

「狙われているのは分かった。…こっちからも頼んで幾つか派遣する」

『頼みます。多分、次もあると思いますので』

「分かった」


タバレはそこで電話をきると、ジェブロールはため息をついて煙草に火をつける。


「アイツめ、ワザとやったな」


そこで送られてきた入国管理者リストを確認する。

ロンデニオンにて射殺されたことで、警察は犯人逮捕のために射殺された日を中心に前後一週間の出入国の調査を行なっていた。


「おい、パスポートの方はどうなっている?」


彼は聞くと、部下が資料を持って提出をしてきた。






====






今年に入って新聞を騒ぎ立てている『紋様事件』はルテティア8区にあるヴォヴォー館でも報告がされている。


「現在、国家警察総局は国境警備局と共同で出国者リストを制作しています」


国家警察総局の局長が会議室で報告を上げる。


「パスポートの偽造は?」

「現在、確認中です。事件日近辺で共和国国内でパスポートの紛失などの報告は上がっていません」


会議室の机の上座に座っていた内務大臣、フランシス・ミッテランが質問をすると、局長は答える。


「他の大使館・領事館は?」

「公開捜査に切り替わってから二四件ありました。ですがいずれも紛失したパスポートによる出入国は確認されていません」


その質問には外国人総局の局長が答えた。

共和国や近隣の国家の領事館や大使館に紛失したパスポートの申請はあったが、それら紛失したパスポートを使用した出入国は確認されていなかった。


「出生リストは?」

「確認中です。現在判明している犯人像から被害者は二〇代として、その時期に死亡している人物からパスポート申請があった人物を捜索中です」


連合王国で姿を現したと言うことで、犯人は偽造パスポートを用いたと推定して捜査が行われている。

犯人は共和国人で、指名手配を避けるために本物のパスポートは使わないだろうという推測を立てていた。しかし、顔も髪色も分かっていないので犯人が持っているパスポートでも出入国は可能であった。


「犯人に繋がる人物は?」

「今の所、報告には上がっていません。ただし犯人は複数犯の可能性を考慮しています」

「なぜだね?」


内務大臣の質問に国家警察総局の局長が答える。


「本日二件目の事件において、近辺で目撃者がいたと言う証言から複数班による犯行と推定しています」

「…了解した」


内務大臣はそこで次々と上がってくる報告書の中に、被害者となり得る人物のリストを見る。


「現在、それらリストの中で四人と連絡が取れません」

「行方不明申請は?」

「されていません」


四人の行方不明者が出ている事実に、他の関係者は驚きの声を出す。その声を内務大臣が制止させると、再度名簿表を見る。


「ではここに残された十七名が被害者候補にであると言うわけだな」

「ええ、ですのでこの十七名に監視と護衛を付けることを許可していただきたい」


現在、ルテティアを中心に騒がせているこの紋様事件。多くの民間人が被害に遭い、戦時中に軍人だった事もあって一部では帝国のスパイによる仕業だと書かれる始末であった。故に、政治的に危機を迎えている現在のフェリップ政権はこれに危機感を感じていた。


「監視は許可する。だが護衛は許可しない」

「何故ですか?」


しかしゆっくりと口の開かれた内務大臣に局長は問う。


「その報告書によれば、犯人は実に慎重な性格をしているそうじゃないか。護衛をつけて犯人が出てくると思うかい?」

「しかし…」

「護衛は無しだ。十七人も候補者がいるのでは人員が足りなくなってくる」

「「「…」」」


指で内務大臣はリストを叩くと局長達も押し黙ってしまう。少なくともこれだけの人数を警察官の護衛付きともなれば多くの捜査官が駆り出されることとなり、同時に被害者となり得る人物にいきなり護衛を付けるとなれば周りの人間にも影響が出て、捜査がさらにやりづらくなる可能性があった。


おまけに、最近はそうでもなくなったが、国家憲兵隊を通じた軍部による妨害行為も確認されており、これについては軍部の越権行為であると内外から批判されていた。


「それで、死体についていた痣については?」

「司法省の報告によれば、死体につけられている痣は極東、もしくは北方系の魔法であると推測され、同様の魔法が無いかを捜索中です」

「それにつきましてはWMOより調査協力の依頼がありましたが、死体損壊の可能性を考慮し拒否しています」

「それで構わない」


大臣は頷くと、局長達は脳裏に内部の権力闘争に明け暮れ、倫理観の問題を度々指摘される国際機関が脳裏を過り、大臣が痣について調査をさせない理由を察する。


「死体の方は?」

「検死の後、全て集団墓地に埋葬済みです」


そして最後の報告を終えると、内務大臣は言う。


「それと、このリストに載った十七名に対し、監視任務が困難とされた場合は保護拘禁の適用も視野に入れて構わない」

「何と…!?」

「しかしそれでは国民から反発されるのでは?」


大臣に発言に局長達は驚きの声を上げた。

保護拘禁とは事件の被害者となり得る人物に対し、警察が事前にその人物に対し令状を発行することで一時的に警察の監視下に置ける法律である。しかしこの法律は見ての通り、国民の弾圧に直結しかねない法律として今でもたびたび国会で議論される悪法に近い法律であった。

しかし局長達の懸念に内務大臣はリストを片手に言う。


「既にこれだけの被害が出ており、最悪十三名の死者が出ている。おまけに一部模倣犯による犯行も示唆されており、今月ルテティアで起こった殺人事件は四件。内二件は紋様事件だ。これ以上の被害の拡大は阻止しなければならない。だからあくまでも最悪の事態でだ」


大臣はそう言うと、既に九人が殺害されている現状を踏まえて彼らは最悪を想定する。


「それに、陸軍の中でもこの事件に乗じて強硬派の一部が動こうとしているそうじゃ無いか」


大臣の疑問に、会議に参加していた公安局の局長が頷く。


「はい。既に国家憲兵隊により拘束されていますが、この事件を帝国のスパイによる工作活動だと断定した一部歩兵部隊が動いたようです」

「チッ、憲兵隊か…」


国家憲兵隊と聞き、一人の局長が小さく舌打ちをした。

彼らにとって、捜査権限を持った軍務省管轄の部隊には今まで多くの苦い経験をさせられていた。故の恨みが漏れてしまう。


「帝国の方の動きは?」

「ありません。帝国はこの事件に対し静観の構えを見せており、帝国が関わった可能性のある証拠もまだ上がっていません」


軍務省の対外治安総局(情報機関)から送られてきた報告を聞くと、大臣は短く頷いてから最後に各局長達に言う。


「それともう一つ。先に君たちに話しておきたい」


大臣は前置きでそう言うと、局長達にある事を話し出す。


「先の大統領主催の閣議により、国家憲兵隊の管轄はこちらに移動する事が決定した。捜査権限の一括化を目的に、ここに新たに国家憲兵総局が設置される」

「「「!!」」」


大臣から発せられた言葉は衝撃的だった。

現在の紋様事件での捜査権限の二分化による捜査の遅れから、フェリップ政権は来年度より捜査権限の一括化を理由に軍から捜査権限を奪う事を決定したのだ。


「本当ですか?」

「だとしたら今までよりやりやすくなる」


話を聞いた局長達も嬉しげにその決定に両手をあげて喜ぶ。


「くれぐれもこの事は内密にしてくれ」

「無論です」


局長達は大臣の言葉に頷く。こんな法案、確実に軍部は猛反発するに決まっているからだ。

軍部に対し、敵意まで持っているかれたにとって良い共通の的であるため、局長達の内に秘めた思惑は違えど、この決定には全員が賛同した。




その後、局長達による会議を終えた後に内務大臣はある人物と会合を開いていた。


「この前、軍務省にいるジョージ・ルメイに来客があった」


そう言いながらナイフで仔牛のステーキを切って食べるモルト・ゴレップ。


「誰ですか?」


共和国の中でも指折りの魔力を持つ魔術師に首を傾げるフランシス・ミッテラン。ああ言う戦略級の実力を持った魔術師というのは、呪詛対策で顔や字名を完璧に隠してしまうので、軍務省の大臣以外は名前すら知らない。


「タバレ・ガボリオ。市内でも有名な探偵だそうだ」

「ああ、彼ですか」


興味の無さげなモルトにフランシスは数回頷く。


「知っているのか?」

「ええ、元々は警視庁にいましたが、今でも時折警視庁に出入りしていますよ」


彼はそう言い、時折上がってくる彼についての報告書には目を瞑ったこともあった。

モルトはそこでその接触をしたタバレに対して懸念を示す。


「ジョージ・ルメイは強硬派に属す軍人。おそらくこの事件について彼はタバレを使って仕留めるのではないか?」

「ええ、そのつもりでしょう。今までに殺害されてきた軍人は全員が砲兵勲章を授与された軍人です」


そこで一拍。


「ですが、彼は犯人の逮捕を目的に最初から警察に協力的です。味方の数が多く、情報提供される警察と、隠し事ばかりの軍部。どちらが信用に値するのか」


フランシスはモルトに言外に『心配はいらない』と伝えると、モルトはフランシスに言う。


「気をつけろ。中将は独自で人事部長までたどり着いた」

「…」


その一言で一旦フランシスのフォークの手が止まると、再度動いて切り分けられたステーキを口に運ぶ。


「わかりました。我々の方でもクーデターには注意するように促しておきます」


彼はそうモルトに答えた。

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