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戦場からこんにちは Side.B  作者: Aa_おにぎり
三章 君のしんいは?

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Cace.34

「一人目の被害者はルネ・コードロン。ルテティア市内で配達員をしていました」


被害に遭ったのは深夜、仕事仲間と飲んで別れたのが最後だという。

死因は階段から足を滑らせた事による打撲と推測されています。


「しかし、紋様が浮かんだ…か」

「ええ、相変わらず首元に痣がありましたよ」


ルコックはそう言い、首元の痣のあった場所を指で軽く叩いてから次の写真をみせる。


「二人目はシャルル・ルヴァソール。建築作業員として働いていました」


被害に遭う直前、彼は現場でルネ・コードロンが殺害された号外新聞を読んでから顔を青くさせて家に帰ったという。


「なるほど、どうりで荷物が荒れているわけだ」

「アパートではドスンと言う音もしたと住人の証言があります」


ルコックはすでに仕入れた情報を口頭でタバレに伝えると、彼は頷いた。


「見てみろ」


そして次に証拠として撮影された写真を見る。


「この鞄は中身が乱雑に仕舞われている。そして持ち出していた現金も財布ではなく、直接ポケットに入れてある。財布があるにも関わらずな」

「首元にもかきむしった痕があります。焦って車に乗り込んだところを、待ち構えていた犯人が縛ったわけですか…」


ルコックの推察にタバレは満足げに頷く。


「そうだ。そして同様の犯人らしく、自殺に見せかけるために車の外の杭に紐を縛った」

「…酷いですね。しかし、時間がなかったのか、自殺に見せかけることはしていませんね」


ルコックはそう言うと、タバレは首を横に振る。


「いや、これはあえて残したと見ていいだろう」

「何故です?」


ルコックの疑問にタバレは先ほどルコックが見せた現場写真の一つを指差す。


「この杭に縛った紐だ。時間がなかったと言うのなら、こうしたちょっとした工作すらしないだろう」

「あぁ、なるほど…」


そこで納得したルコックは次に以前にタバレの示した条件で選別を行った資料を見る。


「あった、ここに名前が」

「ああ、被害者の住所も一致している」

「じゃあこれは…」

「ああ、今後被害者になり得る人のリストというわけだ」


タバレには赤い線が引いてあり、その数は九本。何も今までの被害者が引かれている。


「至急、このリストで捜査を行います」

「ああ、よろしく頼むよ」


タバレは頷くと、ルコックは部屋を出て行った。


「…」


そして新たに発生した事件を前にルコックはその事件現場の証拠写真を参考に事件の推移と、犯人の目的を推察していく。


「結局、あそこに乗った全員があの部隊という確証は無いが…」


それでも大きな進展となる。本人が自供した他四名の殺害というのが真実であれば、行方不明という形で出てくるに違いない。


「問題は、なぜ数多くある外人部隊の中からピンポイントで狙うかだな…」


メメント・モリと自ら名乗った犯人の動機は、本人の口からは『軍部への恨み』と公言をしており、その部分に嘘偽りはないだろう。だが彼と話したあの一戦の中で、人を殺すことがある問題を解決する上での通過点でしかないのではないかと最近は考えている。


「年齢もまた十九・二〇に絞った理由もだな…」


砲兵勲章を授与された砲兵隊員など、数多くいる中でわざわざ若い砲兵を選んだ理由。

共和国の未来を奪うという理由であれば妥当とも取れるが、彼はそれほど単純な理由で動いているわけがない。


「今でもそうだが…最初の頃は自殺と判断された事件もあったほどに完璧な偽装工作が成されている」


今回の一件目の事件も、ぱっと見と状況で言えば酔っ払って足を滑らせたのだろうと推察が可能だった。


「事件を事件と思わせない…か」


自分のような事件を解決できる人間や警察が手を出さないようにする方法として最適な答えである。実際、自殺となれば警察はその原因解明を詳しく行わない。


「二人目で事件性を見せつけたのは…軍部への脅迫と見ていいのだろう」


『私はいつでも君たちを狙えるぞ』という意味を込めて、今までは夜に行動していたものを、白昼堂々の犯行を行うことで見せつけたのだ。


「狙いはジョージ・ルメイを育てた731外人砲兵部隊…」


部屋の巨大なボードには共和国の地図とピン留めされた写真と現場の写真、新聞のスクラップ記事、ボードの外に飛び出してまで並べられたそれらは全て紐で結ばれている。


「そしてすべては軍に収束されている」


そしてそれらの紐は最終的に一箇所、大陸軍(グランダルメ)に集約される。


「…狙いはジョージ・ルメイか」


犯人の目的はジョージ・ルメイへの恨みを持った犯行であると推察をしたが、そこでふと違和感を覚える。


「…待て、となると彼の言う『あるべき場所に返す』という意思とずれることになるな」


片手に優秀な弟子が差し入れてくれたコニャックを入れたグラスを持ってボードを眺める。

そしてここ最近のメメント・モリの動きを軽くなぞってみる。


「…今回は初めての銃殺と毒殺以外での殺しだ。絞殺された死体は車内で暴れた形跡があった。

あの状態で締められたのなら、普通はあそこ場で暴れるようなことはない。…犯人は体力にあまり自信がないな」


故に、今まで力に頼らない銃殺と毒殺を行っていたのだと判断して写真を手に取る。

彼は新たにルテティアで起こった二件の殺人事件をボードに貼り付ける。これでルテティアだけで四件の殺人事件が発生しており、市民は恐怖に怯えて過ごす事になるだろう。


「そろそろ模倣犯も出てくる頃合いだな…」


タバレはそこで早々に事件を解決しなければならないと改めて思う。これ以上の被害拡大を防ぐのもそうだが、何よりこの紋様事件はかなり有名になってしまい、すでに新聞では軍部への恨みが推察が事実であるかのように書かれている。これを使って強硬派が動くことも考えられる。そうなれば帝国とまた戦争をする羽目になるかもしれない。

また、この事件に便乗して誰かに恨みを持った人間が殺人を犯す可能性もあった。


「油断ならんな…」


そこでタバレは一度捜査から外されたルテティア警視庁が、再び捜査に本格的に駆り出されるだろうという、本末転倒気味な結末を迎えたことに呆れてしまう。


「…まて」


その時、ふとタバレは引っ掛かりを覚えた。


「…」


そして次にボードを注意深く顔を近づけて確認をすると、事件現場の写真を見る。

その事件現場はルテティアで確認された二番目の被害者、ジーン・ガードナーの写真だ。


「これは?」


そして次に最初の被害者マイント・カーディッシュの写真を見る。


「…」


そして今回の被害者達を次々に見る。


ーー何処だ、何処に自分は引っかかった?


写真を吟味してタバレは写真の裏面を見る。


「…四月、六日…」


一件目の事件が発生した日付。タバレはふと思った。


「こっちは…四月九日…」


続いて二件目の事件。僅か数日後に発見され、この事件をきっかけに殺人が認められた。


「ルテティアは今年からなのか…」


次に名簿表を確認する。よく見ればこのリストに載っている人物の中でルテティアに住んでいる人間はこれでほぼ全員であった。


「…犯人の行動にこれといった意味はなさそうだが…」


今までの殺人現場を辿ってみるが、これといった特徴はない。恐らく、手当たり次第に殺しているのだろう。


「だとするなら、今奴はこの街にいると言うことか…」


タバレはそこで名簿表を見て、ルテティアに住んでいる人物を探し始める。


「…居た」


そして名簿表を見ると、ある一人の人物が浮かんだ。


「彼女は市内住みだ」


住所も市内であり、引越しをしていなければ恐らくそこにとどまり続けているだろう。


「行かねば…」


タバレは確信を持って上着と武器を手に取ると、部屋を出ていく。






====






「ヘディ、こっちにお願いできる?」

「分かりました」


市内の花屋、そこで一人の女性店員が花瓶を持って移動していた。時間は夕刻、店の片付けのための準備を始めていた。


「ねぇ、今日の新聞見た?」

「見た見た」

「怖いったりゃ無いんだから」


そう言い、店番に立つ店員達が口々に今日起こった二件の殺人事件のことを話していた。


「お陰で夜出られないわよ」

「今度夜間外出制限があるって」

「やだやだ、まるで戦時下の頃みたいで」


彼女達のボヤキを耳にして、花瓶を運び終えた女性は少し乱雑に花瓶を置いて会話を遮るように音を立てる。


「こっち、片付け終わりました」

「あっ、分かった」

「ありがとうね」


店員達はそれぞれ反応をすると、一人が話しかけた。


「ヘディも気をつけるのよ?なんでも軍人さんが狙われてるらしいから」

「お気遣いありがとうございます」


彼女は淡白に答えると、そのまま店の裏に入っていく。その時、彼女の雰囲気の変わりように他の店員達は首を傾げた。


「どうしたの?」

「案外、狙われてるか持って怖いんじゃ無い?」

「あぁ、戦争帰りだから?」


彼女達はそこで二年前の終戦後に入った彼女のことをふと思い出す。


「ほら、戦場帰りの人って何かに怯えやすいじゃん」

「砲弾病?」

「それって臆病者の言い訳とかじゃ無いの?」


彼女達はそう話しながら奥に消えた同僚のことを思った。


「はぁ…」


店の裏の倉庫では大きくため息を吐いて座り込む。


「みんな死んでいってる…。ルテティアに住んでいる皆んなが…」


女性は包装紙に使う新聞紙を見ると、古い記事には以前に殺害された犯人の推察を書き記した文が書かれている。すると倉庫まで同僚が探して声をかけてきた。


「ヘディ、お客さんよ」

「?すぐ行きます」


一体誰だろうと首を傾げて立ち上がって表に出る。


「失礼。ヘディ・ストリープさんでしょうか?」


自分に用事があるといったその男性は、ヨレヨレのコートを羽織っており、妙に汗臭い草臥れた男性であった。頭もボサボサとしており、こんな人に見覚えはなかった。


「あ、はい…そうですが」


するとその男性は軽く挨拶をした。


「初めまして。私、タバレ・ガボリオと言います。失礼ながら、少し貴女とお話がしたいのですが」

「は、はぁ…」


自己紹介をされ、その名は巷では有名な探偵であることを思い出す。


「今からお時間はありますか?」

「あ、えっと…もうすぐ閉店ですので、その後でしたら…」


ヘディは取り敢えずそう答えると、タバレは軽く頷いて了承した。

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