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戦場からこんにちは Side.B  作者: Aa_おにぎり
三章 君のしんいは?

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33/39

Cace.33

警察と軍というのは共に武装した組織である。

故に戦時下では、警察官は徴兵の対象となって真っ先に軍隊に編入されるように法律が整えられている。


ッ!ッ!ッ!ッ!


ただし、警察は国内の治安維持のために。軍は国外からの脅威に備える為にそれぞれ武装しているに過ぎない。


「おお〜」


隣で見ていたアンドレイが感心した様子で隣のレーンに立つ女性を見る。


「流石すぎる腕前だな」

「へへっ、これくらいしか得意じゃないんですけどね」


褒められて嬉しそうにする彼女は、視線の先の窓を見る。天井から吊り下げられた紙製の的には頭の赤い急所の点に纏まって穴が空いている。


「警部補の拳銃の腕は刑事部でもトップですからね」


その隣でルコックも撃ち切って空になった弾倉を新しいものに交換する。

現在、警察官には旧式自動拳銃(Mle 1935A)が主に支給されており、その威力の小ささから時折大口径の拳銃を求める声は止まない。現在の軍の拳銃の主力は新型自動拳銃(MAS 50)。使用するのは九ミリ拳銃弾なので、警察装備品の七.六五ミリ拳銃弾よりも威力が高かった。


「だから刑事部で唯一小銃持ってんじゃねぇかよ」


アンドレイはそう言って射撃場に保管されている旧式小銃(MAS-36)を見る。犯人の狙撃ように支給されているが、主に狙撃班を中心に支給されているので、まず刑事部で扱う事はない。


「私、てっきり短機関銃しか使わないと思っていました」


ジュリーはそこで脳裏に警察に配備されている旧式短機関銃(MAS-38)が思い浮かんだ。


「ああ、一応使うけど…」

「刑事が短機関銃かよ」


少なくとも身軽さが売りの警察官がそんな物騒なものを使うのかという疑問もあった。


「でも使いません?」

「そりゃあな」


戦後とはいえ、戦時中に治安が悪化した共和国では東洋に倣った『コウバン』という制度を真似て警察官がパトカーに常駐する制度で治安向上を狙っている。


「まあ、暫くは平穏なんじゃないのか?」

「お二人は紋様事件からも外されましたからね…」


ジュリーが言うとルコックは苦笑し、アンドレイはどこか安堵した雰囲気をしていた。ロンデニオンでの失敗により、アンドレイ達は紋様事件の捜査から外されていた。代わりに刑事部から出向した捜査官の中にはジュリーが含まれていた。


「ありがたいね。おかげで家に帰る時間が増える」

「そう言えば奥さんは孕ったのか?」

「いや、まだ分かんねえんだ」

「お父さんになったら教えてくださいね?」


ジュリーはそう言うとアンドレイは頷いた。





====






夜のルテティアは、基本的に治安が悪い。戦争が終わって久しいが、ここ最近はデモ活動による破壊活動などで夜間の外出は制限されている。


「やあやあ、今日は助かったよ」


しかし、そんな中でも一部の人々。例えば商人などは夜遅くまで商談がもつれ込むことなどがある。


「また明日も頼むぜ」

「ああ」


複数の人物達が深夜のバーから出てくる。


「ふぅ…ちょっと遅くなっちまったな」


腕時計を見て、顔を赤くしたその青年は夜のルテティアを歩いてメトロに向かう。まだ終電が残っているはずだ。


「ったく、忙しいったらありゃあしねえんだ」


青年はぼやくと、上着のポケットに一枚と手紙が入っていたのが思い出す。


「けっ、輝の奴め。俺達を集めて何するんだよ」


彼の脳裏には巷で話題の紋様事件が過ぎる。


「まあみんなでいた方が安全かも知れねえけどよ…」


彼はそこでルテティアを歩くと、ふと思った。


「今日はやけに霧がかってんな…」


店に出た後から急に霧が出てきて、街灯の明かりもイマイチ信用に欠けてくると思い、少し急足で駅に向かう。そのまま地下に続く階段を降りていく。その時、


「うおっ!?」


突如背中を思い切り押され、目の前にコンクリート製の階段が迫った。


「(やべっ)」


いきなりの事に青年はこれと言った対応ができる前に倒れた。


「…」


そして階段に顔面から行って倒れたのを見下ろしている一人の黒い影。その手には真鍮製の懐中時計が握られている。


カチッ


その懐中時計は長針が歯車の音を立てて素早く一周をすると、短針も動いて音を立てて止まる。今の時刻と懐中時計が示す時間は丸切り違っており、時計を確認した黒い影は蓋を閉じるとそのまま足音を立てずに霧の中に消えて行った。


そして階段下で血を流して倒れた青年の首元にあの紋様が浮かび上がっていた。






====






「号外!号外だよ!」


路地で新聞売りの少年が鈴を鳴らして走る。

少年の首から下ろされた看板には『痣付きの死体現る!』と印刷されている。


「また出たのか」

「今度は駅かよ」


新聞を読んだ通勤中の労働者達は言う。


「また偽モンなんじゃないのか?」

「さぁな、俺には関係のねえ話よ」


メトロに乗り込む彼等はそこで煙草に火をつける。


「なんでだよ」

「俺は、軍人じゃないからな」

「ああそうかい」


工事現場で話し合う彼等に一人の若者が聞き耳を立てていたのか、近づいて聞いてくる。


「その号外、見せてくれるか?」

「ん?ああ、ここでなら良いぞ」


そう言われながら号外を借りると、その記事を読み進める若者。


「なんだ、興味あるのか?」

「お前さんがゴシップに興味あるとはな」

「誰だって思い通りの趣味じゃねえだろ?」

「お前の性癖とかか?」


そう言ってゲラゲラと笑う男達。しかし号外を読んでいる若者は手が僅かに震えていた。


「…」


特に死亡した人物の死体を警察が来てから撮影したのだろう、コンクリートの階段の下で倒れている一人の青年は頭から血を流していた。その死体と首元の痣のような紋様。


「班長、そろそろ朝のラジオがありましたよね?」

「ん?ああ、そろそろその時間か」


班長はそこで現場に用意してあるラジオを付けると、キーンと言う音が少し鳴ってからラジオが流れる。


『速報です。先ほどルテティア警視庁は地下鉄駅で発見された遺体を『紋様事件』と認定しました』


すると早速キャスターが報告をしており、それを聞いた班長が驚く。


「マジか」

『被害に遭ったのはルネ・コードロン。市内で配達員をしていた男性とのこと。警視庁はこの殺人事件に対し、次のような声明を発表しています』


ラジオは淡々と今朝に発生した殺人事件の詳細と、警察の発表を行う。


「すげぇな」

「まだ続いていたのかよあの事件」

「怖えな。お前も気をつけろよ?」


そう言って振り返った一人が若者を見ると、首を傾げた。


「どうした?」

「あの、班長…暫く休み取ってもいいですか?」

「あ?どうしたんだよいきなり」


今まで無遅刻無欠勤だった真面目な彼が明らかに怯えているような雰囲気があった。


「お前、まさか自分が狙われてるってのか?」

「あっ、それは…」

「お前が元軍人だからって早々に狙われるかよ」


そう言って彼は若者を宥めるが、若者はそれでも班長に言う。


「でも…少し休ませてもらえませんか?」

「…仕方ねえな。三日だけだぞ」

「…すみません」


そして休みを貰った彼は工事現場を後にする。


「どうしたんですかね?」

「尋常じゃなあ怯え方だぜ?」

「何かあるんだろ。戦争から帰ってき奴は砲弾病になっちまったやつばっかりだ」


そう言って吸い終わった吸い殻を地面に押し付けて彼は手を叩く。


「さあ仕事だぞ!真面目野郎が抜けちまったんだ」

「へいへい」

「チッ、仕事増えちまうぜ」


そして彼等は次々と作業に戻っていく。




一方で、工事現場から家に帰る途中の若者は焦っていた。


「(急がないと…!)」


血相を変えて彼は借りているアパートの一室に駆け上がると、自分の部屋に入って荷物を鞄に仕舞い込む。

元々荷物は少ない彼は簡単に荷物を鞄の中に全て仕舞い込むと、持っている現金を全て持って部屋を出る。


「やっぱりこの国にいちゃいけない…イダッ!」


彼はそこで足を踏み外して古いアパートの階段に尻餅をついて埃が降った。


「はぁ…痛た…」


ここで痛む体でもお構いなしにアパートの裏に停めてある駐車場の中に停めてある乗用車(シエトロン 2CV)に乗り込む。


「くそっ!」


しかし彼は慌てていたのでシフトレバーの確認をした後にアクセルを踏むことを忘れてスターターを回したので、エンジンが掛からなかった。


「何処に行く予定だ?」


その時、後部座席から知らない声がした。


「は…っ!?」


その声に驚愕して振り返る直前に彼の首元に縄がかけられる。


「かぁっ、ふっ!」


首を絞められ、泡が吹き出す。ヘッドレストに押し当てられ、首元を掻きむしり始める。


「こふっ…」


首から血が出てくるほど強く押し当てられた若者は次第に力を失ってついに動かなくなると、その後にグッタリと倒れる。


「…」


すぐに絞めていた縄を外すと、手元の懐中時計がまたも一時間動いてカチッと音を立てる。


「…あと十三人」


そして音を立てるとともに首元に、深夜の一件と合わせて首元に同様の痣が浮かび上がる。


「まだまだ先は長いか…」


車のドアを開けると、縛ったままの縄を駐車場の柵に縛り付けてからドアを開けっぱなしにして出ていく。


「あの傀儡に気がつくとはね…」


そして黒い影はそのまま駐車場から去って行った。






====






「一日で二つの死体か…」


タバレは厳しい表情を見せて夕刊と朝刊の新聞を見る。

『二つの遺体を発見!?』と言う見出しとともに警察から提供された二つの事件現場の写真を見る。


「おかげで警察署の前には人が殺到しています」


反対ではルコックが座りながら紅茶を飲んでいた。


「しかし、ルコックが来るとは思っていなかった」

「ジュリー・ジュネスト警部補は生憎、事件発生のため出動していますよ」

「そうか…」


そこで集められた資料を写真付きで説明し、土産にコニャックまで送ってくれる入れたり尽くせりの環境であった。


「犯行時刻は同日の午前二時から三時。十時から十一時の間です」

「白昼堂々の犯行か…」


九件目の事件発生に、久方ぶりに新聞も紋様事件を一面に載せていた。


「ここ最近はおとなしかったのだがな…」

「捜査本部は周辺に聞き込みを行っていますが、なにせ前者は時間が早朝。後者は事件現場が日陰に隠れた駐車場です」

「望み薄か…」


いずれも砲兵隊所属の元軍人で、どちらも二〇歳の若者である。


「最近は新聞も今までの被害者の特徴を集めて発表していますね」

「まあ、並べればわかる話だ」


今までの被害者の情報はすでに公開されており、新聞の発表する内容は市井に広く渡って犯人の狙いなどを冗談混じりに話していた。

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