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歪みの果てに君を呼ぶ  作者: ネネルネ
第1章 白鎌の少年
54/88

54話_試合は続く

中央区画の白線が、淡く光っていた。


床に引かれたただの測定線ではない。


その下に、灰色の布目がある。


細かく、古く、乾いている。

燃え残ったものというより、まだ燃やされていないものの気配。


灰衣礼拝布。


そう思った瞬間、胸元の名札が微かに震えた。


リオン。

第一基礎班。


文字は消えていない。


だが、第一、という部分だけが薄く熱を持った気がした。


「リオン」


エルナの声。


「見すぎないでください」


「うん」


俺は中央の白線から視線を外した。


今は追わない。


追えば、たぶん繋がる。


今すべきことは、試合を止めることではない。

試合を奪われないことだ。


グレン教官の声が区画に響いた。


「両班、中央接触禁止。試合は継続」


観覧席がざわめく。


「何だ?」


「中央に何か出たのか?」


「でも止めないのか?」


「測定続行?」


外の声が、結界越しに少しだけ歪んで聞こえる。


だが、区画の中にいる俺たちには関係ない。


アーヴェルはすでに細剣を構え直していた。


「中央を使わない。右側で崩す」


カイルが大剣を握り直す。


「了解」


エルナが短く答える。


「足場、右へ寄せます」


俺も頷いた。


「右側、通れます」


反対側で、レオルも素早く指示を出していた。


「第三基礎班、中央線を踏むな。左側展開。トーマ、槍は低く。ニア、風は外へ流せ。フィオ、補助線を切らすな」


第三基礎班も止まっていない。


怯えてはいない。


異常を警戒しながら、それでも測定を続ける気でいる。


それが、少しだけ嬉しかった。


相手もこの場を捨てていない。


なら、こちらも勝つ。


レオルが盾を前に出して、右寄りに進んでくる。

こちらから見ると左側。

中央線を避けたことで、戦える幅が狭くなっていた。


狭い場所では、盾が強い。


カイルがそれを受けに出る。


「押すな」


アーヴェルの声。


「分かってる!」


カイルは大剣を盾へ叩きつけない。


大剣の腹を斜めに置く。


レオルの盾がそこへ当たり、鈍い音が鳴る。

両者の足元が一瞬止まる。


だが、レオルは強引に押してこなかった。


盾を支点に、身体を横へずらす。

その背後からトーマの槍が伸びる。


カイルの脇。

いや、カイルの後ろを通して俺の足元。


低い。


「足元、トーマ」


俺が言う。


アーヴェルがすぐに動く。


「リオン、止めるな。上げろ」


止めるな。

上げろ。


俺は長柄を下から滑り込ませた。


槍を横へ弾けば、トーマは引いて立て直す。

正面から止めれば、絡められる。


だから、槍先の下へ柄を入れ、少しだけ角度を上げる。


槍の軌道が浮く。


その先端は俺の足ではなく、空を突いた。


トーマが目を細める。


「読まれてる」


「読ませてる」


俺は返した。


余計な言葉ではない。


相手への挑発でもない。


ただ、測定の中の応答。


その瞬間、ニアの風が右から吹いた。


風は俺たちではなく、中央の白線へ向かう。


いや、違う。


中央線を避けるために右へ寄った俺たちの足場を、さらに中央へ押し戻そうとしている。


「風、中央へ押す」


俺が言う。


「エルナ」


アーヴェルの指示。


「はい」


エルナの白い補助線が足元へ広がる。


今度は防護ではない。

滑り止めでもない。


床に、薄い足場を作る。


カイルの左足。

俺の右足。

アーヴェルの踏み込み位置。


そこへ先に支えが置かれる。


ニアの風が足元を撫でるが、踏ん張れる。


「助かる!」


カイルが叫ぶ。


「叫ばなくていいです」


エルナが返す。


「でも助かってる!」


カイルはそのままレオルの盾を受ける。


今度は止めるだけではない。


盾の角度を変え、中央から遠ざける。


レオルはすぐに気づいた。


「中央から離される。トーマ、戻れ」


「了解」


トーマが槍を引く。


だが、その一瞬だけ、第三基礎班の前衛二人の間が空いた。


アーヴェルが動く。


速い。


正面からではない。


中央線を避けた狭い通路を、斜めに抜ける。


レオルの盾とトーマの槍、その間の半歩。


細剣が入る。


トーマが反応した。


槍の柄で受ける。


金属ではなく訓練武器同士の乾いた音。


アーヴェルはそのまま押さない。


細剣を引き、トーマの柄を空振りさせる。

その隙に、さらに半歩内側へ入った。


レオルが盾を戻そうとする。


そこへカイルが大剣を置いた。


押さない。

ただ、盾の戻る道を塞ぐ。


「今」


アーヴェルの細剣が、トーマの胸元の手前で止まる。


「二本目」


審判教官の声。


トーマが二度目の停止判定を受ける。


観覧席から大きな声が上がった。


「第一基礎班、押してるぞ!」


「中央使ってないのに!」


「アーヴェル速いな」


「カイルも止めてる!」


カイルが少しだけ嬉しそうにした。


「聞こえた?」


「聞こえた」


俺が答える。


「止めてるって」


「うん」


「いい響きだな」


「集中しろ」


アーヴェルがすぐに言った。


「はい」


第三基礎班は崩れない。


トーマが一時停止する間、レオルが前に出る。


ニアは風の向きを変えた。

今度は中央へ押すのではなく、こちらと第三基礎班の間に風の壁を作る。


視界が揺れる。


フィオの補助術式が、レオルの足元を支えた。


盾役一人で時間を稼ぐ形。


レオルは強い。


派手ではない。

けれど、崩れない。


「カイル、無理に取るな」


アーヴェルが言う。


「分かってる」


カイルが一歩前へ出る。


レオルの盾と大剣がぶつかる。


今度は力比べになりかけた。


カイルの足に力が入る。


レオルも踏み込む。


中央線が近い。


「カイル、左」


俺が言う。


「おう」


カイルは押すのをやめ、左へずれた。


その瞬間、レオルの盾が少し流れる。


力比べを外されたレオルは、すぐに盾を戻す。


だが、その戻す動きの途中で、胸元の名札が淡く光った。


レオル・バート。

第三基礎班。


個人名ではない。


第三基礎班の文字だけが、薄く揺れた。


「レオル、名札」


俺は思わず言った。


呼び方は間違えていない。


名前で呼んだ。


レオルは一瞬だけ胸元へ視線を落とす。


だが、すぐに盾を上げた。


「確認した。試合は続ける」


すごい。


止まらない。


狼狽えない。


自分の名前を保ったまま、試合に戻ってくる。


エルナが静かに言った。


「こちらも確認」


俺たちの名札も光っていた。


第一基礎班の文字が淡く揺れている。


中央の白線が、少しだけ強く光った。


「両班所属名、反応」


エイムの声が区画外から聞こえる。


「結界鐘、待機」


ユーディア先生が鐘へ手を添える。


まだ鳴らない。


グレン教官の声。


「両班、名を確認しろ。試合継続」


試合中に名を確認する。


そんな測定は、たぶん普通ではない。


でも、今はそれが必要だった。


アーヴェルが短く言う。


「第一基礎班」


カイルが続ける。


「カイル・レグナート」


エルナ。


「エルナ・シルヴェリア」


俺。


「リオン」


アーヴェル。


「アーヴェル・ロア・クラウゼン」


順番は少し乱れた。


それでも、名前は出た。


名札の揺れが弱まる。


反対側でも、レオルが声を出す。


「第三基礎班。レオル・バート」


ニアが続く。


「ニア・フロウ」


フィオ。


「フィオ・ラント」


トーマも停止位置から声を出した。


「トーマ・リッジ」


第三基礎班の名札も安定する。


中央線の光が、少しだけ弱まった。


カイルが大剣を握り直す。


「名前言いながら戦うの、変な感じだな」


レオルが盾の向こうから返す。


「同感だ」


「でも、悪くない」


「それも同感だ」


そのやり取りの直後、停止判定が解けたトーマが戻ってくる。


第三基礎班は、ここで形を変えた。


レオルが中央寄りではなく、外側へ下がる。

トーマが前へ出る。

ニアが風を高く巻き上げる。

フィオが補助線をトーマへ集中させる。


槍を主軸にする形。


「来るぞ」


アーヴェルの声。


トーマが一気に踏み込んだ。


槍の先端が三つに見える。


本物は一つ。

風で視界が揺れている。


線は見える。


本物の軌道。


俺の右肩へ来る。


外せる。


偏軌を使えば、簡単に。


だが禁止。


まだ使わない。


俺は長柄を立て、槍を受けようとした。


違う。


受けると絡められる。


「リオン、下がるな!」


カイルの声。


俺は下がらない。


前へ出る。


槍は長い。

だが、近すぎると扱いづらい。


一歩。


槍先が肩の横を通る。


熱はない。

当たっていない。


俺は長柄の柄尻で、トーマの槍の根元を軽く打った。


強くではない。


角度だけを崩す。


そこへアーヴェルが入る。


しかし、トーマは待っていた。


槍を捨てるように引き、アーヴェルの細剣を避ける。

その背後から、レオルが盾を押し出した。


二重。


槍で誘い、盾で押す。


「上手い」


アーヴェルが呟く。


カイルがそこへ入る。


盾と大剣。


今度こそ正面衝突。


大きな音が中央区画に響いた。


カイルの足が滑る。


中央線へ寄る。


「カイル!」


エルナの補助線が足元へ走る。


だが、中央の白線の光がその補助線を引っ張った。


エルナの術式が、わずかに歪む。


「補助が中央へ引かれます」


「切れ」


アーヴェルが言う。


エルナは迷わず、自分の補助術式を切った。


カイルの足場がなくなる。


しかし、その分、中央へ引かれる線も消える。


カイルは自力で踏みとどまった。


「危なっ」


「踏ん張れ」


「踏ん張ってる!」


俺は中央線を見る。


灰色の布目が、さっきよりはっきりしている。


そこから細い線が二本伸びていた。


一本は第一基礎班の名札へ。

もう一本は第三基礎班の名札へ。


個人ではない。


班名へ。


第一と第三。


その二つの数字を、中央へ引こうとしている。


そして、その間に。


銀色の細い線。


エルナの方へ向かう線が、ほんの一瞬だけ見えた。


第二。


そんな言葉が頭に浮かびかける。


違う。


名を与えるな。


「中央、数字を引いてる」


俺は言った。


「第一と第三。間に、エルナへ線」


エルナの表情が硬くなる。


アーヴェルの判断は速かった。


「第一基礎班、班名確認。第三基礎班にも伝えろ」


カイルが叫ぶ。


「レオル! 班名、引かれてる! 中央に寄るな!」


レオルは即座に反応した。


「第三基礎班、中央から離れろ。名札確認!」


ニアとフィオが下がる。

トーマも槍を引く。


試合の形が、一瞬だけ崩れた。


だが、止まってはいない。


両班が中央から距離を取る。


グレン教官の声が響く。


「両班、退避線まで下がるな。中央を空けて継続。測定は中断しない」


中断しない。


だが、明らかに異常対応が測定に混じっている。


観覧席のざわめきは大きい。


それでも結界は保たれている。


ユーディア先生の鐘はまだ鳴らない。


鳴らせば、たぶん試合は止まる。

今はまだ、止めずに処理できると判断されている。


「リオン」


エルナが言った。


「その線、私に繋がっていますか」


「まだ繋がってない」


「なら、繋がる前に動きます」


彼女は一歩下がった。


逃げるのではない。


自分の位置を変える。


銀色の線が揺れる。


中央の灰色線が、エルナのいた場所を探すように伸びる。


だが、エルナはもうそこにいない。


「私は、灯ではありません」


静かな声。


でも、よく通った。


「エルナ・シルヴェリアです。第一基礎班の一員として、ここに立っています」


名札が青く光る。


エルナ・シルヴェリア。

第一基礎班。


銀色の線が太くなる。


灰色の線が一瞬、絡み損ねた。


カイルが笑う。


「よし」


アーヴェルが言う。


「今ので中央が鈍った。勝ちに戻る」


「了解」


試合に戻る。


それが一番、相手の思い通りではない気がした。


中央線はまだ光っている。


でも、そこに意識を全部持っていかれない。


レオルも同じ判断をしたらしい。


「第三基礎班、再開。勝つぞ」


トーマが槍を構える。


ニアが風を整える。


フィオが補助線を組み直す。


両班が、もう一度向かい合った。


今度は中央を避けた、かなり狭い左右の通路。


先に動いたのは第一基礎班だった。


アーヴェルが指示する。


「カイル、レオルを止めろ。リオン、トーマの通路。エルナ、ニアを抑えろ」


「おう!」


「はい」


「分かった」


カイルがレオルへ入る。

大剣と盾がぶつかる。


俺はトーマの槍の前へ長柄を置く。

トーマは今度、絡めてこない。

槍を引き、下から払う。


長柄が浮く。


その瞬間、俺の右側が空いた。


トーマの狙いではない。


ニアの風。


俺の足元が滑る。


中央へ押される。


「リオン、左足」


エルナの声。


俺は左足を踏む。


そこに、エルナの補助線があった。


見えない支え。


信じて踏む。


身体が止まる。


中央へ行かない。


「助かった」


「はい」


返事は短い。


その間に、アーヴェルが外側へ抜けていた。


狙いはニア。


風を止める。


フィオが防護を入れる。

アーヴェルの細剣が防護へ当たる。


普通なら弾かれる。


だが、アーヴェルはそこで押さない。


防護線の端を叩き、フィオの視線をわずかにそらす。


その一瞬。


カイルがレオルの盾を押さえたまま、声を上げる。


「リオン!」


呼ばれた。


俺はトーマの槍を外し、半歩だけ右へ入る。


トーマとレオルの間が、ほんの少し空いている。


そこへ長柄を置いた。


二人の再接続を塞ぐ。


第三基礎班の前衛が分断される。


エルナがニアの風を弱める。


アーヴェルがフィオの補助術式を流す。


カイルがレオルを押し込まず、盾の向きを外へ向ける。


レオルの守るべき後方への線が、一瞬切れた。


「決めろ」


アーヴェルの声。


俺は攻撃しない。


長柄でトーマの槍を押さえる。


カイルがレオルを固定する。


アーヴェルが抜ける。


細剣の先が、フィオの胸元の手前で止まった。


「一本」


審判教官の声。


続けて、エルナの防護線がニアの風の発生点を押さえる。


ニアは杖を下げた。


「停止、認めます」


「二本目」


審判教官が言う。


第三基礎班は後衛二人が停止。


残るはレオルとトーマ。


だが、前衛二人は分断され、中央は使えない。


勝負は見えた。


レオルは盾を構えたまま、短く息を吐いた。


「まだ」


トーマも槍を構え直す。


「まだです」


諦めていない。


だから、こちらも最後まで油断しない。


カイルが大剣を構える。


「来い」


「その呼び方は雑ではないか」


アーヴェルが言う。


「相手に向けてない。気合い」


「ならいい」


レオルとトーマが同時に動いた。


最後の突撃。


盾が前。

槍が横。


王道の形。


けれど、さっきまでより少しだけ速い。


フィオの補助がない。

ニアの風もない。

それでも、二人の足は揃っていた。


積んできた練習が見える。


俺は少しだけ胸が熱くなった。


いい班だ。


だから、勝つ。


「カイル、盾。リオン、槍。エルナ、足場。私が取る」


アーヴェルの指示。


「おう!」


カイルが盾を受ける。


俺はトーマの槍の前へ長柄を置く。


今度は上げない。


下げない。


ただ、槍の通る道を塞ぐ。


トーマが歯を食いしばる。


「退いてくれ」


「退かない」


槍と長柄がぶつかる。


押される。


トーマは強い。


単純な力ではなく、槍の使い方が上手い。


俺の長柄の根元を狙い、支点を崩そうとしてくる。


俺は耐えない。


力を抜く。


トーマの槍が空を押す。


その瞬間、アーヴェルが入った。


レオルは盾を戻そうとする。


だが、カイルが止めている。


押し切らない。

ただ戻させない。


アーヴェルの細剣が、レオルとトーマの間を抜けた。


トーマの肩口。


寸止め。


審判教官の声が響く。


「そこまで」


中央区画が、一瞬静まり返った。


それから、観覧席が大きく沸いた。


「勝者、第一基礎班」


その声を聞いた瞬間、胸元の名札が強く光った。


リオン。

第一基礎班。


他の三人の名札も光っている。


反対側で、第三基礎班の名札も光っていた。


レオル・バート。

第三基礎班。


負けた班の名も、消えていない。


中央の白線から伸びていた灰色の布目が、きしむように揺れた。


まるで、試合の勝敗を儀式として利用しようとしていた何かが、形を取り損ねたように。


ユーディア先生の鐘が鳴った。


一度。


澄んだ音が中央区画を満たす。


灰色の布目が薄くなる。


だが、完全には消えなかった。


中央線の下へ、逃げるように沈んでいく。


グレン教官の声が響く。


「両班、その場で名札確認。中央へ近づくな」


俺たちは従った。


名札は消えていない。


第一基礎班。

第三基礎班。


どちらも残っている。


レオルが盾を下ろした。


息を切らしながら、こちらを見る。


「負けた」


カイルが大剣を下ろす。


「強かった」


「そっちも」


レオルは少し悔しそうに笑った。


「白鎌、出させる前に崩すつもりだったんだけどな」


「出さなかったな」


「出す前に負けた」


「でも、中央のやつにも持っていかれなかった」


レオルは一瞬黙った。


それから頷いた。


「それは、勝った気がする」


俺は頷いた。


「うん」


第三基礎班は試合には負けた。


でも、灰衣には負けていない。


少なくとも、この場では。


アーヴェルが細剣を収める。


「良い試合だった」


レオルも盾を下ろした。


「ああ。次は勝つ」


「次もこちらが勝つ」


「言うな」


カイルが笑う。


「アーヴェル、そういうとこあるよな」


エルナは静かに一礼した。


「ありがとうございました」


ニアとフィオも、少し疲れた様子で礼を返す。


トーマは俺の方を見た。


「槍、通せなかった」


「危なかった」


「本当に?」


「うん」


そう言うと、トーマは少しだけ救われたように息を吐いた。


観覧席の歓声はまだ続いている。


その中で、グレン教官と監理局職員たちは中央線へ近づいていた。


ユーディア先生の鐘がもう一度鳴る。


エイムが記録板へ走るように書き込んでいる。


測定の第一試合は終わった。


第一基礎班は勝った。


白鎌は出さなかった。

偏軌も使わなかった。

黒月もない。


四人で勝った。


そして、灰衣の仕込みを完全ではないが退けた。


けれど、中央線の下に沈んでいった灰色の布目は、まだ消えきっていない。


それが、次にどこへ繋がるのか。


俺には、まだ見えなかった。


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