41話_月例実技測定
翌朝、学院の掲示板の前に人だかりができていた。
珍しいことではない。
授業予定。
実技場の使用割り当て。
寮の注意書き。
食堂の献立変更。
学院の掲示板には、毎朝何かしらの紙が増える。
ただ、今日の人だかりはいつもより大きかった。
戦闘科の生徒が多い。
上級生もいる。
ざわめきの質も、少し違っていた。
「来たぞ」
「今月もやるのか」
「延期になると思ってた」
「灰衣の件があったのに?」
「だからこそ、じゃないか」
カイルが背伸びして掲示板を見る。
「何だ?」
アーヴェルはすでに内容を読んでいた。
「月例実技測定だ」
「げ」
カイルが分かりやすく嫌そうな顔をする。
「げ、とは何だ」
「いや、嫌ってわけじゃないけどさ。最近ずっと濃かったから、もうちょっと普通に飯食って授業受ける期間が欲しかった」
「実技測定も普通の学院生活だ」
「普通って厳しいな」
俺は人の間から掲示を見た。
大きな紙に、整った文字で書かれている。
『戦闘科月例実技測定 実施通知』
日程は五日後。
一年から三年まで、戦闘科全体を対象とする。
基礎戦闘、魔力制御、模擬戦、班連携の四項目。
成績は暫定序列の更新に反映される。
その下に、赤い文字で追記があった。
『異常事案対応に関わった生徒についても、測定の免除は行わない。ただし、体調および監理局判断により一部制限を設ける場合がある』
カイルが俺を見る。
「リオン、出るのか?」
「たぶん」
「たぶん禁止」
「……出ると思う」
エルナが掲示を静かに見上げる。
「班連携もあるのですね」
「そこは悪くないな」
アーヴェルが言った。
「十二刻の合図や、昨日の通常連携がどこまで使えるか確認できる」
「普通の測定で使うのか?」
カイルが聞く。
「見えない灰色の線は出ないだろ」
「合図そのものは使える。方向、距離、対象。敵の位置共有や魔法弾の回避にも応用できる」
「なるほど」
カイルは少し考え、すぐに笑った。
「じゃあ、俺たち有利じゃね?」
「調子に乗るな」
アーヴェルが即座に返す。
「でも、ちょっとは有利だろ」
「使いこなせれば、だ」
エルナが小さく頷いた。
「合図だけでなく、動く側の判断も必要です。リオンの言葉を待ちすぎると遅れます」
「確かに」
カイルは腕を組んだ。
「見えない時はリオンに頼りすぎるな、ってことか」
「そうだ」
アーヴェルが言う。
「見える者がいることと、見えない者が考えなくていいことは違う」
その言葉は、昨日の訓練にも繋がっている。
俺の目は便利だ。
だが、それに頼りきれば危うい。
俺が見誤れば全員が崩れる。
俺が見すぎて止まれば、全員の動きも止まる。
班として戦うなら、それでは駄目だ。
「リオン」
エルナが言った。
「無理に全部を見ようとしない練習にもなりますね」
「うん」
「測定で無理をしたら、普通に怒ります」
「普通に」
「はい」
最近、エルナの言う「普通に」は少し怖い。
カイルが肩をすくめる。
「怒られる前に止まれよ」
「努力する」
「そこは約束しろよ」
「約束する」
「よし」
まるでカイルが教官みたいだった。
掲示板の前にいた生徒たちの視線が、少しずつこちらへ集まっている。
無理もない。
白鎌のリオン。
暫定四位。
アーヴェルと相打ち。
カイルに勝利。
灰衣事件に関わった第一基礎班。
噂の材料には困らないのだろう。
「四位、更新されるかな」
「いや、測定項目次第だろ」
「でもアーヴェルと相打ちだぞ」
「黒月禁止でそれなら……」
「見た目は本当に細いのにな」
「でも大鎌持つと雰囲気変わるよね」
聞こえている。
やはり聞こえている。
俺は掲示板だけを見る。
カイルが横で笑いを堪えていた。
「言わなくていい」
先に言う。
「まだ何も言ってない」
「顔に出てる」
「白鎌の――」
「言うな」
エルナが少しだけ横を向く。
アーヴェルは真面目な顔で言った。
「噂は放っておけ。測定で結果を出せば、また別の噂に変わる」
「それも嫌だ」
「なら目立たないことだ」
「できると思うか」
アーヴェルは俺を上から下まで見た。
黒髪。
青灰の目。
細身の体。
監理局推薦の姓なし。
白い大鎌。
彼は少し黙った。
「難しいな」
「正直だな」
「嘘を言う理由がない」
カイルがとうとう笑った。
「アーヴェルまで認めた」
「うるさい」
そうしていると、掲示板の反対側からバルドが歩いてきた。
まだ訓練禁止のはずだが、制服姿で木槍は持っていない。
俺たちを見ると、少しだけ気まずそうに眉を寄せる。
「お前らも見たか」
「月例測定ですか」
カイルが言う。
「見ましたよ」
バルドは掲示を顎で示した。
「俺は見学扱いだとさ。検査が終わるまで正式参加はなし」
「そうですか」
俺が答えると、バルドは少しだけ鼻を鳴らした。
「悔しくないわけじゃねえ」
「はい」
「でも、今回は見ておく。お前がどこまでやるのか」
彼は俺を見て言った。
「白鎌」
その呼び方に、少しだけ眉が動いた。
だが、以前のような挑発ではなかった。
ただの異名。
あるいは、距離のある呼び方。
「リオンでいいです」
俺が言うと、バルドは一瞬目を瞬かせた。
それから、少し気まずそうに視線を逸らす。
「……リオン」
名前を呼ばれた。
少しぎこちないが、ちゃんと俺の名前だった。
「測定、見てる」
「はい」
カイルがにやにやする。
「バルド先輩、ちょっと丸くなりました?」
「うるせえ」
「前より話しやすいです」
「お前は前から馴れ馴れしい」
「よく言われます」
「だろうな」
バルドはそう言って、掲示板の前を離れていった。
その背中には、まだ悔しさがある。
でも、灰色の線は見えなかった。
それだけで少し安心した。
アーヴェルが言う。
「測定まで五日。準備期間としては短い」
「短いのか?」
カイルが聞く。
「十分な対策を立てるには、だ」
「俺、五日もあれば結構変われる気がするけど」
「その根拠のなさは少し羨ましいな」
「褒めてる?」
「違う」
エルナが掲示の下の細かい注意書きを読んでいた。
「班連携項目は、四人一組の固定班で行うようです。第一基礎班はそのままですね」
「相手は?」
俺が聞く。
「当日発表、とあります」
当日発表。
それは少し厄介だ。
相手の能力や武器に合わせた準備ができない。
だが、逆に言えば、基礎が問われる。
グレン教官の言葉が頭に残る。
異常な力を持つ者ほど、基礎を失えば早く崩れる。
「午後の実技、測定対策になるんだろうな」
カイルが言う。
「なるでしょうね」
エルナが答える。
「じゃあ飯を多めに食っとくか」
「測定対策が飯から始まるのか」
アーヴェルが呆れたように言う。
「始まるだろ」
「否定しきれないのが腹立たしい」
朝の掲示板前は、少しだけ騒がしかった。
だが、灰衣の気配はない。
旧礼拝室の黒い線も、ここからは感じない。
学院の普通の予定。
序列。
測定。
噂。
悔しさ。
期待。
そういうものが、少しずつ戻ってきている。
もちろん、完全ではない。
掲示板の端には、小さく別の通知も貼られていた。
『創世廊一部封鎖継続』
『中央棟地下区画立入禁止』
『治癒棟周辺警備強化』
日常の横に、異常の痕跡がある。
それが今の学院だ。
午前の授業を終えたあと、第一基礎班は実技場へ向かった。
昨日と同じ第一実技場ではなく、少し小さめの第二演習場だ。
グレン教官が待っていた。
エイムもいる。
ただし、今日は記録板を持っているだけで、観測術式は展開していない。
「月例実技測定の通知は見たな」
グレン教官が言う。
「はい」
四人で答える。
「今日から五日間、通常実技を中心に調整する。灰衣への対応訓練は必要最低限だ」
カイルの顔が明るくなる。
「本当に?」
「本当だ」
「よし」
「ただし、通常実技が楽だとは言っていない」
「ですよね」
グレン教官は床に四つの円を描いた。
「今日は個人能力の確認と、制限の整理を行う」
「制限の整理?」
俺が聞く。
「ああ」
グレン教官は俺を見る。
「リオン、お前は現在、訓練時に多くの制限を受けている。大鎌の顕現許可、黒月禁止、術式干渉禁止、身体干渉禁止、偏軌の使用回数制限。理由は分かるな」
「危険だからです」
「そうだ」
当然のことだ。
自分でも分かっている。
使い方を誤れば、味方の術式まで壊す。
相手の身体の線へ触れれば、取り返しがつかない。
黒月も、まだ制御しきれていない。
だが、グレン教官はそこで言葉を切らなかった。
「だが、制限された状態だけを基準にするな」
俺は顔を上げる。
「どういう意味ですか」
「今のお前の戦績は、制限込みのものだ。カイルと戦い、アーヴェルと相打ちになった。だが、それはお前が多くの手札を封じた状態での結果だ」
演習場の空気が少し変わった。
カイルが黙る。
アーヴェルの目が細くなる。
エルナも、静かに俺を見る。
グレン教官は続けた。
「勘違いするな。制限を外せば無敵だと言っているわけではない。未熟な力は、使い手自身を壊す。だから制限する」
「はい」
「だが、緊急時には制限を解除する場合がある」
その言葉が、妙に重かった。
「その時、お前が自分の力を恐れて止まれば、誰かが死ぬ。逆に、考えずに振れば、誰かを壊す」
喉の奥が少し乾く。
出し惜しみするな。
そんな言葉が、いつか来るのかもしれない。
だが、それは今ではない。
今は、その前の話だ。
「だから今日から、制限の中身を理解しろ。何を禁止されているのか。なぜ禁止されているのか。どこまでなら許可できるのか」
グレン教官は木剣を床に置いた。
「まずは、黒月の発生条件を確認する」
エイムが記録板を開く。
「黒月は、白鎌の軌道に空間の傷跡を残す現象です。現在、発生条件はリオン君の感情、守る対象の危機、白鎌の実振り、大きな軌道変化が関与している可能性があります」
「つまり、普通に振っても出ない時は出ない」
カイルが言う。
「はい。逆に、出したくなくても出る危険があります」
「それが怖いな」
「怖いです」
エイムは真面目に頷いた。
グレン教官が俺に言った。
「大鎌を出せ」
「はい」
俺は右手を開く。
空間に黒い亀裂が入り、白い柄が現れる。
白い大鎌が手に戻る。
演習場の空気が、少し冷えた。
昨日より、感触は安定している。
手の中にあるのに、身体の中にもあるような感覚。
「黒月を出すな」
「はい」
「ただ振る。大きく三回。力を込めすぎるな」
俺は頷き、大鎌を構える。
一振り目。
白い刃が空を通る。
黒い弧は残らない。
二振り目。
少しだけ刃元の黒い紋様が揺れた。
だが、黒月は出ない。
三振り目。
大鎌の軌道に、ほんの一瞬だけ黒い細線が浮かびかける。
俺は力を抜いた。
黒線は消える。
「止めたか」
グレン教官が聞く。
「はい」
「何をした」
「刃を通す先を、最後まで決めませんでした」
「説明しろ」
俺は少し考える。
「黒月は、刃が通った場所に残る感じがあります。でも、今は刃が通る事実を最後まで固定しないようにしました」
エイムがすぐ記録する。
「黒月発生抑制。軌道事実の固定を避けることで抑制可能性」
「難しい言い方になったな」
カイルが小声で言う。
「俺もそう思う」
アーヴェルは真面目に考えている。
「つまり、リオンは大鎌の軌道をただ振るのではなく、通ったこととして空間へ残している。その確定を避ければ黒月を抑えられる、ということか」
「たぶん」
「たぶん禁止」
グレン教官が言った。
「可能性があります」
「よし」
少しだけ空気が緩む。
次に、グレン教官は訓練用の魔法標的を三つ浮かべた。
青い球。
赤い球。
白い球。
「青は通常魔力。赤は攻撃術式核。白は防護術式。リオン、見るだけだ。触れるな」
「はい」
何度もやった訓練に近い。
だが、今日は少し違った。
グレン教官は、俺だけでなく班全員へ言った。
「お前たちも見ろ。リオンの見ているものは見えない。だが、リオンの呼吸、目線、手の動きは見える。リオンが触れそうになる前兆を覚えろ」
カイルが真面目な顔になる。
「止めるためですか」
「そうだ」
エルナは短い杖を握る。
「私たちは、リオンの制限の一部になるのですね」
グレン教官は少しだけ頷いた。
「そう言ってもいい」
制限の一部。
それは嫌な言い方ではなかった。
縛るためではなく、壊れないための制限。
俺を止める人たち。
俺が戻る場所。
「始める」
球が動く。
青、赤、白。
それぞれに線がある。
青は単純。
赤は壊しやすい。
白は触れれば防護全体が乱れる。
俺は見る。
赤い球の術式核に、壊せる線がある。
触れたい、とは思わない。
ただ、そこに指をかければ崩せると分かる。
以前なら、その分かる感覚に引っ張られていた。
今は少し違う。
見えている。
でも、手は動かない。
「赤、攻撃術式核。中心より少し左。触れれば崩せます。触りません」
俺は声に出した。
グレン教官が頷く。
「続けろ」
「白、防護術式。外側に偽の継ぎ目があります。本当の弱点は内側。触りません」
エイムの筆が止まる。
「偽の継ぎ目?」
「はい。触らせるための線みたいに見えます」
グレン教官がエイムを見る。
エイムはすぐに標的を確認した。
「……防護術式に誘導用の外縁線があります。通常は観測されにくい部分です。リオン君、今までより区別が細かいですね」
区別が細かい。
自分ではよく分からない。
だが、確かに見え方が少し変わっている気がする。
灰衣の線ばかり見ていたせいか、普通の術式でも「本当の線」と「触らせる線」の違いが分かりやすくなっている。
少しだけ成長しているのかもしれない。
「青は?」
グレン教官が聞く。
「問題ありません。ただの魔力線です。触る必要なし」
「よし」
球が消える。
グレン教官は短く言った。
「成長はしている」
その言葉に、胸の奥が少しだけ熱くなった。
「だが、制御が追いついているとは限らない」
すぐに冷やされた。
「はい」
「今日分かったこと。黒月は抑制の入口が見えた。術式線は以前より細かく分類できる。だが、それは同時に、触れる場所が増えたということでもある」
「はい」
「よく見えるほど、危険も増える。忘れるな」
「分かりました」
アーヴェルが静かに言った。
「なら、測定ではどこまで使う」
グレン教官は答える。
「月例測定では、黒月は禁止。術式干渉も禁止。偏軌は申告制で一度まで。白鎌は許可する」
「昨日と近い条件ですね」
エルナが言う。
「ああ。測定は実力を見る場であって、暴走確認ではない」
「つまり、リオンはまた制限付きか」
カイルが言った。
グレン教官は頷いた。
「そうだ」
カイルは少し考え込んだ。
「じゃあ、周りはまた勘違いしそうですね」
「何を」
「リオンがその範囲の強さだって」
演習場が静かになる。
俺はカイルを見る。
カイルは珍しく、軽口ではない顔をしていた。
「だって、俺も昨日戦って思いましたよ。強いけど、届くかもしれないって。でも今日の話を聞くと、それは制限された範囲なんだなって」
アーヴェルは黙っていた。
その表情は少し硬い。
カイルの言葉は、彼にも刺さったのだと思う。
アーヴェルは昨日、俺と相打ちになった。
だが、それは黒月も術式干渉もなしの話だ。
もちろん、制限を外せば俺が必ず勝つという単純な話ではない。
未熟な力は危険だ。
使えば自分も壊れるかもしれない。
それでも、手札の数は違う。
「カイル」
グレン教官が言った。
「その認識は正しい。だが、届くかもしれないという感覚も捨てるな」
「え?」
「リオンが別格の可能性を持つことと、お前たちが成長できないことは別だ」
カイルの目が少し開く。
「制限付きのリオンに届く。まずはそれでいい。制限が外れたリオンに届く必要が出る時が来るなら、その時までに強くなれ」
かなり無茶なことを言っている。
だが、カイルは少し笑った。
「分かりました」
アーヴェルも静かに言う。
「なら、私も前提を改めます」
「前提?」
「リオンを四位ではないと言ってきた。だが、評価不能を無理やり順位に置いた結果が四位なのだと理解した」
「それ、褒めてるのか」
俺が聞くと、アーヴェルは真面目に答えた。
「褒めている。ついでに、苛立ってもいる」
「なぜ」
「測れない相手を測るのは、剣士として面倒だ」
カイルが笑った。
「お前らしいな」
エルナは俺を見ていた。
「リオン」
「何」
「制限が外れる時があっても、一人で遠くへ行かないでください」
その言葉は、他の誰の言葉より胸に残った。
一人で遠くへ。
それは、灰衣の線を追う時にも似ている。
見えるから進む。
届くから触れる。
できるから使う。
そうして、戻れなくなる。
「行かない」
俺は言った。
「たぶん、ではなく」
エルナが静かに言う。
「行かない」
言い直すと、彼女は頷いた。
グレン教官は最後に全員へ告げた。
「測定までは五日。灰衣の件は沈静化しているが、終わってはいない。月例測定も、ただの行事では終わらない可能性がある」
カイルが嫌そうな顔をした。
「不穏なこと言いますね」
「現実だ」
「現実、また怒ってきそうだな」
「怒られないよう備えろ」
グレン教官は実技場の扉へ向かう。
「今日はここまで。各自、測定へ向けて調整しろ。リオンは大鎌の抑制感覚を記録。エルナは未来視使用後の疲労記録。カイルとアーヴェルは通常連携の改善案を出せ」
「はい」
それぞれ返事をする。
訓練が終わると、カイルが大きく息を吐いた。
「月例測定か」
「楽しそうだな」
俺が言うと、彼は笑った。
「まあな。灰色のやつよりは、分かりやすくていい」
アーヴェルが言う。
「分かりやすい相手ばかりとは限らない」
「でも、戦闘科っぽいだろ」
「それはそうだ」
エルナも小さく頷いた。
「私も、班連携でできることを増やしたいです」
俺は自分の右手を見た。
白い大鎌の感触は、もう消えている。
でも、黒月を抑えた時の感覚が残っていた。
刃が通った事実を、最後まで固定しない。
そうすれば、黒い弧は残らない。
なら、逆に。
固定すれば、もっと明確に残せるのか。
そう考えた瞬間、右手の奥で大鎌が微かに反応した。
まだ。
そんな気がした。
今ではない。
でも、いつか。
グレン教官が言った緊急時。
制限を解除する時。
その時に、必要になるかもしれない。
俺は手を握る。
今はまだ、測定へ向けて基礎を積む。
普通の戦闘。
普通の連携。
普通の学院行事。
その中に、少しずつ物語が動いている。
月例実技測定。
次の舞台は、五日後だった。




