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その鍵を預けて  作者: ターチャン


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IF:就職活動

※ここから先は本編・後日談・番外編とは別の流れになります。


本編・後日談・番外編と合わないシチュエーションがあるかもしれませんが、それはIFの世界とでも思ってください。

 朝人君も、もう大学四年生だ。


 早いものだと思う。


 この前まで講義だ試験だと騒いでいた気がするのに。


 今では就職活動らしい。


 管理人室の机に頬杖をつきながら、私は小さく息を吐いた。


 朝人君は機械いじりが好きだ。


 だから機械メーカーへ行きたいらしい。


 日本機械。


 この前も嬉しそうに話していた。


 でも。


 そんなのはだめ。


 私はパソコンの画面を見る。


 月光商社。


 朝人君の成績なら十分狙える。


 給与も良い。


 福利厚生も悪くない。


 ここからも近い。


 仕事は大変だろう。


 きっと毎日くたくたになる。


 でも。


 その方がいい。


 疲れて帰ってきた朝人君を迎えてあげられる。


 頑張ったね、と褒めてあげられる。


 朝人君はきっと喜ぶ。


 それに。


 給与が良ければ。


 朝人君のために、もっと色々買ってあげられる。


 たとえば。


 今朝人君がつけている簡易的なものじゃない、オーダーメイドの素敵なやつ。


 もっと朝人君にぴったりのもの。


 それに。


 私の部屋の隅に、朝人君用の区画を作ってもいい。


 小屋を置いてもいいし。


 クッションも用意してあげよう。


 今はまだ早いけれど。


 ふふ。


 まずは就職先からだ。


 コンコン。


「はーい」


 扉を開ける。


 そこには朝人君が立っていた。


「ただいまです」


「おかえり」


 私は自然と笑顔になる。


「就活どう?」


「日本機械を受けようと思っています」


 やっぱり。


「へぇ」


「機械いじり好きだもんね」


「はい」


 朝人君は嬉しそうだ。


「でもさ」


「え?」


「月光商社って知ってる?」


朝人君は首を傾げた。


「名前だけは」


「支社がここから近いところにあるし」


「お給料も良いんだよ?」


「そうなんですか?まぁ、商社ですもんね」


「うん」


あきら様は求人票を手に取る。


「ほら」


朝人君へ差し出した。


「えっと……」


「すごいですね」


「でしょう?」


「でも」


「商社ですよね」


「うん」


「機械触れないし、多分仕事がきついですよね」


あきら様は少し笑った。


「朝人君」


「はい」


「私はね。朝人君に月光商社に行ってほしいの」


「え?」


「でも……」


朝人君は求人票を見る。


「機械を触る仕事がしたくて、大学でも機械の勉強をしてきたんです」


あきら様は少し黙った。


それから。


「朝人君」


優しい声だった。


「私の言うことが聞けないっていってるのかな」


朝人君の肩が少し震える。


「ち、違います……」


「うん」


「じゃぁ、返事は?」


あきら様は微笑んだ。


「朝人君の成績なら余裕で入れると思うんだ」


朝人は少し迷う。


本当は日本機械へ行きたい。


でも。


あきら様には逆らえない。


「……はい。月光商社に行きます」


「いい子ね」


頭を撫でられた。


朝人はそれだけで嬉しくなってしまった。

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