59. 招集
8月の末に極秘の会議が開かれ強大な敵の出現が具体的になりつつあると明かされた日から、魔術庁では事情を知る者達があわただしく動き回っていた。
研究魔術師達は庁舎及び敷地内の瘴気の観測魔道具を更に増やし、常にその数値を観測している。
それは即座に関係者だけが閲覧できるネットワークに反映され共有された。
4人の魔術師長達は魔術庁に泊まり込み、頻繁に打ち合わせを開いている。
「各部隊の治癒魔術師の上の者達をこちらに寄越すよう調整しています」
「たのみます。戦闘魔術師も隊長と副隊長を集めます」
「できの良い魔道具をこちらの収納庫に移しています。試せるものはどんどん試してください。あと人数分の携帯転移装置も、もしものために用意しますね。個人の判断で使用するように」
本庁がざわつく合間にも、番2人の魔道具が完成したという報告が学園と第6部隊より上がってくる。
急げ、急げ──。
華岡誠を拘留してもう10日。状況の説明を求める抗議の文書が本人から提出された。
急げ、急げ──。
この魔術庁内において、瘴気を示す値が日に日に高くなっている。
急げ、急げ──。
取り返しがつかなくなる前に、どういう方針でいくのか定めなければ。
「追い詰めて、強大な敵として発現させて抑え込むのか?」
「それはできるだけ避けるべきでは?」
「では説得で自分が強大な敵になりかけていると理解し、留まってくれると?」
「それが叶えば良いが、そんなにうまくいくか?」
答えは出ない。
瘴気の値は日に日に高くなる。
そして9月上旬のある暑い日。
魔術庁長官の名で極秘の通達が発せられる。
番2人へ。
魔術庁本庁の上層部へ。
研究魔術師長、戦闘魔術師長、治癒魔術師長、魔道具師長の四長へ。
そしてその四長が指名したそれぞれの部下達へ。
──『来たる9月9日、華岡誠の聴取を行う。万障繰り合わせの上、各位出席のこと』




