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46. 魔術庁内の小さな兆し

魔術庁本庁で局長を務める藤原は、庁内のことをそれなりに把握していると自負している。

それは自惚れではなく、上の立場に立つ以上必要なことであり同じ階級の者であれば皆そうであろう。


『研究魔術師長がこの頃頻繁に長官と面会しているようだが、何か聞いているか?』


同じ局長クラスの同僚から探りが入ったのは、そういう理由からだ。

だが生憎と、それは藤原も把握していないことだった。


魔術研究で何か新しい成果が上げられたのかもしれない。

──だが、違うかもしれない。


藤原は物事を楽観的に捉えないようにしている。


もし何か秘されているのならば、それはかなり限定した役職の者しか触れられない極秘事項であるということだ。

必要があって、まだ自分達まで伝えられていないということ。

公式な通達を待てば良い話ではあれど、自分でも探りを入れておくことは必要だろう。


そう思い観察していると、研究魔術の者達が庁内の人の接触を調べていることが分かってきた。


単に誰が何月何日に入庁や退庁という記録だけではない。

数多く行われている会議の発言のやり取り、また廊下で交わされるすれ違いざまの会話の防犯カメラ記録。あげくは食堂の昼休みの雑多な会話の録音の解析まで。


一体どれほどの会話の解析を行っているのか。

もし魔術庁内で上が探らざるを得ない秘匿の会話がなされているというのなら、通常は各部署の長に注意喚起がなされてそれぞれが部下を注意深く観察するのがすぐに思いつく方法だろう。

だがそれが為されず、研究魔術師のみに一任されている。


研究魔術は暇な職ではない。

日本全国の瘴気の発生を予測し各部隊に伝え、その祓いの結果を分析し次に活かす。

また魔術の進化のため、個人の固有魔術の研究やその展開の相談にも乗る。

現場には出ないものの、魔術庁や現場全体を支えるとても大切な職種だ。


そこに一手に会話の分析を任されているということは、研究魔術に関わることでよほど問題となる会話が庁内で為されているということだろう。

自分のレベルでも明かされないほどの問題となる会話が。


──何か大きな爆弾が隠されている可能性がある。

引き続き注意しておこうと、藤原は決意を新たにした。

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