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44. 合同訓練の開始

風祭さんとの再会を経て、いよいよ合同の訓練が始まることになりました。

夏休みに入っているため、集中的に合同訓練に時間を取ることができます。


卒業まであと半年あまりになりますが、


・風祭さんと相性の良い魔道具を作る

・私が風祭さんの訓練の場に同席することで、風祭さんの動きや魔力がどう変化するかを把握する

・風祭さんと共に現場に立つことを想定して、どういう動きを自分がすれば良いか理解する

・単独で防御のための結界を練習する


これらの課題を最優先に取り組むよう学園長先生より言われています。


魔道具作りは学園で。

工房で細かいところを修正しながら、その場で風祭さんに試してもらいます。


合同訓練は第6部隊本部で。

本格的な広い訓練場がありますので、そこで他の隊員達の力を借りながら訓練します。

しばらくは戦闘魔術科の先生も訓練に同席し、課題点を学園に持ち帰り復習をする予定です。


移動が多く慌ただしくはありますが、学園にも第6部隊本部にも転移の魔道装置があるため手間なく予定をこなしていけるはず。


そして今日は、初めて第6部隊本部に伺う日。

私はドキドキしながら転移の魔道装置の台に乗りました。


* * *


「おつかれさん」

転移の最中はつい目をつぶってしまうのですが、聞きなれた声に目を開けると風祭さんが魔道装置のある転移室に迎えに来てくれていました。

優しい笑顔で手を伸ばしてくれるので、甘えてその手を取ってトンと装置の台から降ります。


「お忙しいのにすみません」

「いいよ。他の部隊とかに行かなくて良かった」

「そんなミスはしませんよ!」

会えてうれしくて、ニコニコしてしまいます。


「ジャージで来たのか」

「はい。制服だとスカートが邪魔かなと思って」

風祭さんだけではなく他の隊員の皆さんも、忙しい合間をぬって訓練をつけてくれるのです。

やる気がないような真似はできません。

髪も胸のあたりまで伸びていて邪魔になるので、1つにまとめてきました。

でも、おかしかったでしょうか?


「あの、駄目でしたか?もし他に訓練のためのお洋服があるのなら着替えてきます」

不安になり風祭さんを見上げると、少し笑って「そのままで良いよ」と言ってくれたのでホッとしました。


魔道装置のある転移室のドアのロックを解除すると、風祭さんは部屋から出る前に繋いでいた手を一度キュッと握った後にそっとほどきました。


……ここは仕事場です。あまり、手を繋いだりしてはいけないですよね。

分かってはいても寂しく思ってしまいます。

海で再会してからは毎晩の電話も復活しているので、随分と甘えん坊になってしまっているようです。

いけません。シャキッとしなければ。


「私、頑張ります!」

自分に言い聞かせるように言うと、風祭さんは苦笑して「あまり無理すんな」と頭をポンポンとしました。

うーん、この手のせいで私の顔と気持ちがふにゃふにゃになってしまうので困ったものです……。



転移室を出ると、事務室横の会議室へと連れていかれました。

そこに本部に今いる人達が集められます。

戦闘魔術科の先生は少し遅れてくるとのことなので、とりあえず私だけで第6部隊の皆さんにご挨拶をしなければなりません。


現場に出ている戦闘員を除いても20人ほどにもなる戦闘魔術師・治癒魔術師・事務担当の方々を前に、私はひどく緊張していました。

ほとんどの方々とは初対面になります。

私を興味深そうに見る人もいれば、観察するような目で見る人もいます。

少し厳しめの顔で見ている人も……。

魔道具科の学生の私が分不相応にも訓練をつけていただくのですから、随分とお荷物になることでしょう。きちんとお願いしなければ。


「魔術学園魔道具科3年の秋月紗良です。 

ご迷惑をおかけすることもあるかと思いますが、よろしくお願いします」


緊張で小さくなりそうになる声を振り絞って深く礼をすると、横に立つ足が見えました。

頭を上げる時に見ると、隣で風祭さんが一緒に頭を下げてくれています。

そして目が合うと、ふっと笑いました。

その目が『だって番だろ?』と言ってくれている気がして。


──うん、頑張ろう!


胸と、そして番の紋がほわほわと温かくなりながら、私は決意を新たにしたのです。


* * *


学園から戦闘魔術科の先生が到着すると、訓練をどのように行っていくかの打ち合わせを隊長や副隊長も交えて確認することになりました。


風祭さんは、私から魔力増強の効果を得るのにどれだけ離れられるかを知りたいそうです。


「戦後の番の島崎さんと綿貫さんの場合は、綿貫さんは魔道具を預けるのみで戦いの場には行かなかったそうです。それが可能なら秋月を危険に晒さずに済む。 

もし預かるのみでは難しいようであれば、ギリギリでどれくらい距離を空けても増強できるのか。それともすぐ傍らにいてもらわないといけないのか。それを知りたいです」


……離れる距離の把握はもちろん必要だと思うのですけれど。 

風祭さんの中では、もし戦いとなった時に私を連れて行かないという選択肢が上位にあるんですね……。


番として組む覚悟を決めた私には、それを聞くと寂しいなという気持ちが浮かんできてしまいます。

ただ戦闘魔術科で1年半ほど防御を中心に学んできましたが、現役の戦闘魔術師の方と同じ動きを現場でできるかは不安ではあるのです。

だから、仕方ないのかな……。


少し俯いてしまうと隣にいた風祭さんが指を握ってくれました。

隣を見上げると、風祭さんは前を向いたままです。

でも机の下で指をつないでくれてる。


「秋月の防御がどれくらいできるかもまだ見てませんし、今後どういう魔道具を作るかも分からない。だから色々なパターンを探りたいと思っています」


……一緒に戦うことも選択肢に残ってはいる、と言ってくれているのでしょうか。


勝手に思い込んで落ち込んではいけませんね。

気持ちを立て直して指を少し握り返すと、風祭さんの口元が少し緩んだように見えました。


「その検証は必要だな。まずは秋月の防御の確認と、風祭との影響の度合いを確認。

並行して秋月の魔道具づくりも進めていく」

「はい」


方針が決まり、合同訓練がスタートしたのです。

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