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13. 伯父と伯母の気遣い

学園での話し合いを途中で帰されて寮に戻った途端、私は泥のように眠ってしまいました。

やはり、緊張して疲れがたまっていたのでしょう。

夜にベッドの上でまばたきをして目を開けたら朝の8時を過ぎていて。

しばらく意味が分からず時計をじっと見つめ、その後なんとか制服に着替えて教室に飛び込みました。


「紗良!」

それでも弥生ちゃんと亜子ちゃんが抱きついてくれました。

私がいなくなったという話を聞いて心配してくれていたのです。

もの問いたげな里中くんの視線を感じていましたが、話す時間はありませんでした。


今日は水曜日ですので、午前授業です。

その後に少し皆と話そうと思っていたところ、帰りのホームルームで担任の先生から名指しで指示がありました。


「秋月。保護者の方が面会にいらしているから、このあと中央棟の面会室に向かうように」


保護者の方……伯父さんか伯母さんです!

昨日風祭さんが『保護者同伴で』と言っていましたから、近々連絡がいくのだろうとは思っていました。でもまさか今日既に来ているなんて。


前に会ったのは先月のお正月の時ですからそんなには空いていないのですけれど、でもこんなに早く会えるのは嬉しいことです。

ホームルームが終わり次第、教室を飛び出しました。

走って向かう最中に里中くんに説明する約束をしたことを思い出しましたが、心の中で謝りまた明日にさせてもらいます。 


そして、気付くのです。

翌日すぐに保護者が呼び出されているということは、昨日私が退室したあとに話された内容は決して軽いものではなかったのだろうと。


* * *


中央棟は外は鉄筋コンクリートの打ち放しの建物で木々に紛れると分かりにくいのですが、一歩足を踏み入れると落ち着いた色調の重厚な内装の建物です。

外の無機質な印象とのギャップに圧倒され、身構える人は多いのではないでしょうか。

私もこの建物に入ると背筋がピシッとなります。 

学園長先生のお部屋や職員室などがあるせいかもしれませんけどね。


背筋をピシッとしながら歩き、面会室の前に着くと大きくひと息。

コン・コン・コンとノックします。余裕があり大人っぽいノックになれたでしょうか。 

……ああ、私、伯父さんか伯母さんに会えると思うと浮足立ってますね。

ドアを開けて大人っぽい礼を──できませんでした。


「紗良」

「紗良ちゃん!」


なんと伯父さんと伯母さんの両方が来てくれていたのです。

嬉しくて、顔がへニャリとしてしまいました。

2人もニコニコして、伯母さんは「背が伸びたんじゃない?」なんて言いながら私を抱きしめてくれます。


「いつから待っててくれたの?」と尋ねると「そんなに待ってないわよ」と言います。

本当でしょうか。


「紗良ちゃん、まだお昼を食べていないのでしょう?せっかくだから山を下りて食べない?いくつかおいしそうなお店をチェックしてきたのよ」

そう言われると一緒に食べたくなります。 

事務室で外出許可を取ると急いで寮に戻り、着替えて外に出ると2人が車で待っていてくれました。



学園から車で30分ほど下りると、それなりに賑わった駅に出ます。

私達学生が週末に遊びに行くのにちょうどよい栄え具合なのです。


遠くからもそのお店目当てにお客さんが来るという天ぷら屋さんでご馳走になり、学園に帰るのかと思っていたら、

「紗良、伯父さん達が泊まっているホテルに寄っていこう」

と誘われました。 


てっきり、この後学園で私と伯父さん達に昨夜のお話があるかと思っていたのです。

まだ昼過ぎだから、もう少し後の約束なのでしょうか。


「ちょっと良いお部屋を取ったの。景色がきれいなのよ!」

そう言われますと、見たくなるものです。


ホテルは駅前のちょっと高そうなホテルでした。

「うわぁ……!」最上階の客室から見渡せば、眼下には駅前の賑わいが。

そしてまた遠くに目をやれば山々の美しい稜線が見えて絶景でした。山の奥には海も光っています。


外の景色もですが、客室の中も素敵でした。スイートルームというのでしょうか。

部屋がいくつもあり、ベッドにもソファーにも枕やクッションが沢山あります。カーテンはヒラヒラしていますし、ランプがあちこちにありました。ミニバーのようなものもあり、大人っぽい感じです。


「すごいねぇ」と言いながら窓際のソファーの感触を楽しんでいると、隣に伯母さんが座りました。

伯父さんは低いテーブルを挟んだ向かい側に座り

「紗良、話があるんだ」

と声をかけてきました。


そして、私と目が合うのを待って伯父さんは静かに話し始めました。

──私にとって、人生の大きな転機となるであろうことを。

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