第9話 次の目的地
「お祝いだ!」と意気込んで、祖父と母親がパーティーの夕飯作りに、台所へ消えていく。
そんな中、祖母が話し始めた。
「ここから西へ、道なりに行くと、川がある。そこを渡れば隣の大陸―ガリシアじゃ。」
【ガリシアは、パニルたちの居るユストリニアの隣の大地。でもその間に大きな河があり、唯一の陸地は、フェンリルの居る山脈だけだった。】
「ガリシアは、魔物が多くて、結界を張っている帝国しかないですよ?」
「あぁ…その帝国に行けば、パニルちゃんの秘密がわかるかもしれない。」
「どういう事ですか?」
数千年生きると言われるエルフであるレイチェルでさえも、知らない事だった。
「帝国は、魔物を研究している。
いや、パニルちゃんが魔物と言ってる訳じゃないよ?でも何者かわからないなら、何か手がかりが見つかるかも。と思ってな…」
「きゅうぅ…」(私の、正体…?)
(――知りたい!でもまた、みんなが傷ついたら?それなら一人の方が…でもこんな小さな私じゃ…何日、何ヶ月もかかりそうだけど…)
「行くか!」
アランがパニルの思考を停止させた。
「きゅ?」
「なんだ?お前の事がわかるかもしれないんだろ?…
俺たちも行くに決まってるだろ!」
それが当たり前かのような、アランの言葉に涙が溢れ出るパニル。それを見てアランが頭を撫でた。
「はは!なんだ、嬉しいのか?」
「私たち、もう家族みたいなものでしょ?」
レイチェルが、続けてパニルの頭を撫でる。
「また、ピンチになったら、俺たちを助けてくれよな!」
その言葉には、信頼と愛情が込められていた。パニルもまた、それに応えたいと心に強く刻んだ。
そんなやり取りを見て、羨ましそうにしているテュセ。
そんなテュセの心中を察した祖母が、いい事を思いついた!と言った感じに、パニルたちに提案する。
「テュセを、道案内に連れていくのはどうだろう?」
「え?」
みんなが驚いたように、祖母の方を見る。
「おばあちゃん。私……でも!」
戸惑うような、でも期待に満ちた眼差しだった。
「お母さんの事、気にしてるわよね?」
会話を聞いていた母親が、料理を運んでくる。
「お母さん…私が居ないと…」
「大丈夫よ…そりゃ寂しいけど…。
テュセにも、テュセの役割りがあるもの!
それに、ちゃんと帰ってきて来るでしょ?」
テュセの肩に手を置くと、涙目にもなりながら、暖かい眼差しだった。
「さぁ、沢山作ったらいっぱい食べな!」
そう言って祖父は沢山の料理を運んでくる。
祖父の回復を喜び、暫しの別れを惜しみ、新たな冒険に心踊らせながら、あっという間に夜は更けていく。
壮絶な旅になる事も知らずに…。
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翌朝。四人は旅の支度をしていた。
「じゃあ行ってきます!」
「気をつけてね。」
「お世話になりました。」
「きゅるる」
帰宅と再会を約束して、パニル一行はテュセを仲間に新たな目的地である、帝国へ向けて出発した。
「北の山から離れて行くから、そんなに寒くないよ!」
「そうなの。良かったわ…なら、そんなにアランにくっつかなくても、良いんじゃない?」
アランの腕に、自分の腕を絡ませるテュセを見て、レイチェルが指摘する。
「アランが迷子になったら大変だと思って!」
「あはは。俺は子供か!」
「笑い事じゃない!」
頬を膨らませるレイチェルを、愛おしそうに見つめるアラン。
その横顔をテュセはじっと見ていた。
しばらく歩くと、雪も無くなり、大きな運河が広がる。
(すごーい!)
「ここを渡るのか?」
「そうよ!もう少し行くと橋があって、国境の門があるから。
パニルは通れるかわからないから、鞄に入れた方がいいかもしれない…」
「そうね…魔物だと思われたら大変だものね!ごめんね、パニル。少し我慢しててね。」
パニルはもぞもぞと、レイチェルの背負ってる鞄の中に入った。
(せまい〜)
こうして帝国への冒険が始まろうとしていた。
つづく。




