第10話 不穏な空気
――そして国境の門へ到着する。
息を潜めるパニル…。
「三人か?」
「はい…」
緊張感が漂う。
「見た感じ冒険者ぽいが、何しに行くんだ?」
「…魔物狩りに。ガリシアの魔物には、レアな素材があると聞いて。」
「一攫千金を狙ってまして…」
「ふーん…まぁ、無くはないが…
……よし、通っていいぞ!」
「はい。ありがとうございまーす。」
緊張は解かず、三人は無言で橋を渡りきった。
「はぁ、怖かった……」
「別に悪い事してるわけじゃないのに…」
「疲れたでしょ?
この先に小さな町があるから、そこに泊まりましょ?」
「良く知ってんだな。」
アランが何気なく放った言葉は、テュセの顔を暗くした。
「……。」
(どうしたのかなぁ?)
「きゅきゅ?」
レイチェルの腕の中に戻ったパニルが、テュセに声をかけると、目を伏せたまま、立ち止まった。
「どうかしたの?」
レイチェルが聞くと、先程とは違う緊張感が漂う。
「…。私の家族、帝国出身なの。」
「あー、なんだ。そのくらいじゃ――」
アランの言葉を遮って、テュセが続ける。
「帝国で、魔物の研究をしてたのは、おじいちゃんとおばあちゃんなの…」
(えっ……)
「――っ。だから詳しかったのか。」
「…うん。私がちいさい時、帝国から逃げたの。なんで逃げてきたか、何があったかは聞いてない…聞いてもはぐらかされちゃうし。」
「テュセを傷つけたくない、何かがあったのかもしれないわね…」
「まぁ、行ってみればわかるし…だからってテュセが暗い顔する必要はないだろ!
道案内、すげー助かってるし!」
「アラン…ありがとう。」
「きゅん…」(こういう優しい所良いけど、誤解させちゃうよね…)
パニルを抱く腕に、静かに力がこもる。
それは、小さな痛み。
レイチェルの複雑な想いを物語っていた。
(…痛っ。レイチェル?)
パニルがそっと見上げると、レイチェルと視線が合う。
「なんでもないわ。」
その笑みは、なんだか哀しく見えたが、パニルは何も言えなかった。
町へ入ると、不穏な話を耳にする。
「西のオアシスから、魔物が大量発生したって話聞いたか?」
「あぁ、帝国が変な液体捨てたらしいぞ…」
「帝国から遠いからって、やりたい放題だよなー!」
(また大量の魔物が…北の山にも近いし、フェンリルさんと関係あるかもしれない…)
「調べに行ってみるか?」
パニルの真剣な顔を見逃さなかったアランが、口にする。
「きゅん」
テュセがすかさず、噂をしている町の人に詳しく話を聞きに行った。
そんな通じ合う二人を見て、レイチェルの顔は一段と暗くなり、手を血が滲む程握りしめていた。
「1日ほど歩く場所みたい。食料とか買った方がいいかも!隣の通りに市場があるわ」
「じゃあ、行ってみるか!」
俯くレイチェルと、どこか不安気なパニルを見たアランが近寄ってくる。
「どうした?」
「……なんでも、ない。」
「なんでもないって顔か?」
「……。」
「行こうぜ!美味そうなものあるといいな!」
「……うん。」
この二人もまた不穏な空気のまま、次の目的地へ向かうのだった。
つづく。




