第8話 パニルの成長
祖母の肩越しに、穏やかに息をして眠っている祖父が、視界に入った。
「残念だけど、私じゃダメだったの…。
苦しみは和らげる事が出来るけど、浄化までは…」
「それでも、じいさんはだいぶ楽そうですよ?」
「おばあちゃん…」
眠る祖父を優しく見つめる祖母を、テュセは抱き締める。
(…ん?黒い…靄?)
パニルはレイチェルの腕から飛び出ると、祖父の上に乗り、手をかざしてみる。
「ちょっと!パニル!」
テュセがパニルを退かそうとした時、レイチェルには黒い靄は見えなかったが、何かを悟り、テュセの腕を掴んで制止した。
(――お願い。
おじいちゃんを助けたいの――)
フェンリルの時同様、祖父の周りに漂う黒い靄は、パニルの手へ吸い込まれていった。
――すると、祖父は目を開け、起き上がった。
「おじいちゃん!?」
「なんだ?わしは…寝ていたのか?」
「信じられん…」
テュセと祖母は、手を取り合って涙を流した。
事の経緯を説明すると、祖父はパニルを抱き締めて、喜んだ。
「ありがとう。パニル!」
「きゅううん!」(全然いいのよ!)
「不思議な動物じゃのぅ…」
「それより、なんかさー…違和感が…」
「私も思ってたのよね……」
パニルがアランとレイチェルの会話を聞き、振り返ると…
「――あ!パニルが成長してる!?」
「ほんと!羽も生えてる!!」
「きゅるるん?」(そう言われれば?)
「黒い靄で成長するのかしら?」
「きゅんん…」(嬉しくない栄養…)
話をしていると、テュセの母親が町の仕事から帰ってきた。
「ただいまー」
部屋へ入ってくると、今朝まで目を覚ましていなかった祖父が、起き上がっている。
「――お義父さん!?」
母親はその場で泣きだしてしまった。
「ライラさんは、ほんとに涙脆いなー。」
祖父が少し困った顔をしながら、母親の肩に手を置いた。
「ママは泣き虫なの。私が転んで凄い血が出た時も、私より泣いてたのよ!」
「…わー、ひーくっ…!」
アランの言葉を最後まで聞くまでもなく、レイチェルが頭を叩いていた。
「もう!アランは!!」
「痛ぇ…でも、それが愛情…なんだろ?」
幼くして両親を亡くしていたアランには、少し羨ましくも思えたのか、言葉とは裏腹に、ほんのわずか、寂しげに微笑んだ。
「きゅ!」(アラン!)
そんなアランに、パニルとレイチェルとテュセと、なぜか祖母が抱きつく。
「なんで、おばあちゃんまで?」
「ふふふふ。イケメンが哀愁漂わしてるんだ。慰めたくなるだろ?」
「おばあちゃんはいいの!」
(テュセって、おばあちゃんに似たんだね。)
部屋は喜びに満ちていた。
束の間の安らぎと共に…
つづく。




