第6話 いざ!北の山へ
北の山は常に雪が降っている、極寒の地。三人は防寒服を着込んで出陣した。
(モコモコの上に防寒着着てるのに寒ーい!!)
「大丈夫?もうすぐ山小屋があるから、そこまで頑張って!」
レイチェルがそう言うと、間もなくして煙が見えた。
それ程大きくはない山小屋へ到着した。
「いらっしゃい!」
山小屋の主が迎えてくれる。
「一晩泊まりたい」
「一部屋で良ろしければ!」
「はい。お願いします。」
主とアランの会話を聞いていたパニルは、嫌な予感がしていた。
「―んっ、アラン♡」
「ほら、寒いんだろ?…あっためてやるからっ!」
「はぁん!」
(やっぱり始まった…)
予感は的中して、パニルは外へ出ていく。
(はぁ。寒い…もう、ああなると長いんだよねー)
吹雪く頂上を見上げると、そこは黒い靄がかかっていた。すると頭に直接声が届く。
(た、助けて、くれ…)
(え?誰?どこにいるの?)
パニルの問いに答えることはなく、黒い靄が目の前を通り過ぎていく。
「何だったのかなぁ〜?…」
妙に引っかかったが、寒いのもあって、考えるのを辞めた。
次の日早朝からパニル一行は出発していた。
ここからは山小屋はなく、一気に頂上まで行かないといけないからだった。だが凍てつく寒さと、魔物退治で体力を奪われてたため、途中アランの火の魔法で焚き火をおこし、温まりながら進んで行った。
「エルフの私でも疲れるわ…」
「200歳だもんな…」
レイチェルに殴られるアランを見て、パニルの緊張は解かれていた。
「きゅぷぷぷ」(あはは。)
「わ!パニル、声出して笑ったみたい!」
「ほんとだ。可愛いじゃんか」
「ぷきゅ!」(え?はず!)
顔を赤くしたパニルを見て、微笑む二人。
極寒の中でも、暖かな時間が流れていた。
――そして三人は、フェンリルの待つ山頂へと足を踏み入れた。
━━━━━━━━━━━
そこには神獣フェンリルと、狼の形をした魔物が数匹、周囲を取り囲んでいた。
「貴方は、神獣フェンリルですね?
その黒い靄…一体何があったのですか?」
レイチェルがフェンリルに質問してみても、応答がなかった。その変わり、昨晩のようにパニルの頭にだけ、直接声が届いた。
(お前ハ――、ワタシをコロスのか?
今度ハお前ガ、――?)
(何言ってるの?意味がわからない!)
沈黙の後、フェンリルが上空へ雄叫びをあげると、周りの魔物が襲いかかってきた。
アランとレイチェルには、動作もない程弱い魔物だったが、倒しても倒しても湧いて出てくる魔物と、寒さで、どんどん体力は削られていった。
(どうしよう…
お願いフェンリルさん!辞めて!)
その声が届いたのか、フェンリルの真っ黒な目がパニルを捉えた。
(うる、さい…!)
フェンリルが低く唸ると、黒い靄が目の前に集まり、無数の氷の粒になってパニルへ襲いかかってくる。
「パニル!」
次の瞬間――レイチェルがパニルに覆い被さる。
すると、背中を傷だらけにしたレイチェルが倒れ込んできた。
「だい、じょうぶ?…っ!」
「きゅぅぅ」(あ、やだ、こんなの…)
パニルは傷ついたレイチェルを見て、大粒の涙を零した。
「レイチェル!パニル!」
アランが周りにいる魔物を一掃すると、こちらへ駆け寄ってくる。
「一旦引こう!レイチェル、立てるか?」
「うぅ…」
アランはレイチェルを抱き抱え、その場から離れようとしたが、パニルは一歩も動かなかった。
つづく。




