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転生したら正体不明のモフモフでした。なのに世界の運命にぎっています  作者: 白 月虹


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第25話 届かない距離

鉄格子の門の前まで行くと、門番が四人を制止する。


「なんだお前たち!」


「あの、俺たち、ギルドの人に聞いて…探してるって。」


「何?…待っていろ。」


一人の門番が中に入って行く。


「念の為、パニルを隠した方がいいんじゃない?」


「そうね。魔物とか言われたら大変だし。テュセ、ローブの中にお願い。」


「そのまま、俺たちの後ろから着いて来ればいい。」


「わかった。」


(悪い事が起きなければいいけど…)


しばらくして門番が戻ると、四人は中に通された。


謁見の間には、陛下と息子のシュヴァル王子が座っていた。


張り詰めた空気。


アランとレイチェル。

その後ろに、パニルを抱えるテュセが膝まづいていた。


「おもてをあげよ。」


「フェンリルの瘴気を、エルフの者が浄化したと聞いている。」


アランとレイチェルは顔を見合せ、一度頷く。

嘘をつくのは辞めようと決めていた。


「…説明します。」


テュセの方を向くと、パニルがひょこっとローブから姿を表した。


「わぁ!魔物か!?」

「なんと言うことだ!」


「静まれ!」


ざわめく家臣は、陛下の一声で大人しくなる。


「パニルと言います。彼女が名付けました。それで――」


アランは、フェンリルの浄化の経緯を説明した。


「――なので、彼女が浄化したわけではないのです。」


「ほう。そんな強力な魔力…欲しいなぁ。」


陛下の声が怪しく響く。


「陛下、恐れながら――」


言いかけた瞬間だった。


「……っ!」


王子の視線が、レイチェルへと向く。


(この声……)


さっきまでの街の記憶が、一気に蘇る。


路地裏で聞いた、あの冷たいけど可憐な声。


(まさか……)


だが確信には至らない。


「――そして、私たちはパニルの正体を探しています。」


説明が終わると、王子が父親を窘めるように言う。


「陛下。正体不明の生き物をそばに置くのは、あまり良くないかと…。」


「…うーん。しかし今欲しいなぁ…」


(何この王様!わがまま!?

それより私、物じゃないんだから、あげるとかもらうとか辞めてよー!)


パニルが嫌悪混じりの顔になる。


「陛下…。」


周りの家臣も困惑気味に、声をかける。


実は陛下のわがままはいつもの事。

唯一シュヴァル王子と皇后の言葉には、耳を傾けている。


「うーん…まぁそう、か…?」


「はい陛下。

正体がわかったらまた、城へ来てほしい。」


「は、はい…」


(……。)


「では、失礼します。」


四人は謁見の間を出る。

すぐパニルは怒った顔で、パクパク口を動かす。


「待てパニル。言いたい事はわかってる。

あの場は承諾するしかない。」


呆れた顔のアラン。


「陛下は一度言ったら聞かないって、この国では有名なの。正体がわからないって言えばいいのよ。」


レイチェルは片目を瞑ってみせた。


「それにしても広いなー。ここどこだ?迷ったか?」


「え?中庭ぽいね…」


テュセがキョロキョロすると、アランが急に足を止め、背中にぶつかった。


「っ!…アラン?」


「……っ」


少し先。兵士の列の中に、見覚えのある背中があった。


見間違うはずがない。

あの歩き方、あの立ち姿。


「……ケイト」


だがその名は、もう届かない。


規律正しく歩く兵士の一人として、ケイトはそこにいた。

表情は固く、視線は前だけを向いている。


アランの拳がわずかに強く握られる。


「……アラン。いいの?」


後ろからレイチェルが声をかける。


その一言に、アランは視線を逸らした。


そして、何でもないように口を開く。


「……どうせ、覚えてないし」


軽く言ったつもりだったけれど、その声はどこか掠れていた。


姿が見えなくなる、その瞬間。


ケイトが振り返る。


「……っ!」


目が合ったような気がした。

でも遠くてわからない。二人だけの空気が漂う。


ケイトは一瞬、目を見開く。


けれど、何事もなかったかのように、再び歩き出した。


その背中は、建物の暗闇へと消えていった。


アランは、最後まで目を離さなかった。


そして、ぽつりと呟く。


「……親友なんだ」


パニルは、その横顔を見上げる。


「…きゅ」

(何があったの?親友なのに…?)


パニルは理由がわからないけど、アランの悲しそうな顔に胸が締め付けられた。


「…行こう。」


アランが歩き出す、皆も続いた。


誰も言葉を口にしなかったが、その沈黙を破った者がいた。


後ろから息を切らして走って来る…


「待ってくれ!」


――シュヴァル王子だ!


「っ!?」


「どうしたのですか?」


「…はぁ、はぁ。

あの、エルフの方。昼間に、街で、族を追い払って頂きありがとう!」


「…あ!あの時のマントの方…

シュヴァル様だったのですか!?」


「あぁ、あまり治安のいい場所じゃなくてね。視察へ行ってたら、女性が絡まれていて…助かりました。

それがまさか、貴方だったとは!――」


(良く喋る王子だなぁ…)


パニルの眉間にシワがよる。


シュヴァルが、レイチェルの前へ1歩

踏み出す。


「パニル殿の正体がわかったら、私と結婚してくれないか!?」


「え!?」

「はぁ!?」

「きゃっー」

(うそ…)


一瞬、時間が止まったかのような沈黙。


「お断りします。」


間髪入れずに返された一言。


「なっ……!」


シュヴァルの表情が固まる。


「理由は!?」


「好きな人が居ますので」


シュヴァルが怯んだ。だが――


口元に笑みを浮かべる。


「なら、振り向かせるまでだ!」


その言葉に、レイチェルの足が一瞬だけ止まるが、振り返ることはなく、そのまま歩き出した。


(……面倒なのに目をつけられちゃったね。)


パニルは小さく身を縮める。


その背中を、シュヴァルはしばらくの間、じっと見つめていた。


――こうして、王都の騒動はさらに面倒な方向へと転がっていった。



つづく。

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