第14話 友情
翌朝。
どこかぎこちない三人と、空気を察してペット化するパニルは、帝国へ向けて歩き出していた。
「ホント砂漠だらけだな。」
口火を切ったのアランだった。
「魔物増加のせいで、皆他の国や帝国へ逃げて行ったから、町も村も廃っていくんだよ。」
「エルフもガリシアには寄り付かないわ…良い歴史もないし。」
「300年戦争してたんだろ?」
「うん。私の母親のお兄さんは戦死したわ…遺体は戻って来なかったから、この地に居るのかもね…」
「きゅぅ……」
重い空気の中、近くに廃村が現れ、一行は今日はここで寝ることにした。
「帝国まで、あとどのくらいだ?
町とか無いのか?」
「あと半日歩けば、帝国軍に守られてる町があるよ。
ごめん、帝国まではわかんない…私もその町までしか行ったことないの。」
「何の用で行ってるの?」
「おじいちゃんの薬とか、ガリシアにしかない食料とか。たまにガリシア料理を作るから。」
「そういえばテュセん家に居た時、見た事ない料理、色々あったな!それだったんだ!」
「うん。そうだよ」
(えー。私、寝てたから、夕飯しか食べてない!)
四人は廃村で一夜を明かし、早朝出発する事にした。
パニルは一人、満天の星の空を眺めていた。
(転生してそんなに経ってないのに、すごい馴染んでるなぁ…
帝国かぁ…私の事何かわかると良いなぁ…けど怖いなぁ…)
思いにふけっていると、テュセが声をかけてきた。
「パーニル!」
「きゅん!」
「ふふふ。」
隣に座ると、少し重い空気を出すテュセが、ポツリポツリと話し始めた。
「私ね、……失恋した。
でも、ほんとに気づいたの最近だから、実感なくて…」
「きゅん」
「へへへ。恋なんて初めてだから、どんなかわからなくて…でも、胸が苦しいのはわかった。」
(うんうん。わかる!私も初めて好きになった人に失恋して…っ。)
気持ちが重なる。
パニルは、胸がざわついた。
あの時と同じになってしまう気がして――思わずテュセを抱きしめた。
「…パニル。大丈夫だよ?」
「きゅうきゅー」
すると――
パニルの周りに光の粒が集まる。
「わぁ!キレイ…」
まるでテュセを励ますように…。喋れないパニルの心の内を表すかのように。
「ありがと!」
テュセは、パニルを抱き返した。
こうして夜は静かに更けていった。
次の日の早朝。
町へ向けて出発する。
「ねえ、パニル」
「きゅ?」
「パニルが居てくれて、よかった」
テュセはそっとパニルの頭を撫でる。
もう、昨夜みたいな重たい空気はなかった。
全部が消えたわけじゃない。
でも少しだけ、前を向けているようだった。
少し早めに目的地の町に足を踏み入れると、すぐ違和感が…。
そんなに小さな町ではないのに、砂漠化が進み、活気がない。
「なんか…荒れてんな…」
「…そうね。」
「ここは5年前から段々とこんな感じよ。
中心部はもう少し活気あるから、そこまで行こ!」
「帝国までの道も聞かないとね。」
「それならギルドがあるから、聞いてみよ!」
「よし!行くか。」
ギルドの店に入って行くと、受け付けの娘とテュセは知り合いのようで、久しぶりの再会を喜ぶように話し初めていた。
「テュセ!久しぶり!おじいちゃんの薬代?」
「セリナ!久しぶり!ううん。おじいちゃんは…良くなったの。」
「そうなの!?良かったじゃない!」
「ありがと!」
「でも、瘴気にあてられたのに…神官も来ない!って怒ってたじゃない?」
「…うん。色々あってね。」
「すみません…。帝国に行きたいのですが…。」
パニルの事が出てきそうな雰囲気になると、レイチェルが口を挟んだ。
「あ、はい。帝国ですか?」
「えぇ。道のりとどのくらいかかるか知りたくて。」
受け付けの娘は地図を出すと説明を始める。上手く切り抜けたようだ。
「ありがとう。またね!」
「うん、またね!
そうだ待って!テュセ。」
「何?」
「今、帝国の周りは魔物が増えてるの。
この聖水から作った石を持って行くといいわ。弱い魔物は寄ってこないから。」
「強い魔物は寄ってくるのか?
弱い冒険者は全滅だな!」
「そう、ですね…」
すぐさまアランに弱点を付かれて、娘は苦笑いをする。それでも無いよりマシと、テュセはありがたく受け取った。
そして静かに、確実に、残酷な運命に彼らは近づいていく。
つづく。




