表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイバーファンタジーの異世界で本気出す  作者: 南田華南
完結編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/72

第70話 地球と異世界を巡る因縁は、今ここで収束する!!

 ジンの視界には、ミシェルがロズノフによって命を奪われる瞬間が迫っていた。


(ロズノフは、前世でオレを殺した男だった。)


 この世界で、初めて『銀色の拳銃』を目にした瞬間の既視感。全ての記憶を

 取り戻し、オレが奴の声を聞いた時、悟った。オレを殺した男が、この世界に

 転生していた。そしていま、奴はとんでもない『力』を得ていると確信した。


(アイツには、絶対にミシェルを奪われる訳にはいかねえッ!!)


 復讐したいと思わない。もう二度と、アイツの好きにさせたなくない。

 オレは――もう誰かを失いたくないんだッ!!


 ジンは、持てる力の全てを注ぎ込み、宿敵ロズノフから彼女を守り抜くことを決心した。


 一方その頃、ミシェルは──殺意に満ちたロズノフの残像と対峙していた。


 彼女は必死に考え始め、この窮地ピンチを乗り越える打開策を模索していた。

 その刹那、ロズノフの背後から迫る『鉄』が、ミシェルの視界に入った。


 数分前、彼が撃墜した、三機の戦闘機の残骸ザンガイ。空から降り注ぐ鉄のつぶてを前に、

 ミシェルの神経細胞がたかぶった。死の運命をくつがえす『最適解』を導き出す。


(電子操作で、磁力を生み出し、私とその鉄板を吸着できれば・・・ッ!!)


 ミシェルは手をかざすと、電子を加速させる。指先の電位を急上昇させ、

 空気の絶縁破壊を強制的に誘発しようとした。だが、ロズノフの拳の速度が、

 彼女の演算完了を許さなかった。無数の拳が、ミシェルの顔面に接近する。


(だ、ダメ! ・・・もう間に合わないッ!!)


 死を覚悟した瞬間――突如として発生した「超重力」が、悪魔ロズノフ

 甲板へ叩き伏せた。凄まじい衝撃に圧殺される敵とは対照的に、

 ミシェルはふわりと『何か』に抱き上げられ、窮地を脱した。


 その腕は、金属で出来ていた――だが、なぜかミシェルはあたたかいと感じた。


 視界に入るのは、輝く金髪、透き通った碧眼。黒い布製マスクの男。

 紺色の塗装が施された鋼鉄の装甲を持つ存在。機械化人間サイボーグ――ジン。


「ジンくんッ!!」


「待たせたなァッ!! もう離さねぇから!! 絶対お前を守りきるッ!!」


『落下速度演算完了。最適回避ルート、確定。』


 ジンの眼球カメラに、赤色の枠が展開される。彼はミシェルを抱え、人工神経を

 研ぎ澄ませる。ナビに導かれるまま加速装置を点火した。飛来する鋼の流星群を

 一分の狂いもない演算で断ち切り、正面の障害物も回避し、甲板を駆け抜けた。


「久しぶりだなぁ、僕が愛するライバルッ!! 屑鉄スクラップのジンッ!!」


 突如背後に現れたベンジャミンは、ジンの頭を強引にでまわした。


「や、やめろぉおお!! 人を犬みたいに触るんじゃァ、ねぇッ!!」

「・・・なるほど、そうだったのか・・・。」


 ベンジャミンは、愛するジンから手を離すと、自身の魔法について話した。


「僕の魔法は『新生』したのさ。量子に含まれるあらゆる情報を解析し、

 再構築できる。触れた生物の記憶を読み取り、その本質を具現化する★」


「!? 何が何だかさっぱり分からんぞッ!!」


「愛さ。僕は感情という、物質でも事象でもない――世界のロジックの枠外にある

 『概念』の力を得たんだ。見せてもらったよ、君の記憶をね。本当の名前は、

 梅川ウメカワジンって、言うのか。ふぅーん、本当の君は地味★ 眼鏡がクソダサい。」


「ハァアアッ!?  テメェ何勝手に人の情報を盗んでやがるッ!」


 ジンとベンジャミンが口論している中、甲板で震える者がいた。

 ロズノフは召喚獣が放った重力魔法で、動きを封じられていた。


(探すのだッ!! 私は多元宇宙を内包する『ロジック』として、間違いを犯す

 人類を救うのだッ!! こんなゲロカスどもとたわむれているヒマはないッ!!

 ・・・見つけたぞ・・・別の宇宙の私に上書きできる『商品』がなァ!!) 


 空間が歪み、ロズノフの姿が消えた。真っ先に異変を察知したミシェルが叫ぶ。


「アイツがいないよッ!! 消えちゃった!!」

「な、何だってッ!!」


 二人の男たちが慌てて周囲を見回した、その時だった。

 戦闘機の動翼部分から、凄まじい青白い放電が炸裂した。


 ロズノフの魔法「世界自我オール・イズ・オン・ミー」。それは物質に分類される「市場に出る品」を

 依代よりしろに、別宇宙の自分をこの宇宙へ上書きすることができるのだ。異世界で

 彼は投資家となり、ビジネスで「数字」こそが価値があると豪語する彼には、

 兵器メーカーの「戦闘機の一部」など、自分を上書きするための物に過ぎない。


 バリバリと空間を焼き切り、動翼を自分自身に変換したロズノフは叫ぶ。


「これが、無限の宇宙を持つ我が『力』だッ!

 私は『統率者』として貴様らを裁くッ!!」


「せ、戦闘機の翼を・・・自分の体に再構築しているのかッ!!」


 驚愕きょうがくするジンに対し、ロズノフは語りだす。


「座標に『質量』があるなら、私は何度も上書きできるッ!!

 いくぞッ! 貴様らサルどもに『因果』を刻むとするッ!!」


 漆黒の肉体に、緑の数字がおどる『統率者ロズノフ』が、戦場に爆誕した。 


量子変身クアンタム・トランスフォームッ!!」


 ロズノフは自らを量子分解し、再びミシェルの眼前に顕現けんげんした。


「まずは脆弱ぜいじゃくな女から殺すッ!! 死ね!!」


 数値の悪魔がミシェルに迫る刹那――『真紅の残像』が空間を横切った。


「ナ、ナニィイイッ!!」


 回復魔法で復帰した魔女――ナジュリが時空を加速させ、ミシェルを救出した。


 上空へ離脱しながら、彼女はベンジャミンへと熱いげきを飛ばす。


「ベンッ! ジンは魔法が使えない状況だッ! お前が全力で援護しろッ!!」


 ベンジャミンの瞳に闘志がともる。


「了解、長官ッ!! ジンを僕の『エゴ』で包むと約束しますッ!!

 英霊降臨ゴースト・スタンディングッ!!」


 ベンジャミンの背後に、青白い色をした軍帽と軍服を着た『ナジュリ』の

 ホログラムが出現した。彼の脳内命令を聞いた亡霊は、手を突き出し、

 ジンの体を薄い『時のバリア』が包み込む。刹那、黄金時計の魔法陣が

 ジンの背に出現し、時の魔法陣は光輪のように輝いて回転し始めた。


「ジンッ!! 君は『時』の加護で、この世界を時空加速できるッ!!」


 ベンジャミンがそう叫ぶと、ジンは迷わず時空加速してロズノフに挑む。


「ありがとな、ベンッ!! いくぜッ!! ロズノフッ!! テメェはオレたちが

 倒すッ! テメェに殺された前世のオレが、『仲間』と共に立ち上がるッ!!」


 だが、ロズノフは動じない。一連の流れを見た彼は叫んだ。


「フハハハッ!! 異世界人、敵の前で叫ぶとは愚かなりッ! 因子加速アクセラレータッ!!」


 ロズノフも加速時間を生成。二人は、超光速の領域へと突入し、

 加速した二つの影が、『時』の中で凄絶な殴り合いを開始した。


邪魔ジャマ!!邪魔ジャマ!!邪魔ジャマ!!邪魔ジャマ!!邪魔ジャマ!!邪魔ジャマ!!邪魔ジャマ!!邪魔ジャマ!!邪魔ジャマ!!

 邪魔ジャマ!!邪魔ジャマ!!邪魔ジャマ!!邪魔ジャマ!!邪魔ジャマ!!邪魔ジャマ!!邪魔ジャマ!!邪魔ジャマァアア!!」


 ジンは機械駆動の限界を超え、鋼鉄の拳をロズノフに幾千と撃ち込む。


KILLキル!!KILLキル!!KILLキル!!KILLキル!!KILLキル!!KILLキル!!KILLキル!!KILLキル!!

 KILLキル!!KILLキル!!KILLキル!!KILLキル!!KILLキル!!KILLキル!! KILLキル YOUユー!!」


 対するロズノフは、別宇宙の自分自身と瞬時に上書きを繰り返し、素早く

 残像を重ねて応戦する。周囲の者は二人の姿を目視することすら叶わない。

 ただ、大気が爆ぜる音と火花だけが、超光速の乱打戦を想像させるのだ。


 だが、徐々にロズノフが、ジンの動きを凌駕し始める。ジンの鋼の肉体が

 削られ、サイボーグと多元宇宙との演算速度の『差』が開いていたのだ。


「ク、クソがァァアアアア!!」


「ジン、貴様は所詮しょせんサイボーグッ!! 多元宇宙そのものである私の前では

 脆弱な存在であり、無価値なのであるッ!! そして貴様を完膚かんぷなきまで

 倒す手段をこれから行使するッ!! 自我自算オール・イズ・ナンバーッ!! この鉄のサルを

 吸収しろッ!! 強制買収オール・バイアウトッ!! 鉄クズは安く買い叩くに限るッ!!」


 ロズノフのてのひらがジンの胸元に触れた。ジンは分子レベルで分解される。


「ア、ア、アアアアアアアアアアアアアッ!!」


「私は人の『意識』を奪うッ! 彼らの『思考の呪縛』を断ち切るッ!!

 イデオロギー、宗教、哲学、科学・・・これは全て『不幸のみなもと』である!

 考えることを辞めた時、知恵の実を食べた人は解放されるのだッ!!」


 ジンの身体が、ロズノフの掌へと吸い込まれていく。


 その光景を目の当たりにした、ベンジャミンが吠えた。


「長官ッ!! あなたは『時の因子』を操作してください!!

 僕が『愛の記憶』を頼りに、ジンを『再構築リビルド』します!!」


承知しょうちッ!! ミシェル、君も力を貸してくれッ!! 

 私たち三人でジンをこの世界に繋ぎとめるんだッ!!」


「分かりましたッ!!」


 三人は同時に両手を宙へと掲げた。


生命ライブ錬成アライブッ!!」


 ジンから黄金の発光体があふれ出る。ロズノフに奪われた下半身が、

 光の中から実体を持って生え変わる。それは、デニムのズボンと

 靴をいた足であった。突然起きた謎の現象にロズノフは驚いた。


「何ィイイ!! ならば! 加速させて先に奪うだけェッ!!」


 ロズノフが時空を加速させようとした刹那──体中に無数の「0」が、赤く

 刻印され、亀裂が走った。亀裂から白い閃光が放出され、ジンに吸収された。


「バ、バカなァアアア!! 逆に私が吸収されるだとォ!!」


 ロズノフは、誤解した。彼は「無限」の宇宙になったのではなく、「有限」の

 宇宙を無理やり閉じ込めていたのだ。赤く光る「0」は彼が魔法を使うたびに、

 彼の「宇宙」が消滅したのを警告する「宣告」だった。彼の体が限界を迎えた。


 ロズノフのエネルギーと、ベンジャミンたちの量子操作が融合し、ジンの

 機械の体が変貌へんぼうした。その姿は、天然パーマの黒い髪と眼鏡、黄色いパーカー、

 白いTシャツに、青いジーパンとスニーカーを履いた少年、梅川仁であった。


「なッ!? 貴様はッ!! あの時殺した・・・アジア人のガキだとォ!!」


 ロズノフの脳裏に、封印していた前世の記憶がよみがえる。路地裏で寝ていた時、

 ふと目が合った日本人の少年、仁。ロズノフは持っていた銀色の拳銃で、

 彼を撃ち殺した。そこに理由などはなかった。が近くを飛んでいたから

 叩き落とした、ただそれだけの感覚であった。彼の前で、仁は再び蘇った。



最終話の文字数がオーバーし、分割しました。71話が最終話+エピローグになります。

本日21時に投稿しました。大変申し訳ございません。また、予約設定を間違えてしまい、

本日20時16分に間違えて表示され、最後まで迷惑をかけて、本当にごめんなさい!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ