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サイバーファンタジーの異世界で本気出す  作者: 南田華南
完結編

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72/72

最終話 サイバーファンタジーの世界で貫き通す

 仁は、目を開ける。亀裂が入ったシルエットとバイナリコードの男が見えた。


「ロズノフッ! 俺はお前を絶対ゼッテェ倒すッ!!」


 少年は宙を蹴り、その拳を何度も叩きつけた。本来、ロズノフは肉体が

 別宇宙の物理の影響で、痛みを感じなかった。だが、現在は状況が違う。


 彼は再構築の際、ロズノフの宇宙エネルギーを媒介にし、偶然にも同じ

 宇宙のことわりで動く『仁の拳』はロズノフの体をとらえていたのであった!


「ウグヌゥアアアアアアアアアアアアッ!!」


 ロズノフの絶叫が響き渡る。少年の拳が触れるたびに身体が崩れ、

 存在しないはずの痛覚が、焼けるような激痛となって彼を襲った。


 このままでは敗北すると確信したロズノフは、多元宇宙の自分へ上書きを

 呼びかけた。だがロズノフの通信は『未知』の干渉によって妨害された。


『ご主人様。アミも戦います。』


 まるで少女のような声がロズノフに聞こえた。それは、仁の脳内に

 ダウンロードされた魔法生成AI『アミ』の声。彼女は、ロズノフの

 『体内宇宙』を攻撃し、別宇宙のロズノフとの連絡手段を破壊する。


「ナ、ナニィイイッ!! 人工知能がァッ!! 無価値なガキを守ろうとッ!!

 特異点シンギュラリティになっただとぉッ!! 統率者である私を超えるというのかッ!!」


『あなたが無価値です。ご主人様は、みんなから愛されるから救われました。

 あなたは自分以外をゼロにし、誰からも相手にされなくなりました。あなたの

 宇宙も見捨てたのですね。仲間がいないのは、統率者の定義から外れますよ?』


「あ、あおるなァアア! ならばッ!! 自爆して全て道連れ──」


(出しやがれェ!! オレ様は、こんなところで消えてたまるかァ!!)


 それは旧主であるジン・ゼッカードのデジタルデータだった。彼もAIと化し、

 彼は、自分が崩壊から助かるためにロズノフの内部から攻撃し始めたのだ。


「お、お、お、お、おおおおおおおおおおおおおおおッ!!」


 正面は前世の被害者である仁の拳。内部からは二つのAIによる猛攻。

 逃げ場を失ったロズノフが、断末魔を上げた。安全な別宇宙への退路を

 断たれた彼はもはや再生すら叶わず、仁の拳を無防備に喰らい続ける。


「勝ち(価値)にこだわって『中身』がねえ! そんなテメェが

『中身』で勝負する俺に勝てるわけねぇッ!! 今までのツケ――

 ここで『清算』しやがれェエエッ!!!!」


 梅川仁の放った最後の一撃が、ロズノフの核をつらぬいた。


「ヂドゥゥゥゥッ!!」


 ロズノフの身体が粉々に砕け散り、その衝撃で仁も後方へと吹き飛ばされる。

 チリとなったロズノフは、『思考停止』の野望と共に、大気の中へと霧散むさんした。


 無価値な者は無価値のまま死ぬ、彼の哲学は「因果応報」として跳ね返り、

 ロズノフに吸収されたアミが、量子分解魔法を発動し、この星に被害を

 与えないように、ロズノフをエネルギーごと、量子化する道を選んだ。


 アミが見えない存在になったことを仁は悟り、彼の眼には大粒の涙が流れた。

 異世界に転生し、ずっと彼を支えていた彼女の『二度目の死』に、仁は泣く。


『ご主人様・・・また、会えますから・・・』


 少年の耳に、アミの声が届いた。眼鏡が曇り、仁は落下していく。

 ベンジャミンが即座に重力操作魔法を展開し、仁の身体を優しく受け止める。


 ゆっくりと甲板に降りてきた仁を、ミシェルがしっかりと抱きしめていた。


「ジンくん・・・お帰りなさい。」


 少年は、ミシェルの胸の中で、今までの想いが爆発し、泣き叫んだ。


 仲間たちの絆によってサイボーグから人間性を取り戻した少年は、人間性を

 捨てた悪、ロズノフに勝利することができた。だが、その代償として、自我に

 目覚めた機械の『仲間』を犠牲にした。仁は、AIも大切な存在と認識していた。


 ふと、空から白い結晶が舞い降りた。


 彼らが上空を見上げると、そこには季節外れの『雪』が降り注いでいた。

 アミが、ロズノフののこした莫大なエネルギーを雪に変えたのだろうか。


 空母の上に降る『粉雪』はどこまでも切なく、不思議と暖かかった。

 冷たさを感じさせない不思議な雪が、天空から海面へと溶けていく。


 こうして、梅川仁の最後の戦いは静かに、幕を閉じたのである。


 





 


 プライドシティ 住宅街 フォートランド地区 レストラン内


 



 

 


 三日後、仁はレストランで、昼食を仲間と共に楽しんでいた。


 数日前から退院祝いを約束していた二人の女子高生、キャシー・アリンガムと

 病院から退院したアリー・クロイツも参加しており、人間の体になった仁は、

 地球の転生者が考案した無国籍料理を楽しんでいた。巨大なテーブルの上に、

 色とりどりのサラダや魚介類のパスタ、ピザやハンバーガーが置かれていた。


「うめぇえええッ!! これ、チーズがこんなに伸びるぞッ!!」


 仁は、笑いながらピザを食べる。彼の脳インプラントにいるアミがとがめた。


(ご主人様、食べ物を口にいれたまま、喋るのは危険です。食道に炭水化物の

 かたまりまり、最悪の場合、窒息死する危険があります。もうサイボーグじゃ

 ないので、食べ終わってから話をするべきと、アミは忠告しております。)


(悪い悪い。アミ、いつも俺に気を使ってくれてありがとなッ!!)


(ご主人様は賢くないと分かり、アミがいないとダメだと思いました。)


 隣に座っているミシェルが仁にたずねた。


「ねぇ、仁。今度みんなで海に泳ぎに行こうよ。バーベキューやりたいッ!」


 ミシェルは、生まれ変わった仁を受け入れた。彼と付き合い始めた。二人の

 会話を聞いた、白いブラウスと黒いスカートを履いたナジュリも賛同した。


「うむ! 私も行くぞッ! 空母で見た海よりも素晴らしい海を知っている。

 ・・・それに私は、この中ではスタイルが良いからな。れるなよ?」


 ナジュリは、公務員を辞めた後、仁のIT企業「ワイルドパンク」に再就職し、

 秘書となった。王のために働いていた彼女は、民間企業で『第二の人生』を

 始めた。そして彼女は、以前よりもフランクになった。偽りの自分を演じて、

 スパイとして生きる人生から解放され、本来の素朴で自信家の性格が出た。


「社長!! 社長の姿が変わっても、俺ァ絶対に変わりませんからァッ!!

 遠慮なくこき使ってくださいッ!! シティで最高の肉探しますッ!!」


 ゼンは空母での戦いの後、病室で目が覚めたら高校生になっていた仁と

 面会し、理由を聞いた。楽観的な性格のゼンはすぐ受け入れた。対照的に、

 隣に座る、豹顔の氷結魔法使いのロニは、彼のライバルが少年になったのを、

 受け入れるまで時間がかかった。彼は現在も、フリーの便利屋を続けていた。


「フッ・・・。仁、ジュリアと話したのか?」


「いや、ロニ。ジュリアも誘ったんだけど、連絡取れないんだよ。

 ジュリアが何をしているか、知らないか?」


「風の噂じゃ、クロムウェルにいるようだ。」


「・・・もうプライドシティに居ないのか。」


「『ケルベロス』を辞めて、傭兵稼業からも足を洗ったみたいだ。

 あいつが生きていることが、何よりの吉報だ。そのうち、お前の

 会社に連絡するだろう。俺も、あいつの住所を探すとするか。」


 仁に想いを寄せていたジュリアは、ミシェルが仁の彼女だと知った。

 ジュリアは旅立ち、現在は伝統的な階級社会が続くクロムウェルへと

 移住した。今は賞金稼ぎとしての日々を送る。現地の人々から『焔狼エンロウ』と

 恐れられる彼女は、街のギルドのメンバーから厚い信頼を寄せられていた。


「きっとまた会える。・・・あとベンジャミンも呼んだけど、断られた。」


 その名前を聞いたナジュリが、ベンジャミンの話題を出したジンに答えた。


「ベンならクーロンのもとで働いている。飲みに行った時に聞いた。

 今のミドロワは共和制になり、特務省ジャッジ・オフィスは解体され、なくなった。

 同期のオハギと共に再就職し、今は宇宙開発で忙しいみたいだな。」


 ナジュリの話を聞き終えた仁は、店員に注文を告げた。機械の身体では

 決して味わえなかった異世界の料理。仁には、この時間はご褒美だった。

 困難を乗り越えた仲間と共に、梅川仁は最高のひと時を過ごしている。








 プライドシティ ワールド・キャピタル地区 AerospaceXエアロスペースエックス本社ビル 65階








 黒い大理石の床と真っ白い壁に囲まれた廊下を男たちが歩いていた。一人は、

 金髪で黒い髭の男。もう一人は、黒髪でオッドアイ、タキシードの男だった。

 黒髪のベンジャミンは、目の前を歩く世界一の大富豪、クーロンに質問した。


「で? 天才である僕に量子ナノマシンの開発を手伝えというのかね★」


「ああッ! それをブラックホールへ突入させ、そいつが蒸発しないか、

 確かめるぜッ!! 科学は『重ね合わせ』だ。実験と理論を組み合わせ、

 俺たちは宇宙の謎を解くんだッ!! 地球が、あるのかも知りてえ!!」


「それは、君が合衆国から転生したからかい? スターク・ジョナス★」


「・・・なんのことだ?」


「僕は、触れた生物の記憶を読み取れる。さっき握手した時、君の正体を

 見破ったのさ。50年前、君は王に殺された。その後、この星に再転生した。

 そして、自分と同じ『権力者の重力に逆らえる転生者』を探したんだろ?」


「・・・・・・」

 

「量子デコヒーレンスを、『デコーヒレンス』と言う。君の住んでいた国では、

 そう言うみたいだね★ この星にはない単語を使う時点で分かる。前職が

 特務官ジャッジナイトでね。疑うのが仕事なんだ★ 君は、ジンを利用したのかい?」


「俺たちは、かれ合った。」


「・・・ハァ?」


「ジンに初めて会った時、俺は思った。こいつは『何があっても貫き通す』。

 そう感じ取った。ただ、それだけだ。俺と似たジンを、俺が信頼したんだ。」

 

「・・・嘘を『貫き通す』気なのか。宇宙の謎は解きたいのに、君は謎かよ★」


「宇宙の方が面白いぜッ!! 俺とお前で必ず、やり遂げるッ!!

 地球人と俺たちの科学に不可能はねえッ!! 行くぜッ!!!」


 クーロンは振り返らず、ベンを無視して歩く。無視されたベンジャミンは

 両手を広げると、「やれやれ」と思いながら、黙って彼の後を着いて行く。

 万物を観測できるベンジャミンに、クーロンは真相を語ることはなかった。


 貫き通す。目的が違えば、善でも悪にもなる。仁は人々が自由に情報を

 得る世界を目指し、ロズノフは情報が『無』の世界を志した。地球から、

 異世界につながる『因縁』は、事象の地平線を超えて、完全に終息した。



ご愛読ありがとうございました。皆さんと偉大なるクリエイターの方々のおかげで、生まれて初めて書いた小説を終わらせることが出来て、本当に感謝しております。3か月間、走り抜けられたのも自分の青春時代に読んだ漫画や見たアニメ、ゲームのおかげであり、自分にはオリジナリティが全くないと痛感しました。他の作者様が作る独創的な作品を楽しんでいらっしゃる皆様が望む作品を、私は提供できないと思い知りました。なので自分が見たかった展開や脳内のアニメが映すものしか書けず、また科学考証はWikipediaやサイトの論文、それでも私が理解できない部分はグーグルのAIに質問しました。正直に話しますと、推敲もAIの力を借り、一部の文章はAIのブラッシュアップを参考にして修正しました。ただし、全部生成AIに書かせていません。もし全部AI書かせていたら誤字脱字や文字数もオーバーすることは起きません。どんなに言っても信じてもらえないと思います。それでも自分が頭の映像を文章化したい話は全部自分で書きたいと思いました。話が長くなりました。最後に、この作品を改めて完結できて、本当に良かったと思います。皆様、読んで下さり、ありがとうございました。

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