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サイバーファンタジーの異世界で本気出す  作者: 南田華南
パラメディオ編

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第52話 最強を志す黒騎士 VS 最狂と呼ばれる社長 後編

 ジンは、物体錬成魔法を使用し、ジンの後ろにある金網の原子から電子を

 強制的に引きがし、網目に沿って巡らせた。一部の場所は電磁石と化し、

 激しい磁界じかいを放射し始めた。金網へと着地したガルフロードは磁界の変動に

 抗うように発生したうず電流に囚われた。強力な電磁石と化した金網の上に

 機械化人間サイボーグがいる状況は、『電子レンジの中に居る』のと同じ状況だった。


 優雅に浮かぶジンをガルフロードは見つめる。浅はかだったと確信した瞬間、

 頭上から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。ロズノフがガルフロードに言う。


「諦めるかね? 君の執念はそんなものかね?」


 ガルフロードは、ロズノフの煽りに反応した。生物である呪縛を捨て、最強を

 求めた原初の衝動を彼は思い出した。あの日、不可視の魔法を使うロズノフに

 負け、彼の価値観は変わった。ガルフロードは覚悟を決め、最後の手段を選ぶ。


「認めぬゥ・・・断じてだァ!! それがしは貴様を認めん!!」


 ガルフロードは咆哮ほうこうを上げ、ジン達は何事かとざわついた。


「あいつ、一体何をッ!!」

「社長ッ!! 次はどうすりゃ良いんです!!」

「皆動くなァ!! オレが奴とサシで戦う!! 皆は体力を温存するんだ!!」


 どこからともなく鉄の悲鳴が鳴り響き、白煙が立ち上った。


 ガコォン!! プシュゥウウウ!!


 金網に張り付いていた漆黒の装甲が四散する。白煙の中から現れたのは、

 血管のようにうごめく、赤い人工筋肉の体だった。ガルフロードはき出しの

 素体すたいをジン達の前に現した。ガルフロードは、ジン達に向かって叫んだ。


刮目かつもくせよ!! この無様ブザマな姿をッ!! これが我が生き様だァ!!

 ムシどもが・・・。雅道拳がどうけん・・・ガン!!」


 次の瞬間、ガルフロードは突進し、ジンの顔や体に無数の拳を当てた。

 鈍い破壊音とともに、ジンの表面に深いひびが走り、火花が散った。


 ガルフロードの素体は赤黒い高密度カーボン・コンポジットの筋繊維きんせんい

 構成され、彼の骨格や拳は超硬セラミックスで出来ている。それらは、

 磁気の影響を受けなかった。血管のように走る導電性ポリマーが脈動し、

 高速で繰り出す拳の連撃にジンは無抵抗のまま殴られる。ゼンが言った。


「社長!! 俺も加勢します!!」


 見ちゃいられないと思ったゼンは走り出した。一瞬、ガルフロードはゼンを

 意識した瞬間、ジンの拳がガルフロードの顔を捉えた。ジンは、ゼンを見た

 ガルフロードの『隙』が生まれるのを狙った。魔法を作るのに必要な菌を殺す

 装置もないことを確認し、ジンは魔法生成AIのアミにプロンプトを送り込んだ。


魔風剣突ウルスラッシュ!!」


 ガルフロードの背後に透き通った翡翠ヒスイ色の風で構成された剣が、幾十、幾百と

 生成された。超高速で放たれる緑色の剣尖けんせんが、ガルフロードに襲い掛かった。


「き、貴様ァ!! 仲間をオトリに使うとはァ・・・何たる卑劣ゥ!!」

「社員と共に仕事するのが社長だろうがァ!!」

「この・・・詭弁きべんちゅうがァ!!」


 風の剣が何本も突き刺さったガルフロードから紫色のオイルが漏れる。

 放たれた風のレイピアは細い形状で空気抵抗を最小限に抑えるため、

 慣性の法則で速度維持が働き、ガルフロードの背中に吸い込まれる。


 高密度カーボンの繊維であっても、その一点にかかる圧力は数万気圧に

 達し、物理では『硬いものほど一点に集中した衝撃に弱い』という性質が

 存在する。例えば、巨大な岩がある。面である拳で殴っても、削れない。


 しかし、点であるドリルだと、容易に削れる。ジンは形をレイピアにし、

 ガルフロードの硬い繊維を貫いた。レイピアは注射針のような働きをし、

 内部機構に空気を送り込む。この空気が、後の伏線として機能していた。


 一方で、ジュリアは隙だらけのガルフロードに向けて、奥の手である指向性しこうせい

 エネルギー兵器「ジャガーノート」の下準備に入った。彼女は、両手両足を

 機械化しており、右手首のハッチを開けると、超高速の荷電かでん粒子を撃つ砲孔ほうこう

 現れた。一度発動すればジュリアも行動不能を免れない諸刃の剣であった。


 だが悠長に待っていればジンが危ないと思ったジュリアは、今使おうとする。

 ガルフロードに照準を合わす刹那、彼女の腹を一発の弾丸が貫通していった。


「あぐぅッ!!」


 ジュリアは地面に手をついた。天井付近から、ロズノフの声が聞こえてくる。


「無粋な真似は辞めろ。私を忘れてないかね?」

「・・・お前ッ!!」

「ジンは一人で戦うと言った。実にフェアプレイ精神だ。うむ。

 見えないものにこそ、価値がある。観測できる物は無価値だ。」


 ロズノフは、下に見えるジュリアやゼンに銃を向けながら言った。


「もし邪魔をするなら、私が相手になるがね。」


 腹部の傷を押さえ遠のく意識と戦うジュリアを背に、ゼンは頭上で拳銃を

 構えるロズノフから狙いを定められて、一歩も動けない。二人は足止めされ、

 ジンとガルフロードの決闘の行方ゆくえをただ黙って見守るしかできなかった。


 そしてジンは、ただガルフロードに攻撃されている訳ではなかった。


 ジンは、魔法生成AIのアミに計算させていた。ガルフロードの拳の限界

 スピードを割り出す。ジンは空気分子を操り、更に空気抵抗を減らして

 ガルフロードよりも速い拳速で倒そうと考えていた。ジンは反撃に出る。


 通常、ボクサーの拳速は時速30〜50km程度と言われる。ジンは拳の先の空気

 抵抗をゼロにし、同時に背後の分子を爆発的に高密度化させる。真空の吸引と

 後からの圧力。二重の加速を得た拳は、ガルフロードの反応速度を凌駕した。


邪魔ジャマ邪魔ジャマ邪魔ジャマ邪魔ジャマ邪魔ジャマ邪魔ジャマ邪魔ジャマァッ!!」


 呼応するようにガルフロードも猛攻に転じた。高密度カーボンの筋繊維が

 唸りを上げ、破壊力のある超硬セラミックスの拳が突き出され、彼は叫ぶ。


ムシムシムシムシムシムシムシムシムシムシケラァッ!!」


 火花を散らす拳の雨。それはもはや、ただ鉄のぶつけ合いではなく、男の

 プライドを賭けた戦いだった。火花と衝撃波が交互に弾け、二人の間には

 常人に視認できる隙間など、存在しなかった。まるで、スローモーションの

 映画を見ているようにジンとガルフロードは、時の流れを感じ始めていた。


 ジンが真空の道へとその鉄拳を叩き込んだ──ガルフロードの背中から

 亀裂が走りだす。ジンの疾風魔法によって打ち込まれた『くさび』がいま、

 ガルフロードの強靭な肉の鎧を、内側から食い破ろうとしていたのだ。


 刹那、凝縮された高圧の空気がガルフロードの内部機構を破壊していく。


 外殻の超硬セラミックスが辛うじて形を保っていたが、内側からは常に

 『弾けようとする空気』が、動いた。逃げ場を探していた空気の流れが

 そこへ集中し、打撃戦闘が事態を悪化させた。ガルフロードは発狂した。


「ナニィイイ!! バカなァ!! 某がァ!!」


 断末魔の叫びであった。青い冷却液も亀裂から飛び出し、導電性ポリマーが

 断線して火花が散った。内部の空気と反応して「熱・空圧・電磁」が混じる

 爆発現象を起こした。爆散するガルフロードに対し、ジンはこう言い放った。


「言ったよな? あんたは最初から飛び込んだ。オレの策略ワナになァ!!」


 精巧な飴細工あめざいくの人形のように砕け散ったガルフロードは、金網の床に

 叩きつけられた。隙間から体の一部が落ちた。彼は、相対あいたいしたジンを

 見つめながら、敗北が理解できなかった。なぜ耐えられなかったと。


 ジンは打ち合いでガルフロードと戦う前、AIのアミに慣性の『よどみ』を

 割り出すように指示した。敵が高速で殴る際、腕を引く動作や肩を回す時、

 必ず慣性が一瞬だけ『途切れる(または方向が変わる)点』が生まれるのだ。


 敵の動きが止まる一瞬の断絶。彼は全身全霊を乗せた鉄拳を連打していく。

 直後、逃げ場を失った慣性エネルギーが逆流。敵の体内の空気とぶつかる。


『ジンの打撃』と『送り込まれた空気の膨張』が一点で交わった瞬間、敵の

 肉体は耐えられずに自壊した。ジンは、環境と仲間、そしてAIの三段構えで

 ガルフロードと戦った。ジンは、十年の歳月を経て、因縁の敵に勝利した。


 ガルフロードの圧倒的敗北を見たロズノフは、ジン達に言った。


「所詮、クズ株はクズなのだよ。」

「!! おい、テメェ!! それが仲間に対する態度かァ!!」


「フッ。仲間。そんなものに価値はないのだよ。私は全ての存在を

 ただの『銘柄めいがら』と思っている。私も含めてね。全ては結果次第で、

 成長する。だが執着しない。投資家にとって、期待をすることは

 あっても、売ることに未練はない。クズなら、売れば良いのだよ。」


 ジンはロズノフの他者は銘柄でしかないと言う言葉に激怒した。


「ふざけんじゃねぇッ!! テメェはどこまでも金の亡者もうじゃかァ!!

 テメェは時空操作の魔法を使えるんだろ!? 仲間を助けろ!!」


「時空操作? 君は何を言っているのかね?」


「バレてんだよォ!! オレはテメェと似た奴と戦った!! テメェは時間を

 巻き戻しているんだろ!? 死んだら、自動で過去に戻るんだろうがァ!!」


「猿なのかね、君は。」

「ア゛ア゛ン!?」


「頭を使いたまえ。一体どうやって死んだ人間が時空操作を発動するのかね?

 まだ幻覚の方が筋が通る。それと私が時空操作できるなら、ガルフロードの

 スラスターユニットも、元に戻っている筈だ。そもそも時間を操作できるなら

 君は私が死ぬ瞬間を観測できないだろ。そして君達は何も出来ずに倒れる。」


「!? だったらテメェは何の魔法を使っているんだァ!! 幻覚かァ!?」


「バカかね。敵に能力を公開し、何のメリットもないなら言う意味が

 ないと思わないのかね? 君は毎回敵に自分の能力を言うのかね?」


 すると突然ブザー音が鳴り響き、研究所内部でアナウンスが流れた。


『間もなく、ここは爆破されます。施設内に残る職員は緊急離脱してください。』


 ジン達は、部屋が赤くなったことに動揺した。ロズノフは、こう言った。


「時間切れか。まぁ、クズ株同士で仲良く虚無きょむになりたまえ。」

「待てやァコラァ!! 爆発させるってどういうことだァ!!」


「リスク管理だよ。ガルフロードが時間外に倒せなかったら君を確実に

 殺すために施設ごとほうむるのだ。もう私の計画は完成間近なのだよ。」


 ジンが叫ぼうとした刹那、ロズノフの姿が見えなくなった。瞬間移動かと

 思うほど、跡形もなく消えた。ロズノフは時空操作の魔法を使っていると

 考察したジンに彼の発言は青天せいてん霹靂へきれきだった。ジンが戸惑っていると、

 ジンのそばにいたゼンがジュリアを背負いながらジンに大声で言った。


「社長ォ!! もう時間がねェ!! 急いで逃げましょうやァ!!」


 ジンはゼンの言葉を聞き、この場から立ち去ることを決意した。ジンは新たに

 生まれた謎に遭遇そうぐうし、ジンの感情は揺れ動いていた。ふと、ジンは金網の床を

 見つめる。まるでガルフロードの破片が無言の主張をしているように感じた。


 その頃、ガルフロードから逃げたクライドは、肩を押さえながら研究所の外で

 待機していたヘリに辿り着いた。彼は、何かを決意した表情でジン達を待つ。

誤字脱字があり、大変申し訳ありませんが修正しました。あと今日の21時には

間に合いそうにないので、来週の火曜日の21時に投稿する予定に変更します。

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