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サイバーファンタジーの異世界で本気出す  作者: 南田華南
パラメディオ編

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第51話 最強を志す黒騎士 VS 最狂と呼ばれる社長 前編

 黒騎士がジンを追う中、仲間を殺されたことで激昂するジュリアが、

 魔法生成AIにプロンプトを入力し、彼女は手を黒騎士に向けて言った。


聖炎セイクリッド・ブレイズ!!」


 ジュリアから放たれた巨大な火柱は、音と共に黒騎士を目がけてい進んだ。


 ところが、黒騎士の手前で炎は突如消滅した。魔素細菌マナ・バクテリアの殺菌である。


 自分の魔法がかき消されたのを見たジュリアは叫んだ。


「はぁ!? どういうことよぉ!!」


 ジュリアの戸惑いに対し、電磁浮上で移動するジンが大声で言った。


「ジュリア!! そいつは細菌を殺すガスをばらいている!! 魔法を

 そいつに当てるんじゃなく、逆に考えろ!! オレに火をぶつけろ!!」 


 ジュリアはジンのアドバイスを聞いた後、一瞬何を言っているんだコイツと

 思った。その時、ジュリアに電流が走る。彼の魔法が何なのかを思い出した。


 ジュリアは、再び他人を頼ることにした。もう一度、他人に任せてみようと。

 彼女はAIにプロンプトを送り込み、黒騎士から逃げるジンに向かって言った。


「ジン、あんたを信じているからね!! 炎月殺法サークル・オブ・ブレイズ!!」


 彼女の手から半月状の炎が回転しながら飛ぶ。聖炎セイクリッド・ブレイズよりもスピードが速い

 魔法を、彼女は選んだ。弧を描くように、回転する炎はジンの近くに迫った。


 一方、なぜ味方に魔法攻撃をしたのか、黒騎士ガルフロードは理解できない。

 黒騎士はスラスターから青白い炎をまき散らしながら、ジン達に言った。


「付け焼き刃か。解せぬ。血迷った蛆虫ウジムシの考えることなどッ!!」


 また、黒騎士の高速移動に翻弄ほんろうされるゼンは、ジンの行動が読めなかった。

 ゼンは走りながら、敵に攻撃しようと試みるが当たらない。ゼンは叫ぶ。


「クソォオオオッ!! 全然届かねえ!!」


 ゼンには唯一の遠距離攻撃である阿魔手羅守アマテラス五光ごこうがあるが、ベヒーモスとの

 戦いで消耗し、おまけにジグザグに動く標的に技を当てる自信がなかった。

 間違ってジンに照射したらと考えてしまった。彼は戦闘の判断をあやまった。


 ジュリアが投げた魔法が、ジンと接触しようとした瞬間。突然ジンの前で

 形を変える。ガルフロードのクローズヘルムにあるスリット(覗き窓)から

 青白い目が点滅した。変異体はリアルタイムで分析され、その正体が判明した。


 ジンは、ジュリアの炎月殺法サークル・オブ・ブレイズを、物体錬成魔法によって、携帯型電磁パルス

 兵器に変異させた。先端部分は小型のパラボラアンテナで、長方形の蓄電器ちくでんき

 一体化していた。ジンの物体錬成魔法は、魔法エネルギーも別の物質に変える。


 黒騎士の前では、魔法が発動できない。ジンはガルフロードから遠く離れた

 ジュリアが放った魔法を利用し、即座に物質に変えたことで、ガルフロードの

 魔法封じのガスから逃れることが出来たのだ。更に物質化した武器は、ガスで

 消されることもなかった。ジンは至近距離から電磁パルスガンを向け始める。


「コイツはよぉ・・・機械をブッ壊す電波をブッパナ代物シロモノだぜぇ!!

 喰らいやがれ・・・ガルフロードォオ!!」


 電磁パルス(EMP)は、電子機器を破壊する強力なパルス状の電磁波である。

 ヒトが受けても全く影響ないが、高周波数帯のEMPは高電圧を発生させる。


 電子機器や電子部品を過電圧状態にし、絶縁破壊が起きる。ガルフロードは

 機械化人間サイボーグであり、電磁パルスは、彼にとって『即死攻撃』に相当していた。 


 ジンは過去にも、これでナノマシンの集合体の敵を仕留め、彼は名をとどろかせた。

 まさに機械で動く存在を止める最強の武器を、ジンは構えていた。魔法を封じる

 ガルフロードには、電磁パルスガンは全機能を封殺させる悪魔の兵器であった。


 ジンが電磁パルスガンを向けた瞬間、黒騎士は昔の自分を思い出す。


 60年前、ガルフロードは、最強を目指した。赤い総髪と鍛え抜かれた体が

 特徴の男。本名、ドミトリー・ガルフロード。最強の称号を求め、旅に出た。

 彼は様々な道場で野試合を申し込んだ。最初に戦ったのは、カールした金髪と

 髭の道場主だった。『シバ派一刀流』という、ミドロワ王国でも名のある

 剣術を伝承する男は、当時10代の少年ガルフロードに上から目線で言った。


「遺書は書いたか、ワッパ。このシバ流剣術伝承者の私を_」


 師範が最後まで言う間もなく、ガルフロードは剣で男の首をはねた。

 周りの弟子達は口を開けて、青ざめた。彼は、弟子達にこう言い放った。


「お前らの師匠、クソ弱いって分かっただろ。」


 ガルフロードにとって、ルールなどは最初からなかった。合図など、実戦では

 存在しない。隙を見つけたら俊足で踏み込む。一撃必殺で終わらせることで、

 敵の反撃を止める。つばり合いも、彼にとって児戯じぎに等しかった。その後、

 若きガルフロードは、様々な種族と真剣勝負を行った。魔法使いとも戦った。


 雷の魔法を放った魔法使いを、ガルフロードは素早く斬る技で仕留め、勝った。

 雷速よりも早い剣術を、彼はあみ出した。『雅道剣がどうけん』と名付けた。優雅な技を

 求め、彼はまるでかすみのように姿を消し、相手の先手を取ることをとしていた。


 もっと強い者はいないのかと、鍛錬を行った。そして時が経ち。科学の時代が

 来ると、彼はキレた。コンピュータの登場で、普通の人間が魔法を努力せずに

 簡単に使えるようになる。既に高齢者になっていたガルフロードは、人々が

 コンピュータという物で、魔族が必死に学んだ魔法を使うことが許せず、

 コンピュータで魔法を使う者を、襲い始めた。そして運命の日が来た。


 ガルフロードは初めて地にひれ伏した。剣聖と呼ばれ、剣術の達人級の技を

 覚えた男は、ある日スーツ姿のビジネスマンに敗北した。弾丸も斬る技術を

 身に着けたガルフロードは、銀色の拳銃を持つロズノフによって撃たれた。


 胸元に穴が開いたガルフロードは、大量の血を流していた。意識が遠のく中、

 ガルフロードを倒したロズノフは、ポケットに手を入れたまま、言った。


「君は素晴らしい技術を持っているな。」

「・・・なぜ・・・なぜ・・・貴様は・・・生き返った。」


 白髪のガルフロードは、銀髪のロズノフの頸動脈けいどうみゃくを斬った。彼の目の前で、

 ロズノフは血を流して倒れた。だが次の瞬間、至近距離から発砲された。


 完全に虚を突かれ、ガルフロードはロズノフに敗北した。魔法なのかと、

 ガルフロードは推測した。すると、ロズノフが倒れている彼に、話しかけた。


「どうだ? 私と共に神を創る道を歩むか?」

「なに・・・お・・・。」

「私の部下になるなら命を助けてやる。二度目の人生をやろう。」


 ガルフロードが昏睡状態から目覚めた時、彼は機械化人間サイボーグとなっていた。


 彼はロズノフの『道具』になることで、最強の力を得た。生身よりも

 強靭で、速く動けた。魔素細菌マナ・バクテリア殺菌装置も彼が望む『狩り』に役立った。

 彼はあらゆる魔法を打ち消す『黒騎士』として魔法使いに恐れられた。


 空中で黒騎士は剣を抜き、ジンに向かって言い放った。


雅道剣がどうけん!! 穿セン!!」


 一瞬の出来事だった。ガルフロードは切っ先を一点にえ、背部スラスターの

 全エネルギーを解放する。空間が陽炎かげろうのように歪んだかと思うと、青白い閃光が

 音を置き去りにした。ガルフロードの超加速の一撃がジンの電磁パルスガンを、

 粉々に砕いていた。ジンは渾身こんしんの一撃を雷速の横移動でけ、難を逃れていた。


 ジンは目を見開き、ガルフロードによって破壊された電磁パルスガンの

 残骸を見つめた。仲間から新しいエネルギーをもらうため、指示を出す。


「頼む皆!! オレに魔法をぶつけてくれ!!

 オレが武器を作ってコイツをブッ倒す!!」


 ジンをようやく理解したゼンは、無言でうなずいた。


 ジュリアも身構え、指先を軽く曲げ、見えないボールをつかむような形を手で

 作った。二人は、ジンに武器を生成させる魔法エネルギーを供給するために、

 遠距離魔法攻撃を準備した。それを、黒騎士は把握し、再び剣を構え始める。


「無駄だァ!! 既に貴様ら蛆虫ウジムシの戦略など熟知しているッ!!」


 ガルフロードは、燃料を使い切ったスラスターユニットを射出した。

 彼は金網フェンスの上に着地し、剣を後方へと深く引きしぼり、加速の

 ベクトルを一点に据えた。全体攻撃可能な技を解き放とうとしていた。


雅道剣がどうけん・・・ッ!?」


 彼は必殺の剣技「ラン」を繰り出そうとするが、足が金網フェンスから離れない。

 それどころか、身動きがとれなかった。機能が全て停止し、彼に静寂が訪れた。


 次の瞬間、ガルフロードの電子制御システムに異常が発生した。電子回路には

 電流が走り、足元からは狂ったような黄色い火花が噴き出し、過負荷かふかに悲鳴を

 上げる回路が次々とショートし、小さな爆発を繰り返した。視覚センサーにも

 デジタル・モザイクが重なると、黒鉄くろがねの騎士は焦りだし、虚空に向かって叫ぶ。


「ナニィイイ!! バ、バカなァ!!」


 電磁パルスガンは、完全に破壊した筈。なぜ、いま自分が電磁パルス攻撃を

 受けているのか、皆目かいもく見当がつかない。ガルフロードが自問していると、

 金網の上に浮遊するジンが、腕を組んだまま、彼に状況を説明し始めた。


「あんたは・・・罠に飛び込んでいたんだ!! 最初からなァ!!」

「!?・・・貴様!! それがしに何をしたッ!!」


「オレは逃げながら、オレの後ろに電子を集めていた。あんたの殺菌ガスは、

 オレが通ったレールの菌を殺すが、オレの後ろには届かねえ。待っていたのさ。

 あんたが真っ直ぐに向かうのなァ!! オレは寸前でけて誘導した!!」


「某が・・・貴様如き弱者に・・・負けたと申すのかァ!!」

「あんた・・・うず電流って知っているか?」

「ぬぅ! ウズ・・・だと・・・ッ!?」

「あんたはオレが作った電気の渦巻に、まんまと引きずり込まれたのさ。

 弱者は頭が悪いテメェの方だァ! 三途の川で石でも数えなァ!!」


 渦電流とは、磁石を金属に近づけたり、金属のそばで磁石を動かそうとすると、

 金属が磁場の変化を打ち消し始め、ぐるぐると渦を巻くように電流が流れる

 現象のことである。強力な電磁石になった鉄の網に着地してしまった黒騎士

 ガルフロードは、蜘蛛の巣にからまる黒い羽虫のように動けず、固まっていた。


 皮肉にも、弱い存在や敵を「ムシ」とののしっていたガルフロードは、ジンによって

 『速さを奪われたハエ』と化した。彼は、蓑虫ミノムシと見下していたジンをあなどっていた。

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