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サイバーファンタジーの異世界で本気出す  作者: 南田華南
パラメディオ編

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第50話 神宝計画

 ジン達が中央に向かって歩く。足を踏む度に、金網の床が硬い金属音を

 反響させる。網目の隙間から、遥か下の階層で明滅する予備電源の光が、

 まるで夜空の星のようだった。ジン達がゼンに近づくと、ゼンは言った。


「来ましたねェ・・・。ここでブレインデータを解析しているとか!?」


 ゼンが言うと、ジンの後ろに居るナージャが、データ室の解説をする。


「そう、ここで集めている。データを『消えない記録』として、この部屋の

 量子に直接刻み込んでいるの。あの黒い長方形みたいなのが実験結果を残す

 データなの。中央にあるコンピュータが磁場を操作して、空中に黒い映像が

 浮かんでいるのはそれね。あの中に、被害者の意識が閉じ込められているわ。」


 ナージャの解説を聞いたゼンは、なぜデータを量子にしているのか聞いた。


「ナージャ姉さん。量子でしたっけ? データをあれにする意味はなんすか?」


「紙やデジタルデータと違ってね、量子データは外部から観測された瞬間に自動で

 暗号化されるの。盗み出すことも、外から壊すこともできない。ロズノフ達は

 量子の特性を悪用し、奪ったブレインデータをあの黒い長方形の中に隠した。

 まず量子テレポーテーションで盗まれた意識をクラウドに転送するわね。」


 ナージャは、円筒形のコンピュータに向かって走った。筐体のモニターと

 パネルを確認すると、手首の内側にある穴から端子が付いたケーブルを

 引っ張り出した。パネルのそばにあった接続口にケーブルの端子を差した。


 ジン達はナージャの作業を見守るため、周囲を警戒することにした。





 キュメロス島 パラメディオ量子科学技術研究所 4F データ保管庫





 しばらくすると、ナージャはブレインデータをクラウド上に転送し、

 研究所に保管されたブレインデータは消えた。これで被害者は

 量子の檻から解放されることになる。デジタル化された意識が

 消滅することで、被害者自身の意識が目覚めるようになっていた。


 すると、ジン達の頭上にある作業床から足音が聞こえてきた。金属パイプと

 金網で組まれた足場は、高所でのメンテナンス作業で利用するものだった。


 金網の作業床から音が鳴り、何者かが近づいてくる。ジン達は見上げる。


 銀色の角刈り頭と碧眼が特徴で、黒いスーツを着た男が見下ろしていた。

 作業床に立つ謎の男は、自分の手をポケットに入れたまま、ジン達に言った。


「ここで何をしているのかね?」


 ジンは、男の威厳に満ちた声に強敵の可能性を感じた。クーロンとは違い、

 また別の迫力のある声だった。ミドロワ王より若く、どこか似ている声質だ。


 ジンは臆することなく、作業床の上でたたずむ謎の男に向かって言った。


「あんた、ここの所長か!! ブレインデータを返してもらうぜ!!」

「・・・ああ、そのことか。もう十分検証結果は得られたよ。構わんよ。」


「構わんだァ? てめえ何様のつもりだァ!!」

「・・・やれやれ。どうやら、猿のようだ。」

「猿は賢い奴だぜ!! 猿に出し抜かれるお前は間抜けだな!!」


 男はジンの挑発に少しも動じることなく、こう言った。


「間もなくここは、爆破される。早く逃げた方が賢明だと思うがね。」

「なに・・・おい、ナージャァ!! もう作業は終わったのか!?」


 ジンはナージャが作業するコンピュータの方を見た。ナージャがいない。


 ジンが突如姿を消したナージャを探そうとした瞬間、銃声が鳴り響いた。

 何かが倒れる音がした。ジンが振り向く。謎の男が仰向けに倒れていた。


 謎の男は、眉間から血を流し、天井を見つめるように死んでいた。


 そして後ろからジュリアの声が聞こえてきた。


「ナ、ナージャ!? あんたどうして急に撃ったのよ!?」


 ジンは辺りを見回す。コンピュータから離れた場所で、銃を構えた

 ナージャが立っていた。ジンが見たナージャの顔は、別人だった。

 普段は陽気な彼女とは違い、冷たい表情をした人形のようだった。


 発砲したナージャは、銃を下ろす。次の瞬間、不可解なことが起きる。


 さっきまで血を流して死んでいた男が、銀色の拳銃を構えているのである。


 ジンが声を出そうとする刹那、二つの銃声音が鳴った。ナージャと男が同時に

 発砲した。銃弾は男の顔に直撃し、もう一つの弾はナージャの眉間に当たる。


 二人同時に倒れた。ジン達の目の前で、頭から血が噴き出すナージャが

 スローモーションで倒れる様子が目に映った。ジン達は、大声で叫んだ。


「ナージャァアアッ!!」


 近くにいたゼンが駆け寄る。ゼンがナージャの顔を見ると、彼女は目を

 大きく見開いたまま瞳孔が開いていた。眉間のわずかに上。直径1㎝にも

 満たない穴が生成されていた。ゼンの足元で、転がる薬莢やっきょうに白煙が立ち上る。


 まるで彼女の命の残り香のように、刺すような硝煙の匂いだけが取り残された。


 ジュリアが膝をつき、地面に手を置く。倒れているナージャの近くで叫んだ。


「いやぁああ!! なんで・・・どうして!? いやぁああ!!」


 ジン達は、短い間とはいえ、共に戦ってくれたナージャが死んだことを

 受け入れられなかった。ジンは疑問を抱いた。ナージャの行動である。


 なんで・・・あいつは急に撃ったんだ? 先に攻撃する理由があった?

 ・・・ちょっと待て。あの男は、確かに倒れた筈だ。だけど男は立った。

 銃でナージャに反撃した。・・・オレは・・・あの拳銃に・・・

 見覚えがあるぞ・・・。銀色の拳銃、どこかで見たことが・・・ある。


 ジュリアの泣き声が聞こえ、ジンとゼンも顔を下に向け、ナージャの死体を

 見つめる。ジン達が悔やんでいると、ジン達の頭上から声が聞こえてきた。


「どうするのかね? ここを立ち去るなら止めはしないがね?」


 ジン達は、信じられない光景を見た。ちょうど1分前、頭を撃ち抜かれた男の

 死を目撃したジン達の頭上で、謎の男は何事もなかったかのように話した。


 何か、奇妙なことが起きている。二度も死んだ男が、傷一つなく復活している。


 ジンは過去の記憶を検索するように、頭をフル回転して、答えを探り始めた。

 一つの言葉がジンの頭の中に浮かんだ。それはジンにとってトラウマだった。


 ナジュリ。


 ナジュリの魔法と似ている。あの日ナジュリが突然現れて、オレはアイツに

 ボコボコにされた。一瞬でオレと距離を詰め、まばたきすると急にアイツの手には

 スタンガンが握られていた。間違いねえ・・・ナジュリと同じ、時空操作!!


 ジンが黙っていると、ジュリアが泣きながら、スーツの男に言った。


「誰なんだよォ!! お前は一体何なんだ!!」

「それは私が聞きたいことだ。なぜ侵入者の君が言うのかね?」

「クッソォ・・・ッ!!」


 するとスーツの男は無造作に左手を上げると、太い指先で首筋のラインを

 なぞるようにおおった。男は首を痛めるポーズを決めながら言った。


「・・・どうせ知られたところで、問題ないか。私は、アンソニー・ロズノフ。

 神宝しんぽう計画の立案者だ。そしてさっき私を撃った女は、公務省のスパイだよ。

 ナージャというコードネームか。私の情報ではレナという名前だがね。」


 ジン達は、固まった。ナージャがスパイということ。レナという名前だと

 信じられなかった。そして、ジンはロズノフと名乗った男にざわついた。

 その名前を聞いた時、ジンはずっと探していた人物が姿を現したことに、

 どこか安堵あんどしていた。ロズノフはジン達に神宝計画について説明した。


「神宝計画とは、神を閉じ込めた『宝箱』を作ることでね。この研究所を使い、

 私は量子情報生命体を生成した。それはヒトの意識を量子に記録するのだよ。

 ブレインデータを実験に利用させてもらった。まぁ本番前には丁度良かった。」


 ジンは、頭上にある作業床から見下ろしているロズノフに言った。


「そんなくだらねえ計画のために、ヒトの意識を奪ったのか!!」

「まぁ、猿には分かるまい。資本主義の世界で、行きづまった人々を救うには、

 神に吸収させるしかないのだよ。君は、人生でんだ人々をどう救うかね?」


「てめえの都合で決めるんじゃねえ!! 他人の自由を奪うな!! 誰もお前に

  頼んでねえ!! てめえが不幸と決めつけたヒトの意識を奪うのは救いじゃ

  ねえだろ!! お前はただ身勝手な価値観で世界を見ているだけだ!!」


「困っている者を救わないのかね。私なら、神の一部としてヒトを融合させる。

 それまで有象無象の雑魚ザコとして深海の底にいた連中も、大海原おおうなばらを自由に泳ぐ

 ヌシと一つになるのだ。これこそ、真の平等だと思わないかね? ジン。」


「お前ッ!! オレを知っているのか!?」

「情報の非対称性を利用するのが投資の本質だ。常に相手を知っている者が勝つ。

 戦いもそうだ。相手が強力な魔法を持つのかを知っておく。ジン・ゼッカード。

 君の魔法は、量子操作と知った。私とは相性が悪い。なので、彼を使おう。」


 ロズノフは指を鳴らすと、轟音と共に黒騎士がジン達の前に現れる。


 ジェット噴射で旋回し、黒騎士はジンの近くに着陸した。ジンが言った。


「お前は・・・ガルフロード!!」


 ジンはジョーと話した時のことを思い出した。彼が機械化人間サイボーグになる原因を

 生んだ人物だった。魔法を封じる装置を持ち、ジンは一度敗北を経験していた。


「君がどれだけ強くなったか。彼も知りたがっているのだよ。」


 ロズノフは初めてニヤリと笑った。彼の言葉を聞いたガルフロードが言った。


「あれから十年・・・脆弱ぜいじゃく蓑虫ミノムシが一矢報いる成虫になったか。

 我が剣で見極めさせてもらおう・・・・・・。いざ、参る!!」


 黄金の装飾をあしらった黒い鉄兜から、青白い二つの目が輝いた。腰の

 噴出口からガスが放たれる。それは空間にただよ魔素細菌マナ・バクテリアを殺す成分を

 含んでいた。次の瞬間、背部に搭載されたスラスターユニットが点火した。


 スラスターが火を噴くと、ジンの眼球カメラに映るのは、目前に迫る漆黒の

 鉄塊だった。青白い噴射炎が、ガルフロードの背後から現れる。ジンは、魔法

 生成AIのアミにプロンプトを送り込み、自分の体を変異させることを命令した。


変異自在オール・ミューテーション!!」


 ジンが叫ぶと、肩と足に突起物が生成されて、関節部分から電流が走る。

 金髪が逆立ち、碧眼も青白く輝く。突起物から雷を放ち、ガルフロードと

 一定の距離を保ちながら、金網の床の上を電磁浮上で高速移動を始めた。


 ガルフロードの魔素細菌マナ・バクテリアガス装置は、空気中に漂う魔素細菌を殺菌する。

 しかし、密閉された内部に潜む細菌には効果がなかった。ジンは内部機構に

 細菌を潜め、そこで増殖させた。これにより、ジンは魔法を使えたのである。


 それでも、一時しのぎだった。ガルフロードに攻撃する場合、魔法攻撃を

 放つと、ガルフロードの周囲で細菌が殺され、魔法が打ち消される。ジンは、

 黒騎士と離れながら、ある魔法を仕込み始めていた。一方、他の者も動いた。

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