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サイバーファンタジーの異世界で本気出す  作者: 南田華南
パラメディオ編

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第46話 支配者

 ジャングルの中を走るジンとクライドは、水面下では別の思惑を抱えていた。


 ジンは、走りながらクライドについて考えた。


 奴は、父親と恋人をミドロワに奪われた過去がある。妹のミシェルと一緒に、

 名前を変えてスラム街で暮らさないといけなくなった。あいつがパラメディオの

 兵士の命を奪ったのは、復讐心から? パラメディオがミドロワの諜報機関と

 関係しているから、クライドは行動したのか。でも、殺しを正当化するのは

 間違っているだろ。生存者も攻撃対象なんて、ただの言い訳じゃねえか!!


 ジンは、クライドが憎しみで生きていることが悲しいと感じていた。

 彼は、前世で父親を事故で失い、母や祖父母と一緒に暮らしていたが、

 祖父母も老人ホームに行くことになると、母と二人で暮らし始めた。


 生活は裕福ではなかったが、ジンも母も社会を恨んだことはなかった。


 ジンは、中学時代から新聞配達でお金を稼ぎ、高校時代は大学に行く資金を

 得るために投資を勉強するなど、何とかお金を増やそうとしていた。母も

 アルバイトをかけ持ちし、ジンの家ではお互い助け合うのが当たり前だった。


 ジンと母は、当番制で炊事洗濯や掃除を行い、もし誰かが悩みを抱えたら、

 我慢せずに話し合うことが習慣になった。彼は教師からアメリカで起業家に

 なることを批判され、国家公務員になることを勧められた。困っていたジンに

 母は一生に一度の海外旅行を応援した。息子の成長を止めたくなかった。


 母は黙っていたが、ジンが将来結婚式の費用に困らないように、密かに貯金を

 していた。母親は、ジンにアメリカへの旅費を渡そうとしたが、ジンは母から

 施しを受けないとつっぱねた。ジンは、自分で稼いだお金を旅費にすることで、

 アメリカで一旗ひとはたげる意味があるんだと、母に伝えた。母はその後、部屋で

 泣いていた。息子が自立するのは嬉しい反面、自分は息子も助けられないと

 思ってしまった。老人ホームで暮らす祖父母の生活を支えないといけないので、

 息子に大学は自分のお金で行きなさいと言ったことも、彼女は後悔していた。


 ジンは社会を変えるのではなく、自分が変わることで道が開けると考えた。


 一方、クライドは全く違うことを考えていた。クライドは、心の声で喋った。


「あの男は王と同じだ・・・。自分の正義をつらぬくために、道と表現した。

 もし敵兵を生かしておけば、仲間が犠牲になることなど、考えていない。

 戦争を行えば、自国民にも犠牲が出ることを、王は歯牙しがにもかけなかった。

 王にとって、他者への被害よりも、自己実現が最優先だ。ジンも同じだ。」


 クライドは、成人するまでの間、何不自由なく暮らしていた。


「父が生きていた時は、私とアカイチ、ソニアにとっても幸福だった。

 王は、父とアカイチを権力で殺した。そして、王は・・・私に言った。」


 クライドの恋人であるアカイチの葬式後、王はクライドを呼び出した。

 当時クライドは、アカイチの悲劇が国ぐるみで行われたとは知らなかった。


 王は、玉座に座ったまま、うつむくクライドにこう言った。


も、医学の自由のために、戦った彼の死を、大変心苦しいと思っている。

 ゾレス。父の遺志を継ぎ、議員を目指すのだ。お前の父ヘンリーは、この国で

 障がい者の自立支援に関わった。社会のために働くのだ。余も、この国のために

 生涯しょうがいささげる。余と共に安寧あんねいの世界を創ろうではないか。」


 最初聞いた時、クライドもその通りだと思っていたが、その後真実を知った。

 妹のソニアから、父が機械化手術カスタマイズを息子にする話を王に伝えたら、その話が

 すぐ広まったのを聞いた。王に違和感を抱いたクライドは、電子操作魔法で国の

 データベースに不正アクセスした。クライドは衝撃の事実を知ることになった。


「父とアカイチを過激派に襲わせたのは、すべて王と公務省の仕業だった。

 民衆をサイボーグにすることを正当化し、国はアカイチをヒーローにした。

 そして公的資金を私のために使ったと、汚名を着せられた私の父も利用した。

 王は二人の犠牲を世界中に宣伝し、ミドロワは機械化する手術を歓迎すると

 主張した。・・・それはヒトを機械化し、制御する目的があったからだ!!」


 政府のデータベースに暗号化されたファイルがあった。クライドは電子

 操作魔法によって暗号を解読した。ファイルに機械化人間サイボーグと人工知能を

 搭載したロボットによる経済活動のメリットが書かれていた。電気代すら

 出せば、休みなく働く道具が手に入ると。少子高齢化で、労働力と消費者の

 確保に困った国に提供し、問題を解決できると書いてあった。そして、

 機械化させることで民衆が逆らうことを事前に防げるとも書かれていた。


 ミドロワ王国と他国の権力者は、自国の繁栄を永続的に維持するために、

 自国民を機械化することを決めた。機械化から免除されるのは、一部の

 特権階級のみ。無職や障がい者も機械化させて働かせると明記されていた。


 クライドは、強い嫌悪と怒りを覚えた。個人の自由や人権も無視した国が、

 世界中でこのシステムを広めようとしている。資本主義の成長のために、

 機械化された生物とロボットが命令通りに働く世界を創ろうとしている。


「王は、私に政治家になれと言い、祖国のために働くことを命令した。

 私を駒としか思っていないからだ。アカイチが死んだ後、私を堂々と

 誘った王に吐き気がする!! ならば、祖国クニを滅ぼす!!」


 クライドはジンと違い、権力者が居座る社会を変えるべきだと考えた。


 そして敵は徹底的に滅ぼすしかないと決めた。たとえ王一人を倒しても、

 賛同する政府の官僚や企業、他国の権力者も「働きバチ計画」に関わっている。

 敵は多勢。手を抜けば、父やアカイチのように謀殺ぼうさつされる可能性が高かった。


 その働き蜂計画を、クライドは逆手に取った。機械化人間サイボーグになることで、体を

 強化された民衆が立ち上がる。クライドの電子操作魔法で、企業による制御

 システムを解除する。数の暴力で抑えるなら、こちらも数の力で戦えばいいと、

 クライドは考えた。彼は妹を家に残し、革命のために民間軍事会社を創業した。






 キュメロス島 パラメディオ量子科学技術研究所 入り口付近






 ジンとクライドは、ナージャ達が待機する研究所の近くまで辿り着いた。

 武装した民間軍事会社『ケルベロス』の社員は襲撃の合図を待っている。


 パラメディオの研究所は、ジャングル中央部に位置し、金属製の扉の前には

 犬型のロボットが配備されている。ロボットは青緑の瞳が光っており、

 全身が黒く塗装されている。それが数体、研究所の周辺を徘徊していた。


 すると二人の姿を見つけたゼンが走ってきた。ゼンは、ジンに言った。


「社長!! お疲れ様ァでした!!」


 ゼンは頭を下げ、クライドと一緒に来たジンをねぎらった。

 ジンは、自分に向かってお辞儀をするゼンに、こう言った。


「ありがとな、ゼン。そっちの状況はどうなっているんだ?」

「はい!! さっきまで、パラメディオの兵隊が居たんですが、

 中に入ったようで。代わりに犬みてえな奴らが出てきたんです。」

「ということは、外はあのロボットだけか。中の警備を固めたのか。」


 ジンは、クライドが雷で兵士を殺害したことをゼンに伝えなかった。

 ゼンに伝えたら、クライドと協力して戦うのを拒絶するだろう。


 ゼンは妹を置いて、革命に夢中なクライドには良い感情を持っていない。

 ジンは、ゼンから報告を受け、ゼンに所属する部隊に戻れと言った。


 クライドの方も、ジンについての不満を抑えていた。部下から報告を受ける。


「ボス。外の警備はすべて機械だけです。今なら気づかれずに行けます。」

「・・・配置につけ。私が突破口を開く。」

「了解!!」


 クライドがそう言うと、ケルベロスの社員達は銃を持って持ち場に着いた。


 ジンを見たナージャが駆け寄り、話しかけた。


「ジン!! 無事だったのね。良かった!!」

「ああ。あんたのところの社長のおかげでな。」

「ボスが研究所のセキュリティを突破するから、あなた達も着いてきて。」


 ジンとゼンは、ナージャの後を着いて行った。数分後、社員達が待機する場所に

 到着した。ジン達は、森の茂みの中から覗く。クライドが、茂みから飛び出す。


 音に反応した数個の犬型ロボットがクライドを見つめる。すぐに通信機能で

 研究所にいるパラメディオの兵士に伝えようとした次の瞬間、クライドは

 右手を高く上げ、指先から青白い閃光を放つ。ジャングルで見せたように、

 空気中に漂う電子と電波に干渉する魔素細菌マナ・バクテリアを瞬時に集め、犬型ロボットの

 無線をハックした。犬型ロボット達が研究所の内部にも届くように電波の範囲を

 広げた結果、皮肉にもクライドのハッキングによって乗っ取られたのである。


 研究所からの信号と同じ波形の電波を受信したロボット達は、クライドの

 命令を「研究所からの指令」として認識した。一瞬で、パラメディオの警備用

 ロボットはクライドに支配された。クライドは一体のロボットを呼んだ。


「おいで。こっちだよ。」


 クライドの声に反応したロボットは尻尾を振りながら近づいた。

 犬型ロボットはクライドに撫でられると、こう命令された。


「さあ君が案内するんだ。強欲な王に従う巨人の住処に。」


 瞳が妖しく光り、犬型ロボットは猛ダッシュで研究所の扉に向かった。


 扉の認証システムは、扉の上にあるセンサーで犬型ロボットの信号を検知し、

 自動で開く仕組みになっていた。操られた犬型ロボットは、クライドを所長だと

 思っており、疑いもせずに扉を開放する信号を送った。数秒後、扉は開かれた。


 扉の前で犬型ロボットは、くるっと振り返ってクライドを見つめた。クライドは

 無視し、すぐ後ろにいる自分の部下やジン達に向けて、こう大声で叫んだ。


「門は開かれた! 赤き血で染まりし獣よ!! 断罪の時だ!!!」


 クライドの声に反応したケルベロスの兵士達は一斉に茂みから飛び出した。


 既にクライドに乗っ取られたロボット達は何もせず、研究所の中に突入する

 クライド達を見送っていた。所長が客を連れて帰ってきたと判断したのである。


 その頃、本物の研究所の所長ヌスカは、シティ随一の投資家であるロズノフの

 相手をしていた。彼はロズノフから賄賂を受け取り、会社を裏切っていた。

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