表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイバーファンタジーの異世界で本気出す  作者: 南田華南
パラメディオ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/63

第44話 密林の死闘 その③

 密林地帯の奥は、濃い植生のために太陽放射がさえぎられ、光子の量も少なかった。


 ジンにとって幸いにも、つる植物や着生植物が多い場所は身を隠すことに

 適していた。上層にある葉が、光合成に必要な青色や赤色の光子を吸収し、

 これなら、プラズマを爆発させるエネルギーを確保するのは難しくなる。


 ジンが木陰で休んでいると、突然クライドから量子通信で連絡が入った。


「ジン、私だ。クライドだ。今そっちに向かっている。」

「クライドか!! いきなり襲われた!!相手は5人で、

 光学迷彩を使用している。攻撃方法はプラズマ爆弾だ!!」


「ああ、それはナージャからも聞いた。いいか、よく聞くんだ。周囲に光子が

 少ない環境で光子操作魔法は怖くない。だが、もし相手が火の魔法や火炎

 放射器などで木々を燃やし、光子を増やそうとするなら君の環境を変えろ。

 君の物体錬成魔法だが、それは量子操作の可能性があるんだ。使いこなせ。」


「オレの魔法が量子操作なら、何が出来る?」


「密林地帯は湿気が多く、水蒸気を発生させる。量子操作で周囲の水蒸気を

 急激に高密度化させれば、電子を奪い取れる。プラズマを維持するには

 電子が必要なんだ。つまり、君は『きりの壁』を物体錬成魔法で出すんだ。」


「霧の・・・壁? どういう意味だ?」


「相手は高強度のレーザーで空気分子の原子から無理やり電子をぎ取る。

 ならば電子を先に水分子で奪うんだ。水蒸気は水分子がバラバラになり、

 激しく飛び回っている状態だ。プラズマは、超高温の電離ガスで、ガスに

 ある電子は水分子に吸着するので、プラズマはなくなってしまうんだ。」


「・・・オレの周囲に水分子が大量にあればプラズマ爆弾を回避できるのか。」

「それだけじゃないさ。君が水蒸気を細かい霧にすると、相手のレーザー照射を

 乱反射させられる。そうするとレーザーは直進できなくなるんだ。」


「なるほど・・・じゃあ霧の壁を、さっそく生成してみるぜ。」

「もうすぐ私も到着する。その際には、私も加勢しよう。」


 クライドとの通信を終えたジンは、時々見えるジャングルの水蒸気を身に

 まとうイメージを強く持ち始めた。ジンの魔素細菌マナ・バクテリアは量子レベルで干渉を始め、

 眼を閉じているジンは、濃霧のうむに包まれた。ふとロニとの戦いを思い出した。


 そう言えば・・・あいつ言っていたな。魔法の選択肢がカギなんだと。そして、

 オレの中に眠るジンの亡霊ゴーストは身体強化が先だと言っていた。クライドは、環境を

 変えろと。オレは、これまで威力が高い魔法をぶつければいいのかと思った。


 でも実際はそうじゃない。威力が強い魔法は、発動するまでに時間が掛かるし、

 その間に敵に攻撃を受ければ、負ける。だから防御力を高めるのが先なのか。

 それに、魔法によっては自然を味方にできる。まさか、密林から出る水蒸気が

 プラズマから電子を奪うとは知らなかったな。ん? 奪う・・・・・・。


 ジンの中で、何かが閃いた。魔法は当てるものではなく、仕込むものでは?

 敵が何の魔法を使うのか、初見で分からない。それは相手も同じだ。

 つまり、魔法を秘匿ひとくし、一撃で仕留めるのが、この世界の戦い方としたら?


 ジンは、右手をジッと見つめた。やがて、彼はあることを試し始めた。







 キュメロス島 密林地帯 バーハバリ 北東部






 一方、ゲズマ達はジンを追っていた。ゲズマは心の中で、ジンを侮っていた。


 あーあ。やっぱり、俺の見込み違いかぁ。俺と密着しながら戦えば、プラズマ

 爆弾は使えないと思って挑んでくると思ったんだけどな。逃げちゃったよ。


 逃げて場所を変えるのは、三流の思考だよな。実際の戦場じゃあ、敵を自分の

 得意な狩場テリトリーに入れ、包囲殲滅ほういせんめつをする。場所を変えるのも攻めの思考でやる。

 戦意喪失で逃げるのは、敵に片付けてくれって言っているようなもんだぜ。


 ま、俺達と近接戦闘を狙うなら、こっちは爆弾じゃなくてレーザー使うけどな。


 ゲズマがニヤリと笑うと、ゲズマと同じく光学迷彩で姿を隠す部下が言った。


「ゲズマさん、霧が見えますね。敵はどうやら、あそこに居るようですね。」


 ゲズマ達が歩いていると、ジャングルの一部が白い煙のようになっていた。

 植物に囲まれた密林の中に、ぽっかりと浮かぶその光景は、異常に感じた。


 ゲズマは、再び失望した。彼は独り言のように声を出して話す。


「はぁ~・・・安直。そんな風に目立っちゃダメダメダメ。そこに居ると

 敵に教えているようなものじゃない。やっぱ、あいつ・・・弱いわぁ。」


 ゲズマはそう言うと、部下に指示を出す。霧に向かって疾風魔法を使えと。


 光学迷彩を装備したゲズマの部下は、魔法生成AIにプロンプトし、こう叫んだ。


魔風破ウルストーム!!」


 ゲズマは、とっさに霧をどかすことを考えた。もしあのままだと、プラズマの

 電子は水分子に吸着する。霧の中に敵が居ると思ったら、ブラフの可能性も

 ある。なら霧を風で消せばいい。霧の中に敵が居なかったら、部下に木を

 燃やすように指示を出す。その間にゆっくりと光子を操作すればいい。


 ゲズマの目論見は、自分達を攻める際にジンが姿を見せるということだった。

 霧に自分達を注目させ、背後から襲ってくる。その時、背中から潜伏索敵ステルス・スキャン

 ジンにレーザー照射する。ゲズマは、全身から赤外線レーザーを照射できた。


 レーザーに反射した敵の姿がゲズマの瞳の中で3Dスキャンのように映る。

 つまりゲズマにとって、ジンの奇襲も織り込み済みだった。そして霧が晴れる。


 ジンは、霧の中に居た。まったく移動せずに、霧の中に隠れていたのである。


 堂々と座るジンに対し、ゲズマは再びガッカリした。そしてジンに言った。


「お前さぁ!! もう少し頭使えよ!! なんで大丈夫だと思うんだよ!!

 お前がやっているのは、箱の中に入って、何もしないのと同じだよ!!

 ジャングルで箱を置いたらさぁ、敵を心理的にゆさぶることを考えろよ!!」


 ゲズマは光学迷彩によって姿を隠し、どこから声が出ているのか、

 ジンには目視することはできなかった。だが、ジンはこう言い返した。


「やっと来たか。・・・お前らには、苦労した。8人か。今から反撃するぜ?」


 ジンは、不敵な笑みを浮かべ、ゲズマはジンが言った「反撃」という言葉を

 すぐには理解できなかった。そして、ジンが熱感知ゴーグルを着けてない

 ことが不可解に感じた。なぜ自分達の数をこの男は当てられるのかを。


 ゲズマ達は、身構えた。その刹那、ジンは魔法生成AIにプロンプトして言った。


深淵展開ワールド・イズ・アビス


 突如ジンの頭の上に、黒いエネルギーの球体が出現した。黒い球体は

 物凄いスピードで拡大し、全て飲み込もうとし始めた。


「!! 全員退避!! こいつはヤベぇええッッッ!!!!」


 ゲズマは、こう思った。これは、自爆攻撃だ。敵はブラックホールを作り、

 自分もろとも道連れにしようとしている。彼はすぐに量子通信で部下達を

 逃がそうと判断した。だが間に合わなかった。ゲズマは死を覚悟した。


 辺り一面が真っ暗な闇だった。自分は死んだ。そう考えていると、

 部下の声が聞こえ始めた。まだ、生きている。何が起きているのか。


「ゲズマさん!! どこですか!?」

「見えねえ!! 何も見えない!!」

「助けてくれッ!! 隊長ぉぉお!!」


 パニック状態の部下達を見たゲズマは、指示を出した。


「うろたえるな! これは敵の罠だ!! 俺達を精神的に

 追いつめようとしている! 動くなよ!!」


 ゲズマは急いで、光子を探した。全く見当たらなかった。これでは、

 周囲の光子を集めてプラズマを作り出すこともできない。光子がゼロの

 謎の空間に閉じ込められた。そして、ゲズマは気づく。光子が0ではなく、

 光子が『吸収』されたとしたら。それは・・・『黒体』の可能性がある。


 黒体とは、電磁波を、あらゆる波長にわたって完全に吸収する物体である。

 近年、ブラックホールを研究している企業が、宇宙空間で発見したことを

 ネットメディアで知ったゲズマは、敵が黒体を作り出したことを予想した。


 水分子は電子を吸着する。黒体は光子を吸収。最初に敵は水分子の壁、

 霧の中に潜んでいた。それは黒体を作るための時間稼ぎではないのか。

 自分達は最初に霧を吹き飛ばそうとする。あの密度の霧の中ではレーザーは

 乱反射し、光子操作が封じられる。その行動が敵の思惑通りだとしたら?


 ゲズマは、侮っていた敵が自分よりも遥か先を見据みすえていたことに驚愕した。


 一方、ジンはゲズマ達の位置を生成した『量子重力センサー』で確認した。


 この知識も、過去に共闘した『ケルベロス』がドローンに設置しており、

 ジンはその後魔法生成AIの解説もあり、構造を理解していた。例え光を奪う

 異空間でも重力を感じることはできる。そしてジンは六面相と戦ったことで

 空間を物体錬成魔法で生成することを考えた。ジンは、過去の『経験』を

 応用し、戦略として構築した。魔法バトルは、何も魔法をぶつけ合うのが

 主流じゃない。自分は魔法を仕込んで、相手の虚をつくのが重要だと知った。


 ジンが生成した異世界に存在する『黒体』は、地球では空想の産物さんぶつである。


 そして、黒体は吸収した光子エネルギーを熱に変換する。ジンは、その『熱』を

 物体錬成魔法で別の物質に変えることを考えていた。それは、闇の中で動かない

 ゲズマ達にも分かるように、認識できるようになった。ゲズマも異変に気づく。


 あれ・・・なんだかぁ・・・目まいがするぞ。おかしいなぁ・・・ま、まさ!


 ゲズマは、息を止めた。この空間は行動を制限する。なので、下手に動かずに

 敵の攻撃手段を知る必要があった。ゲズマは、ジンが銃で攻撃すると思った。

 だが、今の彼は別の考えが浮かんだ。闇の中、音も出さないで相手を倒す方法。


 それは閉鎖された空間で、無臭の毒ガスを撒くことだ。ゲズマは、ジンの姿から

 機械化人間サイボーグだと知る。また、パラメディオにも同じようなのが存在している。

 全身を機械化した彼らは皮膚呼吸の代わりに、体内にある酸素供給システムを

 利用する。つまり、機械化人間サイボーグは外から酸素を取り込んでいるのではなかった。


 ゲズマのすぐ近くで、誰かが倒れる音がした。どうやら毒でやられたようだと、

 ゲズマは思った。彼は量子通信で、部下に息をしばらく止めろと伝えるが、

 酸素ボンベやマスクは持っていない彼らには、最早一刻の猶予ゆうよもなかった。


 ゲズマは息を止めていたが、遂に耐えられずに大きく息を吸い込んだ。

 呼吸した瞬間、多幸感たこうかんに包まれた。彼は意識を失った。彼は誤解していた。


 ジンは、黒体によって光子を熱に変えた後、毒ガスを生成した訳ではなかった。

 酸素だ。ゲズマ達は閉鎖空間で酸素を、過剰に吸い込んだ。酸素中毒である。


 酸素を長時間吸入すると、体内では活性酸素に変わり、肺や脳などが損傷する。


 特にジャングルの中では光合成によって酸素が放出されている。ジンは分子の

 運動制御を利用し、量子重力センサーで知ったゲズマ達の場所に、高濃度の

 酸素を集めていた。ゲズマ達は呼吸する度に、酸素を吸い込んでしまった。


 ジンは黒体空間を解除すると、地面には倒れたパラメディオの兵士が現れた。


 闇の中、ゲズマ以外は何が起きたのかも分からないまま、気絶した。数分後、

 ジンを発見したクライドが到着し、クライドは異様な光景に出くわした。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ