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サイバーファンタジーの異世界で本気出す  作者: 南田華南
パラメディオ編

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第41話 始動

 ジンとゼンは、民間軍事会社『ケルベロス』が所有する局地制圧用攻撃機、

『マレブランケ』に搭乗していた。それは4基のプロペラエンジンを搭載し、

 8枚の羽根が勢い良く回転している。輸送機をベースに改造された攻撃機は

 ダークグレーの色で塗装され、機体の左側面に設置された重火器で攻撃する。


 民間軍事会社『ケルベロス』は、主に戦闘機やドローンを生産しており、

 今回使われる巨大戦闘機であるマレブランケもその一環であった。


 機内の貨物室には自動開傘索じどうかいさんさくのパラシュートを装着した『ケルベロス』の

 社員達とゼン、機械化人間サイボーグのクライドとジンが作戦内容について話していた。


 灰色のショートヘアで、黒い戦闘服を着たクライドは部下達とジン達に言った。


「今回の作戦名は『巨人の喉笛のどぶえ』とする。諸君、敵は医療と防衛産業界の巨人、

 パラメディオ。私はこの日を待っていた!! ミドロワは生と死を操り、

 無垢むくな一般人は搾取された。だが今回の作戦が悪辣あくらつな王へのくさびになる!!」


 開口一番、クライドは小難しい言葉を言って、ジン達を鼓舞こぶした。


 ジンは、数時間程度の付き合いでしかないクライドに関し、こう思った。


 なるほど、こうやって社員を自分の色に染めているのか。前世だったら中二病と

 言われる恥ずかしい言葉を使用しても、あいつみたいに本気で世界を変えたいと

 考えていれば、さまになっていくのかも。社長になって思うのは、社員をどう

 引っ張っていくのか考える毎日だ。創業者達がのこした言葉を載せた本を読み、

 オレが知ったのは、夢の共有だった。例えば、世界一のバイクを作りたいと言う

 社長に同じ志を持つ人が多いと成功しやすい。一方で、既に世界一のバイクが

 あるし、乗物なんて走ればいい、世界一目指すとか無駄な労力だと考える社員が

 多ければプロジェクトも成功しづらい。本気ガチで自分達がやり遂げるんだと信じた

 社員が団結すれば、毎日の地味な作業も時間を忘れて没頭できる。だけど、

 その夢が共有できない社員には、やりたくない仕事が毎日あると感じてしまう。


 世界中で成功した創業者は、ただ資産を増やす目的で社員を集めた訳でなく、

 その夢や目標に共感した人材を結集し、いかに形にするかが書かれていた。


 そんなことを考えるジンの後ろで、聞き覚えのある声が室内で響いた。


「社長。質問があるわ。」


 赤い髪で、迷彩柄のビキニとスパッツが特徴のジュリアだ。彼女は今回の

 襲撃作戦が開始されるまで入院しており、自由降下に疑問があった。


 ジュリアは、腕を組んだまま、立っているクライドに向かって言った。


「今回行く場所は島よね? 海から潜入した方が合理的じゃないの?」

「ジュリア。君の指摘は正しい。だが、研究所の近くにジャングルがある。

 海中よりも空から電撃的に降下した方が早い。それと海は機械化人間サイボーグ

 墓場になる恐れがある。まず生物よりも重量があり、動きにくい。更に、

 敵の量子重力センサーで探知されやすい。防水パックに入れた銃火器は

 すぐに戦闘で使えない。空から一気に降下し、密林に隠れた方が武器も

 迅速に使用できる。研究所は島の中央にあり、沿岸部から遠いんだ。」


「そういう理由で、今回は空からの潜入ルートを選んだのね。」

「分かってくれたか。・・・そうだな。君と他の機械化人間サイボーグにも伝えておく。

 背部にはスラスターユニットを装着すること。接地せっち前に数秒だけ浮遊し、

 敵の量子重力センサーには探知されないようにしてくれ。その短い間に私の

 電子操作魔法で私達の位置情報を書き換える。敵は私達を視認しない限り、

 どこに落ちたか把握できない。敵のセンサーは接地した対象に反応する。」


 ジュリアも、クライドに納得した。クライドは引き続き、ジン達に言った。


「諸君、ようやくだ。漸く、我が社は世界に宣言することが出来るのだ!!

 民衆のいきどおりを背負う地獄の犬が、王の喉笛を噛みちぎり、血の雨を降らす。

 ミドロワは本当の民主主義を得る。血統による支配を終わらせる。

 革命のいかづちは落ちる。王のしもべ、パラメディオの頭上にな!!」


 クライドの演説が終わると、ジンはジュリアを見つけ、話しかけた。


「もう歩いても大丈夫なのか?」

「当たり前でしょ。最新医療が受けられる病院で治療したんだから。」

「コレクターにボコボコにされたとトレバーから聞いたからな。

 そう言えば、あいつの姿が見えないけど、参加していないのか?」


「ああ、トレバーなら別の仕事をしているわ。」

「そうか、別の任務で今回は居ないんだな。」

「違う。うちを辞めて、今は家族と一緒に牧場を経営している。」


「!!」

「あんたとゼンの活躍を見ていてね。戦う役割を続けることを諦めた。

 そして奥さんと子供達と一緒に、第二の人生を歩むと決めたんだってさ。」

「そうだったのか・・・。」


 寝耳に水だった。ジンはトレバーが今は傭兵を辞めて、平穏な生活を選んだのが

 まだ信じられなかった。ジンの中でトレバーはプロフェッショナルだった。


 余生は家族と一緒に・・・か。オレがあいつと話した時は、職人気質で、荒事が

 きっと生き甲斐なんだなと勝手に思っていた。銃に詳しかったし、てっきり

 同じ職種を選ぶと思っていた。・・・オレにもいつか、そうなる日が来るのか。


 ジュリアは、考え込むジンを見た瞬間、言ってきた。


「他人のことを考えるなんて、無駄な労力よ。」

「・・・何でだ?」

「みんな、それぞれ自分のことで精一杯なのよ。それで他人を当てにしても、

 他人から見れば迷惑なのよ。彼らだって誰かに救われたいんだからさ。」


「関心を抱くのと、助けるのは違うだろ?」

「深入りするなって言っているの。生物は群れの中で生きていても、

 我が身が一番、カワイイんだ。期待するものがあっても、時間と

 共に忘れていく。思いつめるだけ無駄。自分が弱くなれば、更に弱い

 存在を見つけて攻撃するか、保護して優越感を満たしたいんだよ。」


「それは人間不信なだけだろ。トレバーだって、お前の仲間じゃないか。」

「仲間なんて同じ場所の間だけだよ。学生時代の友達も、時間が経てば

 離れていく。まして家族が出来て、友達よりも関心を持つのがヒトよ。」

「ずいぶん、家族に対して冷めているんだな。」


「・・・そうね。あたしにとって家族って、量子みたいなもんだよ。」

「量子と同じ?」

「0でもあり、1でもある。家族がいれば寂しくない。でも、

 家族の存在があたしの害になる。あたしの母は働きもせずに

 男の稼ぎを当てにした。そして今度はあたしの世話になった。

 あたしが介護サービスに金を払い、あの人は悠々と暮らしている。

 血のつながりで我慢してるけど、一生あの人と話すのはごめんよ。」


「母親はきっとお前に感謝している筈だ。口には出さないだけ_」

「あんたに何が分かるのよ!!」

「!!」


「毎日いつ孫を見せるんだと小言を言うだけよ。あの人はね、

 自分の幸福しか見ていないの。孫のこともさ、老人ホームで

 過去を自慢する人達に見返したいだけ。そこは育てた子供が

 社会でどれだけ成功しているかを競っている。バカバカしい。

 あたしが死ぬ思いで稼いだ金を当然だと思っている。それで、

 自分が老人ホームで良い立場に居られないのは子供がいない

 あたしのせいだと言ってきたよ。家族なんか、いらねえよ!!」


 ジュリアは、だんだん腹が立ってジンに思いをぶつけた。ジンは言った。


「母親と話せるだけ、羨ましいよ。オレは、親がいないからな。だから、

 オレを産んだ母親がどんな人なのか知らない。お前は実の母親と

 話せるだろ。世の中には、親がどんな人なのか分からないけど、

 生きている奴もいる。母がいるお前はオレから見れば幸せ者だよ。」


「ハッ。親がいるだけ幸せ。それって不幸なのはお前だけじゃないって

 意味でしょ。親が最低野郎だと言ったら、親がいるだけ幸せって。ただの

 すり替えじゃん。まして話通じないでを通す親なら、いない方がマシ。」


「この親から生まれたんだと自覚できることは、親がいない俺には出来ない。」

「あんたが出来ないから、あんたはあたしよりも不幸って言いたいの!?」


「オレには選択肢がない。お前は選択肢がある。親を捨てる選択だ。」

「・・・ッ!!」

「ジュリア。なぜお前は母親を捨てないんだ?」


「はぁ? あたしがいないと、あの人は_」

「本当にお前が嫌なら縁を切ればいい。そして、話を聞いていると、

 お前の母親は立派だよ。お前を見捨てないで、お前を育てたじゃねえか。」


「だからァ!! あたしは食い扶持ぶちだったの!!老化で体が

 みにくくなったら、稼げる自分の娘を当てにする。それが親だ!!」

「それなら生活保護でいいだろ。お前の母親は、お前を育てるために

 色々と頑張ったんだよ。オレの親はそれが出来なかった。男に頼ると

 どうしてダメだと思うんだ。他の人達と一緒に生きるのが社会だろ。」


「・・・あの人が連れた男は、若い頃のあたしを性欲のはけ口にした。」

「・・・そうだったのか・・・。すまない、知らなかった。」


「あの人は何もしなかった!! それどころか、もっと男に愛想良くしろと

 説教された。あたしを、生活費稼ぐ道具にしか思ってないんだよ!!

 だからあたしを手放さなかったの!! 本当に母が娘を大切に思ってるなら、

 襲ってきた男から隠すだろ!! 何であたしに相手をさせているんだよ!!」


「ならお前が母親の介護サービスを続ける理由はなんだ?

 お前の母親は、お前を利用していたんだろ?」


 ジュリアは急に黙り込んだ。グッと拳を握り、自分の顔に近づけた。


 今まで母から優しいことをされた記憶がない。夜の相手をした大人の

 男からたまに勉強を教えてもらったり、豪華な食事を提供する場所に

 連れて行ってもらった。そんな中、母はいつもニコニコするだけだ。


 知らない人から見れば、親子三人で楽しい時を過ごしていると思われた。


 しかし実際の男達はスタイルが良いジュリアの体が目当てだった。成長した

 ジュリアは戦場になった東ゼルマニアに行き、彼女は死に場所を求めた。


 多くの敵を殺した。中には同性の敵兵が居た。ジュリアに殺された

 恋人の仇として襲ってきた。そして戦争末期、ジュリアが休むテントに、

 依頼主が麻酔ガス兵器を使用した。ジュリアを含む何人もの仲間は、

 両手両足を切断された。そして、クライド達に救われるまで、ジュリアは

 輸血しながら生き続ける人質になった。だが、彼女は傭兵は辞めなかった。


 自分を売っていた母と暮らすのも続けていた。なぜ自分はろくでもない母を

 捨てられないのか、考え込んでいたジュリアに対し、ジンが話しかけてきた。


「お前は誰よりも他人のことを考えている優しい奴だよ。関心ないならトレバーが

 牧場やっているとか、オレに話さねえ。母親の面倒を見るのもお前の本性だ。

 だったらオレ達のことをまだ信じられる筈だ。オレもお前も、孤独じゃない。」


 ジュリアは、ジンの言葉に対し、少し救われた気がした。しかし彼女はすぐには

 納得できなかった。するとブザー音が鳴った。そろそろ目的地に到着する。


 二人は無言のまま酸素マスクとパラシュートを着けた仲間のもとへ向かった。


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