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サイバーファンタジーの異世界で本気出す  作者: 南田華南
パラメディオ編

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第37話 弱者救済

 クライドが立ち去った後、10分ほど経った。ミシェルはすっかり泣き止んだ。

 少し落ち着きを取り戻したミシェルは、ジンとゼンに自分の過去を話した。


「お父様は、ミドロワ王国で議員だったの。」

「・・・政治家の娘だったのか。」


 ジンは、なぜミシェルがスラム街に居たのかを

 ずっと疑問に感じていた。父親が原因なのか。


 ミシェルは、話を続けた。


「父は、機械化手術カスタマイズの規制緩和に関わった。

 それは兄と、兄の恋人のアカイチさんのため。

 アカイチさんは、科学者でね。脳を除く全ての

 器官を機械化した人工身体じんこうしんたいを開発していた。」

「なんだそれ?」


「簡単に言うと、脳以外は全部人工物。見た目も自由に変えられる。」

「つまり、オレみたいな機械化人間サイボーグのことか。」


「うん。元々は、身体に障害を持っている人々のための医療器具なの。」

「・・・ミシェルのお父さんは、障がい者支援のために動いたんだな。」

「でも、それが他の議員からは不評を買った。」

「なんでだ?」


「人工身体を普及させるには、財源が必要なの。そして貧困層の障がい者を

 税金で助けるのは、非合理的だと言い始めた。あと、兄のこともね。」

「お兄さんのこと? どうして他の議員が?」


「当時兄は、自分の性別に納得がいかなかった。だから機械化人間サイボーグになって、

 自分は女性になろうとしたの。アカイチさんも男性だけど、兄を愛していた。」


 ジンとゼンは驚愕きょうがくした。アカイチのことは、てっきり女性だと思っていた。

 どうやらクライドとアカイチは、複雑な事情を持っていると二人は理解した。


 その後、ミシェルは、ゼンがれたコーヒーを飲むと、再び話を始めた。


「父は、兄が機械化人間サイボーグになって性転換をしたいことを知った。そして、

 アカイチさんに頼んで兄は手術を受けられた。兄も喜んだ。ところが、

 それが反対派の議員の耳に入った。障がい者の支援を訴えていた父が、

 自分の息子の願望を叶えるために機械化手術カスタマイズを利用したと言われた。」


「ひどい言いがかりだな・・・。」

「うん。だから規制緩和に反対する議員は、父が弱者救済を掲げておいて、

 裏で自分の家族のために動いていたと、議会やメディアで叩いた。そして父は

 有権者に叩かれ、政治生命を絶たれた。その後大変なことが起こったの。」


「・・・・・・何があったんだ?」

「父は、機械化人間サイボーグによる少子化社会を危惧するミドロワ人の過激派に命を

 奪われた。兄も、更にアカイチさんも過激派に襲われた。そして兄は変わった。

 機械化手術カスタマイズによって性別や見た目からの解放を訴えるようになった。」


「革命というのは、そういう意味だったのか。」

「あと、性別による経済格差や種族差別の撤廃も言い始めたの。最初は路上で

 主張するだけだったけど、兄とアカイチさんは暴力で変えようとし始めた。」


「・・・・・・」

「ミドロワの役人達が集まる場所が襲撃されて、兄とアカイチさんは国から

 命を狙われるようになったの。アカイチさんが秘密の集会に行っていたら、

 なぜか過激派が集まってきて、アカイチさんは集団リンチで亡くなった。」


「なぜか集まってきたってどういうことだ?」

「・・・あとで私も知ったけど、公務省が集会の場所を過激派に教えたんだよ。

 手を下したのは過激派の一般人。公務省は手を汚さずに彼を消したんだ。」


「公務省・・・つまりMRBか。」

「あいつら・・・父とアカイチさんが訴えていた機械化手術カスタマイズが目的だった。」

「!! どういう意味だ、ミシェル?」


「シティで人工知能が完成し、ヒューマノイドが量産されていくと、公務省と

 ミドロワ政府は機械化手術カスタマイズを自由に受けられるようにすると突然言ってきた。

 そしたら機械化手術カスタマイズの反対派の議員も大人しくなって、過激派も次々と不審死を

 遂げたのね。多分、AIとヒューマノイドの進化スピードを見た王と公務省が、

 機械化に舵を切ったと思うの。アカイチさんは利用された。国葬にして、医学の

 ために戦った英雄としてミドロワ政府は海外のメディアを利用したのよ。私達、

 兄妹きょうだいは名前を変えないといけなくなったの。私達は王に利用されると思った。」


「待て、ミシェル。どうして王が関係していると思うんだ?」

「・・・父が兄の機械化手術カスタマイズを行うことを、王に教えたからよ。

 その後、なぜか王にしか伝えていないことが、議会で広まっていた。」


「頃合いを見て・・・王がミシェルのお父さんとアカイチさんを消したのか。」

「うん。私と兄はスラム街に住むようになった。短い間だったけど、兄も

 大人しかった。でも、兄はやっぱりミドロワに復讐を考えていたの。

 そして自分で会社を起業し、サイボーグ革命を起こそうとしている。

 ジンくん、兄さんに会ったら止めてほしいの。ミドロワを転覆させても、

 お父様やアカイチさんは戻ってこない。兄を、因縁いんねんから自由にしたいの。」


 ミシェルは、断固たる決意の眼差しで、ジンを見つめた。一方、ジンは内心、

 クライドを止められるか不安だった。権力者に父親と恋人を殺され、残ったのは

 機械の体と革命を目指す心。異世界に転生したジンには共感が生まれた。


 ・・・オレは、前世に母さんを残し、異世界で初めて人を殺した。

 そして罰を受けず、自分の夢だった起業家を、異世界でやっている。

 オレは自ら望んで機械化人間サイボーグになっていない。そしてオレが始めたサービスも

 綺麗キレイごとに過ぎない。これで皆が自由に情報を手に入れられると言っているが、

 この世界では新しいから受けるだろうという、打算的な考えで動いている。

 そんなオレが、世界を変えようとしている人を本気で止められるのか。


 ジンは、本気で社会を変えたいクライドの方が正しいのではと思い始めた。


 するとゼンが突然ジンに向かって話しかけた。


「社長!! 俺らでクライドを止めましょ!!」

「だが、あいつは革命を_」


「妹を幸せに出来ねえ奴が、何が世直しだ!!」

「!!」


「革命とか、俺ァ正直分からねえッスわ。でも、親父は男手一つで

 俺を育ててくれました。親父は、大人になるということは、真剣に

 社会と向き合うことだと言いました。他の奴が望んでいないのに、

 お前の野望を押しつける奴にはなるなと教わりました!!」


 ジンは、かつて戦ったハンクやコレクター達の言葉を思い出した。


 彼らは自らの夢を無関係な人々に押しつけた。クライドがどんなに社会を

 変えたい大義を持っていても、妹のミシェルを不幸にしていい理由はない。


 ジンは、ゼンの言葉を聞いて、考えを改めた。そしてゼンに言った。


「ああ・・・オレらでクライドを止めるぞ。テロ活動は正当化出来ねえ。

 妹を泣かしておいて世直しってのも、違うよなァ!!」

「社長、俺ァ今のままで十分幸せです。確かに、ミシェルの兄貴はヒデェ目に

 あったかもしんねえけど、だけど関係ねえ奴も巻き込むのは違います!!」


 こうして、ジン達はミシェルの兄を救うことを誓った。


 その後ジンは量子通信でクライドからメールを受信した。

 場所は、オリエント地区の繁華街にあるナイトクラブだった。

 その場所は黒桜會こくおうかいの縄張りだと、ミシェルから教わった。


 次の日、ジンとゼンは地下鉄に乗って、ナイトクラブ『レジーナ』に向かった。






 プライドシティ ワールド・キャピタル地区 セントラル緊急医療センター






 真っ白な天井と壁が特徴の廊下を、二人の特務官ジャッジナイトが歩いていた。


 一人は、アフロヘアと褐色肌が特徴の特務官。ジョージ・ヤングブラッド。

 もう一人は、三毛猫のような顔をした、獣人の特務官。オハギ・スラグホーン。


 二人には、ある人物が搬送はんそうされた部屋に訪れる目的があった。


 独特な口調が特徴のオハギが、ジョーに対してこう言った。


「いやぁ、ホンマ薬品の匂いがダメなんですわ。自分、鼻が敏感で。」

「そりゃ、猫からすればキッツいだろうな。」

「何億もろても住めやと言われたらキレます。」


 ようやく、二人が部屋に辿り着くと、ジョーはノックもせずに扉を開けた。


 そこに居たのは、ベッドで横になっていた怪人六面相だった。


 ジョーとオハギは、パイプ椅子を見つけると、彼らは椅子に座った。

 まず、ジョーが怪人六面相に尋問じんもんを始めた。


「ダスティン・バウア。3年間働いていた商社を辞職し、怪人六面相を名乗り、

 ネットライバーとして活動を開始する。今年に入って、匿名から魔法生成AIの

 強化コードを手に入れ、異空間を生成。なんか間違っていることあるか?」

「ありません。」


「バウア、お互いピースマインドで話そう。まず匿名の支援者のことだ。

 いつからそいつと仲良くなったんだ?」

「今年に入ってからですね・・・おいらに10万ダナーを寄付してくれました。」


「そいつは、オフ会でお前の信者をよそおっていた。どうして強化コードを

 使おうと思ったんだ? いきなり10万も寄付するとか、怪しいだろ?」

「おいら、力が欲しかったんです・・・。」


 六面相は、ぼんやりとした視線を二人に向け、黙った。今度はオハギが話した。


「ジブン、罠にハメられたんやで。」

「はぁ。」


「知っとると思うけど、ジブンは別の事件のぎぬを着せられそうになっとる。

 今起きとるブレインデータハック事件や。このままだと、事件の真犯人やで。」

「なんでそういう話になるんですか?」

「ワイらの上の連中が、事件解決を望んでてな。最悪、君が犯人ゆうことで

 幕を下ろそうとしとんねや。せやけどワイらは君が犯人やないと思とる。」


 すると、今度はジョーが六面相に事情を説明し始めた。


「・・・お前に強化コードを渡した奴は、戸籍がなかったんだ。」

「あ、そうすか。」

「お前が一般人を異空間に閉じ込める。一方で、別の事件の被害者が

 ブレインデータを盗まれ、昏睡状態こんすいじょうたいになる。そうするとお前が捕まった後、

 メディアからは六面相が空間創造魔法で意識を盗んだと、でっち上げられる。」


「クラウドにバックドアがあると聞きました。」

「ああ。量子セキュアクラウド技術でも、裏口の発見は出来ないのが現状だ。

 ・・・特に、サービスを運営する会社に出入りする奴が犯人だとな。」


「犯人は、その会社の人ですか?」

「いや、残念ながら証拠がない。というか、その会社の株主がお前を

 犯人にしようとしていると俺達は考えている。コレクター事件でも

 そいつらは暗躍していた。今回はお前を操っている可能性がある。」


 ジョーは量子セキュアクラウドサービスを開発したパラメディオに出入りする

 アンソニー・ロズノフという人物が、六面相に魔法生成AIの強化コードを

 使わせた可能性があると伝えた。弱者の救済をしている六面相を利用し、

 六面相の陰で別の事件を起こしていた。そしてロズノフが彼を用済みだと

 判断したら、六面相に罪を着せる計画だったと伝えると、六面相は語った。

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