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サイバーファンタジーの異世界で本気出す  作者: 南田華南
怪人六面相編

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33/63

第32話 悪

 六面相の空間創造魔法『遊戯物語ロード・オブ・ザ・ゲーム』とは、6つの異空間で構成されていた。

 一つは、キャシーが迷い込んだボクセルアートの世界。もう一つは黒桜會こくおうかい

 会長の娘であるマリナが楽しんでいる恋愛シュミレーションの世界。その他は、

 パズルゲームや双六すごろくゲームの世界、ショップ経営や論戦ゲーム世界などである。


 ジンが階段のアイコンを触って、2階に移動すると六面相が待っていた。


 彼の上には、また新しい6人のシルエット画像が表示され、その中の二人は

『?』の代わりに『+2』や『+3』と表示されている。ジンは六面相に言う。


「おい、この数字は何の意味があるんだ?」

「えっとぉ、それは難易度が上がりますが、階数が上がるという意味です。」

「・・・つまり、+2の敵を倒したら4階まで行けるってことか?」

「あっ、はい。そうですね。ジン社長、選ぶんですか?」


 もし+3の敵を倒せば、オレは一気に5階に行ける。このゲームの

 クリア条件は6階に辿たどり着くこと。しかし、デメリットが気になる。


 ジンが、六面相に聞こうとすると、突如謎の声が聞こえてきた。

 テキストメッセージウインドウも表示され、ルールが説明された。


『ルールその5。+Xの敵キャラを倒したプレイヤーは、階数もXの

 数だけ上がります。しかし、負けた場合は、Xの数だけ下がります。

 ルールその6。5階では☆マークの敵キャラが出てきます。☆は

 特殊キャラで、プレイヤーAとプレイヤーBが討論を行い、判定を

 行います。☆キャラに認められたプレイヤーは、脱出できます。

 負けたプレイヤーは、最初からゲームをやり直してもらいます。』


 5階では敵キャラを論破するのではなく、六面相と直接対決を行い、

 どちらが勝ったのかを、☆マークのキャラクターが決めるようだ。


 ジンは、まずは先攻後攻を決めるダイスロールをやろうと思った。


 サイコロの画像がスロットマシーンのように変わり始める。ジンが

 再び触ると、画像が出た。ジンのサイコロの目の数は『2』だった。


 次に、六面相がダイスロールを行うと、六面相が出した数字は『6』だった。


 六面相が先攻を選ぶと、迷わず『+3』と顔に描かれたシルエットを触った。


 そこに現れたのは、白髪と白い髭のドワーフだった。白い布一枚で身体を

 巻いたようなデザインだった。ジンは、昔見た哲学者の姿を思い出した。


 ジンと六面相の目の前にテキストウィンドウが表示された。内容はこうだった。


『悪は間違っているのか。』


 難しいテーマが来た。六面相はどうやって乗り越えるのか、ジンは気になった。


 まず、ドワーフの老人男性が黄色い野球帽を被った六面相に質問した。


「あなたに聞きたい。悪は、間違っているのでしょうか?」

「悪は間違っています。」

「なぜ、あなたはそう思うのですか?」

「えっとぉ、まず悪は犯罪行為に結び付くんですよね。他人の幸福を

 壊すのも悪だと思います。悪が間違いだから、嫌悪されるんです。」

「他人の幸福を壊すのが悪ならば、他人があなたの幸福を壊すのは正義ですか?」

「いいえ、他人がおいらの幸福を壊すのは悪ですね。」

「つまり幸福が壊されるのは悪と考えるのですね。」


 ドワーフの老人は六面相に詰め寄った。六面相も負けじと質問した。


「はい、おいらはそう思うんですが、あなたはどうなんですか?」

「では、天災や人災によって幸福を奪われたら、悪になるのですか?」

「あの、質問に答えてもらっていいですか? おいら、尋ねています。」

吾輩わがはいは幸福が壊されるのは悪だと思いません。幸福は状態を表す

 言葉です。例えば、ある幸福な家族が突然津波に襲われ、家族の命が

 奪われました。あなたは命を奪った津波を悪だと思いますか?」

「いえ、自然現象は仕方ないと思います。まあ犯罪行為なら悪ですけど。」

「では、ある幸福な家族のもとに女性が逃げ込んできました。女性は

 特務官ジャッジナイトに追われています。その家族は女性をかくまいました。しかし、

 次の日に女性を匿った家族は逮捕されました。家族は不幸になりました。」


 六面相は、3秒くらい考え込んでから、ドワーフの男にこう言った。


「それは追われている女性を匿った家族が悪いですね。」

「あなたは犯罪行為をした家族を悪だと思うんですね。」

「・・・いいえ、違います。犯罪行為はその女性では?」

「はい。その女性は犯罪を犯しました。そして女性を

 匿った家族も犯罪を犯しました。犯人隠避罪はんにんいんぴざいです。」

「いや!! その家族は巻き込まれただけでは?」

「女性を匿うことを決めたのは家族の意思なので、

 巻き込まれたとは言えないのではないですか?」


 その瞬間、六面相は黙り込んだ。そして六面相のHPは10から9に減った。


 その光景を見たジンは、思わず叫んでしまった。


「お前が負けるのかよ!!」

「はい、おいらの負けですね。幸福のことは言わない方が良かったですね。」


 次は、ジンの番であることがテキストメッセージと謎の声によって伝えられた。


 ドワーフの老人は同じ質問をしてきた。ジンはドワーフに対して言った。


「オレは悪は間違っていると思わない。」

「なぜですか?」

「世の中には必要悪という言葉もある。」

「なぜ、悪が必要とされるのですか?」

「例えば、義賊だ。彼らは貧しい者を助けるために、富裕層の

 お金を盗んで人々に配った。貧しい人々は生き延びた。だが、

 義賊がやったことは犯罪行為だ。そして犯罪者がいないと、

 警察官も仕事が減る。悪がいないと、正義も成り立たない。」

「なるほど、だから悪は間違っていないとあなたは思うんですね。」

「それに悪かどうかを決めるのも状況次第だ。飢餓で苦しむ村で、

 村の牛を食料にすれば助かる。しかし牛の持ち主は断固拒否した。

 村長は権力を使って牛の持ち主を閉じ込め、牛肉を村人に配った。

 村を救った村長のやったことを、お前は悪だと思うか?」


 ドワーフの老人は考え込んだ。他者を救う為に悪行を行うことは

 間違っているのか。それはそもそも状況に左右されるのではと、

 老人が考え込んでいると、ジンはドワーフの老人に持論を述べた。


「正しい、間違っているかは、国や時代によっても変わる。

 今まで正しかったことが、未来には間違っていることもある。

 科学もそうやって過去に正しいとされたことをくつがえしてきた。

 お前の考える悪が間違っていることも、未来では変わるぞ?」


 それを聞いたドワーフの老人は微笑むと、ゆっくりと姿を消した。

 そして、ジンの目の前に階段のアイコンが出現した。その階段は、

『+3』と表示され、ジンは一気に5階に進むことを許された。


 そして謎の声が再び聞こえてきた。テキストウィンドウも表示される。


『おめでとうございます。今回はジンさんの勝利ですね。勝ったジンさんは、

 5階のフロアに行ける階段を登れます。負けた六面相さんは、他のキャラに

 勝ってジンさんがいる5階まで勝ち上がって下さい。このままでは負けます。』


 それを聞いた六面相は悔しがるどころか、むしろ喜んでいた。

 六面相はジンに向かって、のんびりとしたペースで言った。


「良かったです。おいら、ジンさんが弱かったらどうしようと

 思ってました。さすがコレクターに勝った人だなと思いました。」

「あれはオレの魔法生成AIと仲間のおかげだよ。」

「ナカマ・・・?」

「ああ、オレたち『ワイルドパンク』と『ケルベロス』のおかげだ。」

「はぁ。仲間ですか。他人に頼って生きる人、おいら好きじゃないです。」


 突然六面相はテンションが下がったと感じたジンは、六面相に尋ねた。


「お前、事務所に従業員とか居ないのか?」

「いないですよ。おいら、天涯孤独ですし。」

「お前だって、親はいるだろ。」

「おいら、両親を見たことがありません。

 実は試験管から生まれたんですよね。」

「!!」

「でも、おいらはそれを不幸だとは思いません。

 おいらが見る世界は、おいら一人しか見えません。

 だから、おいらは一人で世界を救おうと思いました。」

「世界を、救う?」

「はい。世の中には生きづらくて困っている人を配信で

 知りました。だから異空間で頑張れる人を探しています。」


 ジンは、ようやく学んだ。六面相は、自分の空間創造魔法を

 悪意で閉じ込めているのではなく、善意で閉じ込めていると。


 しばらくジンが黙っていると、六面相がこう言っていた。


「じゃ、おいら他の敵と戦うんで。先に行ってください。

 おいら、ピンチになるほど、自分の限界を超えられると

 信じているから、頑張れるんですよね。おいらの異空間に

 入った人も、実は自分で出ようと思えば出れるんですよ。」


 そう言うと六面相は、さっさと歩いて他のシルエット画像に触った。

 ジンは、無言で階段の画像に触れると、そのまま5階にワープした。




 六面相の異空間『六人論破シックス・リフュート』 5階





 画面の上半分は、なぜか星空になっていた。2Dドットで表現された

 石造りの神殿が見える。そこには、6つのシルエットが浮かんでいた。


 そして6つのシルエットの顔にはすべて、☆のマークが表示されている。


 ジンは手で顔を隠した。どうやら最終論戦は、ディベートになりそうだ。

 心の中で、ジンは不安に思った。ディベートは高校時代も経験したことがない。


「マジかよ・・・どうやって勝てばいいんだ?」


 ジンは、六面相が来るまでの間、脳内の魔法生成AIのアミと話し始めた。


「アミちゃん。ディベートって何をすればいいの?」

「はい、ご主人様。それはテーマに沿って、話し合われます。まず、

 肯定と否定の立場に分かれます。お互いに持ち時間が決められ、

 第三者を論理的に説得するのです。つまり、判定者はご主人様と

 六面相様ではない、もう一人の存在ですね。この場合は六面相様の

 魔法生成AIになりそうですね。あの謎の声の正体もそれです。」

「つまり、先攻後攻を決めるのと同じく、テーマに対しての肯定と

 否定の立場を先に決めるんだな。そして判定は六面相のAIか・・・。」

「公平に判断するのはAIも出来ますが、ユーザーの肩を持ちやすいです。

 推論ですが、だから六面相様は自信満々でご主人様を見送ったかと。」


 長い時間が経った後、黄色い野球帽と黄色いジャケットの六面相が現れた。


 ジンと六面相はお互いにダイスロールを行い、そして勝ったジンは真ん中の

 シルエット画像に触れた。2D空間が暗転し、シルエットだったキャラの姿が

 すべて白日の下にさらされた。様々な種族のキャラが、審査員のようだった。


 ジンと六面相は、最終バトルに突入した。テキストウィンドウが表示される。


『最終テーマ: 地球という異世界は、存在するのか、しないのか?』

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