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サイバーファンタジーの異世界で本気出す  作者: 南田華南
怪人六面相編

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第29話 役割

 プライドシティ AerospaceXエアロスペースエックス 本社ビル エントランス前


 巨大なガラス張りのエントランスがあるビルの前を、一人の男が歩いていた。


 男は手にプラスチック製のタンブラーを持ち、布製のバックを肩に

 担いでいた。ラフな格好で、脳インプラントに組み込まれたバック

 ミュージック機能を駆使し、自分が好きな歌手の音楽を聴いていた。


 男は心の中で、自分がAerospaceXエアロスペースエックスで働く理由を語った。


「俺の名前はキース。独身で恋愛経験はゼロだ。しかし、俺は青春を

 犠牲にして勉学に励んだぜ。おかげで俺は超一流の会社で働いている。

 俺は今、宇宙空間で活動するヒューマノイドを開発するチームにいる。

 将来的にはヴァドールの衛星であるモナトに、補給基地や居住施設が

 作られる時代が来る。俺はその歴史的偉業にたずさわることに誇りを

 持っている!! あいつは容姿端麗なエルフの彼女を連れているが、

 俺はあいつよりも会社の役に立っているんだ!!」


 キースは、銀髪で褐色肌のエルフと付き合っている会社の

 同期をねたんでいた。同期の男性は高学歴のキースと違い、

 航空宇宙工学の専門学校でクーロンにスカウトされた。


 キースにとって名門大学を卒業していない人物が同じ職場にいることが

 我慢ならなかった。そんな彼の影に、黒い物体が入り込んだ。それは、

 一瞬の出来事だった。黒い物体はキースの影と同化した。


 彼はエントランス付近で警備する赤い単眼で黒い装甲を持つ

 ロボットに個人情報を送信すると、建物の中に入っていった。


 キースが出社する数十分前、青いグラビランナーが高層ビルの

 上空を飛んでいた。そこには二人の特務官ジャッジナイトが乗っていた。


 車内では、クーロンが所有する巨大なビルの、AerospaceXエアロスペースエックス

 本社の見取り図が映し出されている立体映像が浮かんでいた。

 車の持ち主であるジョーは、対面で座るフェイフェンに言った。


「最終確認だ。まず、フェイが死霊をAerospaceXエアロスペースエックスに出入りする

 社員の影に潜り込ませる。お前の死霊が建物内を移動する社員の

 影から影へと飛び移り、防衛用ヒューマノイドのコントロール

 ルームを見つけたら、いったん俺に連絡を入れてくれ。そしたら

 正面ゲートの近くで、俺が外にいる社員を眠らせて騒ぎを起こす。」

「遠隔操作できる我々を起用するナジュリ長官、さすがです。」


 フェイフェンは恍惚こうこつの表情を浮かべ、よだれを垂らす。

 それを見たジョーは、生暖かい目でフェイフェンにこう言った。


「ああ。そうだ。お前はコントロールルームで機械を止めてくれ。」

「しかし、どう考えても数分間しか持ちませんよ。ロボットが

 緊急停止から自律行動に設定を変えるのも時間の問題ですね。」


 AerospaceXエアロスペースエックスの防衛用ヒューマノイドは、基本的には本社にある

 コントロールルームで制御されているが、緊急停止後はAIの行動の

 制限が解除され、各ロボットのAIが状況を判断して動く仕組みである。


「お前は死霊でコントロールルームを制圧したら、部屋に入ってきた社員の

 影に飛び移り、ジンが捕まっている場所を捜索してくれ。この作戦は極秘

 任務だ。ジンが見つかるまでの間、特務省ジャッジ・オフィスが関わっていることを隠す。」

「我々は誰にも見られない場所に潜伏し、ジン・ゼッカードを見つける。」

「ああ、それで十分だぜ。あとは長官が捜索差押許可状を出す。クーロンの

 会社に特務官ジャッジナイトが押し寄せる。ジンは長官と個人契約を結んでいるからな。」


 その発言を聞いたフェイフェンは眼鏡の奥の瞳を輝かせた。


「なんてうらやま・・・さすがナジュリ長官、そこまで考える!!」

「無害な異世界転生者への暴行や拉致監禁らちかんきんは重罪だからな。

 それに、この機に乗じてクーロンの会社を差し押さえられる。」

「ナジュリ長官に反抗的なクーロンを潰すんですね、分かります。」


 ニヤリと笑うフェイフェン。それに対して、ジョーは困った様子だった。




 AerospaceXエアロスペースエックス 本社ビル 28階




 様々な電子機器に囲まれたコントロールルームで、あくびをする職員。

 その姿を見た黒髪で褐色肌の女性職員が男性職員に苦言をていした。


「ちょっと!! まだ3時間しか経ってないでしょ? 

 あんた、ちゃんと集中しなさいよ。減給されるわよ。」

「ああん? そんなにキレるなよ。こっちは何も起こらない部屋で

 数時間もロボットのカメラ映像見るだけのブルシット・ジョブだぜ。」


 二人が騒いでいると、扉が開いた。金髪で筋骨隆々の職員が声をかけた。


「おい、お前たち。何を騒いでいるんだ?」

「何もありませーん。」

「いつも通りですよ、ボス。」


 ボスと呼ばれた男は、白を切る二人に愛想を尽かしていた。なぜ、

 自分は宇宙開発の現場ではなく、こんな監視の仕事なのだろうと。

 今頃会社の同期は、宇宙に飛ばすロケットを設計しているのに。


 憂鬱ゆううつな表情で、扉を閉めた。その瞬間、背中に誰かいる気配を感じた。

 ボスは、すぐ後ろを振り返ると、真っ黒なガス状の生物と目が合った。


 声を上げようと口を開けた瞬間、逆にガス状の生物が男の口の中に侵入した。


 男は気を失い、部屋には三人の動かない職員達が地面に倒れていた。


 黒いガス状の生物は、手だけを実体化させ、その中の一人の職員が

 持つカードキーを奪った。カードキーを適正位置に差し込むと、

 部屋にある端末機を操作する。量子通信網ネットワークに接続すると、車内で

 座っているフェイフェンは、対面にいるジョーに親指を立てる。


 そのサムズアップを見たジョーは、落ち着いた様子でこう言った。


眠間軍勢スリープ・トルーパーズ


 駐車中の青いグラビランナーから陽炎かげろうのような歪んだ空間が広がる。


 次の瞬間、会社の近くを歩いているAerospaceXエアロスペースエックスの社員達が倒れた。


 ジョーの『眠間軍勢スリープ・トルーパーズ』は領域内にいる標的を特定し、標的となった生物を

 強制睡眠状態にさせる。一定時間、標的も任意で動かせることも可能である。


 異変に気付いた防衛用ヒューマノイドは、ゆっくりと倒れているヒトに

 近づく。やがて、次々と目を閉じた群衆が立ち上がった。腕を振りながら

 AerospaceXエアロスペースエックスのエントランスを目指していく。すると一台のロボットが、

 静止するように警告するが、夢遊病のような状態の群衆は止まらない。


 すかさず、ロボットが本社にいるクーロンに連絡を入れようとした瞬間、

 量子通信網ネットワークを通して、AerospaceXエアロスペースエックスの全てのロボットが緊急停止した。


 あらゆる場所で、AerospaceXエアロスペースエックスのロボットが静止していた。




 AerospaceXエアロスペースエックス 本社ビル 最上階




 戦場の動画から、再び宇宙空間の映像になった部屋で、二人の男が話している。

 クーロンから新しい布マスクを着けられたジンは、クーロンに話しかけた。


「オレはすぐにお前の仲間になることは出来ない。時間をくれ。」

「ああ、いいぜ!! いつでも来い!! 宇宙は広がっている。

 俺は宇宙のようにデカい心で、いつまでも待っているぜ!!」

「・・・それで、お前はこれからどうするんだ?」

「宇宙に専念するさ。俺は本来、コソコソやるのは性に合わない。」

「ナジュリだが、どうやってMRBの話をすればいいと思う?」

「頃合いを見た方が良い。そうだな、まず王の悪口を言ってみろ。

 必ずあの女はお前をたしなめる。その時に、それは王の命令かと聞け。」

「王の話を突破口にすればいいんだな。」

「ああ。それからお前はどうしたいのか、お前自身で決めろ。

 ナジュリから離れてもいいし、王による地球侵略の駒として

 働くか、それはお前の自由だ。俺は自由に動くお前を尊重する。」

「・・・・・・。」


 ジンのパワードスーツは、AerospaceXエアロスペースエックスによって完全に修復されていた。

 ロニに壊されたバッテリーも元に戻っている。体内に盗聴器がないか、

 ジンは魔法生成AIのアミに調べさせたが、発見されなかった。むしろ、

 ミシェルが組んだプログラムよりも最適化され、機能が強化されていた。


 ジンは、ようやく自分の体を動かせるようになると、クーロンに言った。


「あと、さっき話したが、怪人六面相の件はアーデルマイトに伝えてくれ。」

「分かった。ただ、お前から聞いた話だと、怪人六面相がAIbirthエーアイバースの利用規約を

 破っているとは、断定しにくいな。ソイツが悪意を見せない限りは、な。」

「ま、あいつがロズノフの仲間じゃないことが分かっただけでも重畳ちょうじょうだな。」

「? なんだその単語は!? それは地球にしかない言葉なのか!!」

重畳ちょうじょうってのは____」


 突如、警告を伝える電子音が鳴り響いた。クーロンは上を見上げて言った。


「来たか。どうやらお前を取り戻そうと、ナジュリが動いたようだ。」

「じゃあ、オレは帰るぜ。あの獣人の魔法使いも捕まっているのか?」

「ああ、そいつも直しておいたぜ。おい、Drドクター.レミスター!!」


 クーロンが叫ぶと、ジンの近くにオレンジ色の髪が特徴の少年のような立体

 映像が現れた。緑色の瞳とミシェルが着ているような白衣も印象的だった。


「・・・なんだい、クーロン。ボクは今、忙しいんだけど。」

「あのデカい機械化人間サイボーグの猫ちゃんは元気か!?」

「猫じゃないよ。あれは獣人族で、見た目は野生動物に似ているけど、

 遺伝子配列は違うんだ。だからネコ科と決めつけるのは短絡的_」

「おお、そうだったのか!! そいつはもう動けるんだな?」

「・・・うん、もう全部直したよ。彼も帰していいの?」

「当たり前だ!! 重力に縛られるのは俺達も好きじゃない!!

 自由に宇宙を研究する俺達が、引き留めるのは違うだろ!!」

「・・・じゃ、ボクは彼を帰らせるから。ちゃんと仕事してね?」


 少年のような立体映像は突然消えた。ジンはクーロンに尋ねた。


「誰だ、あの少年は?」

「おいおい、性別を決めるのは良くないぜ。あいつはリリト・レミスター。

 ロボティクス部門のCTOだぜ。ロボット開発では世界一だと思っている。」

「子供に見えるけど、若いのか?」

「実は機械化人間サイボーグなんだ。見た目と中身は一致しない。」

「なるほど。自分も改造しているんだな。・・・じゃあな、クーロン。」


 ジンはそう言うと、クーロンに背を向けて、部屋を出て行った。

 それを見たクーロンは、腕を後ろに回し、こうつぶやいた。


「心も計算で成り立っている。そんな訳はねえんだよな。

 星が逆行しているのは錯覚だが、過去を辿たどれば真実が見える。

 権力者の重力に逆らって生きろ。ジン・ゼッカード。」


 一方、出社したキースは必死に職務をこなしていた。彼はクーロンが

 課した条件をクリアするロボットを開発するため、今日も一日頑張る。


 キースが休憩を取るために部屋の外に出ると、外では異変が起きていた。

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