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サイバーファンタジーの異世界で本気出す  作者: 南田華南
怪人六面相編

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第23話 呪縛

  ジン達に捕まった黒桜會こくおうかいの男は、タイラー・ノートンと名乗った。

 タイラーは、なぜ自分達が『ビッグエイプ』に居たのかを説明し始めた。


「これは組織の存亡にも深く関わっているんじゃ。」

「大げさだな。」

「信じるか信じないのか、お前次第や。・・・ワイズマンは

 生物を異空間に閉じ込める魔法使うんや。会長の娘さんも

 閉じ込められてしもうた。だから奴に逆らえないんや。」


 おいおい、今度は空間創造魔法? ヒルベルト空間みたいなのを

 作れるのか? それとギャングのボスの娘が監禁されているのか。


 ジンがあごに手を当てて考えていると、タイラーが言った。


「今回、オークのタカシがワイズマンに金を振り込む予定やった。

 ワシらも裏社会の人間や。ワイズマンの正体を突き止めてから

 交渉しようと思ってな。それで分かったのが、怪人六面相が

 ワイズマンやったんや。だからこの場所を指定したんや。」

「? なんでオンラインでやらないんだ?」

「特務のセキュリティAIが量子通信網ネットワークを監視しているんや。ほんでワシら、

 裏の人間は暗部ダークサイトを使っていたんやが、それも壊されてしまってな。」


  ジンはナジュリとの会話を思い出した。何者かに破壊されたと。

 そう考えていると、タイラーは続けてこう言った。


「せやから、お互いに部下をよこして取引しようやと思っててん。

 で、ワシらはタカシ。六面相は学生をつこうたんや。」

「!! もしかして、あのピンク髪の子か!?」

「せや。ほんでタカシが女の端末をハックしたんや。」

「あー・・・なるほどね。下心じゃなかったのか。」

「女が好きなのは間違いないけどな。」

「てことは、タカシの端末に六面相の情報もあるのか?」

「女はどうやら六面相のオフ会にも出入りしているようやな。

 脳内量子通信で、タカシの端末データをワシの脳インプラントに

 コピーしたんや。ワシのAIが解析したら、六面相のオフ会の

 場所も分かった。その場所を教えるから縄をほどいてくれん?」

「いや、タカシの端末があればオレらだけで出来るし。」

「ワシがあと1時間後に戻らんと、黒桜會から援軍来るで。」


 タイラーはニヤリと笑ったが、ジンはすまし顔でこう答えた。


「そん時は返り討ちにするさ。・・・そう言えばあんた、

 AIに解析させたって言ったけど、なんで魔法生成AIで

 魔法を使わなかったんだ? それならもっと戦えただろ?」

「アホか。ワシら犯罪企業ギャングやぞ。魔法生成AIを管理しとる

 AIbirthエーアイバースが反社に利用させる訳ないやろ?」


  ふと、ジンは今まで戦ったハンクや骸骨顔の男達を思い出した。

 そう言えば犯罪企業ギャングである彼らは誰も魔法を使ってこなかった。

  ジンは量子通信でアミに語りかけた。AIのアミなら分かる筈だ。


(今から話せる、アミちゃん?)

(はい、ご主人様。どうなさいましたか?)

(反社だと魔法生成AIは使用できないって本当?)

(はい、ご主人様。間違いありません。)

(どうして?)

(ギャングは会社設立を登記する必要があり、まず経政連に申請書を

 提出する必要があります。そして魔法生成AIを管理するAIbirthエーアイバース

 経政連の議員が運営する企業ですので、反社会的勢力による魔法の

 使用はダメです。アカウントすら作れないので利用できません。)

(え? 犯罪組織の経済活動は認めるのに魔法生成AIはダメなの?)

(はい、ご主人様。反社や反逆者に魔法生成AIを使わせないことで、

 彼らをコントロールしているんです。逆に企業に忠実な傭兵や

 特務官ジャッジナイトに提供します。そうすれば対処しやすいです。)

(もしも傭兵や特務官ジャッジナイトが隠れて魔法生成AIを売ったら?)

(魔法生成AIは使う度に本人認証が開始されますので、使用時にバレます。)


 どうやらタイラーが言っていることが本当だと思ったジンは、話題を変えた。


「なあ、タイラー。オレ達、取引ディールしないか?」

「あ?」


 すると傍で聞いていたゼンが、慌てた様子でジンに話しかける。


「だ、だめですよぉ!! 社長ぉ!! 俺ら上場を考えているんですよ!?

 俺ァ、闇営業とか絶対やりたくねぇ!!」

「落ち着け、ゼン。だが、やるんだ。上場すれば、監査が入る。

 その前に、黒桜會こくおうかいと手を組んで共通の敵である怪人六面相を

 倒す。オレらは怪人六面相に訴訟を起こしたくても証拠がない。

 だから裏社会の黒桜會こくおうかいに怪人六面相の犯罪の証拠を集めさせる。

 オレら『ワイルドパンク』は怪人六面相に損害賠償を請求する。」

「ええ・・・マジかよ、この人・・・。」

「オレ達がタカシの端末を解析してもワイズマンという人物が

 怪しいだけしか分からない。そして怪人六面相だと断定できる

 証拠を持つのは黒桜會こくおうかいしかなく、六面相は黒桜會こくおうかいの会長の娘を

 人質に、犯罪企業ギャングをこき使っている。オレは共闘できると見た。」


 ジンの発言に対し、タイラーは驚いた様子だったが、すぐに冷静になった。


「ジンの言う通りや。ワシらと六面相は犯罪協力しとる。つまり、

 ワシらは六面相を逮捕できる証拠や証言も持っているということや。

 特にワシらはVRゲーム生成AIにバックドアがあるのを知っとる。」

「どういう意味だ? 六面相はなぜゲームユーザーを狙う?」

「六面相はな、自分の魔法生成AIを進化学習させたいんや。」

「!! おい、六面相は魔族ではなくてヒトなのか?」

「ああ、せや。あいつは魔法生成AIをつこうてる。」

「ちょっと待て。AIbirthエーアイバースは六面相を野放しなのか?

 六面相がやっているのは拉致監禁だろ?」

「あいつはただ異空間に()()しているだけなんや。」

「あんない? ・・・被害者は自主的に入っているのか?」

「せや・・・お嬢も自分で六面相の空間に入ったんや。六面相は

 経政連のルールを犯していないんや。しかもお嬢はあいつの空間で

 楽しそうに過ごしとる。AIbirthエーアイバースも監禁と思うてないんやろうな。

 六面相の被害者は、ただのゲーム廃人と思われてるんや。」


  ジンは理解した。つまり被害者は自分が被害を受けたと思っていない。

 そして黒桜會こくおうかいが逆らえない状況に閉じ込められているのだと察した。


 経緯を知ったジンは、再びタイラーに向かって話しかけた。


「ここで取引だ。オレら『ワイルドパンク』が会長の娘さんを救う。

 あんた達は、オレとゼンが六面相を疑っていると奴に伝えてくれ。

 あんた達は表面上、六面相の味方として振る舞うんだ。オレらが

 六面相と戦う時に、あんた達は裏切ってほしい。その前に六面相を

 訴訟するための証拠もできるだけ集めてくれ。社会的に潰すんだ。」

「分かった。六面相を裏切る前に証拠をそろえておく。せやけど、

 どうやってあいつを倒すんや? あいつの異空間に入ったら最後、

 あいつに攻撃することは不可能やで。この世界でしばかんと。」

「考えがある。まず、オレらと取引するか、今ここで決めてくれ。」


  ジンは自分を見上げるタイラーに返答を迫った。するとタイラーは

 まっすぐジンの目を見て、しばらく間をおいてからジンに言った。


「ほな、お嬢を取り戻してくれ。ワシらも裏で支援する。」

「取引成立だ。もしオレらが失敗した場合、あんた達は六面相の

 檻の中に戻る。奴には最後まであんた達が味方だと思わせたい。」

「六面相を逆に閉じ込めるんやな。ワシらが領域を上書きする訳か。」

「ああ。六面相は異空間の外で安心しているが、奴はオレらの領域に

 既に入っていることを知らない。陰謀という名の領域にな。」


  こうして、ジンはゼンに黒桜會こくおうかいの連中を解放するように命じた。

 最初は嫌がっていたゼンも状況を理解し、しぶしぶ彼らの拘束を解いた。


  その後、ジン達とタイラー達は、それぞれ自分達の場所に戻ることになった。

 ジン達が地下鉄に乗ると、隣に座っているゼンがジンに話しかけてきた。


「社長。・・・俺ァ、黒桜會こくおうかいとつるむのは正直反対です。」

「・・・・・・」

「連中に俺らの弱みを握られるんですよ。もし六面相に勝っても、

 俺らがギャングと取引した事実は消えません。今後、あいつらに

 ゆすられる可能性があります。悪党ってのはそういうもんです。」

「あいつらが悪党なら、この世界で殺人を犯した俺もそうだな。」

「!! 何言ってんスか!! 社長が倒したのは魔物ッスよ!?

 コレクターは魔物を改造した機械生命体ミュータントだ!! ヒトじゃねえ!!」

「・・・お前にも話しておくが、オレは『バスタード』のハンクの

 命を奪った。お前と出会う前に、既にオレはヒトをあやめている。」

「・・・・・・え?」

「正当防衛かもしれないが、もうオレは堅気かたぎじゃない。

 オレに正義や悪を語る資格はない。そもそも禁呪魔法を使って

 法を破っているからな。世間から見ればオレは悪党なんだよ。」


  ゼンは困惑した。ヒーローだと思っていた人が、殺人を犯していたこと。

 そして彼は自分自身を犯罪者だと思っていることに、ジンの闇を知った。


  電車の中で、しばらくの間、ジンとゼンは黙り込んだ。

 男達を乗せた電車は、真っ暗なトンネルを通っていく。


  二人がマンションに到着すると、時刻は午後11時を

 過ぎていた。そして次の日、六面相による犠牲者が出た。

  

 ジンは、別れを告げたキャシーと、再び出会うことになる。





 プライドシティ 高級住宅街 ヴァルキュリオン地区





 プライドシティの高級住宅街、ヴァルキュリオン地区にある、

 一軒の豪邸。そこに量子通信で誰かと話す男がいた。その男、

 アンソニー・ロズノフは、銀色の角刈り頭と碧眼、群青色の

 スーツが特徴だった。こめかみに指を当て、誰かと話している。


「N-XXダブルエックスが集めたデータを使う。」


 ロズノフがそう話すと、通話相手の声は電子合成音だった。


「分かりました。神宝計画は予定通りに。」

「ああ・・・。例の、2人のマシンスレイヤーは?」

「問題ありません。引き合わせる手筈は整っております。」

「気をつけろ。特にクーロンには、な。我らの意図を

 読んで妨害する可能性がある。奴は唯識ゆいしきを嫌っている。」

物質主義者マテリアリストには受け入れがたいものです。

 では、ボス。私はこれで失礼します。」

「ああ・・・。君に期待しているよ。」


 謎の人物と通信を終えたロズノフは、緑色の液体が入っている

 ワイングラスを手に取り、グラスに向かって、こうつぶやいた。


「主は言われる。私が貴方がたに対して抱いている計画は私が知っている。

 それはわざわいを与えようというのではなく、平安を与えようとするものであり、

 貴方がたに将来を与え、希望を与えようとするものである。」


 そう言うと、ロズノフはワイングラスを飲み干した。

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