表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイバーファンタジーの異世界で本気出す  作者: 南田華南
怪人六面相編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/63

第22話 鼓動

  午後7時頃、ジン達は地下鉄を利用し、サピエンティア駅で下車した。

 プライドシティにある学生の街、サピエンティア。自然科学や思想学を

 教える教育機関、起業家を支援する投資会社の他に、大企業が管理する

 研究機関が集積していた。先端科学技術で画期的な研究が行われている

 スカイフォード工科大学を中心に、名門大学が立ち並び、大学の周囲は

 飲食店やアミューズメント施設など、学業とは無縁の場所が乱立している。


 別々の大学が隣接しているのを初めて見たジンは、こう思った。


  学生の奪い合いが起きているんだろうな。コンビニの近くに、別の会社の

 コンビニがある感覚だ。プライドシティは税金で補助する国立大学がない。

  代わりに私立大学が幅を利かせ、学生ローンで街の若者を縛りつけている。


 ジンが周囲を観察していると、隣にいたゼンが話しかけてきた。


「あの・・・社長? 今度から車買いませんか?」

「どうしてだ、ゼン?」

「いや、さすがに毎回地下鉄で移動するのは、キツいッス。

 俺ら上場を目指しているんですよ? 未だに社長と社員が

 電車移動って・・・スケールがショボいと思いますよ!!」

「とは言ってもなぁ。電動バイクは一人乗りだし、

 電気自動車も自動運転装置付きは高いからなぁ。」


  将来の移動手段について話し合っていた二人の前に、巨大な猿のオブジェが

 現れた。手には巨大な骨を持っている。おそらく3Dホログラムなのだろう。


  そのオブジェの向こうには、派手なネオンや照明でライトアップされた

 商業施設の入口が見える。ネオン管を看板に使っているネオンサインには、

 アルファベットで『ビッグエイプ』と書かれている。この異世界では、

 地球のラテン文字と漢字に似た文字が使われている。だから転生者も、

 読み書きに苦労しないと、ジンはミシェルから聞いたのを思い出した。


  ビッグエイプの中に入ると、施設全体に振動が伝わるほどの低音が響き渡る。

 ビリヤードやダーツのようなスポーツに興じる若者が騒いでいた。その隣に、

 ボウリング場が設置され、学生服姿の集団が席に続々と陣取る。その学生の

 集団の中に、ダボダボのパーカーとズボンを履いたオークの男が話していた。


  ジンは、その男がワイズマンの取引相手だと分かった。SWSで、金色の小型

 タブレット端末を持っていると書いてあったので、その男に話すことを決めた。


  オークの男に近づくと、ピンク色のサイドテールの女子高生が

 何かを話している。ジンは人工の耳の集音機能を最大限に利用し、

 ボウリング場で話している二人の男女の会話を盗聴した。


「・・・だからぁ、うちらはクスリなんて興味ないって!!」

「話分からねえなぁ。スマートドラッグは麻薬じゃねえ。

 認知機能や計算能力を高めるんだ。お前ら学生がテストで

 いい結果取れるように、おじさんはお前らを助けたいんだよ。」

「ウソつくなよ。脳インプラントもカンニング対策で禁止だから

 この前もうちの学校でスマートドラッグを買った子が、意識を

 失って倒れたんだ。今でもソイツは植物状態って噂だよ!!」

「あー、それな。俺達とは関係ねえよ。それより___」


  いきなりオークの男はピンク髪の女子高生の肩を触った。

 そして次は女子高生の髪を触りながら、こう言ってきた。


「もっと金欲しくないか? VIPが集まるビルがあるんだ。

 そこでお前がお偉いさんに一日奉仕すると1億ダナーが

 もらえるぞ。お前は、見込みがある。なぁ、キャシー。」


  突然自分の名前を呼ばれたキャシー・アリンガムは、驚いて男の

 手をけた。彼女はにらみつけるような顔で、男に言った。


「てめぇ・・・あたしの個人情報をハックしたなァ!!」

「量子暗号化されていないお前の端末が悪いんだろ。

 まさか、ここまでセキュリティ甘い嬢ちゃんとはな。」

「今すぐ返せ!! あとで特務官ジャッジナイトに通報するからな!!」

「あいつらがお前を助ける訳ねえだろ。俺をお前と誤認したお前の

 ゴミ端末を恨むんだな。・・・なぁ、キャシー。どうするよ?」


  オークの男が再びキャシーの肩に触ろうとした瞬間、ジンが

 彼の腕を掴む。ジンは、機械化されている手に力を込める。

  オークの男は叫び出し、金髪碧眼のマスクの男に言った。


「やめ、やめろぉおおお!! いてぇええ!!!!」

節操せっそうねぇんだよ。交渉なら相手の気持ちを考慮こうりょしなァ!!」


 痛がるオークの横で、更にゼンがジン達の話に口を挟んだ。


「もうやめな。この人は、あのコレクターを倒した『ワイルドパンク』の

 ジン社長だ。てめぇじゃ格が違うんだよ。さっさとお嬢さんの

 個人情報を返しな。あと、てめぇとサシで話したいことがある。」


  キャシーは、目の前で起きている矛盾に、困惑していた。

 つながりのない人が自分を助けるとは思っていなかった。

  ところが見ず知らずの他人が自分を救おうとしている。

 キャシーの中で、すべての価値観が変わろうとしていた。


  ジンはオークの腕をひねると、オークは地面に倒れた。

 倒れたオークの胸倉むなぐらを掴むと、冷徹な目で言った。


「今から転生先の世界に行ってみるか? 死ぬほど痛ぇぞ。」

「!! え、え、いや、本当にすいませんでした!! 

 すぐ返しますんで、あの、どうか、見逃し__」

「ワイズマンに100万ダナーもらって、仲間使って

 オレの会社のサービスで不正行為していたな?」

「!! あ、あ、い、いや、それは・・・」

「オレはワイズマンにも会いたい。来い。」


  するとジンはオークの首根っこを掴み、オークを片手で持ち上げた。

 そのまま、オークと人気ひとけのない場所へ移動しようとした矢先、

 ビリヤード台の向こうからジンの名前を呼ぶ声が聞こえてきた。


「待てやァ、ジン!!」


  ジンが振り向くと、柄シャツ姿の男達だった。手には刀のような武器を

 握っており、暗視ゴーグルのような装置を着けている。男の一人が言った。


ワレ、ワシの舎弟に何しよるん!! コラァ!!!」

「誰だ、てめえら?」

黒桜會こくおうかいのブライアン一家じゃ!!」

「・・・繁華街の犯罪企業ギャングか。」


  柄シャツの男が着けている暗視ゴーグルのカメラが回り始めた。

 しばらくすると、カメラが自動的に止まった。柄シャツ男が言う。


「戦闘指数は2万ダナーか・・・ワシらと互角か。」

「それ・・・戦闘力調べるのかよ。」

「いくでぇ、お前ら!! 全員でタカシを助けるんやァ!!」


 黒桜會こくおうかいの男達は一斉に刀から鞘を抜き、ジンに襲い掛かった。


「いねぇやァアア゛!!」

「ちっ。なら、コイツを喰らえ!!」


  ジンはオークを柄シャツ姿の男達に投げつけた。その中の一人は、

 飛んできたオークをキャッチし、残りの男達がジンに斬りかかった。


  ジンはまず手前の男に掌底しょうていあごを攻撃し、次に向かってくる男の刀を

 指で白刃取りした。その男はジンによって動かなくなり、もう一人の男が

 刀でジンの脇腹わきばらを突き刺すが、鋼鉄で構成されたジンの前で男の刃は折れた。

  4人目の男がジンの顔を目掛けて、刀を振り下ろす。その前に、ジンは

 前蹴りで4人目の男の腹を蹴飛ばし、ジンに蹴られた男は地面に倒れた。


  地面でうずくまる二人の柄シャツ姿の男。ジンに指で攻撃を止められた男は

 刀を捨てて、ジンに突進した。もう一人の男も折れた刀を捨て、掴みかかる。


  ジンは男達の攻撃を全てよけ、彼らに左フックと右アッパーを食らわせた。

 男達は宙に浮かび、オークを抱えている柄シャツとサングラスの男は逃げた。


 すると、逃げる男を追いかけるゼンがジャンプし、男に飛び蹴りを食らわせた。


「鬼神流!! 光火速火神ミカハヤヒノカミ!!」


  ゼンの右足が青白い炎をまとい、サングラスの男の背中に当たった。

 その瞬間、サングラスの男はオークを掴んでいる手を放し、床に倒れた。

  男の背中は燃え上がり、慌てて床で転げ回る。やがて力尽きた。


 黒桜會こくおうかいの連中を倒したジンとゼンは、二人でハイタッチした。


 その様子を見ていたキャシーは笑顔で、ジンに向かって話しかけた。


「本当に・・・ありがとうございました!! ・・・あたし、キャシーって

 言います!! あ、ジン社長のサービス、いつも使っています!!」

「ああ、どうも。あのオークの端末を使って、君の個人情報消しておくから。」

「・・・あの!! あなたの連絡先、教えて下さい。」

「お問い合わせフォームに書いてあるぞ?」

「いいえ、そうじゃないんです!! あなたのプライベートな連絡先です!!」


 ジンは目をうるませるキャシーに困惑した。ジンは脳内で悩んだ。


 マズい・・・JKジェーケーが、こんなオレに興味を持っている。

 前世では女子とそんな関係にならなかったオレが、こんな

 時にどう対応するべきか。・・・というか、オレにはもう

 ミシェルがいるからなぁ・・・。ここは優しく断ろう。


 ジンがキャシーに言おうと思った瞬間、後ろからゼンが叫んだ。


「社長!! こいつら縛りましたんで!! ワイズマンのこと、聞きましょうや!!」


 それを聞いたジンは、ゼンに分かったと言うと、続けてキャシーに言った。


「君は堅気かたぎの世界の住民だ。君はオレに深く関わるべきじゃない。」

「え・・・・・・?」

「こっちの世界に来るな。オレとゼンのことは忘れろ。じゃあな。」


  そう言い放ち、ジンはキャシーに背を向けた。彼女は茫然と立ち尽くした。

 キャシーの目の前を、ジンが去っていく。なぜか、自分の胸が苦しくなった。


  ジンは結束バンドで両腕を固定されている男達を見た。

 ぐったりしている様子だ。ゼンは笑いながら言った。


「こんな時のために、梱包こんぽうの仕事で鍛えた技術が役に立ちました!!」

「そうか。それは良かったな。ありがとな、ゼン。」

「社長、いいってことですよ!! じゃあ、そろそろ聞いてみますか?」


 ジンは、ずっと下を向いている男に話しかけた。男はゴーグルを着けていた。


「おい、お前。なぜ、ここで待機していた。お前らはワイズマンと

 どういう関係だ。さっさと答えろォ!!」

「ああん!?・・・・・・なんのことじゃボケェ!!」

「とぼけるんじゃねぇ!!」


 ジンはそう言うと男の胸倉を掴み、顔を近づけて話し始めた。 


「ワイズマンって奴がうちのサービスを利用しててな。だが都市伝説や

 陰謀論の情報を不正に高評価しているのは契約違反なんだよ。あいつと

 直接会って話し合いたい。このままだと、うちは上場できねえ。」

「はぁ? そんなことのために、お前らワシら殴ったんか?」

「襲ってきたのはお前らだろ。筋を通せよ、極道ごくどうならな。」

「・・・お前、なんで極道って言葉を知っているんや?」

「前世でやったゲームの受け売りだよ。あんたらの恰好、

 地球の犯罪組織と同じなんだよ。もしかして転生者か?」

「・・・フッ。ワシの先祖が転生者や。子孫のワシはよう知らんけど、

 代々この風体ふうていを大切にしてるんや。・・・ええやろ、ワシもここまでや。」


 観念したかのように、ゴーグルの男はため息を吐き、ジン達に事情を話した。

なぜワイズマンと黒桜會こくおうかいが手を組んでいるのか、ジンは気になっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ